June Week 1, 2014
” Hypnosis Session ”
” 自分の隠れた能力を引き出す ヒプノシス(催眠)セッション ”



先日、友人主催のパーティーに出掛けて、そこで初めて出会ったのが1年ほど前に知り合った女友達のご主人。 ファッションに気を使っている上に、長髪をポニーテールにしているという外観から、アーティストかと思ったら、 ヒプノシスト、すなわち催眠術師であるとのこと。
以前はマジシャンだったこともあるというその男性は、多くのマジシャン同様、大学では心理学を専攻していて、 タロット・リーディングもするという。 でも 今はヒプノシストとして、口コミで紹介されたクライアントだけのために セッションを行っていると話していたのだった。
私も、独学ではあるものの心理学はかなり勉強してきたので、彼と話し込んでしまったけれど、催眠術には掛かりにくいタイプであることを 自覚しているだけに、当初は彼とのセッションを受けることは全く考えていなかったのだった。 でも彼によれば 私はヒプノシスのセッションを受けることによって恩恵を受けるタイプとのこと。
そこで 「トリックでも、リーディングでも、何でも良いので、私がセッションを受けたくなるようなことを 見せて欲しい」と言ったところ、トランプの52枚のカードの中から1枚を頭の中に思い浮かべるようにと言われたのだった。 その時、私が思い浮かべたカードは、ハートのクイーン。
そして彼に すぐ横に置いていた私のバッグの下にあるカードを見るようにと言われたので、 バッグを持ち上げたところ、確かにトランプのカードが1枚あって、裏返してみると それはハートのクイーン。 彼はずっと 私と向き合った位置に座って、50センチは離れて話していたので、何時カードを置いたのかを尋ねたところ、 返ってきたのが「君と話しを始める前」という答え。これでビックリ仰天した私は、早速 彼とのセッションを予約するに至ったのだった。

彼のヒプノシスのセッションを受けるクライアントの多くは、何らかの問題の治療を目的とする人々。
最も一般的なのは、「タバコやアルコールを止めたい」、「コカインやマリファナ等の中毒を治したい」、 「食欲を抑えて体重を減らしたい」というようなもの。 私の場合、ショッピングや美味しいパンに対して中毒症状があるものの、これらは私にとって”プレジャー・ゾーン”。 すなわち治されたら、逆に人生の楽しみも奪われてしまうので、治療目的のセッションは必要なし。

そうでない場合、一体ヒプノシスというのはどんな使い道があるのかを知りたかったので、 彼に 私に適したセッションをデザインしてもらうことにしたのだった。






ヒプノシスというと、このページのトップのイメージのように懐中時計を目の前で振って 催眠状態に導くというイメージがあるけれど、この男性のヒプノシスは 目を閉じて、深く呼吸をしながら、彼が数える数字を聞いているだけ。 そして彼の指示に従って、指を鳴らす音が聞こえたら目を開いて、 次は彼の目をずっと見ながら、ゆっくり呼吸をするというようなやり方。
私は催眠術に掛かりにくいこともさることながら、催眠術に掛からない方法も以前習ったことがあったので、 セッションの一番初めに、彼が 「手がテーブルにくっついて離れない、手を持ち上げようとすれば するほど、テーブルに手がぴったりくっつく」という 催眠術を掛けてきた際に、コッソリそれに掛からない方法を試していたのだった。

その催眠術に掛からない方法というのは、「カウンター・ヒプノシス」すなわち、催眠術に掛からないように 自己催眠術を掛けるというもの。 この時、私が頭の中で行っていたカウンター・ヒプノシスは 「自分の手のひらの下に風船があって、それがどんどん大きくなっていって、 自分が何もしないのに手が浮き上がる」というもの。
これは実際に功を奏して 私の手が持ち上がったので、自分で行ったカウンター・ヒプノシスについて彼と話していたところ、 「君の手は、典型的なサイキックの手だ」と言われたので、少々意外に思ってしまったのだった。

そうするうちに、さらに深い催眠に導くためのルーティーンが始まって、 その時に彼が出してきたのが20枚のセレブリティの写真をフィーチャーしたポストカード。
その顔ぶれはミック・ジャガー、ジョン・レノン、マドンナ、ネルソン・マンデラ等。 そのうちの10枚を彼が手に持って、写真の顔が見えないように裏返しにしたまま、1枚ずつ私に差し出し、 それが生きているセレブリティの写真か、既に死去したセレブリティの写真かを、カードから感じるもので識別するようにと言ってきたのだった。

10枚の中には、何かを感じた時もあれば、カードを差し出す彼のボディ・ランゲージを見て決めてしまったもの、 頭の中でアレコレ考えながら決断したもの、迷った挙句適当に選んだカードもあって、 私は内心、正解率があまりに低くて、彼が失望するだろうと思っていたところ、 結果は全て正解。
次に残りの10枚のカードを渡されて、今度は彼のボディ・ランゲージ等の影響を受けないよう、 自分でカード持って、生きているセレブリティと死去したセレブリティに分けるように言われたのだった。
すると 自分で1人で分ける方がずっと難しくて、雑念を取り払おうとするものの、頭の中にいろいろな考えが入ってきて、 それと戦いながら やっとのことでカードを分けたところ、驚いたことに その10枚のカードも、1枚も間違えずに、 セレブリティをきちんと生死で分けていたのだった。





私がそんな芸当をやってのけられたのは、私が知らない間に催眠状態に陥っていたため。 普通に同じことをやったら、その正解率が大きく落ちるのはトライせずして分かること。
でも ヒプノシスト曰く、20枚全て正解だったという例は 極めて珍しいそうで このセッションによって、 私は 自分では自覚していないサイキック・パワーがあることを 悟らされてしまったのだった。

彼によれば セルフ・ヒプノシス、すなわち自分で自分に催眠術を掛けることによって 自分が持ちあわせているけれど、気付いていないパワーや、無意識のうちに使わないようにしている能力を 呼び起こすことが可能であるとのこと。 もちろん、そのためには訓練が必要になってくるけれど、 「カウンター・ヒプノシスがあれだけ出来れば、その才能はある」というのが彼の見解。
当初、カウンター・ヒプノシスが効を奏して、セッションのイニシアティブを握ったような思いさえ抱いていた私であるけれど、 この言葉を聞いた途端、結局は ヒプノシスで何が出来るかを私に教ようとする彼のシナリオ通りに 動かされていたことに気付いたのだった。

1時間の予定だったセッションは、終わってみたら30分オーバーで1時間半。 その間、睡眠状態に導くために目を閉じる時間はあっても、「眠っていて、何も覚えていない」というような時間は全く無く、 喋っているか、もしくは何らかのトライアルをしている時間でセッションが構成されていたのだった。
したがって、これまで人づてに聞いてきたヒプノシスとは全く異なる経験であったけれど、 とても興味深くて、知的欲求が満たされた爽快感があったと同時に、 自分の中に眠っているというサイキック・パワーを引き出したい意欲をそそられたのが同セッション。

セッションの一番最後のトライアルは、私がどんなものでも良いので、簡単なイラストを書いて、 彼がヒントも無しに 私が書いた通りのイラストを書き当てるというもの。 でもこのトライアルでは、私が彼に対してオープンになって、自分で描いたイラストについてのシグナルを彼に送らなければならない というものだったけれど、彼は見事に私のイラスト通りの、赤ワインが入ったワイン・グラスを描いたのだった。
彼は 私が描いたワイン・グラスの絵を見ながら、「君の人生には、ワインを飲みながらの、沢山の語らいがあるよ」と言っていたけれど、 ふと考えれば 過去1週間だけで、ワインを飲みながらの語らいが4回もあったので、それも大正解と言えるのだった。




執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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