Aug. Week 3, 2013
” Bespoke Jewelry ”
” ビスポーク・ジュエリー ”



今日、8月15日付けのニューヨーク・タイムズ紙のスタイル・セクションにフィーチャーされていたのが、 昨今、ビスポーク・ジュエリーをオーダーする女性が増えているという記事。
2008年のリセッション時には、売り上げが大きく落ち込んだと言われるジュエリー・ビジネスであるけれど、 これはリセッションだけでなく、ゴールドの価格高騰にも原因があると思われるのだった。 でも富裕層の間では すっかり景気が持ち直している現在では、ジュエリーの売り上げが伸びてきているとのことで、 服よりも遥かに長く身につけられる上に、ファイナンシャル・ステータスでもあるジュエリーに 人々が価値を見出す傾向は高まっているという。

そんなジュエリーの売り上げに貢献しているのが ビスポーク・ジュエリー。
ビスポークという言葉は、そもそもメンズのスーツやシャツなど、カスタム・メイドのクロージングに用いられた言葉であるけれど、 今では、自転車でもソフトウェアでも、特別仕様で作らせたものは全てビスポークと呼ぶようになって久しい状況。
これは、お金を掛けて 思い入れのある高品質の品物を手に入れて、それを長く使ったり、身につけたりするという 消費トレンドを反映したもの。 安い物を購入して、飽きたり、壊れたりしたら買い換えるという消費よりも サステイナブルと見なされるもの。
そんな風潮を受けて、今では多くのジュエリー・デザイナー達が ビスポーク・ジュエリーのオーダーを受けるようになっているけれど、 その過程は クライアントの希望を聞くためのミーティングや、 デザインの段階で クライアントのアプルーバル(承認)を得るためのプレゼンテーションなど、 時間と手間が掛っているプロセス。
でもその時間と手間は、商品の代金として加算されるので、デザイナー側にとっては利益率の高い ジュエリーが生み出されることになるのだった。




写真上は、トラディショナルなタイプのビスポーク・ジュエリーで、高額な石を用いて、 クライアントの好みを100%取り入れた 他にはないデザインをデザイナーがクリエイトするもの。
その結果2フィンガー・リングや四角いカクテル・リングなど、目新しいデザインが生まれたり、 従来からあるデザインのリングに、特別に取り寄せた石、カスタム・カットの石をセットするなどの試みが行なわれているのだった。

ちなみに写真一番上は、昨年からアメリカで、特にセレブリティやソーシャライトの間でもてはやされているナックル・リングと呼ばれるもの。
これは指の付け根ではなく、第一関節、第二関節につけるリングで、微妙なサイズや指の形にマッチしたシェイプをカスタム・オーダーするケースが少なくないジュエリー。 高額でゴージャスなものは、非常に目を引くのだった。
ナックル・リングは一見、とても非実用的に見えるけれど、付け心地は悪くない最新のジュエリー・トレンド。

もう1つ、ここ数年のジュエリー・トレンドと言えるのは ブラック・ゴールド。 キム・カダーシアンとクリス・ハンフリーが結婚した際に、クリスの結婚指輪がブラック・ダイヤモンドとブラック・ゴールドでクリエイトされていたけれど、 今やゴールドは、ホワイト、イエロー、ピンクだけでなく、グリーンやブラックにも出来る時代。
ブラック・ゴールドはブラック・ダイヤモンドとも、ホワイト・ダイヤモンドともデザインの相性が良く、ビスポーク・ジュエリーでも 頻繁に用いられるゴールドになっているのだった。




昨今オーダーされる ビスポーク・ジュエリーの中には、既に持っているジュエリーの石を使って、新しいリングをオーダーするケースも あるというけれど、こうしたケースでは、いかにも昔ながらのクラシックなデザインのジュエリーを モダンなスタイルに作り変える場合が殆ど。
石の代金が掛らないので、贅沢にゴールドやプラチナを使ったカスタム・デザインがオーダーできるのだった。

モダンなスタイルのジュエリーのトレンドの1つは、エコ・コンシャスなデザイン。
ナチュラル・モチーフを取り入れたり、あえてマットで磨いていないようなゴールドを用いたり、 ラスティック(素朴)なハンド・キャスティングの味わいを演出するといった、 トラディショナルで洗練されたビスポーク・ジュエリーとは一線を画すスタイルを、 あえて高額な石を用いてクリエイトするのが新鮮かつ、ジュエリーをアート作品のように捉えるムーブメントとして 人気を博しているのだった。

ビスポーク・ジュエリーがオーダーされるオケージョンで最も多いのは、エンゲージメント・リングのオーダーや アニヴァーサリー(記念日)・ギフトとしてのジュエリーのオーダー。
やはりアイテムではリングのオーダーが一番多いとレポートされているのだった。




ビスポークのニュー・ウェイブと言えるのは、写真上のようなファッション・ジュエリー系。
写真上、左上はメイン・ストーンのようなシェイプのホワイト・ゴールドのオクタングルの中央に、 ブラック・ダイヤのサイド・ストーンとホワイト・ダイヤのセンター・ストーンをフィーチャーした アールデコスタイル。
写真上、左下はプレシャス・ストーンの替わりにイエロー・ゴールド、ホワイト・ゴールドを石の形にして 埋め込んだリング。これらのモダンなリングは、トラディショナルなエンゲージメント・リングを好まない ジェネレーションYや、ゲイ・カップルに人気が高いスタイル。

写真上、中央は3レター・モノグラムのペンダントであるけれど、昨今セレブリティやTVパーソナリティが頻繁に つけているのが、このスタイルのペンダント。
そもそもモノグラムは、自分のイニシャルにカストマイズするものなので、全てビスポークということになるけれど、 ホワイト・ダイヤモンド、カナリー・ダイヤモンドなどをセットして、幾らでも高額にクリエイトできるのが ビスポーク。
昨今では、かつて「セックス・アンド・ザ・シティ 」で火が付いたネーム・プレート・ペンダントも復活の兆しを見せているけれど、 昨今のペンダントは ソーシャル・メディア時代を反映して、@マークを最初につけたツイッターのネームや、#(ハッシュ・タグ)を使った言葉など、 以前とはちょっと異なる展開になっているのだった。

更に、エコ・ブームを反映して クリスタルやボルケーノ・ストーン、クォーツなどをフィーチャーした 大胆で、個性的なジュエリーも昨今ではビスポークで製作されるもの。
アート・ピースのように、スカルプチャーを思わせる仕上がりであったり、マイクロ・パヴェのダイヤをあしらって高額に仕上げるなど、 ストアでは絶対に売っていないタイプをクリエイト出来るのはビスポークならでは。 これらは アート・イベントやラグジュアリーなバケーション先などで もてはやされる、 遊び心があるタイプ。 こうしたオケージョンでは、どんなリッチ・ピープルでも シリアスなハイエンド・ジュエリーよりも、 個性的で 見た目にインパクトがある ステートメント・ジュエリーを好む傾向が強いのだった。

ビスポークの魅力は、どんな価格帯で製作しても マス・プロダクション・ジュエリーとは 明らかに異なる ジュエリーが身に付けられることで、そんな特別な自分だけのジュエリーを好む女性が どんどんオーダーするようになっているのがビスポーク・ジュエリー。
でも前述のように 1点もので、デザイン料が加算されるので お値段は割高になりがち。 加えてビスポークで 一番失敗の可能性が高いのは 付け心地。 デザインにこだわるあまり、 付け心地が 十分に考慮されずに製作されるケースも少なくないのだった。
特にサイズが大きかったり、複雑なデザインのものは、 実際のライフスタイルの中で身につけるまで、付け心地が分からないので、 時に生じるのが、 デザイナーが仕上がったリングやネックレスを手直しするというケース。
そんなトラブルが起こったとしても、一度 買い取ったジュエリーを 付け心地に応じて直して貰えるというは、やはり贅沢と言えるのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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