Oct Week 4, 2012
” Narciso Rodriguez for Kohl's ”
”ナルシソ・ロドリゲス for コールズ ”



一流デザイナーと 大衆ストアのリミテッド・エディションのコラボレーション・ラインは、今では決して珍しくないもの。
このトレンドの先駆けとなったのは、2004年にH&Mがカール・ラガーフェルドと行なったコラボレーション。 以来、ステラ・マッカートニー、ヴィクター&ロルフ、ロベルト・カヴァーリ、昨年、2011年にはヴェルサーチが H&Mと コラボレーションを行なってきているけれど、 こうしたコラボレーションは メーシーズ、ターゲットといった大衆ストアも 頻繁に行なうようになってきているのだった。
特にターゲットは、インテリアやキッチン・グッズ、ステーショナリーなど、ファッション以外の広い商品分野に生産リソースを持つため、 H&Mより 広範囲な品揃えを デザイナーとのコラボで実現できる存在。 その結果、2011年秋には ミッソーニとのティーム・アップで、メンズ、ウーマンズ&チルドレンズのアパレルに加えて、 自転車、家具、カーペット、シャワー・カーテン、テーブルウェアに至るまでを揃えた 過去最大規模のデザイナー・コラボレーションを展開。 売り出し初日の数時間は ウェブサイトがパンクして、ダウンしてしまうハプニングが起こったものの、 H&Mのお株を奪う、多大なパブリシティを獲得すると同時に、大きな売り上げを記録したのだった。




そのターゲットは、11月に一流デパートであるニーマン・マーカスとのコラボレーションで、24人のデザイナーが手掛ける ホリデイ・ギフトのリミテッド・ラインを発売することになっているけれど、 私自身が 昨年のミッソーニ&ターゲットのコラボレーション以来、久々に気に入ったコラボ・ラインと言えるのが、 ここにご紹介する”ナルシソ・ロドリゲス for コールズ ” 。
今週ニューヨークでは、そのお披露目のイベントが行なわれていたけれど、 今やこうしたコラボレーションのお披露目パーティーには、セレブリティの存在が不可欠。 ナルシソ・ロドリゲス for コールズ のイベントでも、写真上左よりジュリアン・マーギュリー、エマ・ロバーツ、中央でナルシソ・ロドリゲスとポーズしている ケイティ・ホルムズ、トリッシュ・ゴフ、そしてソフィア・サンチェス らが、それぞれに彼の作品を着用して登場しているのだった。






コールズは、ターゲットやウォルマート同様、マンハッタンには進出していない大手大衆ストアなので、 ニューヨーカーには馴染みが薄い存在であるけれど、1962年にミルウォーキーで誕生した50年の歴史を持つチェーン。 現在はジェニファー・ロペスのアパレル、アクセサリー、インテリア・ラインを大々的に手掛けていることで知られる存在。

一方のナルシソ・ロドリゲスは、CFDA(アメリカ・ファッション・デザイナー協議会)が毎年選出している ウーマンズウェア・デザイナー・オブ・ジ・イヤーを 2002年、2003年と2年連続で受賞した初めてのデザイナー。
彼の名前が広く知られるようになったのは、1996年に今は亡き ジョン・F・ケネディ・ジュニア夫人、キャロリン・ビセット・ケネディの ウェディング・ドレスを手掛けたことがきっかけ。当時全く無名だった彼は、カルバン・クラインのアシスタント・デザイナーを勤めた経歴があり、 その当時、同ブランドの広報として働いていたキャロリンとは親しい友人同士。 その彼がキャロリンのために手掛けたシンプルなスリップ・ドレスは、一躍大評判となり、多くのパブリシティを獲得。 あっという間にスター・デザイナーの仲間入りを果たしたのだった。
以来、ミラノでコレクションを発表してきた彼であるけれど、2000年代に入ってからはニューヨークでランウェイ・ショーを開催。 2008年大統領選の、オバマ大統領による勝利宣言の際には、ミッシェル・オバマ夫人が 彼の作品を着用してステージに上がっており、それ以外にも ジェシカ・アルバ、シャリース・セロン、クレア・デーンズ、ダイアン・クルーガーなど、 ハリウッドのファッショニスタが、好んで レッド・カーペット上で彼のクリエーションを着用しているのだった。




私がナルシソ・ロドリゲス for コールズのラインを評価するのは、デザイナーの持ち味が上手く出ている一方で、 一般のアメリカ女性のライフスタイルにフィットし易い、スタイリッシュなラインであるため。
昨年H&Mから発売されたヴェルサーチなどは、その日は”ソールドアウト”でも、 後日、かなり返品があったことが伝えられており、 実際のところ、発売日のフィーバーが過ぎて、後から頭を冷やしてみると、「これを着て 一体何処に行けば良いのだろう?」と考えてしまうアイテムが 非常に多かったのが正直なところ。
それに比べて、ナルシソ・ロドリゲスのラインは、デザイナーを良く知るファッショニスタであれば、 一目で 彼の作品と認識可能なキャラクターを打ち出していながら、 彼の存在を知らない人々にとっても そのファッション性や、モダンさに魅力が見い出せるもの。
多くのアイテムは、他のデザイナーによるコラボ・ライン同様、かつてのナルシソ・ロドリゲスの作品を 安価な素材で 焼き直した印象であるけれど、 オフィスからディナー・デートまで、様々なオケージョンに着用できる上に、手持ちの服とも コーディネートし易いアイテムが揃っていると思うのだった。




ところで、かつては ほぼ毎年のようにH&Mのデザイナー・コラボレーションに行列していた友人によれば、 彼女がデザイナー・コラボ・ラインを買うのを止めたのは、 1回しか着用しないアイテム、一度も着用しないアイテムが多いことに気付いたため。 加えて売り出しの際のエキサイトメントに煽られて、 さほど必要ではないアイテムを買ってしまうことも、 間違いの原因だと語っていたのだった。
でも 価格が安いことも手伝って、 「そのうち着るだろう」と、返品をせずにいると、結局は一度も着用しないクローゼットの肥やしになってしまうとのこと。 それを防ぐために、張り切って翌日などに着用すると、1日が終わるころには、 何となくエキサイトメントが冷めて、飽きてしまうのが 彼女にとってのデザイナー・コラボ商品だという。

ナルシソ・ロドリゲス for コールズに話を戻せば、私は アメリカに長く住んでいるものの、 コールズというショップに足を踏み入れたことも無ければ、オンラインで購入したこともないので、 果たしてどの程度のクォリティで、仕上がっているのかは全く予測不能であるけれど、 そのお値段は30〜150ドルと かなり手ごろ。
これを買う、買わないは別として、私の考えでは、デザイナーと大衆ストアのコラボ・ラインは、同ラインのように、 一般の女性が普通の生活の中で着用し易く、支払った価格以上に活躍するようなファッショナブルさを提供するべきもの。 デザイナーの個性を強く打ち出し過ぎると、着用出来るオケージョンが限られる上に、安っぽさが目立つ仕上がりになるケースが多いと思われるのだった。
やはり一流デザイナーの独創的で、クリエイティブな作品は、それに見合ったクォリティの素材と縫製で製作されるから その素晴らしさが際立つと思うし、たとえ高いお金を出しても、飽きることなく何度も着用することによって、元が取れるケースが多いというのが 私 個人の経験から語れること。 したがって、本当に良い物は、それに見合う値段を払わないと手に入らないし、それを支払った方が結果的に割安になるというのが 私の意見。そう考えるとデザイナー物を安く買おうというのであれば、コラボ・ラインよりセールの方が間違いが無いとも言えるのだった。




ところで、今週のニューヨークでは、ナルシソ・ロドリゲス for コールズ同様に、11月に発売される メゾン・マルタン・マルジェラ・ウィズ・H&Mのお披露目も行なわれたけれど、 こちらはマンハッタン、ダウンタウンの閉鎖中のビルを会場にしたアーティスティックでシアトリカルなイベント。
同イベントにも、写真上のように セルマ・ブレア、サラー・ジェシカ・パーカー、リー・レザーク、ミナ・スバーリ、ジュリアン・ムーアに加えて、 カニエ・ウエストといったセレブリティが姿を見せていたのだった。
でも、セルマ・ブレアやサラー・ジェシカ・パーカーのアウトフィットは新興宗教の教祖のようで、 特にサラー・ジェシカのスナップは、袖が長くて、彼女の手首が見えないのが非常に不気味。ネット上では 「ハロウィーン・コスチュームかと思った」という声が聞かれたほど。 また、中央のリー・レザークが着用しているアウトフィットについては、日本人の友達が「江戸時代の洗濯女みたい」と指摘するなど、 難しいラインに仕上がっているという印象が否めないのだった。

ところで、このようなデザイナーと大衆ストアによるリミテッド・エディションのコラボ・ラインは、それを買い求めるために 大勢が行列し、あっという間に売り切れるのが常。でも、その中には再販目的で購入している人々が少なくないのが実情で、 売り切れたアイテムが、数時間後にEベイで2倍、3倍、時にそれ以上の価格で 再販されているケースは非常に多いのだった。
昨今は、失業して それをビジネスにしている人もいるけれど、そうした人々によれば、 デザイナー・コラボ・アイテムの再販は、どんどん儲からなくなってきているとのこと。
逆に 最も効率良く稼げるのは、やはりアイフォンやアイパッドの売り出し。 したがって再販を本業にしている人々は、同じく今週お披露目された アイパッド・ミニの売り出しを 心待ちにしているとのことなのだった。





FaviruteOfTheWeek FaviruteOfTheWeek FaviruteOfTheWeek

 


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

PAGE TOP