Oct. Week 3, 2011
” Mitchel London Lemon Meringue Pie ”
” ミッチェル・ロンドン レモン・メレンゲ・パイ ”



以前、ラデュレのブティックを紹介した際に、私はマカロンが好きと書いたことがあるけれど、 ふと、気付くと私はメレンゲを使ったデザートというのが非常に好きなのだった。
なので、ここに紹介するレモン・メレンゲ・パイなどは、子供の頃からの好物であるけれど、 私に言わせると、”レモン・パイ” と称してレモン・カスタードのパイの上に生クリームをトッピングしているのは邪道と言えるもの。
というのは、 卵黄を使ってレモン・カスタードを作れば、メレンゲを作るだけの卵白があまるはずなので、それを使わない手は無い と思う部分もあるけれど、 メレンゲほどレモン・カスタードと相性が良いものは無いと考えるためで、カロリーを軽減させるためにも、生クリームよりメレンゲを用いるべきだと思うのだった。

ここで、特に取り上げたミッチェル・ロンドンのレモン・メレンゲ・パイは、アッパー・ウエストサイドとアッパー・イーストサイドにロケーションを構えるグルメ・ストア、 フェアウェイのベーカリー・セクションで販売されているもの。
ミッチェル・ロンドンは、グルメで知られた元ニューヨーク市長、エド・コッチ氏のパーソナル・シェフを務め、その後、自身の グルメ・ストアをアッパー・イーストサイドにオープンした人物。 私は90年代の初頭の、まだ雑誌のエディターをしていた時代に 彼のグルメ・ストアが非常にお気に入りで、 最初はそこで売られているフレンチ・クルーラーを目当てに出かけていたのだった。
そうするうちに、目に付いたのがレモン・メレンゲ・パイ。そこで売られていたのは直径10cmほどの小さなパイであったけれど、 メレンゲがふんだんにトッピングされていて、直径と高さが殆ど同じというプロポーション。 レモン・メレンゲ・パイが大好きな私は、 当時 まだメタボリズムが高かったこともあり、これを1人で平らげて、 ディナーの替わりにしてしまうことが何度もあったのだった。
でもミッチェル・ロンドンが店を別ロケーションに移して以来、このレモン・メレンゲ・パイとはご無沙汰状態で、 時々、思い出しては無性に食べたいという思いをしていたところ、 今年7月にフェアウェイ・マーケットがアッパー・イーストサイドにオープンし、そこに通ううちに 同店のベーカリーが 毎日ではないものの、このレモン・メレンゲ・パイを販売していることに気付いたのだった。




数年前からミッチェル・ロンドンは、フェアウェイ・マーケットのシェフ兼フード・コンサルタントになっており、 同マーケットがウエストサイド店の2階で経営するカフェのメニューは、ミッチェル・ロンドンが手掛けたもの。
彼はレモンのデザートに定評があり、フェアウェイのカフェでもレモン・デザートが名物になっていると聞いたけれど、 久々に再会したレモン・メレンゲ・パイは、以前より直径が大きく、高さは低め。 でもメレンゲは、表面がサクッとしていて、内側が独得の弾力を感じさせるクリーミーな仕上がりで、かつてのままの絶妙さ。 なので味わった途端に 以前にタイムトリップをしたような気分になってしまったのだった。

写真を見ても分かる通り、ミッチェル・ロンドンのレモン・メレンゲ・パイは、殆どがメレンゲで構成されていて、 パイ・クラストとレモン・クリームは全体の3分の1強のプロポーション。 メレンゲは甘く、前述のように不思議な弾力を感じさせるクリーミー。レモン・クリームは酸っぱく、しっとりしたクリーミー。 パイ・クラストは若干の甘さと塩味を感じるものの、味ではさほど主張せず、もっぱらサクッとしたテクスチャーが主張するパーツ。
この3つの異なるテイストとテクスチャーのコントラスト&コンビネーションを楽しみながら味わうのが、このパイの醍醐味と言えるのだった。

ちなみに、フェアウェイで売られているミッチェル・ロンドンのレモン・メレンゲ・パイは直径が約15cm程度で高さが7cmほど。 なので以前とはプロポーションが異なるけれど、お値段は以前のものが6ドルだったのに対して、 フェアウェイで見つけたものは約4ドル。これを3〜4人でシェアすると、サイズは小さいものの、非常にお値ごろなデザートになってくれるのだった。
1つ難をいえば、以前売られていたパイに比べる、レモン・クリームの酸味が緩和されて、メレンゲの甘さが若干強くなっていること。 したがって、全体的に甘さが増したのは残念な部分だったけれど、それでもメレンゲのテクスチャーは理想的と言えるもの。
昨今ベーキングに懲りだした私であるけれど、この安さとメレンゲの優秀さを思うと、 どうしても自分でレモン・メレンゲ・パイに挑戦しようという気が起こらないのだった。




他にメレンゲを使ったデザートで、私が好んでいるのばベイクド・アラスカ(写真上左)とパヴロヴァ(写真上右)。
ベイクド・アラスカは、アラスカが、アメリカの50番目の州になった際の祝賀晩餐バーティーのためにクリエイトされたデザートで、 ボトムにスポンジ・ケーキを敷いたアイスクリーム・ケーキの表面をメレンゲで覆ったデザート。 これをフランベ、すなわちアルコールを振りかけて火をつけることによって表面をベイクするのが 正式で、部屋の照明を落として、アルコールの青い炎がメレンゲに焦げ目をつける様子をドラマティックに演出するデザート。
アラスカの氷山をイメージしたと言われるデザートだけれど、昨今はフランベを省いて、 クリーム・ブリュレを作る際に使われる料理用のトーチ(小型のハンディ・バーナー)で 表面を焼くか、さっとオーブンで焼くのが一般的になっているのだった。

一方のパヴロヴァは、20世紀初頭に一斉を風靡したロシアのバレリーナ、Anna Pavlova / アナ・パヴロヴァにちなんでクリエイトされたデザート。
これは、1920年代にパブロヴァがオーストラリア&ニュージーランドのツアーに出掛けていた最中、もしくはその後に行なわれた彼女を主賓にした晩餐会で 出されたデザートで、メレンゲはパブロヴァのチュチュをイメージしたとも言われるもの。 一説には、パブロヴァは多くのバレリーナ同様、非常に食が細く、そんな彼女でも食べられる軽いデザートをシェフがあえてクリエイトしたとのこと。
でも、このデザートがニュージーランドで生まれたのか、オーストラリアで生まれたのかは不明で、2国間では 「自国こそがオリジナル」という論争がかなり行なわれてきたという。

この2つは、共に 言われのあるデザートであるけれど、自分で作ろうと思ったら簡単なのは断然パヴロヴァ。
ベイクド・アラスカは、見目麗しく作ろうとすると、絞り器を使ってアイスクリームの周りをメレンゲでデコレートすることになるので、 メレンゲがかなり良いコンディションで、しかもアイスクリームが溶ける前に、素早くデコレートする腕が無いと難しいもの。
パヴァロヴァに関しては、上に乗せるフルーツで見目麗しさに差が付くので、個人的にはキウィやバナナ、マンゴーのようなカラーのフルーツは避けて、 メレンゲと美しいコントラストを見せる、ベリー系のミックス(ストロベリー、ラズベリー、ブラック・ベリー、ブルーベリーなど)を乗せるのが センスの良いプレゼンテーションだと思うのだった。
人間というのは、食べ物を舌で味わう以前に、目で味わうもの。 特にデザートは、女性同様、センスと美しさでアピールすることによって、味の評価がさらに高まるものなのである。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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