May. Week 3, 2011
” Ceriello Fine Foods ”
” チェリエロ・ファイン・フーズ ”



人間の身体には異なる役割の200種類以上の細胞があって、それぞれサイクルは異なるものの、約3ヶ月程度で、 その多くの細胞が入れ替わっていると言われていて、3年が経過するとロングヘアの人の髪の毛以外は 全てが新しい細胞、すなわち新しい自分になっていると言われるのだった。 ちなみに、髪の毛の寿命は約6年と言われるもの。
科学的な立証には乏しいものの、この細胞の入れ替わりというのが、人の食の好みに少なからず影響を与える場合があると言われていて、 人が時に、特定の食べ物に凝ったり、逆にそれまで好きだった食べ物に突然拒絶反応を示すようになるのには、 この細胞の入れ替わりのサイクルと関連があるという。

そのせいなのかもしれないけれど、私が突然食べなくなってきたのが魚類。 これは日本の震災よりも前からの現象なので、放射線汚染を心配してのことではないけれど、 絶対にヴェガンやヴェジタリアンにはなれないし、なりたくない私が必然的に頻繁に食べるようになったのが肉類。
でもアメリカの肉というのは、必ずしも安全ではないのは周知の事実。 特に安価なビーフは、本来、草食でコーンなど食べない牛に、遺伝子組み換えが行なわれたコーンを劣悪な飼育環境で与え、 過度に太らせているので、脂肪分が多いだけでなく、味も悪く、しかも抗生物質やケミカルも含まれているという 考えただけで身体に悪い食肉。
なので、私はアッパー・イーストサイドやアッパー・ウエストサイドにショップを構えるシタレラというグルメ・グロサリー・ストアで頻繁に 肉を買っていたけれど、不便なロケーションにあるのが玉に瑕という感じなのだった。

そうするうちに、年明け直後に始めてソーセージを買ってみたのが、ここに紹介するチェリエロ・ファイン・フーズ。
同店はグランド・セントラル駅のマーケットの中にある食材店であるけれど、基本的にはイタリアン・ブッチャー(肉屋)。 パスタを作るためにモッツァレラ・チーズとブロッコリ・レイブが入ったイタリアン・ポーク・ソーセージを買ったけれど、 フレッシュで、美味しかった上に、お値段も安かったので、以来同店に戻って行っては、ありとあらゆる種類の肉をトライしてみるようになってしまったのだった。
ショーケースの中には、リブアイ、ニューヨーク・ストリップ、Tボーン、ロンドン・ブロイル、ハンガー・ステーキ等、 ビーフのバラエティに加えて、ヴィール(仔牛)、ポーク、チキンが並んでいるけれど、 1度だけ気に入らなかったのが、イチジクのソースでマリネしたポークチョップ。 でも、それ以外はどんな肉を買っても、味も質も良く、毎回満足するのがチェリエロ・ファイン・フーズ。 気に入らなかったポークチョップにしても、イチジクのフレーバーが不思議な後味として口の中に残るのが あまり好きでなかったけれど、 肉の質は非常に優秀なのだった。





同店にめぐり会ってからというもの、特に凝り始めたのステーキで、正直なところ、同店のニューヨーク・ストリップや28日 ドライエイジさせたリブ・アイを 自宅で焼いて食べるようになってからというもの、ピーター・ルーガーや ストリップ・ハウスといったニューヨークの人気ステーキ・レストランに行っても、大して美味しいと思わなくなってしまったのだった。
なので、ステーキ・ハウスに出かける楽しみがすっかり殺がれてしまったけれど、 チェリエロ・ファイン・フーズで最高級のリブ・アイを買うと、骨付きで2パウンド(約900g)を買っても56ドル程度。 この量をステーキ・ハウスでオーダーすれば90ドル。 しかもワインはショップの価格の3倍になるので、最高級の肉に相応しい インパクトと深みのあるカベルネ・ソーヴィニヨンをオーダーしたら、 ディナーは1人200ドルは覚悟。
でも、チェリエロ・ファイン・フーズで最高級のリブ・アイを購入すると、ステーキハウスの肉よりも味が良い上に、 かなり高いワインを飲んでも、2人分のディナーが1人分のステーキハウス・ディナーよりも安くなるのだった。

もちろん自宅で、ステーキを焼くためには肉に適したグリル・パンが必要であるし、正しい焼き方を知っていなければならない、 ステーキというのは、食材を楽しむものなので、料理の腕とはさほど関係が無いフード。
大切なのは、焼く前に肉を室温にしておくこと、焼く直前に、塩、それも上質のシーソルト、ブラック・ペッパーを手で肉に万遍なく擦り込むこと(振り掛けるのとは 全く味が異なります!)、最後に肉に少量のオリーブオイルを馴染ませること。
そして、肉はローズマリーとガーリックと一緒に焼くのが私の好みで、リブアイのように脂分が多い肉は、バターを使わない方がベターというのが 私の意見。特にチェリエロのステーキは肉のフレーバーが素晴らしいので、バターの味が加わらない方が、 肉のエキスの味が存分に楽しめるのだった、

私は、肉の焼き具合はレアが好みなので、鍋を熱くして、さっと焼き上げるのが大切だけれど、 肉はひっくり返す度に味が落ちるというのは、頭に入れておくべきこと。
そして焼きあがった肉は、ぬるく温めた皿にの上にスプーンを乗せて、約10分ほど置くのが、ステーキを美味しく食べるコツ。 お皿は熱くすると、肉の焼き具合が変わってしまうので、ぬるい温度にするべきで、スプーンを置くのは、 肉がべったり お皿に付着して、せっかく焼きあがったカリッとしたテクスチャーが損なわれるのを防ぐため。
そして約10分待つのは、肉の中に肉汁を閉じ込めるためで、焼きたての肉を直ぐにナイフでカットしてしまうと、最も美味しい肉汁がすべて 流れ出てしまって、味気ないステーキになってしまうのだった。

チェリエロのリブアイを完璧な焼き具合で食べると、特にステーキが好きな人ならば 極上の肉の味と共に ”至福の喜び” が味わえるもの。 しかも、肉としては高くても、ステーキ・ハウスに出かけるよりは 遥かに安いので、 スペシャル・オケージョンではなくても楽しめるのも魅力なのだった。
リブ・アイに限らず、チェリエロの肉は ポークでも、ビーフでも焼き方さえ気をつければ、肉自体の味が非常に美味しいので、 料理が上手くなったと錯覚してしまうほど。
チェリエロ・ファイン・フーズは、他にもフレッシュ・パスタ、チーズなど、様々なイタリアンの食材を売っているけれど、 パスタはまぁまぁで、チーズはお薦めしないというのが私の偽らざる感想。 同店ではとにかく肉を買っていれば間違いないし、同店の肉を食べなれてしまうと、スーパーに売っている プラスティック・ラップでパックされた肉が気持ち悪くてたべられなくなってしまうのだった。

そもそも、スーパーマーケットというものが世に出回る前は、肉というのは、肉屋に買いに行って、プラスティック・ラップではなく、 ワックス・ペーパーに包んでもらっていたもの。 アメリカでは、チェリエロでもシタレラでも、グルメ・ストアならば肉は、毎日フレッシュ・カットしたものを、 ワックス・ペーパーに包んでくれるけれど、ワックス・ペーパーだと2日、3日冷蔵庫に入れていても、肉の味がさほど落ちないという利点もあるのだった。


ところで、ステーキを食べる時は、同じ焼き具合の好みの人と一緒に食べた方が絶対に 美味しい思いが出来るというのが私の考え。
幸い、私の周囲はレアを食べる人が多いけれど、以前のボーイフレンドはウェルダン派。 なので、一緒にディナーをする時は非常に不便で、それだけでなく ボーイフレンドとしてもかなり劣悪なクォリティなのだった。
これに懲りたので、「ステーキはウェルダン」という男性には関わらないと決めたけれど、 食の好みが似ているというのは、人間性のコンパーティビリティのバロメータでもあるもの。
レアが好きな人間同士なら、ステーキも美味しいし、ディナーも楽しいのである。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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