Dec. Week 2, 2011
” Ai Fiori ”
” アイ・フィオーリ ”


私は新しいレストランがオープンすると、お値段が手ごろなレストランについては、 仕事柄、早めに出かけておこうと思うけれど、高額なレストランについては、オープンから2ヶ月程度が経過して、 メディアのレビューが出てから出掛けるのが常。
というのも新しいレストランというのは、オープン直後に出かけると、オペレーションがしっかり成り立っていなくて、 サービスの不手際が起こる可能性が高い上に、お値段が高いからといって必ずしも美味しいものが食べられる保障が無いため。 高額で、料理の味もサービスも 大したことが無いレストランで食事をするほど馬鹿らしいことは無い訳で、 高いお値段を払う場合、ニューヨーク・タイムズを始めとするローカル・メディアのレビューには特に関心を払うようにしているのだった。

でもレストラン関連のウェブサイトに寄せられる一般の人々のリアクションや、ブログなどは 正直なところあまり信頼していなくて、それというのは 私の知人がレストラン・オーナーに頼まれて、 よくこうしたレストラン・サイトのレビューを書いているため。 その頼まれるレビューの中には、ライバル店のこき下ろしも含まれているのだそうで、 一般人が書き込めるサイトのリアクションは、信憑性がかなり落ちるというのが私のみならず、通常のリアクション。
でも中には本当にサービスが酷くて、頭に来て書いている人も居る訳で、そうした人の書き込みは 極めて具体的で、どういう風に酷かったかが事細かに書いてあるので、ウソでは無いというのがはっきり分かるのだった。

ブログをあまり信頼しないのは、プロのレストラン・レビューアーのように1つのレストランに数回足を運んで、 メニューの多くのディッシュをトライしてから書いている訳ではないのと、やはりレストランを評価する目的で、 ワイン・リストの内容からサービスの細部までをチェックするために出かけているプロのレビューアーと、 友達と食事を楽しむために出かけたレストランについて書いているブロガーとは、 視点も評価の厳しさも異なると考えるため。
加えて、個人の味覚というのは状況に応じて異なるもの。ブロガーが「Fantastic!」、「Wonderful!」と讃えているレストランに出掛けて、 「よほどお腹が空いている時に訪れたのでは?」と思うことは少なくないのである。

でも、ローカル・メディア、ことにニューヨーク・タイムズのレビューアーが高い評価を与えると、 途端にそのレストランの予約が取りにくくなるのがニューヨークのレストラン事情。 もちろんレビューが悪ければ逆に予約が取り易くなるし、過去にはニューヨーク・タイムズで 星が付かないだけでなく「Poor」と 評価されて、閉店に追い込まれたレストランは何軒も存在するのだった。
すなわち、ニューヨーカーは私同様に、メディアのレビューが出てから新しいレストランに出かけようという人が多いと言えるけれど、 レビューが悪ければ行かないだけなので、どうということはないけれど、レビューが最高4つ星中の3つ星以上になると、 今度は それを見たニューヨーカーの予約が殺到して、全然予約が取れないという思いをして、 暫くの間 そのレストランに行き損ねるという状況になってしまうのだった。

私にとって、その典型例がここに紹介するイタリアン・レストラン、アイ・フィオーリ。
アイ・フィオーリは、ミッドタウンにオープンしたセタイ・ニューヨーク・ホテルの中の高級イタリアンで、 シェフを務めるのは、今ニューヨークで最もホットなイタリアン・シェフと言われるマイケル・ホワイト。 彼は、古くはソーホーの今は無き、フィアマのシェフを勤めたこともあったけれど、 その後、アルト、マレアなどの人気店を手掛けて、すっかりセレブリティ・シェフの仲間入りをした存在。

ずっとアイ・フィオーリに行き損ねていた今年7月に、たまたま友人がセタイ・ホテルに滞在していたので、 滞在客なら簡単に予約が取れるだろうと思って 「アイ・フィオーリに行きたい!」と訴えたけれど、既にその友人は滞在中に2回もアイ・フィオーリでディナーをさせられていて、 結局 その時は、友人の希望で 2012年のミシュランで新たに3つ星を獲得した イレブン・マディソン・パーク に出かけたのだった。





そうするうちに、またあっという間に時間が経ってしまい、やっと私が同店で食事をすることが出来たのが、2週間ほど前のこと。
これほど長く行きたいと思っていた割には、この日に食べたランチがヘビーだったため、 メインはオーダーせず、この日私が味わったのは、 ”トルション”というフォアグラと、ボスク・ペア、アーモンド・ザバイオーネ、 そして別の小皿にトーステッド・ブリオッシュを添えたアペタイザーと、 ”トロフィー・ネロ”という 同店の名物パスタ。これはイカ墨のツイスト・パスタにホタテのソテーと、スパイシー・ブラッドクラム(パン粉)の トッピングをしたもの。(写真上の2皿)
トロフィー・ネロはパスタを茹で始めてから、ソースを作り始めるというほど 簡単に作れるもので10分程度で仕上がるディッシュだけれど、 そのシンプルさが絶妙に美味しくて、すっかり気に入ってしまったのだった。
ちなみに、全てのパスタはフル・ポーションとハーフ・ポーションがあるので、 パスタをメインにすることも、アペタイザー替わりにすることも可能なのは嬉しいところなのだった。

マイケル・ホワイトというシェフは、シーフードの扱いが上手いシェフとして知られるけれど、 実際、イタリアン・フードはびっくりするほど魚料理が多いもの。
今や、ベビー・ブーマー・エイジを中心に、健康上の理由から魚は食べても、肉は食べないセミ・ヴェジタリアンが増えているご時世であるだけに、 特にリッチ・ピープルの間におけるイタリアン・レストランの格というのは、 ハイ・クォリティな魚料理のラインナップでジャッジされる傾向にあるけれど、その点でもアイ・フィオーリは、 もう1人のニューヨークのセレブ・イタリアン・シェフ、マリオ・バターリのデル・ポストと並んで、一流のイタリアン・レストランと見なされる存在。
同店はミシュランから2つ星、ニューヨーク・タイムズのレビューで3つ星を獲得しているのだった。






料理のポーションは小さめで、特に男性にはアペタイザー、メイン、デザートのスリー・コース・ディナーでは 物足りないという印象。 でも、ディナーをアペタイザー、パスタ、メイン、デザートという4コースで考えれば、満足感が得られるという感じなのだった。
お値段は、メインが肉も魚も平均40ドル。 パスタはフル・ポーションが大体36ドル、ハーフ・ポーションが約24ドル。 アペタイザーは20〜25ドル、 デザートは13〜15ドルといったところ。 でも同店のペストリー・シェフ、ロベルト・トゥルイットは ちょっとクセのあるフレーバーを好む人なので、私は個人的には デザートよりも、食後にはチーズをオーダーすることをお薦めするのだった。
この料理のお値段に、ワインをオーダーして、タックスとチップが加わると結構な金額になるので、 気軽に出かけようというタイプのレストランではないのは事実。 でも、料理の味が安定して美味しいと言われるのに加えて、高級店に相応しいプロフェショナルなサービスが受けられるので、 お金を払っても失敗しないレストランと言えるのだった。

私が出かけた日のディナーは、年齢層はそれほど高くはないけれど、スーツを着用したビジネスマンが比較的多く、 また同店の、クリーンでモダンなインテリアも、ロマンティックさやエッジーなイメージは無く、非常にコーポレートな雰囲気。 したがって、落ち着いてはいるものの ニューヨークのレストラン・ダイニングの醍醐味と言える、 マンウォッチングが楽しめるというタイプのレストランではないのだった。
加えて、ニューヨークの他の人気のレストランに比べると、テーブルの間が広く開けてあるので、 その意味でもビジネス・ディナー向きと言えるレストラン。
でもマイアミ生まれのセタイというホテルのキャラクターのせいか、典型的なニューヨークの高級レストランとはちょっと雰囲気が 違うという印象を受けたのが正直なところ。 なので、個人的には凄く好きな ”雰囲気”のレストランとは言えないのだった。
でもフードに関しては満足で、これがイレブン・マディソン・パークのような 「いかにもニューヨーク!」という雰囲気の中で味わえたら どんなに良いだろう・・・と思いをめぐらせてしまったのだった。






Ai Fiori
400 5th Ave. (between 36th St & 37th St) New York, NY 10018
Tel: (212) 613-8660
Website : www.aifiorinyc.com





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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