Mar. Week 4, 2013
” Shaved Foie Gras Torchon & Coddled Egg @ Ko”
” シェイブド・フォアグラ・トーション & コドルド・エッグ ”



今も ニューヨークで最も予約が取れないレストランといえば、何と言っても Momofuku Ko / モモフク・コー。
モモフク・コーがオープンしたのは2008年3月のこと。 これはセレブリティ・シェフ、デヴィッド・チャンが 第1店舗目のモモフク・ヌードル・バーをオープンした4年後の出店で、 一晩に12人の来店客に限定して、約10コースのテイスティング・ディナーのみをサーブするというコンセプト。 他では見られない、独創的な料理が味わえる ということで、あっと言う間にニューヨーカーの間で大評判になったのだった。

以来、モモフク・コーはミシュランの2つ星を獲得し、ニューヨーク・タイムズ紙のレビューでは、 最高4つ星中 3つ星を獲得しているけれど、同店は ウェブサイト上でのみ 受け付けている予約が、とにかく取れないことで知られる存在。
私も オープン当時、何度となくトライしたけれど 全く予約が取れないので、 すっかり諦めてしまい、ここ数年は同店に出掛けることなど 考えもしていなかったのだった。

ところが、3月上旬に日本から友達が来ることになって、グルメで、かつてNYに住んでいた彼女を喜ばせようと思って、 ふとトライしてみたのが、モモフク・コーのウェブサイト。
案の定、予約は一杯だったけれど、時々キャンセルが出るようなので、マメにチェックしていたところ、 友達の滞在期間中の6時50分に予約を取ることが出来たのだった。
予約が取れたとは言え、ウェブサイトでは 申し込んだ予約をホールドする 時間制限があって、 それまでに、ウェブサイトに書いてあるルールを読んで、それに同意して、クレジット・カード情報を入力しなければならず、 追い立てられるような思いで プロセスしなければならない状態なのだった。




予約もさることながら、同店はルールが沢山あって、予約をすっぽかせばクレジット・カードに1人150ドルのペナルティがチャージされるシステム。 また店内では、携帯電話を使用が許されないのはもちろん、写真撮影も不可。 時間に遅れそうな場合は 連絡を入れる必要があり、 入店時に 予約の確認メールをプリントアウトして持参するか、スマート・フォンで提示しなければならないとのことなのだった。

でも、オープンから5年が経過しているとあって、同店のレビューはフード・クリティックから 一般の来店客のものまで、 ネット上に溢れていて、 全メニューを写真付きで 解説しているサイトさえあったほど。
なので、私は予習十分の状態で同店を訪れたけれど、 その結果、メニューの組み立てが 過去5年で 殆ど変わっていないことを実感すると同時に、 頭で描いていた通りのテイスティング・メニュー過ぎて、 ガッカリはしなかったものの、さほど強烈なインパクトを 感じずに終わってしまったのだった。

またお刺身のマリネが2品出てきたけれど、生魚のクォリティについて言えば、 日本人の感覚だと、あまり大したものは使っていないというのが本音。 NYのトップレベルの寿司屋のもの比べたら、 ずっと下というのが実際のところなのだった。

ワイン・リストは思いの他充実していたけれど、ロアールの白ワインを頼んだところ、 オレンジの酸味がある ビールのような不思議なワイン。 これが飲んでいるうちに、とてつもなく飽きる味で、 口直しのワインをオーダーし直したほどなのだった。







テイスティング・メニューのコースは、小指の爪の大きさほどの、超小さい 突き出しが 3種類出てからスタートしたけれど、 私にとってのハイライトと言えたのは、写真一番上、今回のコラムのタイトルになっている、 ”シェイブド・フォアグラ・トーション (写真一番上左側)”と”コドルド・エッグ (写真一番上右側)”。
この2つは人気メニューなので、オープン当時からずっとフィーチャーされてきた料理で、 アレンジもされず、そのまま 過去5年間 出され続けてきたもの。
シェイブド・フォアグラ・トーションの正式名は、”シェイブド・フォアグラ・トーション・ウィズ・リースリング・ジェリー、ライチ & パインナッツ” というもの。 この料理は 写真で見ても、一体どんな料理なのか 全く分からなかったけれど、 オガクズのように振り掛けられているのは、凍ったキュアード(塩で漬け込んだ)フォアグラ。 これをゼスターを使って、 リースリング・ワインのゼリーの破片、ライチ、パインナッツのミックスの上に、パルメザン・チーズのように 振り掛けているのがこの料理で、スプーンでフォアグラを口に運ぶと、細かいフレーク状になったフォアグラが、舌の上でまったりと溶けて、 それがワインゼリー、ライチの甘さと、ナッツの香ばしさと絶妙にマッチすると同時に、それぞれの異なる食感が なんとも言えずに心地好くて、食べ終わった途端、寂しくなったほどに気に入ってしまったのだった。

もう1つのコドルド・エッグの正式名称は、”コドルドエッグ・ウィズ、ソービスオニオン、スウィート・ポテト・ヴィネガー、ハックルバック・キャヴィア、ポテトチップス&シャーヴィル” というもの。
その名の通りのものが 全てお皿の上に乗っているけれど、私にとって世の中で最も好きなコンビネーションの1つが、半熟卵とキャビア。 なので、この料理が嫌いなはずは無いけれど、ミニチュア・サイズのポテト・チップスが やはり食感に絶妙の変化を与えていて、 塩加減も抜群。キャビア自体は そんなに高級なものではないので、存在感は若干薄らいでいたけれど、 それでも、ウキウキしながら食した一品なのだった。




それ以外のコース・メニューについては、美味しかったけれど、「忘れられない味」とか、「味わったことが無い味」 というのではなくて、 もう同店に出掛けてから2週間が経過してしまったことがあって、正直なところ あまり記憶に鮮明に残っている訳ではないのだった。
だからと言って、お薦めしないという意味ではなくて、同店のテイスティング・メニューは 一度は味わっておくべきもの。

ニューヨークでは、高級レストランが食材のバジェットを省く目的も兼ねて、どんどんテイスティング・メニューのみ、それも多コースから構成される メニューになりつつあるのが実情。 多コースから成るテイスティング・メニューの問題点は、全てが美味しいという訳でないのに加えて、 美味しいものは 量が物足りなく感じられる一方で、 無くても良いと思える料理で お腹が満たされてしまうことで、 私がミシュランで3つ星を獲得している トーマス・ケラーのレストラン、パー・セを褒めないのは 正にその理由。
でも、モモフク・コーのテイスティング・メニューは、そんな料理の落差が 少ないということ、 さらに 私は予習をし過ぎて、あまりサプライズがなかったけれど、 それでも、変わった食材のコンビネーションなど、意外性のあるものを出している点で、他店より楽しめると思うのだった。

ちなみに同店のディナーのテイスティング・メニューは125ドルで、タックス、ドリンク、チップは別。全コースは約2時間掛けてのサーヴィング。
これがランチになると、何故かそれが160ドルになって、3時間掛かりで約15コースがサーブされるけれど、 同店がランチをサーブするのは、週末のみになっているのだった。

店内は、全く飾り気の無い 普通のカウンターで、シェフが調理する姿を眺めながらのダイニングだけれど、 このスタイルも 今は徐々に増えつつあり、 ブルックリンに昨年オープンしたブランカも、同様のカウンター席で、キッチン・スペースをずっと広くしたセッティング。 同店は、そこで 22コースを出しており、やはり 予約が なかなか取れない存在になっているのだった。

とは言っても、モモフクの凄いところは、ブームを常に先取りするのではなくて、ブームそのものをクリエイトする存在になっているところ。
したがって、モモフクが ボナペティ誌が選ぶ 「アメリカで最も重要なレストラン」に選ばれるのは、とても納得が行くところなのだった。


Momofuku Ko
163 1st Avenue
New York, NY 10003
Website:http://momofuku.com/new-york/ko/







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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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