Nov. Week 2, 2011
” Dominique Ansel Bakery ”
” ドミニク・アンセル・ベーカリー ”




「パンが無いと生きられない!」というほど、パンやペストリーを好む私は、評判のベーカリーがオープンすると早速出かけるのが常。
なので、11月2日にオープンした ドミニク・アンセル・ベーカリーの記事をニューヨーク・タイムズで読んだ私は、 その3日後にはソーホーの同店に足を運んでいたのだった。

ドミニク・アンセルは過去6年間、ミシュランから3つ星、ニューヨーク・タイムズのレビューで最高の4つ星を 獲得しているニューヨークのフレンチ・レストラン、ダニエルのペストリー・シェフ(フランス語で言うパティシエ)だった人物で、 その前はフォーションで働いていたという経歴の持ち主。
パリの北に位置するピカルディー出身の彼がオープンしたベーカリーは、クロワッサン、カヌレ、マカロンといった 定番に加えて、ニューヨークでは滅多にお目に掛れないクイニー・アマンやパリ・ブレストのアレンジ版などが 商品ラインナップに加わっていると記事に書かれていたので、 クイニー・アマンとパリ・ブレストが大好物な私としては、出掛けずには居られないという感じなのだった。

クイニー・アマンは、 日本でも少し前にブームだったので ご存知の方も多いと思うけれど、 ブルターニュ地方のペストリー。バターをたっぷり使ったリッチな味わいのペストリー・ドウ(生地)の 表面を砂糖でキャラメライズしたもの。
店のスタッフによれば、クイニー・アマンは ドミニク・アンセルのシグニチャーだそうで、彼のクイニー・アマンは フランスでトップに選ばれたこともあるとのことなのだった。 なので、期待に胸を膨らませて購入したのが写真下のクイニー・アマン。
サイズは直径7センチ程度で、小さめであるけれどお値段は5.5ドル。円高のご時世なので、日本円に換算すればそれほど高くはないけれど、 ニューヨークではバゲット(いわゆるフランスパン)が1本3ドル前後で買えることを思うと、こんな小さなペストリーに5.5ドルというのは かなり割高なイメージがあるのが事実なのだった。




でも食べてみると、甘さが控えめで、キャラメライズされた部分がカリカリのクイニー・アマンはなかなかの美味しさ。
パリのピエール・エルメで売られていたスタイルに似ていて、ニューヨークで本格的なクイニー・アマンが食べられるようになったのは 私にとっては明るいニュースなのだった。

ところで私は、新しいベーカリーを試す時は、必ずクロワッサンを買うことにしているけれど、クロワッサンというのは バゲットと並んで、フレンチ・べーカリーの良し悪しが現れるアイテム。
私が個人的にこれまで食べたクロワッサンの中で最も美味しいと思ったのも パリのピエール・エルメであったけれど、 クロワッサンと言えば、外側のカリッとした焼き上がりと、内側の粘りを感じさせる柔らかいバター風味の生地のコントラストが最大の醍醐味。
ドミニク・アンセルのクロワッサンは、内側はシットリしている上に バター風味と ほのかな甘味で合格点。 この生地の美味しさは クイニー・アマンの味にも大きく反映されていると思うのだった。
でも表面のサクサク感はいま1つで、 その食感が視覚で感じ取れるような表面のテカりも足りないというのが第1の問題点。 さらに、私にとってクロワッサンは両端の尖った部分のカリカリした美味しさも醍醐味であるのに、ドミニク・アンセルのクロワッサンは、 三日月のシェイプの両端が無いシェイプ。なので、これについては諸手を上げて評価する訳には行かないのだった。




写真上は、ドミニク・アンセルがパリ・ブレストをアレンジした、パリ・ニューヨーク。
パリ・ブレストは、要するにリング・シューであるけれど、パリ・ニューヨークはリング・シューの中味がピーナッツ・クリームとチョコレートのレイヤー。 表面はへーゼルナッツ・アイシングで、キャラメルとカリッとしたナッツのトッピングが思いもかけず美味しく、食感に変化を与えているのだった。
私は、パリ・ニューヨークをショーケースの中で見たときは、内心ちょっとガッカリして、「どうしてパリ・ブレストをこんな風にアレンジするんだろう」と 思ってしまったけれど、実際に食べてみたら、これはこれで美味しいと思ってしまったのだった。
私はピーナッツ・バターがそれほど好きではないので、中に入っているピーナッツ・クリームも同様の味を想像してしまったけれど、 さすがにフレンチ・スタイルのベーカリーとあって、ピーナッツ・クリームは非常に上品な味。 チョコレートとパタシューとの相性も抜群になっているのだった。

また、ニューヨークではフレンチ・ベーカリーでさえ、パタシューが硬すぎたり、柔らかすぎたりして、 クリーム・パフ(シュークリーム)やエクレアがあまり美味しいとは思えないことが多いけれど、 ドミニク・アンセルのパタシューは、2日目でも美味しく食べられるもの。 それだけに、「彼が作ったパリ・ブレストが食べてみたい」というのが私の偽らざる本音なのだった。




写真上のカヌレもドミニク・アンセルのお得意の品の1つ。
私が思うに、カヌレを始めとする一部のペストリーは、時に湿度が食感に影響する場合があって、 最初に食べたカヌレは、外がカリカリ、中がシットリという、カヌレのお手本のような焼き具合だったけれど、 2度目に食べた時は、全体的にちょっとガミーというか、カリカリ感が鈍った感じがあって、 この日がたまたま大雨だったこともあり、これは湿度のせいなのかもしれないと思ってしまったのだった。

お値段はクロワッサンが3ドル、パリ・ニューヨークが5.5ドル、ケーキ類は3〜5.5ドル。

私が試していない、もう1つの同店のシグニチャーは、彼の出身地からのネーミングで、”ピカルディー”と呼ばれるペストリー。 これは、ブリオッシュとパウンド・ケーキの中間と言われるものの、非常に軽いテクスチャーで、 ブレック・ファストにカフェオレと一緒に、バターやジャムをつけて味わうのに最適と言われるもの。

私がドミニク・アンセル・ベーカリーに好感を持ったのは、同店が本格的なフレンチ・パティスリーでありながら、 アメリカン・ベーカリーの素朴さを感じさせるところ。
同店では、アイスクリームやサンドウィッチ、サラダ。スープなども販売しており、ランチタイムには クロック・ムッシュ、ローステッド・ポーク・クラブ、パニーニなどのサンドウィッチが良く売れているとのこと。 ちなみにサンドウィッチやサラダは10ドル〜12ドルというお値段になっているのだった。

これまではソーホーに出かけると 長寿人気レストラン、バルタザールのベーカリーでパンやペストリーを買って帰ることが多かった私だけれど、 これからは、バルタザールがあるスプリング・ストリートを西に向かって歩いて、 ドミニク・アンセル・ベーカリーまで足を伸ばすというオプションが加わったと言えるのだった。


Dominique Ansel Bakery
189 Spring Street
Tel:212-219-2773





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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