Mar. Week 2, 2012
” Swanson Vineyards Modern House Wines ”
” スワンソン・ヴィンヤード・モダン・ハウス・ワイン ”



先週、私が興味深く読んでいた記事が、ワインのオーソリティとして知られた ルディ・カーニアワンが偽造ワインを売ろうとして FBIに逮捕されたというニュース。
インドネシア出身のルディ・カーニアワンは、現在35歳。2003年からアメリカに不法滞在していたものの、 ワインに造詣が深く、特にロマネコンティの偽物を的確に見分けることから、”ドクター・コンティ”とのニックネームが付いていた人物 (写真下、中央)。
その彼が、本物であれば、時価$1.3ミリオン(約1億500万円)分の偽ワインを売ろうとして、先週木曜に逮捕されたニュースは、 様々なメディアが報じていたのだった。 その偽造ワインの内訳はロマネコンティ (写真下、左) 78本と、ドメーヌ・ポンソ (写真下、右) 84本であったとのこと。

ルディ・カーニアワンは、ニューヨークが好況で沸きに沸いていた2005年〜2007年に掛けて、 今はクローズしてしまったワインで有名なレストラン、Cru / クリュ、Veritas / ヴェリタスなどに、数人のワイン・コレクターを伴って ディナーに現れ、彼のテーブルでは、ロマネコンティ、シャトー・ぺトリュスといった世界で最も高額なワインが惜しげもなくオーダーされ、 1回のディナーが1万ドル以上になることは珍しくなかったという。
彼は、そんなニューヨークのレストランで飲み干した世界最高のワインの空ボトルを、カリフォルニアの彼の自宅に送付させていたとのことで、 そのボトルが今回彼が逮捕された偽造ワインにも使われていたとのこと。
好況時のルディ・カーニアワンは、1500ドルのシルクのシャツを着用し、ロレックスのゴールド・ウォッチをするなど贅沢三昧で、 FBIの捜査が入った彼のカリフォルニアの自宅ガレージには、ランボルギーニ、レンジ・ローヴァー、メルセデス・ベンツといった高級車が並んでいたというけれど、 その彼の自宅は偽造ワインの製造所に使われていたとのことで、ラベルを偽造するための古紙や、コルク、フォイルなどが 押収されているのだった。




私も一時、ワインに凄く凝って、その時期にかなり高いワインを買ったけれど、 インターネット・オークションで落札したワインや、インターネットを通じてワインショップから購入したワインの中には何本か偽造品の疑いがあるものが混じっていて、 それらは、ことごとく返品したけれど、その時に思ったのがオリジナルのボトルさえあれば、ワインの偽造はそんなに難しいことではないということ。
だから、ワインに通じている人物が 偽造ワインで大儲けをしても、決して不思議ではないけれど、ルディ・カーニアワンの場合、 それをやり過ぎたためか、オークション・ハウスは徐々に彼のワインに偽造の疑惑を抱き始め、昨今では彼のワインをオークション・ハウスで競売に掛けさせるのが 難しくなっていたとのこと。それと同時にFBIも、過去数年を費やした捜査に動いており、結局、今回の逮捕に至ったというのだった。

高額ワインというのは、飲む目的で買う人と、投資目的で買う人が居るけれど、 私の個人的な考えでは、ロマネコンティのような1本数100万円以上するワインを飲んで、その価値が味に現れるかといえば、 必ずしもそうでは無いと思うのだった。
私はワイン・テースティングで、ラターシュ、モンラシェ、ロマネコンティ、シャトー・ぺトリュスなど、 高いワインを随分味わったけれど、美味しいとは思っても、その瞬間的な快楽に惜しげもなく 1万2000ドルを出すには、 よほど濡れ手に泡の大稼ぎをしていなければならないと思う一方で、その60分の1のお値段の200ドルのワインでも、 料理とのペアリングや、その時の雰囲気や気分で、同じように美味しく味わうことが出来ると思うのだった。

それでも、本物でさえあれば 一流のワインに大金を払うのはまだ納得できるもの。 ニューヨークのナイト・クラブのボトル・サービスでは、リカーストアで30ドルのウォッカが500ドル、45ドルのシャンパンが1000ドル近くになってしまうわけで、 こんな安酒に大金を払うことこそが、まさに馬鹿らしいといえるのだった。
ニューヨークのレストランは、通常ワインの原価の2.5倍、もしくは3倍でワイン・リストの価格を決めているけれど、 もちろんワインをグラスで味わった場合はもっと割高、それがシャンパンのグラス・オーダーになると、さらに割高になってしまうけれど、 どんなに割高でも ナイト・クラブのボッタクリ価格に比べれば、レストランのワインの価格は良心的と言わなければならないのだった。

かつては、ワイン・オークションが活況を呈したニューヨークであるけれど、 今ではそれがすっかり香港に移ってしまい、超高額ワインを購入するのは中国のニューリッチであると言われて久しいけれど、 ワインの本場、フランスでは人々が徐々にワイン離れをしている状況。
アメリカでは、ワインの消費はここ数年増え続けているけれど、ワインとカップケーキ、ワインとホットドッグをペアリングするビジネスが登場していることからも分かる通り、 アメリカのワインの消費は極めてカジュアル。でも私自身、特にリセッション以降は、ヴィンテージや価格にとらわれず、ワインは美味しく、楽しく味わえれば それで良いと思ようになったので、今は興味をそそられるワイン、試したことの無いヴィンヤードのワインを中心に買うようにしているのだった。




前置きが長くなったけれど、私が 今回御紹介するスワンソン・ヴィンヤード・モダン・ハウス・ワインの存在を知ったのは、 インテリアのウェブサイトを見てのこと。 インテリア・デザイナーが、ブラック&ホワイトにデコレートしたリヴィング・ルームのアクセントに使っていたのがこのワインなのだった。
そこで、興味をそそられて ウェブサイトをチェックしたところ、バーニーズ・ニューヨークのカタログやSAABの広告などで知られる ジャン・フィリップ・デロームのイラストでウェブサイトがクリエイトされていて、ワインボトル同様、非常にモダンで、ファッショナブルな印象になっていたのだった。

スワンソン・ファミリーは、アメリカでは1950年代に冷凍食品、ことに一世を風靡したTVディナーをクリエイトしたことで知られる存在。 TVディナーは、肉料理、野菜料理、パスタ等がカフェテリア・フードのようにコンパートメントに別れた容器に入った冷凍インスタント・フードで、 そのまま電子レンジに入れて、その容器からTVを見ながら食べるという当時のカルチャーを代表するフード。
そのスワンソン・ファミリーが1980年代に入って買い取ったのが、ナパ・ヴァレーの100エーカーのヴィンヤード。 それもナパの一等地、オークヴィルのオーパス・ワンとシルヴァー・オークの間という、考えただけでも 美味しいワインが出来そうな土壌で、「ナパ・ヴァレーで最高のメルローを造る」という目的でワイン・メーキングがスタートしたのが1985年のこと。
2003年からは、メルローの金字塔ワイン、シャトー・ぺトリュスの経営者、クリスチャン・ムエックスの下で働き、 その後、ドミナス、ケイマスといったカリフォルニア・カルトを手掛けてきた クリス・フェルプスをワイン・メーカーとして雇い入れ、評価を大きくアップさせているのだった。

モダン・ハウス・ワインは、スワンソン・ヴィンヤードのラインナップの安いラインで、1本25ドル。 100%メルローのワインで、飲み易いのに加えて、ボトルがユニークなので、オケージョンに合わせて、ラベルのメッセージを選べば、 ギフトにも最適。ホーム・パーティーなどに持っていけば、ゲストが持ち寄った数々のワインの中でも、 ボトルが最も目を惹くとあって、真っ先に開けて貰えるワイン。もちろんボトルのメッセージがカンバセーション・ピースになってくれるケースも多いのだった。




スワンソン・ヴィンヤードのユニークなところは、ジャン・フィリップ・デロームの他にも、 ケイト・スペードの夫で、小売のエキスパートであるアンディ・スペードや、個性派ショコラティエとして知られるヴォスジェ・オート・ショコラの オーナー、カトリーナ・マーコフ等ともコラボレーションをしていること。
なので、ナパのヴィンヤードの中でもちょっと異なるマーケティング・アプローチが行なわれているけれど、 現在は、スワンソン・ヴィンヤードのウェブサイトから直接オーダーをしないと、ワインが買えないシステム。 なので、アメリカ国内で今もワインを他州から買うことが法律で禁じられているアリゾナ、ニュージャージー等からは購入することが出来ないのだった。 アメリカ国内の送料は、1本で22ドル。でも4本オーダーすれば28ドルなので、そうすれば1本当たりの送料が7ドルに抑えられるのだった。

ところで、私はインテリア目的ではなく、センチメンタルな理由から 飲んだワインのボトルを取っておくけれど(写真上左)、 ワイン好きな人がやって来ると、興味を示して眺めてくれるのだった。
私がボトルを取っておくのは、とても美味しかったワイン、ボトルのデザインが好きで、捨ててしまうのは勿体無いと思うワイン、 そして特別なオケージョンで飲んだワインやシャンパン。 なので、バースデー・ボトルもあれば、初めてオークションで落札したワイン、友達が持って来てくれて美味しかったワインなどが ガチャガチャ並んでいるけれど、教訓として取ってあるのが1998年のオーパス・ワン。
このワインを開けたディナーの際、当時付き合っていたボーイフレンドと些細なことで喧嘩になった、というか相手が勝手に怒って、 ディナーを始める前に帰ってしまった訳だけれど、 すっかり食欲が失せてしまった私は、食事には一切手をつける気になれず、無理やり一口食べても、味が感じられないほど落ち込んでしまっていたのだった。
でもオーパスは高いので、勿体無いと考えて、「こんな気持で飲みたくない・・・」と思いながら 一口飲んでみたところ、 あまりの美味しさに 落ち込んで閉ざされていた味覚、嗅覚が全て戻ってきただけでなく、気分まで明るくなってきて、 「あんな最低のボーイフレンドに こんな美味しいワインを飲ませなくて本当に良かった!」 と心から思ったのだった。

このときに誓ったのが、世の中には、オーパス・ワンのような素晴らしいものが沢山あるのだから、下らないボーイフレンドに振り回されて、 落ち込んだり、悩んだりするのは止めようということ。 なので、1998年のオーパスのボトルを見る度に、 この時のことを思い出して 教訓にしているけれど、同時に 「どんな精神状態の時に飲んでも、本当に美味しいワインは美味しい」というのも 私が悟ったことなのだった。


Swanson Vineyards Website: http://www.swansonvineyards.com





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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