Aug. Week 5, 2013
” Betony ”
”ビトニー ”



8月2週目に日本からグルメなお友達が来たので、彼女とのディナーのために予約を入れたのが 今回ここにご紹介する ” Betony / ビトニー ”。
同店はこの夏オープンしたばかりで、私が予約を入れた時点では ウェブサイトさえ きちんと立ち上がっていないような段階であったけれど、 料理とサービスの評価が高い上に、シェフとジェネラル・マネージャーは共に ニューヨークの一流レストラン、 イレブン・マディソン・パークの出身。 友人も私も、イレブン・マディソン・パークが大好きなので、興味津々で同店を訪れることにしたのだった。

ビトニーが位置するのは、バーグドルフ・グッドマンの並びで、ノブ 57 のはす向かいに当たるミッドタウンの57丁目。
ここは以前、CUBE New Yorkでも紹介したことがある Brasserie Pushukin / ブラッセリー・プシュキンというレストランだったロケーション。 私は プシュキン時代に ロシア人の友達のバースデー・ディナーで同店を訪れていたけれど、 ビトニーの インテリアは、ウッド・カーブやアンティーク・ブロックのエレガントな壁、ライム・イエローにライトアップされた バー・シェルフなどは プシュキン時代のまま。でも いかにもクレムリン的ロシアン・ゴージャスを感じさせていた ゴールドのスタチューや、巨大なシャンデリア、壁や天井に描かれた 宗教画のミュラルなどが取り去られて、 モダンなアメリカン・レストランに相応しいシックなインテリアにコンバートされているのだった。

プシュキン時代は、細長い店内の1階奥のエリアが ちょっとしたVIPセクションになっていたけれど、 ビトニーの場合、バー・カウンターより奥の 1階の真ん中のエリアが、プライマリー・シーティング。
同店にはメザニンもあるけれど、1階の方が ニューヨークのレストランにありがちな 来店客の心地好い喧騒が 楽しめるのだった。





ビトニーのシェフは、前述のように ニューヨーク・タイムズで4つ星、ミシュラン3つ星に輝く アメリカン・レストラン、イレブン・マディソン・パークで、 長年 エグゼクティブ・スー・シェフを務めてきた ブライス・シューマン(写真上、右側)。 ジェネラル・マネージャーも やはり以前 イレブン・マディソン・パークで マネージメントを担当していたイーモン・ロッキー(写真上、左側)。
なので、料理やサービスにおいて イレブン・マディソン・アベニューの影響を強く感じさせるけれど、 2週間前にはニューヨーク・ポスト紙が、そして今週水曜日にはニューヨーク・タイムズ紙が、それぞれ ビトニーに対して最高4つ星中、3つ星という高い評価を与えているのだった。

もちろんその高評価の最大の要因になっているのが、ブライス・シューマンの ピュアで、洗練されたアメリカン・キュジーヌ。 同店はオープンしたばかりなので、未だメニュー・アイテムは少なくて、 3つのカテゴリーから料理を選ぶシステム。
1つ目はフィンガー・フード。すなわち指で摘めるスナックのようなディッシュで、 フレンチ・レストランの アミューズブーシュ よりは ボリュームがあるという感じコース。 バー・カウンターで、カクテルを楽しむ人には 丁度良いお摘み という感じのディッシュが並んでいるのだった。

そして2つ目のカテゴリーは、アペタイザー、3つ目がメインであるけれど、 ポーションはそれほど大きくないので、友人と私はフィンガー・フード1皿をシェアして、 それぞれ アペタイザーとメインをオーダーして丁度良い感じ。
「デザートもシェア・・・」と思っていたら、さすがにオープンしたての大切な時期とあって、 サービスで もう1皿デザートが出てきて、自分が何をオーダーしたのか 分からなくなってしまったけれど、各メディアのレビューアーが評価する通り、 デザートも とても軽くて美味。
最後には コーヒーと一緒に、マカルーンやホームメイドのキャラメル等を出してくれた他、 食後酒のサービスもあって、アラン・デュカスのディナーを思い出してしまったのだった。

でもビトニーのお値段は、アラン・デュカスや イレブン・マディソン・パークに比べると 遥かにリーズナブル。 フィンガー・フードが7〜13ドル、アペタイザーが14ドルからで、 フォアグラがアペタイザーの最高額で 28ドル。
友人と私はメインにポーチト・ロブスターと、グリルド・ショート・リブをオーダーしたけれど、 お値段はそれぞれ36ドル、29ドルで、 ポーチト・ロブスターは 同店で最も高額なアイテムなのだった。







写真上のように、地元の素材を生かしたデリケートで洗練された モダン・アメリカン・キュジーヌを、見目麗しい盛り付けで 提供する手法は、イレブン・マディソン・アベニューのシェフ、ダニエル・ハムの影響を強く垣間見せるけれど、 ビトニーのディッシュは、ピンセットで盛り付けながら ディスプレーをミリ単位までコントロールする イレブン・マディソン・アベニューに比べると カジュアルなスタイル。
でも素材本来の持ち味とハーブやスパイスを見事にミックスすると同時に、全ての素材を 完璧なコンディションに調理するブライス・シューマン手腕は さすがの一言で、 「このお値段で、ここまで楽しませてくれれば 大満足!」と言えるのがビトニーなのだった。

友人と私が同店で、唯一 つまずいたのはワイン。
ビトニーの ワイン・ディレクター、 ルーク・ウォーラーもイレブン・マディソン・アベニュー出身なので、 ワインリストも楽しみにしていたけれど、「夏なので白!」ということで ホワイト・ワインをチェックしていたところ、目に留まったのがゲヴェルツトラミネール。
私は個人的にオーストリアのゲヴェルツトラミネールが大好きだけれど、それをワインリストに加えているレストランは ニューヨークには殆どないのが実情。そこで早速オーダーしようとしたけれど、ゲヴェルツトラミネールは気をつけないと レギュラー・ワインにリストされていても デザート・ワイン(アイス・ワイン)並みに甘い場合があるので ウェイターに尋ねたところ、 「ドライだから大丈夫」という返事。
ところが テイスティングをしてみると、とてもディナー用のワインとは言えないような甘さ。 なので、悪いとは思ったけれど そのボトルをお断りして、 ドライで、ミネラルやフラワーのフレーバーが感じられるホワイトを持って来てくれるように頼んだのだった。 ところが2本目に出てきたのは、 それよりも甘そうな アルザスのゲヴェルツトラミネール。 実際に テイスティングしてみると まさにその通りで、 正直なところ 「何て要領を得ない ワインの選択・・・」と、心の中で思ってしまったのだった。

次に出てきたワインも、あまり美味しいとは言えなかったものの、さすがに3本目になると 「レストラン側に悪い」と思う気持が働いて、 友人も私もOKを出してしまったのだった。
したがって、料理ほどは楽しめなかったのがワインであったけれど、ワインのやり取りをしている最中でも、サーバーの感じはとても良くて、 サービスに関しては終始、非常に優秀。
それと同店では、先ずパンの替わりに フラットに焼いたチーズと、揚げたパスタのスナックが出てきて、 その後から温かいパンのロールが出てくるけれど、これがどちらも美味。 特にパンは とても美味しくて、「買って帰れるものなら、そうしたい・・・」と真剣に思ってしまったのだった。

店名の ”Betony / ビトニー” は、何らかの意味のある言葉と NY をくっつけたものかと思いきや、ハーブの名前なのだそう。
「また同店に足を運びたい!」と思ったけれど、NYタイムズ紙が3つ星を与えると、途端に予約が取り難くなるのが ニューヨークのレストランの宿命。 でも、私が訪れた経験からは 「同店の3つ星評価は、非常に納得!」と 心から思うのだった。

Betony
41 West 57th St. (Bet. Avenue Of The Americas & 5th Ave.) New York, NY 10019
Tel: (212) 465-2400
ウェブサイト:betony-nyc.com









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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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