Sep. Week 1, 2011
” Bialetti Moka Express ”
” ビアレッティ・モカ・エクスプレス ”



先日、友に連れられて イタリア人のカップルの家のディナーに出掛けたところ、最後に出てきたコーヒーがあまりに美味しくて、 コーヒーにかなり煩い私としては 何としてもその淹れ方のコツやコーヒー豆の種類を知ろうと、 ホストを質問攻めにすることになってしまったのだった。
このイタリアンのカップルが出してくれたコーヒーは、フランスやイタリアでコーヒーをオーダーすると出てくる ほぼエスプレッソと言えるコーヒーで、カップに注いでいる時の香りから、 一口飲んだ味わい、舌の上に残るアフターテイストまで、芸術的とも言える美味しさ。 加えて、デザートとして出てきたレモン・アイシングのスポンジ・ケーキとの相性も抜群で、 以前 よくエスプレッソにレモン・ピールを入れて飲んでいたことを思い出してしまったのだった。

私は、ごくたまにカプチーノやカフェ・ラテを飲む場合があるけれど、それ以外はコーヒーをブラックで飲むのが常。なので、薄いコーヒーや、 濃いだけで風味が無いコーヒー、コーヒー・メーカーで作り置きしたようなコーヒーを毛嫌いしていて、 さらに言うならば、紙コップや、フォーム状のカップでコーヒーを飲むのも嫌いなのだった。
自宅では、コーヒーはエスプレッソ・マシンで淹れて、飲む度に一杯分だけ作るけれど、 私の1杯は マグカップの一杯なので、エスプレッソのショットだと約3倍分を作っている計算。

コーヒー豆は、ゼイバースのダーク・エスプレッソか、フェアウェイのイタリアン・ローストと決めていて、 豆の状態で買ってきて、大体3日分程度を纏めて挽いて、エアタイト・コンテナに入れてから冷凍庫で保存するけれど、 私の知人によれば、豆の状態で保存するのは冷蔵庫が望ましく、挽いた状態で保存するのは冷凍庫の方が好ましいとのこと。 これがウソか本当かは知らないけれど、それを鵜呑みにした私は、もう10年以上、豆を冷蔵庫で、挽いたコーヒーは冷凍庫で保存しているのだった。




ところで、イタリア人ホストは、私同様、フェアウェイのイタリアン・ローストの豆を使っていて、 やはり2日分程度を纏めて挽いているとのこと。
でも、 彼らは水道水は使わず、ボトルド・ウォーターを使ってコーヒーを淹れることで、これは私と異なる部分。 とは言っても、必ずしもそれが美味しさの秘訣とは言えなくて、というのも 私のアパートは 水道水がかなり美味しいと評判なのだった。 加えて、私自身、デザイナーズ・ウォーターでコーヒーを淹れた経験は何度もあるけれど、 特筆すべき違いが出たことが無いのだった。
そもそもニューヨークの水は、「水のシャンペン」と言われるほど 美味しいと言われていて、一度茹でてから焼き上げるベーグルが ニューヨークで美味しく仕上がるのは、「茹でる水が違うから」と指摘されるほど。 でも、建物の中のパイプが古かったり、カルキ臭い水道水の場合は、ボトルド・ウォーターを使った方がベターなのは明らかなのだった。

私とイタリア人ホストのコーヒーの明らかな違いは、私がエスプレッソ・マシーンを使っているのに対して、 彼らがオールドファッションな、ビアレッティ・モカ・エクスプレスを使っていること。
ビアレッティようにガス台の上で使うエスプレッソ・マシンのことは、イタリアでは Moka machine/モカ・マシーン (この場合のモカのスペルは"Mocha"ではなく、"Moka"が正解) と呼ばれるもの。 中でも、ビアレッティ・モカ・エクスプレスは 市場を独占していると言っても過言ではないほど、 ガス台でエスプレッソを作る人なら 誰もが愛用しているもの。
様々なブランドが、同様の商品をデザインを変えて出しているけれど、ビアレッティの圧倒的な普及率は変わることが無いのだった。 それどころか、ビアレッティ以外を使っていると ”邪道” というイメージさえ与えてしまうほどで、価格が安い上に、長年決して変わることのないデザイン、 確実に美味しいコーヒーが味わえる信頼度から、ことにイタリア人など コーヒーに煩い人々が好んで愛用しているのがビアレッティなのだった。

ビアレッティでコーヒーを作るメカニズムは 至ってシンプルで、サイフォンでコーヒーを淹れるのと全く同じ。 ポットに水を入れて、フィルター・カップにコーヒー・パウダーを入れて火に掛けるだけ。 やがて沸騰した水がフィルター・カップに入ってきて、コーヒーが出来上がるという仕組みなのだった。
ビアレッティのモカ・エクスプレスには、2カップ用から12カップ用まで7種類のサイズがあるけれど、 イタリアン・ホストに言わせると、6カップより大きいサイズでは あまり美味しいコーヒーが出来ないとのこと。 また、ビアレッティは魔法のマシンではないので、コーヒー豆を厳選しなければ 決して美味しいコーヒーができないのも当然のこと。

さらにモカ・エクスプレスは水で洗うのみで、決して洗剤で洗ってはいけないと言われているもの。 ましてやディッシュ・ウォッシャーに入れるなどご法度。 これはエスプレッソ・マシンのメタル・フィルターも同様で、私自身エスプレッソのフィルターは一度も洗剤で洗ったことが無かったのだった。
エスプレッソ・マシンとビアレッティのその他の共通点としては、豆を細かく挽きすぎてはいけないということ。ミディアム・グラインドが理想的で、 フィルター・カップにコーヒー・パウダーを入れたら、それをプレスしてはいけない という点も 同じなのだった。
業務用の大きなエスプレッソ・マシンを扱う際には、コーヒー・パウダーをフィルターに入れてから、強くプレスしている様子をたまに見かけるけれど、 業務用も含め、多くのマシンはコーヒー・パウダーをプレスしない方が、美味しいコーヒーが出来るという。




ビアレッティのモカ・エクスプレスの使用で気をつけなければならないのは火加減。
弱火でゆっくりと水を沸騰させた方が 美味しいコーヒーを味わえるとのことで、これを忠実に実践すると、 エスプレッソ・ショットの4杯分を作るのに、10分程度掛ることもあるとのこと。 でも、確実にそれに見合うだけの味が期待できるという。
とは言っても、せっかく出来上がったコーヒーが煮立ってしまったら、風味が失われるので、 ビアレッティを使う時は、付きっ切りでコーヒーを淹れなければならないというハイメンテナンス。
それに比べて、エスプレッソ・マシンは水を注いで、コーヒー・パウダーをフィルターにセットすれば、あとは自動的に カップに注いでくれる上に、そのコーヒーが吹き出るノイズで出来上がったことが直ぐに分かるのだった。

なので、ビアレッティは 忙しいウィークデイの朝には不向きな コーヒー&エスプレッソ・メーカー。
でも、時間に追われない週末の朝や、ディナーの後のコーヒーであれば、 多少時間が掛っても、美味しければ、美味しいほど有難いので、そういう時には弱火の火加減で、タイマーを使って ビアレッティでコーヒー&エスプレッソを作るのは、お金の掛らない贅沢と言えるもの。
ちなみに私が購入したビアレッティは6カップ用で、お値段はエスプレッソ・マシンより遥かに安い29ドルなのだった。

ビアレッティは、使用頻度が高ければ高いほど、美味しいコーヒーが出来るとのことだけれど、 私の場合、コーヒーは朝食時と夕食後に1杯ずつ飲むだけ。
私はソーダなど、カフェイン入りのソフトドリンクは飲まないけれど、ティー・ドリンカーではあるので、 カフェインの摂取量に気をつけているのが、コーヒーを1日2杯に制限している理由。 コーヒーは 10杯飲んだら、オリンピックのドーピングに引っかかると言われるほどであるから、ある種の興奮剤。 なのでカフェインを多量摂取して エナジー・ソースにしていると、そのツケが老化のスピードアップという形で回ってくることになるのだった。
特にドライ・スキンの人は、カフェインを取り過ぎると、肌の乾燥に益々拍車が掛ってしまうとのこと。 でも、コーヒーは食後の消化を助ける働きもあるので、適量を摂取している分には 健康へのメリットがあるのだった。

私は夜眠る直前でも平気でコーヒーを飲んで、あっという間に眠ってしまう反面、コーヒーを飲んだからといって シャキッと目が覚めることも無いので、 カフェインに影響されにくい体質であると自覚しているけれど、 私の周囲には、「若い頃は何時コーヒーを飲んでも眠れたけれど、気付いたら、夜のコーヒーで眠れない体質になっていた」という人が 割りに多くて、かつては「ディカフェなんてコーヒーじゃない」と言っていたような友人が、「午後3時以降はディカフェしか飲まない」などと言うようになっているのだった。
でも、医学の専門家に言わせれば、突然 コーヒーを飲んだら眠れなくなった人が、コーヒーを飲まなくても眠れない夜が多いという場合、 その原因はカフェインよりも エイジングとストレス。 とは言っても、自分がコーヒーを飲んだら眠れないと思い込み始めると、その精神的なプラシーボー効果で眠れなくなるケースもあるとのことなのだった。

ところで、先述のようにビアレッティは使用頻度が多ければ多いほど、美味しいコーヒーが飲めるけれど、 逆に暫く使ってなかった場合は、いきなり美味しいコーヒーを淹れようとしても、そうは行かないという。 その場合、1度薄いコーヒーを作って、それを捨ててから、 新たに 本番のコーヒーを作り直す必要があるとのこと。
また、購入後に初めて使う時も、最低2〜3回はウォームアップ・セッションをして、そのコーヒーを捨てて、 新たにコーヒーを淹れなければ、ビアレッティの本当の美味しさが味わえないのだった。
したがって、そうまでして使いたい人のみが 使うべきなのが、ビアレッティと言えるのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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