Oct. Week 2, 2011
” Nicholas Kirkwood Bootie ”
” ニコラス・カークウッド・ブーティー ”



一説によれば ファッショニスタというものは、 シューズと言えば 馬鹿の2つ覚えのように 「マノーロ・ブラーニックとクリスチャン・ルブタン」と いうのではいけないそうで、他にもカルト的なブランドをワードローブに加えていなければならないとのこと。
それも分かるような気がするのは、例えば先日クリスチャン・ルブタンのブティックで見かけた非常にファッショナブルな女性は、 アライアのプラットフォーム・ブーティーを履いていて、これは本人にブランドを尋ねて判明したけれど、答えを聞く前から、 見るからに高そうな、個性的なシューズで ”一癖あるブランド” のものだというのは明らかなのだった。

アライア同様に、カルト・ステータスがあるシューズと言えば、アレクサンダー・マックィーンやジュゼッペ・ザノッティが製作を担当するバルマン、 昨今ファッション業界で大注目を浴びているハイダー・アッカーマンや、ロジェ・ヴィヴィエなど、ファッションに精通している人しか名前が分からないブランドで、グッチやプラダ、 イヴ・サンローラン、ジミー・チューといった一般の有名ブランドとは区別される存在。 共通して言えるのは、本当に高そうに見えるだけでなく、本当に高いということ。
例えば、写真左はハイダー・アッカーマンの今シーズンのブーティーであるけれど、レースアップとジッパーが螺旋を描いてフィーチャーされている スーパー・スタイリッシュなデザイン。でもお値段はブーティーでありながら約1900ドル。幸い、ハイダー・アッカーマンはハーフサイズが無いので、36.5を履いている私の足には フィットしないため、血迷って買ってしまう心配はないけれど、こうしたカルト系のブランドはクリスチャン・ルブタンやマノーロ・ブラーニックが良心的なお値段に思えるようなアイテムが 少なくないのだった。

さて、昨シーズンあたりからセレブリティがどんどん履くようになってきているのが ニコラス・カークウッドであるけれど、 彼もカルト・ステイタスと言える存在。
その熱烈な支持者として知られるセレブリティと言えば、サラー・ジェシカ・パーカーが居るけれど、 彼はサラー・ジェシカのもう1人のお気に入り、マノーロ・ブラーニック氏同様、イギリス人デザイナー。 2年ほど前までは、ちょっと個性的過ぎる印象があったニコラス・カークウッドのクリエーションであるけれど、 昨今は その個性がどんどん的を得てきたと同時に、ファッショニスタの間で 彼独得のカットやプラットフォーム・デザインが 認識されるようになってきたのだった。
したがって、人々が真っ赤なアウター・ソールを見てクリスチャン・ルブタンのシューズと分かるのと同様、 ファッショニスタ達は、そのデザインやカットを見て、ニコラス・カークウッドの作品と悟るようになってきており、 今後ブランドが そのカルト人気を高めて行きそうな気配を見せているのだった。




今回このコーナーで紹介するのは、ニコラス・カークウッドの2011年秋冬ラインで登場したブーティー。
素材は、レーザー・カットでファブリックをくり抜いて、レースのようなビジュアル・エフェクトを演出したもので(写真右)、 くるぶしの部分で、Vの字を描いてサイド・ディップしたデザインは彼独得のディテール。 またプラットフォームとボディのつま先を、ダブル・レイヤーのシルエットにしているところも シグニチャーと言えるスタイルになっているのだった。
フロントはレースアップになっているけれど、サイド・ジッパーによる着脱。高さ13cmのヒールは ブラック・レザーでカバーされ、全体に個性的なデザインを強調する効果を生み出しているのが 同じ素材で施されたトリミング。
見れば見るほどディテールが凝っていて、製作工程の複雑さを感じさせるこのブーティーの お値段は、カルト・ステイタスのブランドだけあって 約1400ドル。 でもシューズのオートクチュールと言えるような素材とディテール・ワークなので、 このお値段でも納得せざるを得ないという感じなのだった。



でも私が個人的にニコラス・カークウッドのコレクションの中で最も気に入っているのが写真下のシリーズ。
フラワー・プリントのファブリックを用いたプラットフォーム・パンプスで、写真左と中央は2011年秋冬、右は2011年春夏シーズンのもの。




問題は、私がまだこのシューズをストアで見かけたことが無いということで、 出遅れているいるのか、それともストアが買い付けていないのかは定かではないけれど、 ニコラス・カークウッドの製品は、まだまだ流通が非常に少ないのが実情。
でも、2012年の春にはミート・パッキング・ディストリクトに彼のブティックがオープンすることになっているので、 それによって、今より遥かにヴァラエティが増えるのは明らか。 幸い、このスタイルはパターンこそは変わるものの 定番となっているので、ブティックがオープンしたら、 同じものは無理でも、何らかパターンは手に入るのでは?という希望を抱いているのだった。

よく、 「柄もののシューズはコーディネートし辛い」という先入観を持つ人が多いけれど、 私は個性的なシューズが好きなこともあって、柄物のシューズはかなりの好み。 そもそも無地の服が多いだけに、シューズに柄ものを選んで、コーディネートの要にするのは ”ノー・ブレイナー”、すなわち 頭を使う必要が無い着こなしなのだった。
人によっては「どんな服にも合わせられる」という理由からシンプルなシューズと好む場合があるようだけれど、その反面、あまりに一般的で、 たとえクリスチャン・ルブタンであろうと無個性に見えてしまうのが実情。 また、何時でも同じルブタンを履いていると、くたびれたコンディションのルブタンを履いているのと同様に、”一張羅(いっちょうら)ルブタン” と 思われてしまう場合も多いのだった。

私の意見では、服はシンプルな方が流行に左右されず長く着られる上に、アクセサリーさえ替えれば、いくらでも違った着こなしが出来るので、 服とシューズで、どちらをシンプルにするべきか?と言えば、答えは文句なしに「服」。
服でも シューズでも、個性的なものは直ぐに覚えられてしまうという問題点があるけれど、次のシーズンが来れば、人は大抵忘れてしまうもの。 それに、いつも同じ人とばかり出掛ける訳ではないので、私は気に入った個性的なシューズは、何年でもキープして、何度も何度も履いてしまうし、 その都度、人から褒められて、良い気分を味わうことになるのだった。

その典型例と言えるのが、下の2004年秋冬シーズンのプラダのサンダル。素材はブラック・スウェードとパイソンのコンビで、フロントに オニキス・ビーズのオーナメントがあしらわれたもの。




基本的にウェッジ・ソールなので、物凄く履き易くて、ギャラリー・オープニングや立食のパーティーなど、 立ちっぱなしの状況が予想されるオケージョンでよく履くシューズ。
先週はこれを履いて友人と5時間のショッピング・ツアーをしていたけれど、サックス・フィフス・アベニューで4回、バーバリーのブティックで1回、 バーグドルフ・グッドマンで3回、ストリートで4回もシューズを褒められてしまったのだった。
私に言わせれば、2004年秋冬はプラダの黄金時代。 なので この時期のプラダの服やシューズは、過去7年、毎年のように着用していて、元を取りまくっているだけでなく、リセールで売ってしまうことなど 考えられないアイテムになっているのだった。

シューズで個性を主張すると、道を歩いているだけで人が頻繁に声を掛けてくるので、私は特に知らない人が多いパーティーでは、絶対にカンバセーション・ピースになるような シューズを選ぶようにしているけれど、それほどまでに人が見ているのがシューズ。
したがって、少々高くても、個性的で人が履いていない類のシューズを選んで、それを大切に長年履き続けるというのは、 非常にインパクトがあるファッション・ステートメントであると同時に、長期的にみれば、必ず元が取れる投資。
加えて、いつも同じようなシンプルなパンプスを履いているより、ずっと気分が高揚するし、楽しい思いが出来るのである。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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