Oct. Week 1, 2011
” blk. water ”
” ブラック・ウォーター ”



近年のアメリカで、最も奇抜なドリンクとして登場したのがここに紹介するブラック・ウォーター。
子供の頃、書道を習っていたことがある私は、イメージ写真を見て、墨汁を思い出してしまったけれど、 実際、このブラック・ウォーターはかなり真っ黒な水。 でも、味はフレッシュ・ウォーターというのが同プロダクトのユニークなところなのだった。

ブラック・ウォーターの真っ黒な色は、着色料など人工的なものではなく、 カナダの7000万年前の地層から採掘されたフルヴィック・アシッド(フルボ酸:植物の派生物)のナチュラルなカラー。 そしてこのフルヴィック・アシッドが カナダのピュアなスプリング・ウォーターの分子と結合した状態が ブラック・ウォーター。
フルビック・アシッドは、栄養素を行き渡らせ、その吸収を助ける働きがあり、植物の成長を促すことから、 長く土の肥料に用いられてきたもので、 フルヴィック・アシッドの分子構造が77種類の微量のミネラル、パワフルな電解質、酸化防止剤、抗フリー・ラディカル物質を 素早く吸収する役割を担っているとのこと。
すなわち、これをスプリング・ウォーターに結合させて、飲料水として飲んだ場合、 身体にミネラル、酸化防止剤、電解質が吸収され、フリー・ラディカルを防いでくれるため、 通常のペットボトルの水を飲むよりも、身体や肌にメリットをもたらすというのがブラック・ウォーターのヘルス・ベネフィットになっているのだった。

すなわち、ブラック・ウォーターはヘルス・コンシャスなプロダクトということになるけれど、 コップに注いだ状態は 醤油か、さもなくば 炭酸の泡が無いコーラのような印象。
最初はブラックのボトルに入っているのかと思ってしまうけれど、容器は透明で、水面が下がってくるにつれて、 ボトルに黒字で書かれている「ENJOY THE DARK SIDE」というメッセージが読み取れるようになって来るのだった。
こんなボトルのメッセージのせいもあって、一部ではスプリング・ウォーターのダースベーダー(スター・ウォーズのキャラクター)とも 言われるのがブラック・ウォーター。

そんな悪のキャラクターに例えられることもあって、最初は誰もが飲むのに抵抗を示すのブラック・ウォーター。 何らかの黒いドリンクだと思えば、それなりに飲めるのかも知れないけれど、水だと思うから気持ちが悪いという部分は かなり大きいのだった。
なので、いくら身体に良いと分かっていても、スポーツの合間の喉が渇いているときに、一気飲みしたくなるような類の 水ではないことは紛れもない事実。ブラック・ウォーターを健康のために飲んでいる人でも、 慣れるのに数日かかったと言っているので、それほどに黒という色のインパクトが非常に強烈になっているのだった。

ブラック・ウォーターのボトル・サイズは2種類あって、16.9オンス(約488ml)入りが24本で69ドル、8オンス(約237ml)入りが24本で47ドル。 デザイナーズ・ウォーターのお値段と殆ど同じという感じなのだった。




かつてCUBE New York の記事でも色彩心理学について取り上げたことがあるけれど、 色というのは、人間心理に大きな影響を与えるもの。
また色というのは、住んでいる場所やその気候、季節、カルチャー・バックグラウンドなどで感じ方が異なるもの。
私は日本に居た頃、カラーリングの勉強をしたことがあったけれど、同じ赤でも東京、パリ、ロンドン、ニューヨークでは 好感が持たれる赤のトーンが異なるとのこと。 また、ゴルフウェア1つをとっても、フロリダで普通に着用しているウェアを、メイン州やカナダなどで着用すると、 気温の問題以前に、色のトーンで場違いな思いをすることになるもの。 したがって、土地や空気が変わると色の好みも変わってしまうと言えるのだった。

さらには、人が置かれている環境が色の好みに影響を及ぼす場合も多いのだった。
以前、ギャップ社がアメリカのある街で、何故かオレンジ色のアイテムが全く売れないので、事情を調査したところ、 街の大半の人々が勤める大手の工場が作業服にオレンジ色を採用していることが判明。 なので、労働時間を連想させると同時に、日頃から見飽きているオレンジ色を、町中の人々が避けるようになってしまっていたのだった。

加えて色に対する先入観というものも、プロダクトの色の好みを左右する大きな要因。 例えばスポンジ・ケーキと言えば、多くの人々はヴァニラ・スポンジのイエローかチョコレート・スポンジのブラウンを頭に浮かべるもの。 その先入観があまりに強いため、フード・カラーを使って、最も食欲をそそらない色であるブルーにスポンジを染めると、 多くの人は ケーキが無料で提供されていても、殆ど手もつけないという実験結果が得られているのだった。

その意味で、ブラック・ウォーターというのは 人々の水に対する先入観を覆すカラー。
なので、目をつぶって飲んだ時は「確かに水の味がする」と答えている人でも、 真っ黒な水を目で見ながら飲むと、「何とも言えない味がするような気がする」と、視覚が味覚に与える影響を強く感じさせるコメントをするのだった。
こうしたリアクションを見ていると、料理でも、ドリンクでも、美味しく味わうには見た目のアピールが如何に大切かを思い知らされるけれど、 見目麗しい料理だけが 視覚的にアピールして、食欲をそそるるか?と言えば、そうでも無いようなのだった。

例えば、アメリカの地方のダイナーに「ガーベッジ」という名物メニューがあるけれど、ガーベッジとはもちろんゴミのこと。 この料理が何かと言えば、マカロニ&チーズや、フライドチキン、ピッツァ、ミートボール・スパゲッティ、ポテト・サラダなどが 1枚のお皿の上に、グチャグチャに重ねて盛り付けられたもの。
これは本来、ダイナーの従業員たちが1日の終わりに、店の残った料理をバフェ(ビュッフェ)・スタイルで 自分の皿に盛って 食べていたもので、 その様子を見た来店客が、「自分もアレが食べたい」と言ったのがきっかけで、メニューに加わり、以来人気No.1メニューになってしまったのだった。 本当に残飯を盛り重ねたようにしか見えないルックスで、しかもそのネーミングも ”ゴミ箱行きになる前のフード”、”ゴミ同然のフード” という意味合いで ”ガーベッジ / ゴミ” と呼ばれる代物であるけれど、別の人が食べているのを見て、オーダーする人が絶えない名物なのだった。

したがって、世の中では何が人々にアピールするか?というのは蓋を開けてみないと分からない部分があるけれど、 私は、人よりも色に影響を受け易いタイプなので、いまだにブラック・ウォーターを飲むのは苦手とするところ。
でもこのプロダクトをフェイバリットとして取り挙げたのは、3ドル程度で、かなり珍しがられたり、面白がられるギフトになってくれること。
見た目が真っ黒でも、味は水、そして水より身体に良いというのは、人々の興味をそそるコンセプト。 しかも未だ一般に広く流通しているプロダクトではないこともあって、その20倍のお値段のワインをお土産にするより、ずっと喜ばれることになるのだった。
また都会的でスタイリッシュにパッケージされているのも大きな魅力。
なので、ヘルス・プロダクトとして根付くかどうかは別として、 暫くは 人々の興味を掻き立てるマーケティングが出来るように思うのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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