Nov. Week 4, 2016
Thanksgiving Heartwarming Viral Story
アメリカ中が感動したサンクスギヴィングのヴァイラル・ストーリー
11月24日のサンクスギヴィング・デイを翌週に控えた11月3週目に、アメリカのソーシャル・メディア上でヴァイラルになったのが
アリゾナ州に住むワンダ・デンチ(写真上中央)が見ず知らずのティーンエイジャー、ジャマル・ヒントン(写真上左)にテキスト・メッセージ(ショートメール)を間違って送付し、
それがきっかけで彼をサンクスギヴィング・ディナーに招待してしまったというエピソード。
事のきっかけは、ワンダが家族に「今年のサンクスギヴィング・ディナーは3時から」という連絡をテキスト・メッセージで送付したこと。
でも、ワンダは孫のスマートフォンの番号が替わったことを知らされていなかったために、テキストを受け取ったのはジャマル。
何のことだか分からなかったジャマルは、”誰?”というメッセージで返すと、
戻ってきたのは”Your Grandma (あなたのおばあちゃん)” というワンダからのリプライ。
”Grandma? Can I have a picture? (おばあちゃん?写真送ってくれる?)” というジャマルに、
ワンダが職場からセルフィーを送付したところ、戻ってきたのはジャマルのセルフィーと共に
”You're not my Grandma”, "Can I still get a plate thou(ボクのおばあちゃんじゃないよ。それでもご馳走してくれる?)"
というテキスト・メッセージ。
ここまでのやり取りなら、間違った相手にテキスト・メッセージを送付した場合にありがちなシナリオ。
特にニュース性があるやり取りという訳ではないのだった。
でも、ジャマルのセルフィーとメッセージを見て、初めて自分の間違いに気付いたワンダが彼に返信したのが、
”Of course you can, Grandmas feed all. That’s what we do,(もちろん、おばあちゃんは誰にでもごはんをご馳走するのよ)”
というメッセージ。
これを受け取って心温まる思いをしたジャマルが このやり取りをソーシャル・メディア上でシェアしたところ、
あっという間にヴァイラルとなり、ソーシャル・メディアだけでなく、通常のメディアまでが取り上げるニュースになってしまったけれど、
その背景にあるのは、史上最悪のアグリーな大統領選挙の後、人々がハートウォーミングなストーリーに飢えていたこと。
さらにこれが報じられた11月3週目は、翌週のサンクスギヴィング・ディナーで、政治に対する意見が異なる家族が集まって
口論になることを人々が危惧し始めた時。
そんな時に、間違って送付したテキスト・メッセージがきっかけで、人種もバックグラウンドも年齢も違うストレンジャーを
サンクスギヴィングに招待してしまうワンダのやさしさ、メッセージが自分宛てでないと分かっても ワンダとのコミュニケーションを楽しむジャマルの無邪気さが
アメリカ中の共感を集め、ワンダのもとには全米から感謝や賞賛のメッセージが寄せられて、
彼女は電話番号を変えなければならなかったほど。
そのメッセージは「お陰で皆が愛し合って生きなければいけないことを思い出した。ありがとう」、「サンクスギヴィングの本当の意味合いを学んだ」という内容のもので、
ワンダ自身もそれを読んで感動して「人間の本来の素晴らしさを再認識した」と涙ぐんでいたのだった。
そうして迎えた11月24日のサンクスギヴィング・デイに実現したのが、ジャマルを招待してのワンダ一家のサンクスギヴィング・ディナー。
2人のテキスト・メッセージのやり取りがヴァイラルになっていただけに、このサンクスギヴィング・ディナーの実現には
メディアの取材も駆け付けていたけれど、
実はこの2人、このディナーの前にも一度 メディアの取材でフェイス・トゥ・フェイスの出会いが実現していて、
その時に正式にジャマルをサンクスギヴィング・ディナーに招待したのがワンダ。
彼女によれば、年齢もバックグラウンドも違うジャマルであるものの、彼に会った途端に
好感を持って、もっと彼のことが知りたくなったとのこと。
一方のジャマルも、ワンダのやさしさやフレンドリーさを絶賛していて、メディアの取材に一緒に応じた2人が
とても気が合った様子であったことも このエピソードを益々美談にしていたポイント。
ワンダのサンクスギヴィング・ディナーで、彼女のファミリー全員から温かく迎えられたジャマルの様子は、
翌日のアメリカで再びヴァイラルになっていたけれど、
こんなストーリーに多くの人々が共鳴することを思うと、
大統領選挙ですっかり分断されてしまったアメリカでも、
まだまだ人々が心の優しさというレベルでは通い合えることを証明しているように思うのだった。
執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。