Nov Week 3, 2012
” Occupy Sunday ”
”オキュパイ・サンディ ”



昨年9月にスタートした、金融業界や大企業のビジネスの不正に抗議するムーブメント、 「オキュパイ・ウォールストリート」は、まだ記憶に新しいだけでなく、 今年9月には ムーブメント1周年記念のデモンストレーションも行なわれ、 スピリッツの健在さがアピールされたばかり。
そのオキュパイ・ウォールストリートが、昨今再びメディアを賑わせているけれど、 今回の彼らの名称は、”オキュパイ・サンディ”。 ニューヨーク&ニュージャージー・エリアを襲ったスーパーストーム、サンディの被災者を 救済するための ”Mutual Aid / ミューチュラル・エイド”、すなわち「共済」として活動しているのだった。
オキュパイ・サンディが”チャリティ” ではなく、”ミューチュラル・エイド”と自らを称しているのは、 チャイティ活動をするNPOのステータスが無いためであるけれど、 その結集と行動の早さは、こうした被災時のために存在するチャリティ団体を遥かに勝るものなのだった。

そもそもオキュパイ・ウォールストリートは、ソーシャル・メディア・サヴィが集まってスタートしたグラス・ルーツ・ムーブメントで、 その主要メンバーによって、ストームの最中からスタートしていたのがネットワーキング。
そして、ストームが去った翌日には、ブルックリンの2つの教会、 及びその教会のコミュニティとタイアップして、 教会内にベース・キャンプを設置。既に その日のうちにソーシャル・メディアを通じて救援物資とボランティアを集めて、 最も被害が大きかったエリアを中心に、医薬品、フード、水、衣類などを届ける活動、 浸水した家に取り残された人々が居ないかを見回って、救出する活動をスタート。
FEMA(フィーマ:Federal Emergency Management Agency/連邦緊急事態管理庁)よりも、 レッド・クロスよりも 素早く、そして効率良く 救援活動をして、 どの団体よりも 被災地の人々を助ける存在になっていたのだった。
その組織のオーガナイズぶりは、メディアも目を見張るほどで、 レッド・クロスでさえ、遅ればせながら手配したブランケットを、より効率良く配布するために、 オキュパイ・サンディのブルックリンのベース・キャンプに届けたほどで、彼らは アメリカ最大のチャリティよりも、機動力に勝ることを立証しているのだった。





今回のサンディで マンハッタンは、ダウンタウンが停電、浸水したけれど、最も早く電力が戻った同エリアでさえ、 食材や商品、建物本体に多額のダメージを受けたショップやレストランは多く、 高額なレントを払いながら、店の修復費を返済するのは不可能として、閉店を決めたビジネスも 出始めている状況。 加えて、浸水で電気施設にダメージを受けたビルでは、エリアに電力が戻っても 停電が続いており、高層ビルでは 電力が無いために水を各世帯に供給するポンプが動かず、断水状態も続いているのだった。
ニューヨーク郊外のロング・アイランドの一部では、サンディが去って2週間が経過しても、未だ電力が戻らないどころか、 何時 復旧するかの目処も立たないことが、住民のフラストレーションを募らせているのが実情。 また写真上、上段右のクイーンズのブリージング・ポイントのように、ハリケーン中の火災で 家屋が100世帯以上消失したエリア、ジャージー・ショアやスタッテン・アイランドのように洪水で家屋が崩壊し、流されてしまったエリア、 時速160キロという信じられない強風で、家屋が吹き飛ばされたエリアは、今や何処から手を付けて良いか分からないほどの瓦礫の山。 ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットの3州だけで、FIMAに寄せられた家屋を失った被害件数は、現時点までで20万世帯以上。
9・11のテロよりも、復旧まで遥かに長い道のりが見込まれる 凄まじい被害になっているけれど、 家屋が大被害を受け、救援物資が遅れているエリアほど、救援のサポートがやって来ても、 「自分よりもっと大変な人を助けてあげて欲しい」と 被災者が譲り合うなど、コミュニティが信じられないほどに助け合って 生活しているのだった。
そんな人々は、多額の寄付を集めておきながら対応が遅く、援助が行き渡らないにもかかわらず、「ベストを尽くして、最高の仕事をしている」とCEOがコメントする レッド・クロスには怒りを募らせているけれど、 オキュパイ・サンディの活動と献身的なボランティアに対しては 大絶賛をしていて、彼らのオキュパイ・ウォールストリート時代のスローガン、 「We are 99% (アメリカの1%の富裕層では無いという意味)」をパクって 「I'm 99%」と言いながら、ボランティアに感謝しているという。





さて、メディアも驚くオキュパイ・サンディのオーガナイズぶりが どのようなものであるかと言えば、 被災者はテキスト・メッセージで オキュパイ・サンディに助けを求められるだけでなく、 ウェブサイトにしても活動状況や必要な救援物資が分かりやすく、 オンラインで寄付が出来るのはもちろん、救援物資の寄付をドロップするロケーション、ボランティアの応募方法など、 必要な情報が、非常に簡単に得られる素晴らしい作り。
さらに、必要な救援物資を確実に寄付してもらえるように、アマゾン・ドット・コムのウェディング・レジストリーを利用しているのも、 賢いポイント。 ウェディング・レジストリーとは、結婚するカップルが 自分達に必要なホーム・グッズや家電製品などを 贈ってもらえるように、予め希望するギフトを小売店に登録して、 その中から予算に応じてギフトを選んでもらうというシステム。
既に、衣類が十分にあって、乳児のオムツ、ゴミ袋、ブランケット、バッテリー、洗浄グッズなどが不足している オキュパイ・サンディであるけれど、このシステムを使って、彼らが必要な救援物資をアマゾンの商品からピックアップし、 寄付をする人々は そのレジストリーのリストから、予算に応じてグッズを購入し、 それをアマゾンがオキュパイ・サンディのベース・キャンプに配達するという流れ。 これによって世界中の何処に居ても、オキュパイ・サンディが確実に必要としているものを アマゾンを通じて寄付が出来るように工夫しているのだった。
さらに寄付金が 100%被災者の手に渡ることを謳っているところも、他のチャリティとは異なるところ。 ボランティアにしても 物資の供給だけでなく、瓦礫の片付けや洗浄作業など、被災地の人々が困っている様々な面を サポートしており、それもレッド・クロスよりも遥かに感謝される理由になっているのだった。

写真上、下段左は サンディの9日後にニューヨーク・エリアを襲ったスノー・ストームの日の オキュパイ・サンディのベース・キャンプの1つの写真であるけれど、この日はFIMAでさえ天候を理由に 救援センターをクローズし、活動していなかった状態。 でもオキュパイ・サンディは、「こんなスノー・ストームの日だからこそ、被災者の人々は尚のこと自分達のヘルプが必要」と 活動を続けており、ボランティアはもっぱら同じニューヨーカーとして、被災したニューヨーカーやニュージャージーの人々を 助けたいという地元の人々。
オキュパイ・ウォールストリートで示したグラス・ルーツ・パワーを、今度は被災者を助けるために 使おうという彼らの善意と行動力は、広く一般の人々にアピールして、 レッド・クロスには寄付をせず、オキュパイ・サンディに寄付をするという人々が続々と増えているのだった。
実は私もその1人で、このコラムを書く前にアマゾン・ドットコムのレジストリーを使って、寄付をしたけれど、 私は既にアマゾンにアカウントがあるので、所要時間は僅か3分。レジストリーは必要なグッズの中でも、何が即座に必要かが直ぐに分かる 素晴らしいシステムになっているのだった。

ウォールストリートへの抗議活動の際には、賛否両論で 「失業者や貧乏人の腹いせ」と決め付ける人々さえいた オキュパイのムーブメントであるけれど、オキュパイ・サンディで彼らが見せている 誠実な活動は、1年前の彼らのプロテストが 正義感で行なわれていたことを 立証しうるもの。
彼らが、世界最大のチャリティであり、災害救援を本業とするレッド・クロスや政府機関であるFEMAより、 存在感のある救援活動を、僅かなバジェットとソーシャル・メディアのみで、あっという間にやってのけている様子、 そして労力だけでなく、経済的な自腹を切ってまで被災者を助けようという熱心なボランティアが、 オキュパイ・サンディに集まってくる状況を目の当たりにして、今や1年前に彼らの活動を批判していたメディアでさえ、 「災害援助はオキュパイ・サンディをモデルにするべき」と手放しで評価しているのだった。

なので、もしニューヨーク、ニュージャージーのハリケーンの救済に寄付をして下さる方がいらしたら、 寄付金がエグゼクティブの高額給与になるような大手チャリティではなく、100%被災者、及びその救援活動に使われる オキュパイ・サンディへお願い致します。
(ちなみにアメリカン・レッド・クロスは、既に1億3100万ドル(約105億円)をサンディ救援基金の 寄付として集め、5000人以上のボランティアの力を借りているにも関わらず、 被災地でその存在感が無いだけでなく、関係者が1泊800ドル(約6万4000円)を超えるソーホー・グランド・ホテルに滞在し、 その宿泊費に 貴重な寄付金の約18万ドル(約1440万円)を当てて、贅沢なステイをしていたことが報じられています。)

オキュパイ・サンディ・ウェブサイト:http://interoccupy.net/occupysandy/





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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