Sep. Week 1, 2015
” Christian Louboutin Lipstick ”
クリスチャン・ルブタン リップスティック


今週、ニューヨークのファッション・ウィークを直前に控えて、発売になったのがクリスチャン・ルブタンのリップスティック。
その斬新なデザインが注目を集めているラグジュアリーなリップスティックは、 メタル・ブレット・スタイルで、トップに装着されているループにリボンやチェーンを通せば、 ペンダント・ヘッドにもなるというもの。 「リップスティックがバッグの中にいつも隠れている必要は無い」というコンセプトから生まれたこのプロダクトは、 早くも ”史上、最もスタイリッシュなリップスティック”とメディアに賞賛されているのだった。







私が個人的に最も驚いたのはそのお値段で 何と課税前で90ドル。 この価格は、アメリカではシャネルのリップスティックを2本買っても、ボビー・ブラウンを3本買っても、クリニークを5本買っても、お釣りが来る金額。
では何か特別のフォーミュラが用いられているのかと思って インフォメーションをチェックしたけれど、そういう訳でもなく、 このお値段は、クリスチャン・ルブタンというブランドのプレステージと、パッケージから来ていると思しきものなのだった。
したがって、リップスティックにこのお値段を支払うかは、クリスチャン・ルブタンというブランドを 何処まで信仰しているか?ということになるけれど、 クリスチャン・ルブタン側が、昨年のネールに続いて、この秋にはリップスティックの発売に乗り出したというのは、 非常に理にかなったビジネス戦略。
というのも世の中は、どんどんミドル・クラスが減っているので、かつては年に1足程度 頑張ってルブタンを買っていたような女性が どんどんルブタンに興味を示さなくなっている一方で、ソーシャライトやファッション・エディターまでもが 昼間はフラット・シューズやスニーカーを履くようになっているので、 ルブタンに限らず、ラグジュアリー・ブランドの顧客層はどんどん減っていく一方。 また、ファッション関係者やセレブリティにとって、 このところヒールを履くオケージョンではヴァレンティノのロックスタッズが ファースト・チョイスになっているのだった。

したがって、富裕層のみをターゲットとした高額シューズ・マーケットの拡大は望めないものの、 ルブタンというイメージを崩さない、価格帯を落とした普及型プロダクトであれば、通常ルブタンが”顧客”と呼ぶ客層以外にもアプローチできるのは当然のこと。
90ドルというお値段はリップスティックとしては超高額でも、クリスチャン・ルブタンとしては超安価。 しかも通常のリップスティックだと、シャネルでもディオールでも バッグの中に入っているだけなので、見せびらかすことが出来ないけれど、 このリップスティックなら、ペンダントにすることによって ブランド・ステータスを誇示することが出来るように工夫されているのだった。

実際に 多くのラグジュアリー・ブランドにとって、その売上げの大半を占めているのは、ハイエンド・ファッションや超高額バッグ&シューズではなく、 フレグランスや財布、キーホールダー、サングラスといった 一般の人々に手が届く価格帯のプロダクト。 このことは、ラスヴェガスのカジノ・ビジネスが、ポーカーに5000万円を賭けるような少数のハイローラーよりも、 スロットマシーンやルーレットで200ドル負けて帰って行く 一般庶民からの売上げで成り立っているのと全く同様。
すなわちクリスチャン・ルブタンも、このご時勢でビジネスを拡大していくためには、 グッチの財布やキーホールダー、シャネルのフレグランスに匹敵するような プロダクトが必要であることは明らかなのだった。





ところで、ルブタンのリップスティックには、シアー・ボイル、ベルベット・マット、シルキー・サテンという3種類のテクスチャーがあり、 全38色のカラーラインナップ。 3つのテクスチャーに唯一共通して存在するカラーが、ブランドのシグニチャー・カラーでもある ”ルージュ・ルブタン”。
”ルージュ・ルブタン”のみ、容器がブラックが基調になっているけれど、それ以外は全てゴールドが基調。 容器のデザインは、3種類のテクスチャーで それぞれ異なっていて、シアー・ボイルはリップスティック本体に模様が入ったデザイン。 シルキー・サテンは本体がピカピカのポリッシュ素材、そしてベルベット・マットは艶消し素材が用いられているのだった。

果たして、このリップスティックを本当にペンダントとして首から下げる人がどの程度居るかは、 今後のお楽しみであるけれど、私が個人的に気に入ったカラーは、シアー・ボイルの"You You"というワイン・レッド。
私はローダンのスキンケアを使い始めてからというもの、ファンデーションをつけなくなったので、マットのリップスティックだと 肌とのバランスがトゥー・マッチ。 なので昨今はシアー・テクスチャーでインパクトがある色を選ぶ傾向にあるけれど、"You You"は そんな私の秋冬のメークにピッタリのカラーだと思っているのだった。

Will New York 宿泊施設滞在


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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