Oct Week 1, 2012
” Christian Louboutin Men's Boutique ”
” クリスチャン・ルブタン メンズ・ブティック ”



過去数年、アパレルからシューズまで、ファッション業界で 大きく売り上げを伸ばしているカテゴリーがメンズ。
これを受けて昨今、ジミー・チュー、ピエール・ハーディーといった、かつてはウーマンズ・シューズで知られたブランドが、 どんどんメンズ・シューズに参入してきているけれど、 そもそもメンズ・シューズに関しては、 ウーマンズの一流ブランドのシューズが 未だ500ドル、600ドルといった価格で買えた時代から、 ジョン・ロブのシンプルなオックスフォードが1000ドルを越えているなど、ハイエンド・マーケットの価格帯が ウーマンズを上回っていたカテゴリー。
でも昨今、ウーマンズ・シューズのブランドがメンズに参入している理由は、 かつてよりも、高額でファッショナブルなシューズを購入しようという男性顧客が増えて、マーケットが拡大していることに加えて、 従来の高額メンズ・シューズ・ブランドは、まだまだカラーやデザインがコンサバティブで、 ドラスティックにファッショナブルなシューズが少ないこと。

なので、ウーマンズ・シューズのブランドが、パープルやオレンジなど、これまでにメンズ・シューズに無かったカラーや、 メタル素材、ラメ、スタッズなど、ウーマンズ・シューズの世界では珍しくない素材やディテールをメンズ・シューズに持ち込んで、 従来とは全く異なるファッション性を持つ、ユニークなシューズをクリエイトし始めているのが昨今。
果たしてこれらのシューズが どの程度売れているかは別として、 トラディショナルとは一線を画した個性的なシューズは、若い世代を中心に 男性ファッショニスタの注目を集めていることは紛れも無い事実なのだった。




そんな中、9月にニューヨークのMePaこと、ミートパッキング・ディストリクトにオープンしたのが、 アメリカ初のクリスチャン・ルブタンのメンズ専門ブティック。
同店は当初、2012年初春オープンの予定が、内装の関係で大幅に遅れたことが指摘されており、 ロケーションは、同じミートパッキングにある ルブタンの女性ブティックから程近い ワシントン・ストリート。 その広さは 約1300スクエア・フィート(約121u)。
店内のインテリアは、グランジーなロフトの雰囲気の中に、ルブタンのシューズのプレゼンテーションに相応しい レッド・カーペットを敷いたもので、レザーのダイヤモンド・パネルをあしらった壁は、先にオープンしているパリのメンズ・ブティックと同じもの。
アーティスティックなオブジェを、ディスプレーに用いて ダウンタウン・アーティストのスタジオや、インダストリアルな雰囲気の ギャラリーを演出したような店内は、ウーマンズ・ブティックよりもインテリアの見地からは、遥かに エンターテイメント性が高い仕上がりになっているのだった。

クリスチャン・ルブタン氏によれば、彼がメンズ・シューズのビジネスに参入したのは、彼がフランス人女性のクライアントのために 13.5というメンズ並みに大きなサイズのシューズをカスタム・メイドで製作したのがきっかけ。 でもそのシューズが大き過ぎて、フィットしなかったために、女性クライアントはシューズを購入せず、ルブタン氏はそのシューズのやり場に困って、友人に託したところ、 その友人がシューズをプレゼントしたのが、何とシューズをオーダーした女性クライアントの夫。 そしてシューズが彼の足にぴったりフィットしたのが、メンズ・ビジネスが誕生した背景であったという。




とは言っても、 私が 以前仲良くしていたルブタンのフランス人男性セールス・パーソンは、 今から3年前の2009年の時点で、 ルブタン氏に特別に作ってもらったというシューズを履いていて、 それは 忘れもしない ゼブラ柄のポニー・スキンのオックスフォード。 シューズの派手さも さることながら、 歩く後姿の 真っ赤なルブタン・ソールが かなり目立っていたのだった。
当然のことながら、普通に売っているタイプのシューズには見えないので、「そんなシューズを履いていると、 ゲイだと思われて、女性にモテナイのでは?」と、 ストレートの彼に訊いてみたところ、 「女性は真っ赤なルブタン・ソールを見ると、興奮するんだ」というのが彼の言い分なのだった。

そのメンズのルブタンは、今やR&Bシンガーのアッシャーなどのセレブリティが履いていることでも知られているけれど、 デザイン・ディテールは、そのシーズンのレディースのスタイルを反映させていて、 現在 メンズ・ブティックに並んでいる多くのシューズが、レディース・ラインにも多数用いられているメタル・スタッズをふんだんにあしらったもの。
これらは、一般男性が履くには ちょっとトゥーマッチという感じだけど、 オープン以来、ブティックで最も人気を集めているのは、ハイカットのスニーカー。 スニーカーというスポーティーなアイテムだと、かなり派手でも 男性には さほど抵抗がないようで、ゲイ、ストレートを問わずに人気を集めているのだった。

この他、店内には、3600ドルもする男性用のトートバッグから、バックパック、アイパッド・ケースなども揃っているけれど、 ウーマンズでも ルブタンのバッグ人気が今ひとつ盛り上がらないのと同様、男性もあまりバッグには興味を示していないのが 現状なのだった。







同ブティックのユニークなコンセプトは、店内に ”タトゥー・パーラー”を設けていること。
ここでは、自分のタトゥーのデジタル・フォトを撮影し、そのタトゥーを シューズに 刺繍するサービスを提供。 これによって世界でたった1足の、自分のためのルブタンが出来上がるシステムになっているのだった。
ルブタン氏によれば、「タトゥーは現代の家紋のようなもの」とのことだけれど、 タトゥーを入れていない人のためには、ルブタン氏がデザインした タトゥー・サンプルの中から 柄を選んで、刺繍を入れてもらうことも可能とのこと。
もちろん刺繍を入れたら返品は不可であるから、これはシューズの単価をアップさせて、 しかも返品を防ぐという、賢いマーケティング・テクニックと言えるのだった

クリスチャン・ルブタンは 今後メンズの展開にどんどん力を入れることになっていて、この秋にはシカゴに メンズ&ウーマンズの双方を扱うブティックをオープンするほか、11月にはロサンジェルスとロンドンにもメンズ・ブティックをオープンすることになっているのだった。
ところで、ルブタンと並ぶウーマンズ・シューズの金字塔ブランドといえば、マノーロ・ブラーニックであるけれど、 マノーロは、ロンドンと香港のウーマンズ・ブティック内で数年前からメンズ・ラインを扱っている他、 かつてニューヨーク・ブティックでもメンズのサンダルを扱ったことがあったけれど、これは不評に終わったのだった。
マノーロのメンズに関しては、2008年に家族で香港に旅行した際に、父がスリッポンを購入していて、 これは 父も 私も、一目で気に入って 購入に至った、非常にシンプルなローファー。 見るからに上質なレザーは非常に柔らかく、あまりの履き心地の好さに、父は旅行の最中から ずっとそのマノーロを 履き続けていたのだった。
それを思うと、マノーロ・ブラーニックこそ、もうちょっとメンズに力を入れるべきなのでは?と考えてしまうけれど、 マノーロのメンズは、見た目には単なる上質なメンズ・シューズなので、トラディショナルなメンズ・シューズと競合する存在。 でも、トラディショナルなシューズを好む層は、俗に言う「ルーティーン・アニマル」、すなわち変化を好まない、ロイヤル・カストマーが多いので、 獲得が難しい客層と言えるのだった。

その点、クリスチャン・ルブタンがターゲットとするのは、従来のトラディショナルなシューズでは満たされない、遊び心と冒険心に溢れる ファッショニスタ。 したがって、客層はニッチでも ”見るからにルブタン” という高額シューズに、喜んで財布を開く可能性が非常に高いのだった。


Christian Louboutin Men's Boutique
808 Washington Street New York, 10014
Tel: 212-255-5056






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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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