Sep. Week 3, 2013
” Fake Cronuts ”
”フェイク・クロナッツ ”



2013年で、今のところ最大のフード・トレンドとなっているのが ” Cronuts / クロナッツ ”。
CUBE New Yorkでもそのブームのスタート時点と、 その後のアップデート・レポートを記事にしてきたけれど、 ”クロナッツ”は クロワッサンとドーナツをくっつけた造語。 これをクリエイトしたのは、このコーナーでオープン時から取り上げてきた ソーホーのドミニク・アンセル・ベーカリーで、 5月の発売直後から、クロナッツを求めて 人々が 長蛇の行列を作るようになった様子は、 アメリカ国内だけでなく、世界中で報じられていたのだった。

クロナッツは、単にクロワッサンのドーに穴を開けて揚げているのではなく、ドミニク・アンセル・ベーカリーでは 理想的なテクスチャーを実現するために、 9バージョンのレシピをトライ。ドーの材料の配分から、ドーを折り返す回数に至るまで試行錯誤を繰り返した結果 生まれたのがクロナッツ。
クロナッツの中にはクリームが注入されていて、万遍なくクリームが行き渡るように、数箇所からその注入が行なわれているのだった。
クロナッツのフレーバーは、デビュー時の5月が 内側がヴァニラ・クリームで、トッピングはローズ・フレーバーのグレーズ(写真下左側)。 それが 6月に入ってからは レモン・ゼストを入れた 軽いレモン・クリームと レモン&メープル・シロップのグレーズ(写真下右側)に替わり、 7月からは、そのフレーバーがブラック・ベリー、8月はココナッツ。 そして現在9月は、マスカポーネ・チーズとフィグ(イチジク)のジャムという、ちょっとひと捻りしたフレーバーになっているのだった。




クロナッツの人気が高まるに連れて、どんどん登場してきたのがフェイク・クロナッツ。
今ではスーパー・マーケット・チェーン、フード・エンポリウムのベーカリーでも売られているクロナッツであるけれど、 同クロナッツはインターネット・メディアのレビューアーが扱き下ろしていた駄作。 クロワッサンのドーに穴を開けて揚げて、クリームを挟めばクロナッツになる訳ではないことが立証されていたのだった。
ここで話題になったフェイク・クロナッツをご紹介しておくと、以下の写真のようなヴァラエティ。

写真下、上段左は トロントで この夏8月16日から行なわれていた カナディアン・ナショナル・エキジビジョンでデビューした メープル・ベーコン・ジャム・クロナッツ・バーガー。 同イベントは 2011年から クリスピー・クリーム・バーガー(クリスピー・クリームの オリジナル・グレーズ・ドーナツをバンズにしたチーズ・バーガー) を販売しており、マニアック・フードの祭典として知られる存在。
ところが 同イベントで このクロナッツ・バーガーを 食べた79人が体調不良を訴えたことから、 これを販売していたエピック・バーガーが、クロナッツ・バーガーの販売を停止。 期待を集めたバーガーでありながら、 そのデビューは惨憺たる結果になってしまったのだった。

写真下、上段右は、ダウンタウンのラガーディア・プレースにある Mille-feuille Bakery Cafe / ミルフィーユ・ベーカリー・カフェの”フレンチ・ドーナツ”。 同店は、写真のようにフレーバーが チョコレート、ヴァニラ、ラズベリーの3種類 用意されていて、 中に使われているクリームは 同ベーカリー自慢のエクレアに用いられているカスタード・クリーム。
それ以外には ”アップル・ターンオーバー”、すなわちクリームの替わりに アップル・パイのフィリングをドーの中に詰めた ものも新たにメニューに加わっているのだった。
ちなみに、9月のニューヨーク・ファッション・ウィーク期間中に、ランウェイ・ショーのためにNY入りしていた ヴィクトリア・ベッカムが、「ブレックファスト、クロナッツ」と、写真入りでツイートしたのが、同店のフェイク・クロナッツ。
そのツイートを見たドミニク・アンセルが 「それは偽物。インターンが寝坊をして、列に並び損ねたのでは?」と 皮肉たっぷりのリツイートをして、ちょっとした話題になっていたのだった。





写真上、下段左側は カップケーキで有名なCrumb / クラムが ニューヨークとLAの店舗で 試験的に発売している ”Crumbnuts / クラムナッツ”。
今のところ、試食した人々のリアクションは、「パイ皮がガミー」、「オリジナルよりもクリームの量が多い」、 「オリジナルよりも脂っぽい」、「スウィーツというよりも、ブレックファスト・アイテムという印象」といったもの。 でも総じて クラム側は 現時点の 試験販売の売り上げに満足しているようで、 全米展開は時間の問題とも言われているのだった。

この他にもフェイク・クロナッツはワシントンDC、ノース・キャロライナ、ロサンジェルスといったアメリカ国内のベーカリーは 勿論のこと、シンガポール、オーストラリア、香港等、世界各都市に出没しているけれど、 中でも比較的優秀の呼び声が高いのは 韓国のダンキン・ドーナツのフェイク・クロナッツなのだった。

とは言っても クロナッツのアレンジ版をクリエイトしているのは、元祖クロナッツのクリエーター、ドミニク・アンセルも同様。
写真上、下段右は 今週火曜日、9月17日の1日限定で、マディソン・スクエア・パーク内にある 人気バーガー・ジョイント、シェイク・シャックで販売された「クロナッツ・ホール・コンクリート」。
シェイク・シャックと言えば バーガーと同時に、そのネーミングになっているシェイクの美味しさでも知られる存在。 そして そのシェイクは、”コンクリート” という商品名の濃厚なフローズン・カスタードから作られているもの。
「クロナッツ・ホール・コンクリート」は、バター・キャラメル味のフローズン・カスタードに、 クロナッツ・ホールを3つ添えたデザートで、クロナッツ・ホールとは クロナッツの中央の穴を型抜きした後 の 円形のドーを揚げたもの。 ダンキン・ドーナツのマンチキンも同じ手法で商品化されているのだった。
クロナッツは、前述のように揚げたドーの中にクリームを注入するけれど、クロナッツ・ホールは、 シナモン・シュガーをまぶしただけというシンプルなもの。
でもコンクリートのフローズン・カスタードが クリームに代わってクロナッツ・ホールにリッチな甘さと味わいを プラスするというもので、お値段はオリジナルのクロナッツよりも50セント安い 4ドル50セント。9月17日だけの1日限定で、 1000食分のみサーブされ、 その利益がニューヨーク市警察とマディソン・スクエア・パーク管理局に寄付される というのが この企画なのだった。





そんなフェイク・クロナッツの中で、最も一般的に評価が高いと同時に私個人も気に入ったのが、 イースト・ヴィレッジにある Dessert Club ChikaLicious / デザート・クラブ・チカリシャスの “Dough’ssant / ドーアッサン”。
その フレーバーは、メイヤー・レモン、チョコレート、ラズベリー、キャラメル、そしてクリーム・ブリュレの5種類で、 多い日は1日200個以上を販売するという人気商品。 でも行列することなく、直ぐに購入できるのだった。
私はキャラメルのフレーバーに興味があったけれど、お店の人によれば最も人気があると同時に、評価が高いのがクリーム・ブリュレ(写真上)。 なので、クリーム・ブリュレにチョイスを替えて味わってみたのだった。

ドーアッサンは、ドーがサックリしていて、ヴァニラ・ビーンが入ったカスタード・クリームが甘過ぎない、上品な味。 でもデザートというよりは ペストリーという印象なのだった。
私は これが 「何処かで食べた、何かに似ている・・・」と思って、2〜3日考えていたけれど、その結果 思い出したのが、 ドーアッサンが 未だ私が日本に住んでいた頃にお気に入りだったベーカリーの ”クリーム・クロワッサン” にそっくりの味だということ。 外側がカリカリの 油っぽいクロワッサンをスライスして、その中にカスタード・クリームを たっぷり挟んだのが そのクリーム・クロワッサンで、当時の私の大好物。 それと姿形は違っても、味わいがそっくりなのが ドーアッサンなのだった。
ドーワッサンがクロナッツと異なる点は 油で揚げていないことで、オーブンでのベーキングによって クリエイトされている分、若干カロリーが低くて、ヘルシー。 お値段は クロナッツと同じ5ドルで販売されているのだった。

その一方で オリジナルのクロナッツは、夏のバケーション・シーズンが去って 旅行者が減ってからというもの、 週に1日程度の割合で、 完売しない日が出てきているとのことで、今では朝6時から行列しなくても 購入可能になりつつあることが伝えられているのだった。
これが クロナッツ・フィーバーが一段落しつつある兆候なのか、もしくは 新しいマスカポーネ・チーズ&フィグ・ジャムのフレーバーが不人気のせいなのかは定かでないけれど、 それでも週末ともなれば、今も早朝から相変わらずの行列ぶり。 50個以上の大量オーダーにしても、1ヶ月以上前に申し込まなければならないのだった。

現在オリジナルのクロナッツを購入するコツは、店頭に並んでいなくても 店内のスタッフにクロナッツがあるかどうか訊ねてみること。 これはドミニク・アンセル・ベーカリーでは 人気を保つために、午後を過ぎてクロナッツが残った場合、店頭に出していないと言われるため。
そして行列せずに クロナッツを入手できる可能性が高いのは、雨の日や 週明け月曜の開店直後に出掛けることだという。
でも、個人的にはクロナッツのドーの味に一番マッチすると思うのが ヴァニラ・カスタード・クリーム。 なので、それが定番になっていて、しかも並ばずに確実に購入できるのは、ドーアッサンの大きな魅力になっているのだった。






余談ではあるけれど、クロナッツが流行ってからニューヨークで巻き起こったのがドーナツ・ブーム。
今日、ミッドタウンを歩いていたところ CUBE New York のドーナツの記事で取り上げたカープ・ドーナツ (写真上)の フード・トラックに遭遇してしまい、その場で食べている人の様子があまりに美味しそうだったので、 私も誘惑に負けて1つ購入してしまったのだった。
2013年にニューヨークに進出したばかりにも関わらず、ニューヨーク・マガジンのベスト・ドーナツに選ばれたカープ・ドーナツは、 アップル・サイダー・ドーナツ1種類しか扱っていないけれど、本当に揚げたて、シナモン味のシュガーにまぶしたて を出してくれて、 まずビックリしたのが、そのフカフカのテクスチャー。 そして1口味わったら、なるほど評判どおりの美味しさというか、それ以上で すっかりファンになってしまったのだった。
特に気に入ったのがフカフカして軽いながらも、ちょっとモチモチした感触があるドーで、 その食感と 程よい甘さ、揚げた油の香ばしさとシナモンの香りが、シンプルの極意を極めた 傑作ドーナツ。 その場に居たら、幾つでも食べてしまいそうで怖かったので、慌てて立ち去ったけれど、最後の1口を食べえた後の 寂しさは 未だ脳に鮮明に残っているのだった。
このシンプルでオールド・ファッションなドーナツの衝撃があまりに鮮烈だったので、 フェイク・クロナッツをフェイバリットと言いながらも、あまり力が入らない文章になってしまったけれど、 結局のところ、クロナッツのようにギミックがあるものは時代と共に流行り廃れがあるもの。
カープ・ドーナツのようなオールド・ファッションなクラシックの方が、最終的には息の長いロングセラーになると思うのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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