July Week 1, 2011
” ABC Kitchen's French Toast ”
” ABC キッチンのフレンチ・トースト ”




私が以前からこのコーナーで書こうと思いつつ、写真が上手く撮れないので、諦めてきたのが ABC キッチンのフレンチ・トースト。
フレンチ・トーストは以前にもこのコーナーで、ノーマの ”チョコレート・デカダンス・フレンチ・トースト”をご紹介したことがあるけれど、 言ってみれば このフレンチ・トーストは、変わってはいるものの ”邪道” と言えるフレンチ・トースト。
それに比べて、ABC キッチンのフレンチ・トーストは、正統派のフレンチ・トーストでありながら、 他では食べたことが無いタイプのものなのだった。
写真だと、フレンチ・トーストというより、バサバサに乾いた肉のように見えてしまうけれど、 このフレンチ・トースト、外はカリカリで、中はふっくらしていて、パンの味わいが素晴らしいもの。
どうしたら、こんな風にフレンチ・トーストが焼けるのか?と不思議に思えてしまうほど、 他では食べたことが無いテクスチャーのコントラストで、メープル・シロップを掛けなくても、ほんのりした甘さだけで食べられてしまうもの。 サイドには、季節のフルーツが 時にソテーされた状態で、時にフレッシュな状態で添えられているのだった。

私は、このフレンチ・トーストを食べるために、同店に何度も足を運んでいるけれど、 一番 嫌なのは、一緒に出掛けた相手に「一口頂だい!」と言われること。
そのうちの1人は、私があげた1口があまりに美味しかったので、デザートの替わりにフレンチ・トーストをオーダーしていたけれど、 最近では、「人にあげたくないくらい好きだから、1口頂だい なんて言わないでね!」と先に釘を差すことによって、 貴重な一口を奪われないようにしているのだった。

「フレンチ・トーストくらいで・・・」と思う人も居るかもしれないけれど、 ABC キッチンのフレンチ・トーストの美味しさは かなり有名で、フード・ブログなどでも絶賛されているもの。
私自身、フレンチ・トーストが好きだという人に会うと、必ず同店のフレンチ・トーストを薦めるけれど、 実際に食べた人は皆、気に入って、感謝さえしてくれるのだった。




ABC キッチン があるのは、ブロードウェイの18丁目にある ABC カーペット&ホームというインテリア・ショップのビルの1階。
私は日本から友達がニューヨークに来ると、このABC カーペット&ホームに連れて行くことが多いけれど、その理由は日本には絶対にあり得ないタイプのお店であるため。 インテリア・グッズが古い建物の中に所狭しと並ぶ同店は、ガチャガチャし過ぎていて、買い物がし難いという人も居るけれど、 見ていて楽しいし、値段は高いものの、品揃えが とにかく豊富なのだった。
そんなインテリア・ショップ内のレストランということもあって、ABC キッチンのインテリアは、モダンでスタイリッシュ。 しかも、サステイナブル、オーガニックといったレストランのコンセプトが随所に反映されており、 シャンデリアはLEDライト、潅木のオブジェがアクセントになった店内は、山小屋のように 天井の骨組と柱のウッドがむき出しになっており、モダンでクリーンな印象を醸し出しているのだった。




ABC キッチンは、ニューヨークのセレブリティ・シェフ、 ジャン・ジョルジュ・ヴォングリヒテン(写真上)が2010年にオープンしたレストラン。
彼は マンハッタン内に複数のレストランを構えているけれど、 中でもトランプ・インターナショナル・ホテル内の ”ジャン・ジョルジュ” は ミシュランで3つ星、ニューヨーク・タイムズ紙で4つ星を獲得しているレストラン。
他にはフレンチ・ヴェトナミーズの”ヴォング”、ソーホーの”マーサー・キッチン” 、ミート・パッキングにある ”スパイス・マーケット ”、 かつてタイム・ワーナー・センター内にオープンし、直ぐにクローズしてしまったステーキ・ハウス ”V (ヴィー)”、 同じく既にクローズした ”66(シックスティ・シックス)” 、2010年にアッパー・イーストサイドの ザ・マーク・ホテル内にオープンした、”ザ・マーク・レストラン” などがあるけれど、 私はジャン・ジョルジュのレストランとは あまり相性が良くなくて、心から美味しいと思った経験は さほどないのだった。

彼の手掛けたレストランで、過去に美味しいと思ったのは、もう10年くらい前に出かけたラスヴェガスのホテル、ベラジオ内の ステーキ・レストラン、「プライム・ステーキハウス」と、 同じく90年代に出かけたアッパー・イーストにある小さなビストロ、 「ジョジョ」のみ。
最も価格帯の高い ”ジャン・ジョルジュ” にも数回出かけているけれど、いずれも高額なディナーを人に払ってもらったにも関わらず無感動。 そのうちの1回は、メインが塩辛くて、半分以上残してしまったのを覚えているのだった。 しかもその日はジャン・ジョルジュ本人がレストランに居て、常連客のテーブルを回って挨拶をする姿が見られていて、 「シェフが居る日なのに、こんな塩辛い料理を出すなんて、何て たるんだキッチンなんだろう」などと考えていたのだった。
それでも帰り際に、ジャン・ジョルジュ本人が寄って来て 「ディナーはどうでした?」と、握手をしながら訊いてきた時は、 思わず愛想よく 「It Was Great!」などと、心にも無いことを言ってしまったけれど、 ジャン・ジョルジュはハイヒールを履いた私よりもずっと背が低い、小柄な人物。 シェフというより、ビジネスマンという印象が強いというのが私の感想なのだった。

ABCキッチンは、そのジャン・ジョルジュのレストランの中にあって、 私が唯一頻繁に出掛けているレストランであるけれど、同店のエグゼクティブ・シェフ、ダン・クルーガーは、 ジャン・ジョルジュの弟子としてそのポジションに登りつめた訳ではなく、 ユニオン・スクエア・カフェやグラマシー・タヴァーンといった、 ニューヨークの長寿人気レストランを手掛ける ダニー・メイヤーの レストランで 長年働いてきた人物。
なので、ジャン・ジョルジュのクッキングよりも ずっとモダンかつシンプルで、良い意味で庶民的。 食材を生かした、ストレートな手法のクッキングだけれど、味覚にアピールするポイントを心得ていて、 率直に美味しいと思えるメニューを展開しているのだった。




ABCキッチンで 他に人気メニューとなっているのが、写真上左側のピーキー・トウ・クラブ・トーストと、写真上右のソルト・キャラメル・アイスクリームのサンデー。
ピーキー・トウ・クラブ・トーストは、カントリー・ブレッドのスライスの上に、 たっぷりカニを乗せたトースト。少し暖かいという温度でサーブされるので、口に運ぶたびにカニの良い香りがして、 塩加減が丁度良いこともあって、カニがとても甘く感じられるのだった。そのカニの味わいと トッピングのように ところどころに乗っているホームメイドのマヨネーズとの 味わいが絶妙なのがこの一皿。
レモンをたっぷり絞って食べるのが正解で、もうちょっと食べたいというところで、食べ終わる ポーション・サイズも魅力なのだった。

サンデーの方は、ソルト・キャラメル・アイスクリームのスクープにチョコレート・ソース、ポップコーン、ホイップ・クリーム、キャンディード・ピーナッツが添えられたもの。 私は レストランでアイスクリームをデザートにオーダーするのは個人的にはあまり好まないけれど、このソルト・キャラメルのアイスはとても美味で、 プレゼンテーションもスタイリッシュなので、同デザートが人気を博する理由はとても理解できるのだった。
でも、日によってはアイスクリームの塩加減がちょっと強めの日もあるとのこと。

これら以外にもABCキッチンのメニューには魅力あるディッシュが並んでいるけれど、 ブランチで同店を訪れると、どうしてもオーダーしてしまうのがフレンチ・トースト。
これは、私が子供の頃からフレンチ・トーストが好きだったということもあるけれど、 いずれにしても、フレンチ・トーストをオーダーしている限りは 他のディッシュがなかなかトライ出来ないので、 次回 同店に出掛ける際は、フレンチ・トーストがメニューにない ディナーで出かけようと 思っているのだった。


ABC Kitchen
35 E 18th St (Bet. Broadway and Park Ave),
Tel: (212) 475-5829





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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