Sep. Week 2, 2013
” Decisionmaker ”
”デシジョンメーカー ”



人間が知らない間に1日に500〜1000回行なっていると言われるのが デシジョン・メーキング、すなわち決断を下すという行為。
デシジョン・メーキングは 朝、歯を磨く前に新聞を取りに行くか?、 雨に備えて傘を持っていくか?、家を出る前に靴を磨くか?、駅まで自転車で行くか、歩いて行くか?、 といったことから、その日着る服、食べる物、その日にコンタクトする友達、 その友達と出掛けるレストランや映画など、日常生活の様々な側面について回るもの。
また自分では、デシジョン・メーキングをしているという意識が無くても、 コーヒーにミルクをどれだけ入れるか?、デスクの何処にコーヒー・カップを置くか?、 苦手なスタッフと顔を合わせないためには何時カフェテリアに行くのが良いか?、 2分遅れている腕時計を今すぐ直すか? 等、知らない間に沢山の決断をしているのが 人間の生活。 もちろん、職業によって その決断の回数が増える場合も多いけれど、 知らず知らずのうちにやっているデシジョン・メーキングでも、 脳の負担やストレスになっているのは言うまでもないこと。
したがって、人間は楽をするために 知らず知らずのうちに 決断を避けようとする傾向があるという。

相手に意見を求められて「何でも大丈夫」、「どちらでも結構です」という返事をするのは、 自己主張を控えて、相手を気遣うことだと考える人は少なくないけれど、 実際には 頭で考えて決断を下すのが面倒なので、決定を相手任せている場合が殆ど。 意見を求めている側にしてみれば、何らかの決断を下すための意思表示をしてもらった方が よほど有り難いと思っているケースが非常に多いのだった。




人間が決断を下し易いのは、損得がはっきりしている場合。
例えば、何種類も並ぶエクストラ・ヴァージン・オリーブ・オイルの中から1本を選ぼうとした場合、 値段の割りに容量が多いもの、ほぼ同じ値段でもオーガニックでコールド・プレスである等、 条件で比較して 損得を判断できる物については、ストレスを感じることなく決断を下せるのだった。

逆に難しいのは、どちらを選んでも大差無い場合や、何を優先して選ぶべきかが定かでない場合。 この秋、ブルーのジャケットを買うか、パープルのジャケットを買うか?というような、 似たようなショッピング・アイテムの選択は、手持ちの服とのコーディネートを考えても、 着て行く オケージョンを思い浮かべても、決断が下し難いもの。
また 仲の良い友達へのギフトを選ぶ際に、明らかに相手が喜んでくれる物を選ぶか?、それとも自分の財布の中身を優先して選ぶべきか?で迷うのは、 ギフト選びを相手本位で行なうか、自分本位で行なうかが 定まっていないために起こる状況。

さらに誰にとっても決断が難しいのは、欲望と正義の間で下す決断。
超高カロリーで抜群に美味しそうなデザートの誘惑に屈するか?それを我慢してヘルシーなサラダを食べるか? というような決断の場合、 デザートの誘惑やそれを食べたい欲望が強力であるために、 頭ではどちらが正しく、自分のためになるかが分かっていても、正しくない選択を 正当化する理由がどんどん頭の中に沸いて来て 決断を鈍らせるのだった。
すなわち 「明日ワークアウトをすれば大丈夫」、「今日このデザートを食べたら、それが最後」 というような考えが、サラダを食べた方が健康的と認識している自分自身を説得に掛るので、 結果的にどちらを食べたとしても、決断に時間を要する場合が多いのだった。




世の中には そもそも決断が下せない優柔不断な性格の人が居るけれど、優柔不断でなくても 寝不足というのは決断力が鈍る原因になるもの。 逆に決断を下すのに適しているのは、1日の時間の中では午前10時前後。 夜間勤務をしていない限りは、 この時間帯が1日の中で 最も脳が活性化している時間なのだった。
そうでない場合は、有酸素運動をした30分後が、脳がシャープになって、決断を下し易くなるタイミング。 すなわち物事の決定には、やはり脳が活動しなければならないのだった。

でも、わざわざ脳をフル回転するほど大切な決定でない場合に、多くの人々が使っているのが ちょっとしたデシジョンメーカー。コインの裏表で決めるのもその一例であるけれど、 写真上のような ちょっとしたガジェットを使って、「昨晩クラブで出会った女性に、今携帯メールを送るべき?」とか、 「今日、仕事の後にヘアカットに行くか?ヨガのクラスに行くか?」というような決断を下す人は驚くほど多いとのこと。

このため、デシジョン・メイキングのアプリも沢山登場していて、 例えば私の友人は 迷っていることを尋ねて  「Yes」、「No」、「May be(多分)」、「Ask again(もう1度訊ねる)」の 4通りの答えから回答が得られる携帯電話のアプリを頻繁に愛用しているのだった。




私はと言えば、決して優柔不断なタイプではないけれど、それでも決断が付かないことは多いもの。
例えば天気予報でこれから雨が降ると言われている時にセントラル・パークを走るか、ジムを走るかの選択はその好例。 セントラル・パークを走った方が、ジムのランニング・マシーンで走るよりも ずっと気分が良い上に、10キロがあっと言う間に終わるけれど、 雨に降られてしまうと スニーカーまで洗わなければならない上に、濡れたソックスが靴擦れの原因になるなど、 厄介な事だらけ。雨が降る前に走り終えることが出来るならば、屋外を走りたいと思っても、そこまで正確な天気予報など無いので、 窓から空を見ながら 迷っているうちに10分程度があっという間に経過してしまうことは珍しくないのだった。

そんな時に私が頼りにしているのが写真上のデシジョンメーカーという無料のアプリ。
これは選択事項を入力して、ボタンを押すとデシジョン・メーカーが候補の中から決定を下してくれるというもので、 候補は幾つでも入力できるけれど、私の場合は2択で訊ねるケースが殆ど。
着ていく服から、友達とのディナーのレストランの選択、同じ日に重なったイベントのどちらに出掛けるべきか?等、 迷っている時に訊ねるのが このアプリなのだった。

私が使っているアプリに限らず、何らかのデシジョンメーカーを使っている人が必ず言うのは、 「使い込めば、使い込むほど、正しい決断を下してくれるようになる」ということ。
時には、デシジョンメーカーの決断に半信半疑の場合もあるけれど、結果的にデシジョンメーカーが正しいケースが 非常に多いのだった。例を挙げれば、日本に一時帰国していた際に、喫煙者が数人居る集まりに着ていく服を迷っていたところ、 デシジョンメーカーが選んだのは、私がタバコの匂いがついて欲しくないと思っている服。 でも 出掛ける場所の雰囲気には その服の方が相応しかったこともあり、デシジョンメーカーの判断に従ったところ、 前回の帰国の際には喫煙者だったメンバーが 全員タバコを止めていて、結局のところ 服にタバコの匂いが付かなかっただけでなく、 オケージョンにフィットしたドレス選びになっていたのだった。

前述のランニングの件にしても、デシジョンメーカーに従ってセントラル・パークを走って 雨に降られたことは一度も無いだけでなく、 デシジョンメーカーに従ってジムを走っている間に 外が大雨というケースを何度も経験しているのだった。

デシジョンメーカーは、大切な決断でない場合は その判断を信じて 素直に従う方が時間の節約になるけれど、 デシジョンメーカーを 使う別のメリットは、自分でも気付いていない 自分の好みや 既に無意識のうちに下している決断を自覚できること。
「どちらになっても良い」と思ってデシジョンメーカーを使って、その結果 選ばれた選択に不満を感じることから、 自分が本当はどちらを欲していたのかを自覚するケースは少なくないのだった。

すなわち、物事を決めるというのは 脳の中の複雑なプロセスで行なわれているもの。 したがって、どうでも良いことを決める場合については それをデシジョンメーカーに任せてしまった方が、 余計なエネルギーを費やさずに済むと言えるのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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