Oct. Week 5, 2011
” Tom Ford Beauty ”
” トム・フォード・ビューティー ”



私はデザイナー・ブランドの偏見がかなり強い方で、デザイナー・プロダクトを購入する際に大きく影響してくるのがそのブランド偏見。
アメリカでは、80年代以降、女性に対する最高の褒め言葉は”セクシー”であるといわれ、90年以降には ”ゴージャス”がそれに加わってきたけれど、 デザイナー・ブランドのお値段を出すからには、”セクシー”で”ゴージャス”に見せてくれるか、さもなくば そんな気分にさせてくれるプロダクトでない限りは、 購入しても意味が無いというのが私の考えなのだった。
でもセクシーな服を作るデザイナー・ブランドがセクシーなシューズをクリエイトするかと言えば、その答えは「NO」。 セクシーなシューズをクリエイトするブランドがセクシーなバッグをクリエイトするかと言えばそれも「NO」。 セクシーなフレグランスをクリエイトするブランドがセクシーなコスメティックをクリエイトできるかと言えば、やはり「NO」で、 ブランドには それぞれ得意分野&セックス・アピールが強い分野というのが存在していると思うのだった。

例えば 私個人の意見では、ジミー・チューのシューズやジョルジォ・アルマーニの服はスタイリッシュだとは思っても、セクシーだとは思わないし、 クリスチャン・ルブタンについてはシューズはセクシーでも、そのバッグについては全くセックス・アピールを感じないのだった。 ドルチェ&ガッバーナは服のラインはセクシーだと思っても、シューズやバッグのラインに同様の魅力が見出せないもの。 シャネルについては、バッグとコスメティックはセクシーだと思っても、昨今の服のラインとシューズはセックス・アピールに欠けると思うのだった。




今では多くのデザイナー・ブランドがコスメティック・ラインを手掛けていて、 比較的最近コスメ業界に参入したドルチェ&ガッバーナ(写真上左)、バーバリー(写真上右)などは、 かなりプロモーションにお金を掛けているけれど、どちらもパッケージやカラーのラインナップに今ひとつ魅力が感じられないライン。 なので、こうしたデザイナー・プロダクトよりは、ボビー・ブラウンのようなメークアップ・アーティストのラインの方が、 ユーザー・フレンドリーで実用的、かつ間違いの無い投資だと思うのだった。
かく言う私のカラー・コスメティックのコレクションは、シャネルとボビー・ブラウンが圧倒的に多いけれど、 そこに加わってきそうなのが、アメリカでは10月半ばに取扱店に並び始めたトム・フォード・ビューティー。

トム・フォードと言えば、グッチのデザイナーを辞任して以来、メンズ・ウェアとサングラスがセレブリティに圧倒的な支持を得ているけれど、 その彼がハイエンド・コスメティックとフレグランスの契約を交わしたのがエスティ・ローダー社。 既にフレグランスのラインとリミテッド・エディションのコスメティックのミニ・コレクションが展開されてきたけれど、 今回発売されたのは、そのトム・フォードの132アイテムから構成されるメークアップ&スキンケアのフルライン。
建築を学んだことがあるトム・フォードがビューティー・ラインを手掛けるにあたってフォーカスしたのが、 フェイシャル・ストラクチャー(顔の造り)と、シンメトリーの顔を演出するためのイルージョン。 美しい顔というのは左右のバランスが取れた顔。自分の顔を理解して、メークでその理想の姿に近づけるというのがそのコンセプトになっているのだった。
カラー・ストーリーについては、イギリス人メークアップ・アーティスト、シャーロット・ティルバリーの協力を得て、 フェミニンかつ、モダン・クラシックなゴージャスをクリエイト。1970年代のニューヨークのナイトクラブ、スタジオ54のグラマラスな世界と、 その時代のビューティー・アイコンであるローレン・ハットン、ジェリー・ホールといったキャラクターをイメージしたとのこと。
そのイメージは、写真下のモデル、ラーラ・ストーンをフィーチャーした広告に如実に反映されているのだった。




トム・フォードは、過去数年のフレグランスの広告写真においては、イメージがセクシー過ぎるという批判を浴びてきたけれど、 今回のコスメティック・ラインの広告は そのセクシーさが適度に抑えられているもの。
それと同時に、高額なコスメティック・ラインを売るに相応しい、ゴージャスな仕上がりになっているけれど、 トム・フォード・ビューティーのプロダクトは、お値段は高くても それに見合う素晴らしいクォリティとカラーラインナップ。 パッケージがモダンでスタイリッシュなのはもちろん、 ブラシの優秀さは本当に申し分が無いし、リップやネールは欲しいカラーが一杯で選べないほど。
私が購入を決めているのは、写真一番上でラーラ・ストーンがつけているネール、ヴァイパーとスモーク・レッド。 リップ・スティックは、クリムゾン・ノアールと、ヴァイオレット・フェイタルが私が特に気に入っているカラー。

カラー・コスメティックの世界では、これまではシャネルが 普通のブランドだったら絶対売れないような難しいカラーを エレガントかつセクシーにクリエイトして、完売に次ぐ完売を続けてきているけれど、 トム・フォード・ビューティーのラインナップも、そんなシャネルに通じる抜群のセンスの良さが感じられるもの。
特にネールは、シャネルをつけていると、別のブランドの似たようなカラーでは満足できなくなってしまうのは 以前、このコーナーでシャネルのネールを取り上げた際にも書いたけれど、 トム・フォード・ビューティーのネールも、それに匹敵するような、”他のブランドとは何かが違うカラー” に仕上がっているのだった。

よく「手に生活が現れる」というけれど、昨今私が感じるのは、「ネールに年齢とセンスが現れる」ということ。
やはり若々しいルックスとセンスの人の方が、エッジーなネール・カラーをつけていて、 年齢を感じさせる女性ほど、同じレッドやピンクをつけていても、オールド・ファッションな印象に感じられるカラーを選んでいるように思うのだった。
その境界線というのは、ほんのちょっとした発色の違いであったりするけれど、その違いが手の表情や肌の色とのコントラスト、 ジュエリーの見場に大きな影響を与えているのは紛れもない事実なのだった。






ところで、個人的に私がトム・フォード・ビューティーのプロダクト・ラインが凄いと思うのは、この私を何年かぶりで 「アイシャドウ・パレットが買いたい!」という気にさせてくれたこと。
というのも私はアメリカに来てからというもの、アイシャドウを殆ど使わなくなっており、今はボビー・ブラウンの薄いグレーやブラウンをベースに伸ばす程度なので、 全くアイシャドウというものが減らなくて、今 使っているボビーのアイシャドウは恐らく4年くらい前のもの。
でも、かつて私は アイシャドウを買い揃えていた時期があって、ヴァニティ(鏡台)の引き出しを開けると、大学時代〜20代半ばに購入したシャネルのクァドラ・シャドウ(4色パレット)が、 今も10個近く出てくるけれど、使わなくなっても 何となくセンチメンタル・バリューがあるので捨てられずに居るのが シャネルのパレットなのだった。

とは言っても、アイシャドウとて年月が経てば進化しているもので、それを感じさせてくれるのがトム・フォード・ビューティーのアイカラー・クァッド。
パレットにセットされている4色は、デイタイムのナチュラルなメークから、インパクトのあるゴージャスなメークまで、 マルチ・ルックをクリエイトするためにデザインされていて、シアー・スパークル、サテン、シマー、マットという4つのテクスチャーで構成されたもの。 パレットにセットするカラー選択が非常に洗練されているだけでなく、その色の用途と、それが可能にするメークまでを考慮したコンセプトなので、 4色シャドウ・パレットにありがちな、「1〜2色しか頻繁に使わなくて、残りのカラーが無駄になる」というようなことが無いプロダクトに仕上がっているのだった。
今時、シャドウの発色が良く、それが持続するというのは 当たり前であるけれど、トム・フォードのアイシャドウは発色以前にカラー・センスが優秀なので、 手持ちの似たようなカラーでは出せない陰影が出るのが凄いところ。なのでメークが上手くなったような気分さえ味わうことが出来るのだった。




私が気に入っているのは、写真上のシルバード・トパーズ(左側)とココア・ミラージュ(右側)。
アイシャドウもネールと同様で、高額なプロダクトは安物の化粧品には無い上品さと、「やっぱり高いものは違う!」と思わせる何かがあるもの。 なのでお値段が張っても、私は このアイシャドウ・パレットに投資する意義はあると思うのだった。

トム・フォード・ビューティーのスキンケア・ラインにも興味深々であるけれど、私は、現時点で 試しているプロダクトが多過ぎて、暫くは手が回らないのが実情。 でも、既に使い始めた人々の間では評判は上々なのだった。
中でも、美容液が大好きな私としては、ラインの中で最も高額かつ、トム・フォードが最もこだわったといわれるインテンシブ・ヒュージョン・コンセントレート・エクストリームを トライしたくてウズウズしている状態。なので、これからトム・フォード・ビューティーに私のビューティー・バジェットがかなり割かれるのは時間の問題と言えるのだった。

トム・フォード・ビューティーで1つ残念なのは、発売前から噂になっていた「カリグラフィー・ティップ・ブロウ・ペン」がラインナップに未だ入っていないこと。
これはアイブロウ用のペンであるけれど、カリグラフのペンのように細く、精巧なラインが引けるもの。 このペンを使えば、通常のブロウ・ペンシルや、ブロウ・パウダーのように、眉のシェイプを塗るのではなくて、 眉毛を1本1本描きながら、美しい眉を演出することが出来るとのこと。
トム・フォードによれば、太く、インパクトのある眉は若々しい顔の象徴。このブロウ・ペンは年齢によって眉が薄くなる女性のニーズを考慮したプロダクトで、 描く眉の形によって、顔のシェイプの問題点をカバーすることも出来るとしているのだった。

さて今年からは、これまでグッチとの契約が残っていたせいで手掛けることが出来なかったウーマンズ・ファッションのクリエイトが再開できるようになったトム・フォードであるけれど、 同時にデビューしているのが、彼のバッグ・ライン。既にセレブリティではアンジェリーナ・ジョリーなどが愛用しているトム・フォードのバッグであるけれど、 残念ながらこのバッグ・ラインについては、彼の服やコスメティック、サングラスのラインに見られるようなセクシーさが全く見られず、 かなり平凡な出来になっているのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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