Oct Week 3, 2016
” Political Haunted House, Doomocrasy ”
社会と政治のホラーを描いたヴァーチャル体験、”ドゥーモクラシー”


10月7日から11月6日までの日程でブルックリン・アーミー・ターミナルで行われているのが、 ”ポリティカル・ホーンテッド・ハウス”、すなわちハロウィーンのホーンテッド・ハウス(呪いの館)の政治版としてクリエイトされた ”ドゥーモクラシー”。
これを手掛けたのはメキシコ人アーティストのペドロ・レイヤスで、過去にも銃規制など社会的なメッセージを打ち出した アート・エキジビジョンを行ってきた存在。 その彼と様々なアート・イベントを手掛ける団体、クリエイティブ・タイムが、クラウド・ファンディングのウェブサイト、キックスターターで資金を調達して開催したのが今回のエキジビジョン。
大統領選挙が過去に例を見ないほどアグリーな様相を呈していることを受けて、政治こそが最も社会にとって恐ろしいホラーという 視点からクリエイトされたのが”ドゥーモクラシー”であるけれど、 アーティストがその恐怖のを描いているのは、特定の政治家ではなく、金融、環境問題、製薬会社、処方箋薬を簡単に処方するドクター、 人工中絶、移民問題など世の中の仕組みやシステム。
参加者が2時間かけて体験する様々なシーンは、全てアメリカに暮らしている人々が時にあまりに日常的になり過ぎて 忘れかけていたり、知らず知らずのうちに起こっていたり、巻き込まれている問題の数々。 ユーモアを感じさせるホラーから、心底考えさせられるものまでを巧みに描いて、 人々にヴァーチャル体験させるアート・エキジビジョンになっているのだった。




まず”ドゥーモクラシー”の参加者は、バンに乗せられて会場に向かうかのように思われるけれど、 バンの中でアクターが語りだすのが人種浄化や移民問題。 やがてバンが警察か軍隊かもわからない制服のセキュリティによって止められ、参加者全員が味わうのが 車から捕虜のように降ろされ、壁の前に一列に並ばされる恐怖。 そして「何処から来た?」、「家族にテロリストは居るか?」などと乱暴な口調で、まるで自分を逮捕する理由を探しているよう 尋問を受けることになるのだった。(写真上)


やがて一行は、選挙の投票所に出掛けるけれど、そこには一見善良なボランティアの女性(写真上)が居て、 投票者登録がされていないなどの理由をでっちあげては、追い払われて、誰1人として投票が出来ないうちに投票時間が終了するというジレンマを味わうことになるのだった。


その後 葬儀場に出掛けると、そこでは子供たちが生前好物だった、ドーナツ、フライド・チキンといった、 加工食品の形の棺桶に入って葬られる様子を オルガンを弾きながら語る葬儀マスターが登場(写真上)。




国立公園にやってくると、そこは”ネイチャー・コープ”という企業に仕切られており、「大きな利益のためには、小さな犠牲を払ってしかるべき」と 言って渡されたのが、バーチャル・リアリティのゴーグル。それをつけると、目の前に3Dの素晴らしい自然の光景が広がるものの、 一度ゴーグルを外すと、企業によってその自然が既に破壊され、悲惨でダークな状況があるだけ。
このシーンについては、大企業と結託した共和党議員から、既に国立公園の経営・運営を民間企業に委託する法案が出されているだけに、 近い将来に実際に迫っているホラーとも言えるのだった。


そうかと思えば、ハイスクールのタレント・ショー(学芸会)ではチアリーダーが踊る中、シングル・マザーになったティーンエイジャーを かつてKKKが黒人層に対して行ったような火あぶりにするシーンが登場。(写真上)


”Breathe / ブリーズ” というブティックに出掛ければ、そこでは”ピュア・ヒマラヤン・エア”という ドラッグが売られており(写真上)、 学校のクラスのシーンでは 大企業のロイヤル・カストマーになるための教育がされ、 病院の待合室に行けば、そこでは見るからに気の毒な高齢の女性が、自分の処方箋薬の中毒について同情を求めるように語りかけて来て、 処方箋薬を自分のために医師からもらってきて欲しいと頼まれるなど、現代社会のホラーを様々な形でヴァーチャル体験することになるのが、 ”ドゥーモクラシー”。
50人ものアクターと、脚本家、監督を雇っての本格的なプロダクションでありながら、このエキジビジョンは無料。 参加者のスポットはオファー開始と同時に直ぐに埋まってしまったけれど、 ホゼ・レイヤスによれば このエキジビジョンの目的は、 世の中の様々なホラーに接することにるデトックスであり、ピュアリフィケーション。
確かに、たとえヴァーチャルでも こんな歪んだ世界を見てしまうと、 史上最悪のアグリーな選挙戦が繰り広げられるアメリカの現状が、とてもまともで 有り難くさえ思えてしまうのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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