Real Real-Estate Story in Brooklyn, NY
by Keiko Matsumura


ブルックリンを舞台にした不動産の実話コラム by 松村 京子

Vo.1 Sep. 2014




1. Buyer Profile / バイヤー・プロフィール




女性、30代半ば、ニューヨーク州アップステート出身のアメリカ人。
職業は、メジャーなネットワークの夜のニュース番組のプロデューサー。



2.Why & What She Bought / 購入物件と、購入のきっかけ、動機



250K(250,000ドル)の Coop / コープのビル内のワン・ベッドルーム。 「自分の城を買えるものなら買ってみたい、買えなかったら諦める」的なアプローチ。 ロケーションは迷わずブルックリン、エリアはケンジントン。


3.Our Encounter / 私とバイヤーのの出会い



2012年のサンクスギヴィングが終わり、12月の最初の週末の日曜日。
この年は10月末に ハリケーン・サンディがニューヨークを襲った年でもあって、 11月に入ってからも 雪が降ったり、雨が降ったり…。 だから当時は 天候によって気分が変わるクライアント達とのアポに振り回されていた状況。 天気のせいでクライアントがアパートの内覧に来たり、来なかったり。 そんな状態が1ヶ月くらい続いたので、 抱えていた物件を 「何とか年内に売りたい!」と思いつつも、「こう天気が悪かったら、例え年内に売れなくても、私のせいじゃない!」などと考えていたのだった。

それでも やらなければならないのがオープン・ハウス。通常オープン・ハウスをするプライムタイムは、日曜日の午後1時〜3時。 何故かというと、ブランチを済ませてから立ち寄る人、午前中に教会に出かけてから やってくる人が多いので、 この時間帯なら そんな人達の都合にもピッタリで、最も集客率が望めるタイム・テーブルなのだった。
でも どんなに時間帯が良くても お天気が悪いと、誰もやって来ないケースさえあるのがオープン・ハウス。
当時、気乗りがしないまま雨の日にオープン・ハウスをすることになった私は、「どうせ誰も来ないだろう」とタカをくくって、 まるで自分の家かのように、くつろいで コーヒーを飲みながら、新聞を読んでいたのだった。 そこに突然現れたのが、今回このコーナーで取り上げるシャーロット。

彼女は エネルギーに満ち溢れた パワフルなニューヨーカーという感じの女性。 多分、学生時代はバスケットかバレーボールでも やっていたんじゃないかという印象の体格。 そのファッションは、近所に食材の買出しに行くような姿。 オーバー・サイズのメンズ仕立てのジャケットを着用して、手には新聞を持っているけれど、バッグも財布も持って居ない。
一方、オープンハウスをしておきながら、突然の来客に不意を突かれた私は、一応セールス・ウーマンらしくは振舞っていたけれど、 キッチンのカウンターに広がった新聞やコーヒーが私の無防備さを如実に表現している始末。 だから正直に 「ごめんなさい、実は今日はこんな天気だから、お客さんが沢山くるとは思っていなかったの」と言ったら、 彼女も 「私も驚かすつもりはなかったけど、オープンハウスってどんなものか興味があって、丁度近所を通りかかったから…」とのこと。
こんな、彼女にとっての買う意欲も、私にとっての売る意欲も 感じられない会話が 私達の出会いだった。



4.Game Plan / 購入に至るまでのアプローチ&プロセス



でも、初対面にも関わらず、直ぐに打ち解けて話し込んでしまったのが私達。 「この人と、前から友達だったっけ?」という勢いで話が弾む。それも不動産とは全く無関係の話題。
でも、私が一応セールス・ウーマンらしく、「ちなみに、このアパートは249K (249,000ドル)」と言ったところ、 シャーロットが 「こういうアパートって、買う時はどうするの?」と尋ねてきた。 今は買う気は無いけれど、もう少しして不動産を買おうという段階になったら、どれだけお金が必要で、自分が何をすれば良いのか?という話になったので、 「どうせこんな日は誰も来ない」と思った私は、彼女に 「アパートを購入するときは、まずはこうするの!」と レクチャーを展開。 「この物件の場合、コープだから 仕事していて、定収入があるのことが大切」とか、「ローンを組むのにも お金がかかるから、キャッシュはある程度持っていないとダメ。 要するにそれが頭金ていうやつね」などと、出来る限り分かりやすく説明してあげたのだった。

すると「ふ〜ん、こういうアパート、買いたいな〜」とシャーロット。 「買えば?私も今日売りたいしぃ〜」って言ったところで、それは当たり前。 そうしたら、何と 「じゃ〜買うよ!というか、買えるかな?買えたら買うよ!」と彼女。 あまりの決断の早さに、唖然としたのはこちら。 私はその時点で、彼女の名前さえ知らなかった。
本来出会ったときに言うべき 「Nice to meet you, Charlotte!」っていう挨拶が、 この日の私達の別れの挨拶。 不動産の買い方のレクチャーをしていただけで、相手が不動産を衝動買い? お互いに売る気も、買う気もなかったのに…。


5.Making Action / 購入のためのアクティビティ



「実際に購入してみようか」という気持になってもらったの良いけれど、私も いきなり我に返って、 翌朝には 「本当に購入するとなると、XXXXが必要ですよ。 まずは 実際にローンが降りる経済力があるかを銀行に訊いてみてね」と 彼女にモーゲージ・ブローカーを紹介した。
その後モーゲージ・ブローカーと話したところ、どうやらシャーロットはギリギリ頭金が揃いそう。 というのも通常、コープの場合は頭金が20%、残りの80%が住宅ローンを組んでの支払いになるけれど、 彼女が買おうとしていたコープは 頭金が15%でもローンが組めるようになっていたのだった。すなわち頭金を日本円に直したら 380万円程度。

その段階になって、私は シャーロットが、いつも観ている夜のニュース番組のプロデューサーであるということを知ったような状態。 昼過ぎから忙しくなる彼女は、月曜の朝の間にモーゲージ・ブローカーと話をして、 必要書類にも記入して、直ぐに送ってくれて、真剣に物件を購入しようとする 彼女の真面目さが伝わってくる。
オープン・ハウスで話をするまでは、アパートの購入なんて全く考えていなかったはずなのに、この行動力は一体何?と思ってしまうけれど、 これが バリバリのキャリアを積む パワフルなニューヨーカー。 自分が「コレ!」と思ったら、時間を無駄にせず、迷わず行動に移してしまう。

私も一応はブローカーらしく、「この近所にはこういう物件もあって…」と、決心が揺らいだ場合の提案もしてみたけれど、 シャーロットの場合、それは全く不必要だった。





6.Close the Deal / 売買成立に際して



あれよあれよという間に全プロセスが完了して、シャーロットは無事にアパートを購入した。 購入したというよりも、「買ってみたら、買えちゃった」という感じ。 「不動産取引って一体何なんなの?本当にこんなに簡単に買っちゃって良いの?」と、 最後の最後まで 不安になったり、混乱していたのは むしろ私の方。
買った本人は「だって賃貸するよりも良いでしょ? 嫌になったら売れば良いし…」。 確かに彼女が言ってることは正しいけど、ここまで迷わず即決して、直ぐに行動する人を見ていると、 「人生綱渡り、行き当たりばったりで ここまでやって来ました!」を自負する私の方が、面を食らってしまったのだった。

あっという間に自分の初のアパートを手に入れたシャーロットは 「Keiko, Thank you!」と すっかりハッピー。 こちらは「You are welcome!」 だったけれど、 内心は、「彼女が途中で気が変わるのでは?」、「本当にこれで大丈夫?」と心配していたのだった。

でもその反面、もしシャーロットがアパートを購入出来たら、相当ラッキーだと考えていたのも私。
何故かと言えば、場所はいまいちパッとしないけれど、ビルはブルックリンの Kensington/ケンジントンという地域にありがちな、 プレワー(戦前に立てられた様式のビル)で、ロビーが とにかく広い上に、 アパートのエントランスも大きめ。窓も大きくて、全体的にとてもキュートなアパート。 自分がリストした物件は、何度も足を運ぶうちに愛着が沸いてきて、終いには まるで親馬鹿のように 「自分の扱ってる物件が一番カワイイ」と 思うようになってしまうけれど、この物件に関しては 私自身も 場所以外は全てを気に入っていたのだった。


7.Keiko's Summery / この取引についての私が思うところ



2014年夏、ブルックリン出身で 現在ブラジルに赴任中のアメリカ人から 「12月には赴任が終わって帰国するので、2ベッドルームのアパートを購入したい」と連絡があった。 彼の購入バジェットはハーフ・ミリオン、すなわち50万ドル以下。 仕事には車で行くことが多いので、 交通の便やロケーションよりも、同じ価格だったら広い物件を希望。 その彼が一時的にブルックリンに戻ってきている間に 購入を決めてもらいたい私としては、早速 検索して、 通常よりも多めに 物件を見て回るアポを取ったのだった。

その中で、偶然彼に見せることになったのが、シャーロットが購入したアパートがあるビル。 彼曰く「このビルの2階の2ベッドルーム・アパートが 48万9000ドルなら安い!」とのこと。 それもそのはずで、2年前にシャーロットが購入した時には、見た目に冴えなかったエレベーターが改装されて、同じビルとは思えない変身ぶり。 暗くて、湿った感じがしたランドリー・ルームも見違えるほど綺麗になっていて、ただのゴミ捨て場だった裏庭は、これからガーデンに生まれ変わるべく、 リノベートの真っ最中だった。
案内してくれたエージェントによれば、彼女は少し前にこのビル内の1ベッドルームのアパートを35万ドルで売ったそう。 すなわち、シャーロットが買った時から僅か2年足らずで、40%も不動産価値がアップしていたのだった。

シャーロットはまだそのアパートに住んでいる。多分 仕事が忙しくて、全米を駆け巡ってると思う…。 男勝りの決断力で 「買えるなら、買ってみる」というだけの動機だったけれど、2年以下で 彼女が確実に資産を増やせたんだと思ったら、自分のことのように ハッピーになってきた。
多分、シャーロットのことだから自分のアパートにどれだけの価値があるかなんて知らずに 仕事だけしてると思うけれど、 いつか彼女が ここを売却する日が来た時、その価値に気づいて 「あの時、とりあえずオープンハウスに行ってみて良かった!ケイコと話してみて良かった!」 と思ってくれることがあったら、とっても嬉しい!


★執筆者 プロフィール ★
松村京子 不動産ブローカー。
千葉県出身、1988年渡米。コネチカット州立大学のビジネス専攻、卒業後、ニューヨークにある日系証券会社に9年間勤務。 ニューヨークの不動産賃貸マーケットの値上がりを察知し、1993年に居住目的の不動産を購入。 その自身の不動産購入がきっかけで、ニューヨークの不動産マーケットに興味を持つようになる。
9・11のテロをきっかけに、オフィスと自宅の行き来だけでニューヨークに住むのではなく、もっとニューヨークらしさが満喫できる仕事がしたいと考え、 大手不動産会社、Corcoran Group / コーコラン・グループに入社。以来、日本人だけでなく、 諸外国のクライアントを抱え、不動産ブローカーとして活躍。
現在ブルックリンでセラピー犬と暮らし、動物保護のボランティアにも熱心な毎日を送っている。

松村京子さんへのお問い合わせ先: kei@corcoran.com


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