Dec. Week 4, 2012
” #26 Acts of Kindness ”
”#26 アクツ・オブ・カインドネス”



12月14日金曜に、コネチカット州のサンディ・フック・エレメンタリー・スクールで起こった銃乱射事件で、 20人の5〜7歳の子供達と、6人の学校関係者の命が奪われたのは、既に世界中で大きく報じられている通り。
その直後に、ソーシャル・メディアで語られ始めたのが、「ハリケーン・サンディのような自然災害だったら、 被災者に 寄付や救援物資を送るなど、何か自分に出来ることが探せるけれど、 サンディ・フックのような事件の場合、犠牲者の家族のために何かしたくても、どうしたら良いか分からない」という人々のジレンマ。
これを受けて、その週末からネット上で グラス・ルーツ的にスタートしたのが、 「失われた20人の子供達の命を讃えて、 自分達がそれぞれ、誰でも良いから20人に 何かしらの親切をしよう!」というムーブメント。 そしてその数が、サンディ・フックで失われた学校関係者の命も加わった 26になって、 改めてスタートしたのが ここにご紹介する ”26 Acts of Kindness / 26 アクツ・オブ・カインドネス”のムーブメント。
ツイッター上には、”#20Acts”、”#26Acts” という2つのハッシュ・タグが登場して、 人々が自分が行なった親切、人から受けた親切をツイートし始めた一方で、 フェイスブック上にも ”26 Acts of Kindness”のページが登場。あっという間にソーシャル・メディア上で、 大きなムーブメントに なっているのだった。

このムーブメントの拡大に寄与したといわれるのが、NBCのアナウンサー、Ann Curry / アン・カリーで、 彼女はそのツイッター・アカウントで写真上、右のようなメッセージを発信。
「もし皆が失われた大切な命の数の親切を心掛けたらと想像してください。大きな親切でも小さな親切でも。あなたも参加しますか?」 という彼女のメッセージは、先週からNBCがTVCMを製作して放映をスタート。
NBCは、 ”26 アクツ・オブ・カインドネス”のムーブメントをフィーチャーしたウェブサイトも作成し、 人から人へと どんどん広がるムーブメントをレポート。その更なる拡大を促しているのだった。





”26 アクツ・オブ・カインドネス” に参加した人々が、どんな親切をしているかと言えば、 写真上:上段 左は、 スターバックスの5ドルのギフト・カードを”26 アクツ・オブ・カインドネス” の主旨説明を添えて、 見知らぬ人にプレゼントした例。カードには、「あなたが6人目です」というメッセージが書かれているのだった。

写真上:上段 右は、同じように5ドル紙幣をプレゼントしている例で、カードによれば それが23人目の親切とのこと。

写真上:下段 左は、職場の仲間にギフトを贈った例であるけれど、”26 アクツ・オブ・カインドネス”を説明するカードに、 犠牲になった27歳の教師、ヴィクトリア・ソトの写真をフィーチャーし、そのギフトが 26人の犠牲者のうちの、 彼女の命を讃えるための親切であることを伝えているもの。

写真上:下段 右は駐車している見ず知らずの人の車のワイパーに、”26 アクツ・オブ・カインドネス”のメッセージと共に、 宝くじのチケットを挟んでプレゼントしている例。

写真下:上段 左は、”26 アクツ・オブ・カインドネス”のメッセージと共に、26本のアイリスの花を道行く人にプレゼントした人の投稿。

写真下:上段 右は、 26個のギフトを買って、チャリティに寄付しに行くという人の投稿。

写真下:下段 左は、ガソリンのギフトカードを見ず知らずの人々に送っている例で、ピンクに塗られたハートは、その名前の犠牲者の命を 讃える親切であることを示したもの。

写真下:下段 右は、34ドルのレストランの会計に、その3倍近い100ドルのチップを ”26 アクツ・オブ・カインドネス”の一環として、 ウェイトレスに支払ったケース。


いずれも、人々が自分達が出来る範囲内で、26の命を讃えるための 26の親切をしている様子が 伝わってくるものだけれど、親切をした人々が皆、とても気分が良くなっている一方で、 親切を受けた側も、同じようにハッピーになって、そのアクトを受け継ごうとするのが、このムーブメント。
そんなポジティブなチェーン・リアクションは、アメリカ国内だけでなく、 ロシア、オーストラリア、フィンランド、そしてアフガニスタンにも広がって、ソーシャル・メディア上に そのムーブメントが どんどんポストされているのだった。





”26 アクツ・オブ・カインドネス”のムーブメントが、これだけ急速に広まった背景には、もちろん銃乱射事件という痛ましい出来事が あるけれど、それとは別に 既にアメリカ国内でグラスルーツ的に盛り上がっていたのが「ランダム・アクツ・オブ・カインドネス」というムーブメント。 すなわち、「不特定の見知らぬ人に親切にしよう」という運動。
これは、12月1週目の”キャッチ・オブ・ザ・ウィーク”で触れた、 裸足のホームレス男性に、シューズとソックスを自費でプレゼントしたニューヨーク市警察の警官、ローレンス・デプリノの 美談が報道されて以来、徐々に広がってきたもの。 このエピソード直後のニューヨーク・タイムズ紙のコラムにも、 ライターが5ドル札10枚を、ストリート・パフォーマーを含む、お金に困っていると思しき 見知らぬ人々に配り、 人々があまりに喜んでくれるリアクションに、自分も嬉しくなったという体験談が紹介されており、 読者に対しても「是非試してみるべき」と推奨されていたのだった。

私が個人的に動かされたストーリーは、 警官が車のナンバー・プレートの登録が切れているのを見つけて、 違反チケットを切ろうとした際、その車を運転していた男性が語ったのが「車の登録に掛るお金を、家族の食費に回さなければならない」という 事情。警官は 同情しながらもチケットを切って、その場を立ち去ったというけれど、男性が切られたチケットを開くと、 そこに挟まれていたのが100ドル紙幣。男性は 「改めて世の中に神様が居ると実感できた」と、涙しながら語っていたのだった。

こうした「ランダム・アクツ・オブ・カインドネス」のムーブメントのアイデアが、「サンディ・フックで失われた命の分、その親切を行なおう」 というモチベーションに結びついたのが、”26 アクツ・オブ・カインドネス”。
ホリデイ・シーズンのアメリカは、伝統的に「Giving」すなわち 「人に与えること」の 幸せや大切さが、ギフト・ショッピングのスローガンとミックスして謳われているものだけれど、 ハリケーン・サンディや、銃乱射事件の影響で、もっと 人と人を結ぶパーソナルなレベルで ”Giving”が行なわれているのを感じさせるのが今年のホリデイ・シーズン。
例年、単にチャリティにお金だけ寄付をしていたという人達が、今年はこうしたランダム・アクトで、 「直接、目の前に居る人を助けたい、幸せにしたい」、「見知らぬ人にも手を差し伸べたい、親切にしたい」と感じるようになってきているのは、 とても素晴らしいこと。
「人を幸せにする幸せ」、「人の幸せを見て受ける幸せ」が、この時期 トレンディングになっていることは、 様々な出来事があった2012年の ベスト・ハプニングと言えるのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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