Real Real-Estate Story in Brooklyn, NY
by Keiko Matsumura


ブルックリンを舞台にした不動産の実話コラム by 松村 京子

Vo.2 Oct. 2014




1. Buyers Profile / バイヤー・プロフィール



ブルックリン、パークスロープに3世帯住宅を所有する夫婦。そのうちの1世帯に住みながら、残りの2世帯の賃貸で家賃収入を得ている。この物件は立地が良く、常に賃貸の需要が あるので、 難無く家賃収入を得続ける事が可能。妻のA子さんは日本人、夫はアメリカ人、ハイスクールの女児&男児が1人ずつ。


2.Why & What She Bought / 購入物件と、購入のきっかけ、動機



広さと明るさのある、メンテナンスの行き届いたコ ンドミニアムを投資物件として購入希望。
価格は850K(85万ドル)くらいの、1ベッド・ルーム。購入目的は 子供の将来のための投 資と、3世帯住宅の大家業につかれた場合のリスクヘッジを兼ねてのもの。 したがって自分たちが住んでも良いと思える メンテナンスが行き届いたコンドミニアムを希望。 メンテナンスの良さにこだわるのは、現在の3世帯住宅の生活だと 決められたゴミの日にゴミを出したり、リサイクルをあれこれ考えたり、雪が降れば 家の前の雪かきは住人の義務。 これを怠って、通行人が転んで怪我でもしようならば、すぐに訴訟になるのがアメリカ社会。コンドミニアムであれば、 これらを一手にビル側が引き受けるけれど、その代わりにメンテナンス・フィーを毎月支払うことになるので、そのフィーが安いことも条件の1つ。
コンドミニアムならば、三世帯住宅に比べて、売るのも 貸すのも、ずっと 簡単なことも魅力。


3.Our Encounter / 私とバイヤーのの出会い



カップルに出会ったのは、ブルックリン・ハイツでアパートを購入した友人の紹介。妻のA子さんと私 は、以前同じ証券会社に勤めていたことが後から判明。
そのA子さんは、日本に住む両親から アパート1軒を購入するのに十分な額を生前贈与で受け取ることになった。 そんな彼女から「纏まったお金があったら、やっぱり 不動産購入が確実よね? どう思う?」 といろいろ質問されたのが今から3年くらい前のことだった。




4.Game Plan / 購入に至るまでのアプローチ&プロセス



A子さんがご両親からの生前贈与で不動産投資を!と考えたのには理由があって、それはサクセスの前例があるため。
A子さん夫妻がパークスロープで3世帯住宅を購入したのは、子供たちが幼稚園に行く前のこと。 夫妻は子供達を高校まで公立学校に行かせることにして、私立学校に行かせた場合との学費の差額を不動産購入に当てたのだった。 このため、子供が通う公立学校、要するに学区域を考慮して選んだのがパークスロープの3世帯住宅。 3世帯住宅をを購入した理由は、家賃収入でローンを支払うことができたため。
今やパークスロープは、これから子供を育てようというファミリーにとって夢のよ うなロケーションとなり、言うまでもなく不動産価値は大幅にアップ。 これに昨今の ブルックリン・ブームも手伝って、A子さん夫妻は まさに不動産投資大成功組。

このため、「やはり、纏まったお金の投資先はブルックリンの不動産!」と考えたA子さん。 でも子育てとキャリアで忙しかった彼女は、なかなか投資物件を探す時間が無く、やっとそのチャンスが巡ってきたのが2014年夏のこ と。
この夏は高校生の子供が2人とも日本に長期滞在し、 夫もそれに便乗して長期旅行。1ヶ月ほど独身になったA子さんは、 仕事から戻ってからディナーを作る必要もなく、やっと好きな時間に不動産検索をして、会社帰りや週末に見に行くことができるという状況になったのだった。 その時点で、彼女からお声がかかった私は、いろいろ不動産購入に関して彼女 と話した結果、「家族が戻る前に、良い物件を見つけましょう!」という話になったのだった。


5.Making Action / 購入のためのアクティビティ



日頃はパークスロープ界隈でしか生活していないA子 さんが、興味を示したのがブルックリンのダウンタウンの物件。 同エリアは、今ではシェイク・シャックやバナナ・リパブリック、スターバックス、セフォラ、H&Mなどが進出してきて、 まるで ショッピング・モールのような様相を呈してきているけれど、A子 さんが目をつけたのは そこで 2014年の夏から売り出されたコンドミニアム。 マンハッタンだったら よくありそうな、54階建てのビルディングは、ブルックリンの他のコンドミニアムに比べて お値段は 20%ほど割高。 「誰が何を考えて、こんなに割高なコンドミニアムを買うのやら…」と考えた私は、その物件には全く興味を示しておらず、 「こんな物件を買うのは、ブルックリンの本当の不動産価値を知らないマンハッタンに住む価格音痴バイヤー」 と高をくくっていたのだった。

A子さんは「あの辺りってどう思う?見違えるほど開発されたけれど、やっぱり所詮はブルックリンのダウンタウンかな?」と 言っていたけれど、そんな 「所詮、ブルックリンのダウンタウン」が あれよあれよと いう間に昔の面影がなくなるほどに開発されて、 それに伴ってどんどん上がってきたのがこのエリアの不動産価格。中でもA子さんが興味を示した高層ビルは、筆頭価格をつけていたのだった。 そのお値段は A子さんの予算をはるかに上回るもの。それだけに「どうせ買わないけれど、見に行くだけ」と言って、 私達が出かけたのがオープンハウス。
するとこの建物、外観は味気無いと思っていたけれど、中に入ると見れば、見るほど良くできた造りで、お値段に見合うディテールがしっかり 盛り込まれた建物。 不動産ブローカーだったら誰でも、投資目的のクライ アントに薦めるような、確実に利益を生む物件。 それだけに私は、既に同物件に惚れ込んでいるA子さんに対して、自信を持って購入 を勧めることになったのだった。
でもやはりネックになっていたのは、高いお値段。なのでご主人と相談してから…ということになり、とりあえずは購入手続きをペン ディングにして、 ご主人が戻るまで、物件を押さえておく ということになったのだった。
ところが実際にご主人が帰国してみたら、彼がダウンタウンのブルックリンというロケーションがとにかく気に入らないという理由で、あっさり却下!

私 にしてみたら「えーっ! とっても良い投資物件だし、ここまで引っ張ったのに却下?マジ?」っという感じだけれど、 諸経費や手数料を含めると、億円前後の物件だけに、夫の承諾を得ずに 「買っ ちゃった〜」 では済まされないのは当然のこと。やれやれ…。

やがて9月に入って、最初の週明けにA子さんから 「昨日フォート・グリーンのオープンハウスで見たコンドミニアムが気に入ったから、今日中に購入のオファーしたい」というメールが来た。 それを見て、オファーは嬉しいけれど、フォート・グリーンのコン ドミニアムにしては 価格値段が安すぎなのでは?  メンテナンス・フィーも他の物件に比べて安過ぎなのでは? と思ってしまったのだった。 写真とフロア・プランを見る限りでは、 「まぁ、この程度の物件だったら ありかもね…」という感じで、良く言えば 小じんまりしていて、無駄がない物件。 でも、不動産ブローカーの私の目から見ると、どうもピンと来ない物件。
ところが本人達は買う気満々。特にこの物件はご主人が凄く気に入ったとのことで、これを見てからというもの、投資物件購入に今一つ乗り気ではなかった彼のテンションがいきなりアップしてきたとのこと。でも彼のテンションと完全に反比例していたのが私のテンション。 A子さんはと言えば、前の物件を却下したご主人が  この物件ではすごく乗り気なのと、価格が予算よりずっと安いこともあって、「それならこの物件にで決まり!」みたいな状態。
値段は彼らのバジェットの 850K(85万ドル)よりも かなり低めの699K(69.9万ドル)で、650スクエア・フィート(約60平方メートル)のワンベッドルーム。

パークスロープの三世帯住宅で、あんなに賢い動産 投資をしたカップルなのに、まるでオープンハウスで媚薬でも洩られたかのように、 この物件については何の根拠も理由もなしに、惚れ込んでいる有り様。 そこでA子さんから連絡をもらった月曜日の仕事帰りに、その物件を夫婦と一緒に見に行くことにしたのだった。





6.Close or Break the Deal / 売買成立 or 不成立?




現地で待ち合わせたのは夕方のこと。でもビルに入った瞬間に 私は 「あぁ〜、なるほど」と思って、購入は止めるべきと判断したのだった。
何故かというと、ロケーションは公園、駅、レストランにも近く、悪くはないものの、 いくら不動産価格が考えられないほど上昇してるブルックリンとは言え、このビル? この窓? このキッチン? この設備?
私に言わせれば そんな物件に 699Kを支払う価値があるだろうか?という感じ。

不動産ブローカーという職業は、お客が買ってくれた らコミッションが入ってくる職業。 なのでバイヤーが勝手に物件に惚れ込んで、購入してくれたらラッキー。でもやっぱりその物件が気に入らず、そこを売りに出して、別の物件を購入してくれたら さらにラッキーという因果なビジネス。でも「自分が売買に関わるからには、絶対クライアントに満足して欲 しい」というのが私の主義。 なので、どうしてもすんなりと その物件の購入オファーをする気になれなかったのだった。
大体A子さん夫妻が購入条件に挙げていたことを何もクリアしてない!物件は日当たりが悪い上に、設備は最低限。メンテナンスのレベルも論外で、 ビルの前には収集前のゴミの山。 699K出して、この狭さで、この価格って…。高いって!高い!

ご主人のほうは「昨日見た時と、ちょっと感じが違うな…」と言い始めていたけれど、私に言わせれば ちょっとどころじゃなくて、もう少し頭を冷やして考えたら、 「これって希望物件とはあまりに違い過ぎ!」っとなるのが目に見えている。  しかも不動産投資の失敗は夫婦不仲の原因になりうるだけに、絶対に薦められないのだった。

ビルの外に出て、フォート・グリーンのエリアを歩き始めたところで、私がカップ ルに実際に近隣の建物を指差しながら語って聞かせたのが、「ここの物件は、これくらいの広さで、これくらいのアメニティで、先日いくらで売った」というような話。その後 近くのカフェに入ってからも続いたのが、 ブルックリンの物件の価値、価格についての説明。
結局、友達夫婦はこの物件購入を諦めたけれど、それが正解と言えるのだった。



7.Keiko's Summery / この取引についての私が思うところ



不動産は洋服と違って、買ってしまってから 「やっぱり気に入らないので返品します」という訳には言えない買い物。 にもかかわらず、自分が欲しい物件が定かでない状態で購入に及ぼうという人が意外に少なくないのだった。
私はそういうバイヤーには、できる限り多くのオープンハウスを見て回るようにサジェストしているけれど、 購入の希望条件を絞り込んで、真剣に購入に乗り出す段階になったら、オープ ンハウスもブローカーと一緒に出掛けた方が懸命。 というのは、物件を 広さ、価格、アメニティ、メンテナンス、投資価値と いった、さまざまな角度から冷静に判断できるのに加えて、改装が必要な物件の場合には、その改装や費用についてリアリスティック なアドバイスが得られるため。

購入を諦めた友達夫婦に、現在私が勧めているのは、マンハッタンの物件。彼らはブルックリンの良い物件に良い時期に投資して、成功したから ブルックリンにこだわっていたけれど、正直な ところ、メディアや世の中が 「ブルックリンがホット!」、「ブルックリンがトレンディ!」と騒いでいる間に、 実際の不動産価値よりも値上がりしているエリアが少なくないのがブルックリン。
とは言っても、世界の人々が憧れるマンハッタンよりは 安かろうと思われているのもブルック リン。 確かにアッパー・ウエストサイドのタウンハウスは10億円以下では探せない けれど、それより広いタウンハウスがパークスロープならば 今でも半分以下のお値段。
でもエリアや物件を選ぶ と、マンハッタンの方がブルックリンよりも安いケースも増えていて、私自身、 マンハッタンの物件を見直し始めているのだった。 このため、以前はマンハッタンの物件に手が届かず、仕方なくブルックリンで 不動産を購入した人が多かったけれど、ブルックリンの不動産価格がここまで高騰した今では、ブルックリンからマンハッタンの割安物件に移動する人が 増えつつあるのだった。


Open House Tour By Keiko のお知らせ

今回のエピソードでオープンハウスを不動産ブローカーと見て回る大切さを実感した読者の方もいらっしゃるかと思いますが、 買う、買わないは別として、ブローカーと見て回ると楽しく、しかも非常に勉強になるのがオープンハウス。
そこで、Cube New Yorkでは松村京子さんのオープンハウス・ツアーを企画いたしました。
将来、自分の家やアパートを買ってみたい方、買うつもりは無いけれど オープンハウスに一度行ってみたい方、 不動産売買のお話だけでも聞きたい方、 NY旅行中で NYのオープンハウスや実際の物件を見てみたいという日本からの方など、 目的、理由、状況に関わらず参加して頂けるのがこのクラスです。
初回は10月26日日曜日、午後1時からで、1時間半の間に3軒の物件を見て回ったあと、 カフェに出かけて、京子さんによるNYの不動産売買の実話を交えたレクチャーと、Q&Aセッションがあります。
料金は35ドルで、この中にはカフェでのドリンク&スナック代が含まれています。
詳細は後日、お知らせしますが、 ここをクリックしてお申し込みいただけば 詳細が決まり次第、メールを差し上げます。


★執筆者 プロフィール ★
松村京子 不動産ブローカー。
千葉県出身、1988年渡米。コネチカット州立大学のビジネス専攻、卒業後、ニューヨークにある日系証券会社に9年間勤務。 ニューヨークの不動産賃貸マーケットの値上がりを察知し、1993年に居住目的の不動産を購入。 その自身の不動産購入がきっかけで、ニューヨークの不動産マーケットに興味を持つようになる。
9・11のテロをきっかけに、オフィスと自宅の行き来だけでニューヨークに住むのではなく、もっとニューヨークらしさが満喫できる仕事がしたいと考え、 大手不動産会社、Corcoran Group / コーコラン・グループに入社。以来、日本人だけでなく、 諸外国のクライアントを抱え、不動産ブローカーとして活躍。
現在ブルックリンでセラピー犬と暮らし、動物保護のボランティアにも熱心な毎日を送っている。

松村京子さんへのお問い合わせ先: kei@corcoran.com


Will New York 宿泊施設滞在




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