Aug Week 3, 2014
” Charles James:Beyond Fashion ”
” チャールズ・ジェームス: ビヨンド・ファッション ”


私は、メトロポリタン美術館が毎年行う コスチューム・インスティテュートのエキジビジョンには必ず足を運ぶようにしているけれど、 何故か タイミングを逸して なかなか出かけることが出来なかったのが、今年の「Charles James:Beyond Fashion / チャールズ・ジェームス: ビヨンド・ファッション」。
チャールズ・ジェームスは、1940年代〜50年代に活躍したアメリカのクチュリエで、 私が彼の存在を知ったのは、写真下のセシル・ビートン撮影による あまりにも有名なヴォーグ誌のグラビア写真にフィーチャーされていたのが彼の作品であったため。
このセシル・ビートンの写真のオリジナルはモノクロで、40年代のヴォーグ誌に掲載されたもの。 同写真は、「ヴォーグ史上、最も美しいグラビア・フォト」といわれているけれど、 その中で、モデル達が優雅に着こなしているイヴニング・ガウンは、チャールズ・ジェームスのシグニチャーと言えるスタイルなのだった。

例年通り、5月から行われていた「ビヨンド・ファッション」であるけれど、それが 8月10日の日曜日で終了してしまうことを知ったのは先週木曜のこと。 そこで私は メトロポリタン美術館が午後9時までオープンしている金曜日の 仕事の後、ディナーの前という 慌しいタイミングで 出かけることにしたのだった。









同エキジビジョンが行われていたのは、今年からアナ・ウィンター・コスチューム・センターとネーミングされるようになったミュージアム内のスペースで、 アナ・ウィンターとは、「プラダを着た悪魔」のモデル・キャラクターとしても知られるアメリカン・ヴォーグ誌の編集長。
彼女は、毎年メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートの展示のサポートをしているのはもちろん、 そのオープニング・ガラでチェア・ウーマンを務め続けてきた存在。 今やコスチューム・インスティテュートのガラは、政財界、スポーツ界、映画、音楽を含むありとあらゆるエンターテイメント界と モデルやデザイナーを含むファッション業界、メディア業界のセレブリティを一堂に集めるメガ・イベント。
今年に関しては、そのアフター・パーティーが行われたスタンダード・ホテル内のエレベーターで、 ビヨンセの妹、ソランジュ・ノールズが ジェイ Zに殴りかかったエピソードが メディアに大きくフィーチャーされたため、 例年よりも ガラそのものに メディアや人々の注目が注がれない結果になってしまっていたのだった。

でもエキジビジョン自体は、チャールズ・ジェームスというデザイナーの知名度の低さとは裏腹に、 数多くの来場者を集めたことが伝えられていて、 その数は、コスチューム・インスティテュートのエキジビジョンの中では第3位。
私が出掛けてみて驚いたのは、どう見てもゲイではない、ファッションとはほぼ無縁という印象の男性が 同エキジビジョンをかなり真剣に見入っていたことで、いかにも旅行者という感じの男性に混じって多かったのが、 若く テック関係の仕事をしていると思しき男性。

それもそのはずで、今回のチャールズ・ジェームスの「ビヨンド・ファッション」のプレゼンテーションは、 そのクラシックなイヴニング・ドレスのショーイングにも関わらず、過去に無かったテクノロジーを導入したもの。
それぞれのドレスのディスプレー台には、カメラ兼スキャナーのようなガジェットと共に、大きめの縦長のスクリーンが装着されていて、 ドレスの説明がそのスクリーンで行われるシステム。
チャールズ・ジェームスが1940〜50年代にクリエイトした 構築的なシルエットが 如何に実現され、 どんなシェイプのファブリックを縫い合わせて その複雑なフォルムが作り上げられたかが 3Dの画像で、非常に分かりやすくスクリーンに映し出されているのだった。
なので、プロダクトやデザインのフォルムに興味がある人々、 それらの3Dビジュアル・プレゼンテーションに関心がある人々が、 ファッションというカテゴリーに捉われずに訪れていたのが今回のエキジビジョン。
したがって、”ファッションを超越した” という意味の 「ビヨンド・ファッション」というタイトルは、 ”言いえて妙”という印象なのだった。














さすがにチャールズ・ジェームスの作品は1940〜50年代にクリエイトされたとあって、現在のモデルに比べて 遥かに身長が低く、ボディが太めのモデル用に作られていたのも 印象的であったけれど、 それと同時に、微妙なカラーを打ち出すために スカートを7色のオーガンジーでレイヤーにしたり、 精巧なハンドステッチで 美しいドレープや、独特のシェイプを生み出したりという、クラフトマンシップも 私にとっては強いインパクトを覚えた部分。
会場が暗過ぎて、ドレスの色が良く見えなかった以外は、なかなか楽しめたエキジビジョンと言えるのだった。

ところで、過去のメトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートのエキジビジョンで最も 来場者が多かった第1位は、2011年に行われたアレクサンダー・マックィーンの”Savege Beauty / サベージュ・ビューティー”。 同エキジビジョンは、アレクザンダー・マックィーン死去の翌年に行われた回顧展であったけれど、 彼のドラマティックでシアトリカル、かつ アイデアとクリエイティビティに溢れた作品の数々は、やはり圧巻で 私自身、これまでのエキジビジョンのベストに挙げるのが ”サベージュ・ビューティー”。
メトロポリタン美術館が、期間を延長しただけでなく、閲覧時間も延長して夜中まで公開していたエキジビジョンは、 ”サベージュ・ビューティー”のみなのだった。

それに次ぐ第2位は、2005年に行われたシャネルのエキジビジョン。この中では、ココ・シャネルの作品と カール・ラガーフェルドの作品がテーマごとにミックスして展示されていたけれど、 1950年代、60年代のココ・シャネルの作品の方が、1990年代、2000年以降のカール・ラガーフェルドの作品よりも タイムレスに感じられたことが 強く印象に残っているのだった。

これに次ぐ来場者を集めたのが今回のチャールズ・ジェームスであったけれど、 これは展示作品そのものよりも、プレゼンテーションの斬新さがアピールした結果と言えるもの。
コスチューム・インスティテュートでは、これまでは特定のスタイルやデザイナーの作品本体にフォーカスしたエキジビジョンを行ってきたけれど、 今回のプレゼンテーションをきっかけに、今後はファッションのテクニカル面にフォーカスするというオプションも出てきたように思うのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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