Oct. Week 2, 2014
”Not That Kind of Girl by Lena Dunham ”
ノット・ザット・カインド・オブ・ガール by リナ・ダンハム


アメリカに暮らしていると、TVのトークショーに ありとあらゆるセレブリティが登場するので、 日ごろ映画やTVで観ているセレブリティが、台詞ではない自分の言葉で喋るのを聞いて、 窺い知ることが出来るのがセレブの実際の人柄や頭の良さ、そしてユーモアのセンス等。
例えばアンジェリーナ・ジョリーなどは スター・パワーは抜群であっても、彼女がトークショーに出演して 喋る内容は極めて退屈。 逆に、「21ジャンプ・ストリート」や「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のジョナ・ヒルは、 ヒット作に出演する前から、トークショーでの会話が非常に面白く、スターになる片鱗を感じさせていたのだった。

私の見解では、一部の例外を除いては 男性セレブリティの方が、女性セレブリティよりも 興味深い話をする傾向にあるけれど、その一部の例外に属する女性セレブリティとは、 私にとっては、ジェニファー・ローレンスや リナ・ダンハム。
リナ・ダンハムは、私が好んで観ているHBOのシリーズ、「ガールズ」のプロデューサーであり、脚本家。 ジェネレーションY, ミレニアルズと呼ばれる彼女の世代をリアルかつ、風刺的に描くことにかけては、 現在のハリウッドで彼女の右に出る人物は居ないと思われるのだった。
私自身は「ガールズ」を観るようになってから、「セックス・アンド・ザ・シティ」が物凄く レトロに感じられるように なってしまったけれど、そのリナ・ダンハムの初の著書が今週ここに取り上げる「ノット・ザット・カインド・オブ・ガール」なのだった。







リナ・ダンハムは、1986年生まれの28歳。ブルックリン育ちで、「ガールズ」の中で彼女が演じるキャラクター、ハナと同様、 子供時代にOCD(Obsessive Compulsive Disorder / 強迫性障害)に診断されているのだった。
そんな彼女の初の著書は、独特のユーモアとシニシズムが盛り込まれたセルフ・ヘルプ(自己啓発)本とメモアール(自叙伝)の ミックス。 「A Young Woman Tells You What She's "Learned" 」というサブタイトルが付いているけれど、 「Learned」、すなわち「学んだ」というところに付いているクォーテーション・マークが、 彼女の学習能力を皮肉ったニュアンスになっていて、同書の内容やコンセプトが良く現れているのだった。

「ノット・ザット・カインド・オブ・ガール」の中には、友達より遥かに遅くロスト・ヴァージンした彼女が、 セックスというものが 実際に頭に描いていたほどのものではなかった失望や、 自分の2倍の年齢の男性たちを相手にプレゼンテーションを行ううちに、 アイデアやエキサイトメントを盗むだけのために、自分を利用している人物=”サンシャイン・スティーラー(直訳すると”日光の泥棒”であるけれど、実際には自分から スポットライトを奪っていく人物のこと)”が居るのに気付いたこと、さらには「君のことは傷つけない」、「自分はそんな頭がおかしい人間じゃない」と語る 男性に限って その逆であること等、彼女自身の経験を通じた恋愛、仕事、セックス、交友関係など、様々な トピックに、独自の切り口を見せているのだった。
そのインスピレーション・ソースになっているのは、 1982年に出版されて、当時の社会に大きなインパクトをもたらしたヘレン・ガーレイ・ブラウンの自己啓発書、「Having It All / ハヴィング・イット・オール」。
これを大学時代に読んで、かえって逆効果がもたらされたリナ・ダンハムが、そのリバース・バージョンとして、 自分の失敗を赤裸々に語ることによって 若い世代に学んで欲しいというメッセージが込められたのが 「ノット・ザット・カインド・オブ・ガール」。

リナ・ダンハムが同書執筆に当たって、出版社から受け取ったアドバンス(前金)は約4億円。 この金額からも、ジェネレーションY、ミレ二アルズの実態について、彼女ほど的確に書けるライターは居ないことを出版業界も認めていることが窺い知れるのだった。






私は通常、あまり本を読まない主義であるけれど、リナ・ダンハムがとても興味深い人物なので、 出版直後に試みたのが ”斜め読み”。
前述のように、納得の部分もあれば、笑ってしまう部分、自分の若い頃と照らし合わせて 懐かしく思う部分などがあったけれど、読んでいるうちに 「この類の本を何処かで読んだような…」と言う気持ちになってきたのだった。 そして私の頭に浮かんだのが林真理子氏の初の著書 「ルンルンを買っておうちに帰ろう」を含む初期3冊ほどの内容。
私がそれらを読んだのは、大学時代だったので、詳細の記憶は定かではないけれど、 自らのロスト・ヴァージンや、仕事の場での男性とのやりとり、付き合った男性、付き合っていない男性との様々なエピソードなど、 時に自分にとって恥ずかしいような体験を、いともあっさりとオープンに書いてしまうところは、 初期の林真理子氏と、リナ・ダンハムの共通点。

アメリカのブック・レビューアーの中には、リナ・ダンハムのスタイルを「初期のウッディ・アレンに似ている」 と評する声もあったけれど、 この手のスタイルのライティングは、自分の考えや体験、失敗をオープンに語りながら、 説教がましさ無しに さりげなく教訓を読者に与えるもの。
また こうした率直で コミカルなスタイルは、「自分が書いたことで人にどうジャッジされるか?」 などを 気にしていたら絶対に実現しないという点で、度胸が座っていないと書けない文章。 そして それに客観的かつ、シャープな分析や、人が思いつかない隠喩が盛り込まれているからこそ、面白おかしく読めるわけで、 この類の本でサクセスを収めるライターというのは、「極めて頭脳明晰」と言えるのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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