July Week 5, 2016
”Mr. Robot ”
ミスター・ロボット


アメリカ人の友達と話すと、必ずといって良いほど話題に上るのが「最近何かお薦めのドラマってある?」という話題。
私はTVシリーズは人気が出たものや、友達に勧められたものを もっぱら天気の悪い週末のビンジ・ウォッチングでキャッチアップするタイプで、 「ブレーキング・バッド」は2日で4シーズンを観て、世の中に追いついたような状態。 ストリーミングやDVD録画の方がCMがカットできるので、時間を節約するためにも、私はリアルタイムでシリーズ録画しているドラマでも、 何本か纏めて週末に観ることが多いのだった。

その私がシーズン1をビンジ・ウォッチングして、 シーズン2からシリーズ録画をスタートしたのが「ミスター・ロボット」。 同番組については今年のゴールデン・グローブ賞のドラマ部門を受賞するまで 存在さえ知らなかったけれど、 7月にはTV界のオスカーと言われるエミー賞にも6部門ノミネートされており、これはHBOの 「ゲーム・オブ・スローン」に次ぐノミネーション。
アメリカのアマゾン・プライムでは、同番組のシーズン1が無料でストリーミングされていたので、 一気にその10エピソードを観終えた私は、すっかり主演のラミ・マレックのファンになってしまったのだった。





ラミ・マレックが演じるメイン・キャラクター、エリオットは昼はインターネットのセキュリティ会社で働くハッカーで、 社会不安障害を患っているため、誰かと話がしたくてセラピストにかかっているけれど、 そのセラピストも含めて人々の秘密や心の中をハッキングによって垣間見ているのが彼。
エリオットが勤めるセキュリティ会社のメジャー・クライアントは、世界の金融を牛耳るEコーポレーション(以下Eコープ)。 しかしながらEコープは、かつてエリオットが育ったニュージャージー州の工場で毒性の高いガス漏れ事件を起こし、 そこに勤めていた彼の父親や、同じセキュリティ会社に勤める女友達、アンジェラの母親を白血病による死に追いやっただけでなく、その後の集団訴訟でも 責任逃れをした因縁のある企業なのだった。 エリオットは、Eコープのシステムのサイバー・アタックを食い止めたことから、 Eコープの上層部に認められる一方で、その攻撃されたサーバーの中から謎のハッキング・グループ”fソサエティ”の存在を突き止めるけれど、 やがて謎の人物、ミスター・ロボットから そのfソサエティに加わるように勧誘されることになる。 fソサエティが企てているのは、Eコープにかつてないサイバー・ダメージを与えて、同社に対して世界中の大半の人々が抱える 住宅&学費ローン、クレジット・カードの借金等のデータを葬り去り、史上最大の富の再配分を行うこと。 シリーズ1はfソサエティがそれに成功するものの、含みを持たせた終わり方をしているのだった。
ちなみにEコープのモデルになっているのは、あの悪名高きエンロンで ロゴはウリ2つ。 またシーズン1のエピソード1のタイトルであると同時に、番組の最初の台詞である「hello friend」は、 様々なコンピューター・プログラムの最初のスクリーンに登場する「Hello World」を アレンジしたもの。そんな実世界のカルチャーが随所に盛り込まれているのが同番組なのだった。

いかにもハッカーという感じの黒いフーディーを着用して毎回のエピソードに登場するエリオットは、 多くのミレニアル世代同様、社交不安障害や日常のストレスを紛らすためにドラッグを常用しており、 彼のチョイスはモルヒネ。 それを鼻から吸引するシーンが頻繁に番組に登場しているけれど、ラミ・マリックがトークショーで語っていたところによれば 彼が撮影時に実際に吸引しているのは ヴィタミンBなど、スタッフが連日のようにバランスを考えて調合したサプリのパウダーとのこと。
私は「ミスター・ロボット」を観るまでラミ・マリックの存在は全く知らなかったけれど、 エリオットのキャラクターは本当にリアリティを感じさせる当たり役。 でもトークショーに登場した彼を見てちょっとガッカリしたのは、彼が演技をしていない時もエリオットと殆ど同じように喋るということ。
今や彼のヘア・スタイルは ミレニアル世代の男性が最もサロンでリクエストするもので、 ちょっとしたトレンドセッターにもなっているのだった。、





私が「ミスター・ロボット」を気に入った理由の1つは、同番組がニューヨークで撮影されていること。 今やニューヨークは税金を免除してハリウッドのドラマや映画のプロダクション誘致を行っているので、ジョージア州アトランタと並んで 映画やドラマのロケが近年増えているのは周知の事実。
でも「ミスター・ロボット」は普通の映画やドラマとは異なるニューヨークを捉えていて、その番組の性格上、ワシントン・スクエアやコニー・アイランドのボード・ウォーク、 Eコープの本社に設定されているレキシントン・アヴェニュー&57丁目のコーナーのオフィス・ビルなど、 見慣れた景色もダークなイメージで描かれているのだった。

ところで、「ミスター・ロボット」のクリエーターは誰かと思って調べてみたところ、サム・イスメールという脚本家上がりののプロデューサー兼監督。 昨年、女優のエミー・ロッサムと婚約をしていて、ラミ・マレック同様、エジプト系のアメリカ人。 当初、彼は「ミスター・ロボット」を映画として製作するつもりでプロジェクトを進めていたとのことだけれど、 それが分からなくも無いのは、少なくとも現時点ではシーズン1の前半が一番面白いと誰もが感じているため。
でもシーズン1を観終わる頃には、キャラクターに思い入れが出てくるので見続けずにはいられないのが同番組で、 正直なところ5エピソードを観終わった時点でのシーズン2は今ひとつ。やっと少し面白くなりそうな気配になってきたところ。
でも「ミスター・ロボット」の番組の人気はアメリカではどんどん高まる一方で、 特に巨大企業に反感を持つと同時に、何らかのデジタル・レボリューションを望んでいるミレニアル世代には大きくアピールしているのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。



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