Apr. Week 3, 2012
” Bayley Hazen Blue ”
” ベイリー・ヘイゼン・ブルー ”



つい最近私の女友達が、上手く行きそうだったボーイフレンドとの関係がダメになって 語っていたのが、 「どうして恋愛の世界には、スティーブ・ジョブスのように物事を簡単にするプロダクトを発案してくれる人物が現れないのか?」ということ。
確かに、アイフォンやアイパッドでいかに簡単にいろいろなことがこなせるかを考えると、 毎日当たり前のように使っているプロダクトの有難味を感じるけれど、 私が そうしたテクノロジー絡みの発明や発案以上に「凄い!」と思うのは、チーズやコーヒーといったものを初めて作り出した人々。
テクノロジーだったら、慣れてしまえば 無ければ無いなりに生きていけると思うけれど、 私の人生にチーズ、チョコレート、コーヒー、シャンパンを含むワインなどが存在しなかったら、 どんなに満たされない思いをするか ということは、考えたくもないこと。

それほどまでに、私の人生の中で フードは幸福感の重要なパーツを占めているけれど、 先日、友達と真剣に考えていたのが、「チーズとバターのうち、どちらかを生涯ギブアップしなければならないとしたら、どちらを選ぶか?」、「コーヒーとワインだったら、 どちらを選ぶか?」という問題。
私にとって前者の選択で、 仕方なくギブアップするのはバター。後者はもっと難しいけれど、 私はティー・ドリンカーでもあるので、コーヒーをギブアップすると思うのだった。
こんな考える必要が無いことを、真剣に友人と語り合っているのは 幸せな証拠と判断しているけれど、 バターをギブアップしてまでチーズを選ぶ私は、お気に入りのチーズショップで、毎日の必需品チーズと共に、 試したことが無い 新しいチーズを買ってみるのがレジャーの1つ。
必ずテイスティングをしてから買うので、そうそう間違いは無いけれど、 そんななかで、昨今の最大のヒットになったのがここに御紹介する ベイリー・ヘイゼン・ブルーなのだった。




ベイリー・ヘイゼン・ブルーをクリエイトしているのは、ヴァーモント州にある ジャスパー・ヒルという チーズ・ファーム。
日頃あまりブルーチーズを買わない私が、どうしてこれをトライすることにしたかといえば、 チーズ・ショップで 何を買おうかと迷っている時に、隣で ベイリー・ヘイゼン・ブルーをテイスティングしている人が居て、 一口食べた途端に 「Wow! Unbelievable!」 と 絶賛をしていたため。
なので、私もヘイゼン・ブルーのテイスティングをリクエストしてしまったけれど、私も全く同様のリアクションで、 1パウンド22ドルのこのチーズを、ハーフ・パウンド買って帰ることになったのだった。

ベイリー・ヘイゼン・ブルーは、熟成期間が3ヶ月。スタイルとしては、3大ブルーチーズ(ロックフォール、スティルトン、ゴルゴンゾーラ)の中で、イギリスのスティルトンに近いタイプ。 スライスしようとすると、ボロっと崩れてくるテクスチャーもスティルトンに似ているけれど、内側はスティルトンよりもドライで、 青かびが粉のようになっている部分さえあるのだった。
味わいとしては、へーゼル・ナッツやチョコレート、リコリスの風味が、チーズの塩味と控えめな青かび特有のテイストにバランスよく ミックスされたもの。このチーズはいくつかの賞を受賞している有名なチーズでもあって、生産量が限られているものの、 チーズ通の間では かなり知られているチーズ。
インターネットのレビューの中には、ハニー、もしくはデザート・ワインなど、 甘さを加えて味わうことを薦めているものが多いのだった。




私がチーズを楽しみ始めたのは、様々なワインやフルーツ、ジャムやコンポート、ハニー、ナッツ等との コンビネーションで味わうようになってからだけれど、 私がまずヘイゼン・ブルーでトライしたのが、ドライ・フィグ(イチジク)のコンポートと一緒にパンに乗せて味わうコンビネーション。
チーズの味わいを楽しみ始めて、フィグのジャムやコンポートが好きになる人は少なくないけれど、私もまさにその1人で、 私が特に気に入っているのはカリフォルニア州ソノマのレストラン、ザ・ガール&ザ・フィグが販売しているフィグのコンポート。 これはニューヨークでも一部のチーズ・ショップが販売している他、通販でも購入が可能なもので、 ヘイゼン・ブルーの持つナッツの風味や塩味がコンポートの甘味と絶妙にマッチするのだった。

また、先週にはオニオン・マーマレードとチーズのタルトを焼いて、パルメザン・チーズ、ゴート・チーズと共に、このヘイゼン・ブルーを使ったけれど、 チーズの味が複雑になって、これもまた大成功なのだった。
でも私がヤミツキになったのが、ヘイゼン・ブルーとチョコレートのペアリング。
そもそもヘイゼン・ブルーは、チョコレートの風味がする ユニークさがウリのブルー・チーズ。 なのでチョコレートとペアリングしたらどうなるだろう?と思って、まずはココア75%のダーク・チョコレートでトライしたところ、 思いの他チーズが美味しく感じられて、ワインだけでなく、エスプレッソ・マティーニや、普通のエスプレッソとも一緒に味わえることを 発見してしまったのだった。
でもそれよりも、絶妙のマッチだったのはローストしたカカオの粒が入った カカオ65%のチョコレートとのペアリング。 カカオ75%のチョコレートより甘いので、その甘さがチーズの塩味とマッチするのに加えて、ローストしたカカオの粒の クランチ感がなんとも言えない食感で、昨今はデザートや 夜のスナックに このチョコレートとヘイゼン・ブルーのマッチングを味わうことが非常に多くなってしまったのだった。




ところで、インターネットでベイリー・ヘイゼン・ブルーをリサーチしていて、偶然見つけたのが写真上のトリュフ。
これは、ジャスパー・ヒルと同じヴァーモント州にあるチョコレート・メーカー、ラッフィング・ムーンがクリエイトしている ヴァーモント・チーズ・トリュフで、内側のダーク・チョコレートのガナッシュの部分にヘイゼン・ブルーをミックスして、ソルト・チョコレートのような 塩味と、チーズの持つファッジーなスムースさが味わえるもの。
甘さが控えられていている分、ヘイゼン・ブルーの独得のナッツや青かびの深みが上品に加わっていて、 ポートワインと一緒に味わうチョコレートとしては、ユニークな傑作と言える仕上がりなのだった。
同チョコレートは、ニューヨーク・タイムズを始め、様々なメディアでも評価されていて、1人で食べてしまうよりは、 チーズとチョコレートが好きなグルメな人へのギフトにするべき代物。
お値段はハーフ・パウンド(約450グラム)で19ドル。それに送料11ドルが掛るので、決して安い買い物ではないのだった。
考えてみると、ベイリー・ヘイゼン・ブルーは1パウンドで22ドルであるから、チーズとしては安くはないけれど、 このトリュフに比べれば遥かに良心的なお値段。
なので、トリュフも美味しかったけれど、チーズを気軽に楽しみたい私としては、 やはり これからも お気に入りのチョコレートを砕いて、それにヘイゼン・ブルーを乗せて食べることになると思うのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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