Real Real-Estate Story in Brooklyn, NY
by Keiko Matsumura


ブルックリンを舞台にした不動産の実話コラム by 松村 京子

Vo.5 Feb. 2014



今回は不動産を購入するなら、投資目的でも、自分が住む目的でも、 お金を生む物件を選ぶべきという気持ちを込めて、昨年トライベッカで売りに出された 一軒家を例に、ニューヨークの不動産事情を踏まえながら ”確実に値上がりする物件”ご説明します。
以下でご紹介 している写真は、全てそのトライベッカの物件のもの。 不動産価値のアイデアを得るためにも、説明と一緒にとくとご覧下さい。



僅か4年間で2倍の価格を付けた物件とは?




2014年10月に売りに出されたのがトライベッカの$48ミリオン(約56億3,400万円)のマンショ ン。
ざっくりと物件の詳細を紹介すると、地上6階の一戸建、6ベッドルーム、7バスルーム、 1万1,300クスエア・フィート(約1,017平方メートル)のインテリアに、 1,500スクエア・フィート(約135u)のアウトドア・スペース(ガーデン、パティオ、バルコニー、テラス等の屋外スペース)。
エレベーター完備は当然だとしても、メ イド専用のエントランスがあり、建物内に車3台分のパーキング、ジム、50フィートの屋内プールなど、マンハッタンに居ながらにして  金融界郊外の高級住宅を思わせる想像を絶する広さ。 でもこの物件の凄いところは、オーナーが2010年に購入した際には $24ミリオン(約28億1,700万円)だったものを、 わずか4年後に2倍の価格で売りに出してるという点。
同物件のオーナーはウォールストリートの若きスーパースター、マーク・ジットマン(写真上、上段左の男性。隣の女性は夫人のノエル・ジットマン)。 「購入からたった4年で 2倍の価格を付けるなんて、何て図々くて世間知らずの男!」って言いたいところだけれど、 このお値段は彼がお金の亡者だからついた訳ではなく、同じエリアにある物件と比較すると、妥当な価格であるため。

むしろ価格よりも私が驚いたのは 売りに出した理由で、「改装の出来栄えが あまり気に入らなかった」とのこと。
これだけ贅沢なスペースと施設、一流のインテリア・デザイナーが手掛けたリノベーションが気に入らないなんて…と、 普通の人なら驚くところだけれど、マーク・ジットマンほどの大富豪ともなれば、自分が追及する最高のものを手に入れるのは当然だし、 「それの何が悪いの?」っていう感じでしょうか。

この物件は、2010年に個人オーナーが マンハッタン内で購入した高額不動産トップ10 の9位にランクインしていて、 この時のNo.1になっていたのが フィフス・アヴェニューのタウンハウス。そのお値段は、$44ミリオン(約51億6,446万円)。
それ以降の2〜8位にランクされている物件は、半分がコンドミニアムで、残りの半分がコープとなっているのだった。


2010年の高額物件は、現在いくらで売れる?




では、そろばん勘定が大好きな私が、トップ10にランクされている他の物件が、現在いくらで売りに出せるかを検証してみるとする。
例えば、分かり易い物件をピックすると、1 Central Park South / ワン・セントラル・パーク・サウス。  ここはプラザ・ホテルの一部がコンドミニアムとして売りに出された物件。 2010年に売れた高額不動産の4位にランクインした同コンドミニアムは、4万5,425 スクエア・フィート(約4,088平方メートル)という広さで、 地上3階にある物件。 当初、$39ミリオン(約45億7,760万円)で売りに出されたものの、なかなか買い手がつかず、 結局バイヤーが支払った金額は、下がりに下がった約$28.6ミリオン(実際の価格は$28,597,895、日本円にして約33億5,665万円という、 非常に交渉過程が分かり難いお値段!) 
以前このコーナーでもご説明したように、アメリカの不動産価格は1スクエア・フィート当たりが幾らかで価値が比較されるけれど、 このワン・セントラル・パーク・サウスの物件にバイヤーが支払ったのは、1スクエア・フィート当たり630ドル(約7万4千円)。
ところがそのワン・セントラル・パーク・サウス内の13階にある 1ベッドルームのコンドミニアムが 2015年1月に売却されて、 その1スクエア・フィート当たりの価格は3,389ドル(約39万7,780円)に跳ね上がっているのだった。

これはあくまでも想定ではあるけれど、もし今、この3階にある物件を売りに出すとしたら、13階に比べると フロアが下なので、このことを10%のマイナス要因にした場合でも、 1スクエア・フィート当たりのお値段は 2,870ドル。 その価格から この物件の価格を単純計算すると、1億3千 36万9,750ドル(約153億円)という膨大な価格。 要するに、もしこのプラザ・ホテル内の物件が現在売りに出された場合には、 2010年の購入時から 僅か5年間で4倍の価格が付くことになるのだった。

それを思えば、若き金融王がトライベッカの物件をたったの4年間で2倍で売りに出すのは、さほど驚くべきことではないのが実情。
私自身、ブローカー業を始めた2001年から、不動産で唖然とするような荒稼ぎをしている例を 何百と目の当たりにしているのだった。  "唖然とするような荒稼ぎ "というのは 負け惜しみ的な表現であって、 実際には羨ましいほどのハイリターン投資"という表現の方が適切だけれど、 マーク・ジットマンのトライベッカの物件のように、 たった4年で100%リターンというのは、何処にでもある例では無いとは言え、 ニューヨークの不動産市場では 非常に特異なケースでも無いのだった。
ちなみにこの物件の場合、建築&改装費、売買に関わる経費を差し引くと、 正確にはマイナス20〜25%の見積りとなって、正確には100%リターンとは言えないのだっ た。

さて、ここからが今回のコラムの本当のポイント。マーク・ジットマンのようなファイナンス・キングではなくても、 いつか不動産を購入するのであれば、 投資目的でも、居住目的でも、将来的に価格の上がる物件を選びたいもの。
彼の物件のように4年で2倍にはならなくても、天井知らず、不況知らずのニューヨークの不動産マーケットには、 これからまだまだ価格が上がる物件はたくさんあるし、これからも出てくるのは確実。 ではそんな価格が上がるニューヨークの不動産とは一体どんなものなのか?



開発が進む直前のエリアを狙う  





マーク・ジットマンが購入した物件があるトライベッカのノース・ムーア・ストリートは、今から僅か5年前の2010年にはお世辞でも 良い感じのストリートだった記憶がない。道路も昔ながらの石畳で、近隣には冴えないレストランや、毎月ギリギリでリースを支払ってい るようなパッとしない店が少しある程度。その時にトライベッカに$24ミリオンの物件を買ったのは、一見お金があるから できる冒険とおも思える行為。実際、前述の2010年に個人が買い取った高額不動産トップ10に入っている他の物件は、アッパーイースト、アッパーウエスト、ソーホー、チェルシーなどで、トライベッカのロケーションは彼が買い取っ た1件のみ。 でも、知り合いの大金持ちがアッパー・イーストやチェルシーに物件を買っているのを尻目に、マーク・ジットマンがトライベッカの物件を購入したのは、その物件が「直ぐに、そして確実に値上がりする」という目算があったか ら。

事実、2010年以降のトライベッカは まさに開発&建築ラッシュ。彼の物件と同じノース・ムーア・ストリートだけでも、新開発のコンドミニアムが2軒、それ以外にも同エリアに新しい建築が5軒 もあったので、もちろん程なく周囲の道も舗装された。それに加えてトライベッカには2010年以降 30近い新築物件が売りに出されたので、たった5年の間に、 同エリアの生活人口が増えたのは確実。それに伴って、新しいトレンディ・レストランや、生活のニーズを満たすショップが増えているの だった。

すなわち、自分でアパートを購入したいけど、レストランが近所に無いとか、ジムも無い、スーパーも遠くて不便…などと言って、 何から何まで揃っていないと購入に至らないという人は多いけれども、 そのような物件は、実は既に価格が飽和状態。物価上昇率と同じくらいにしか不動産価格も上がらないようになっている。
なので値上がりする物件を狙うのならば、生活に支障のない程度の条件さえ揃っていたら 最初の3〜5年は不便を承知で、これから開発されるエリアの物件を選ぶべき。 特にニューヨークというのは、地域の開発の進み具合、エリアの雰囲気の変化は めまぐるしいとさえ言えるもの。

その身近な好例を挙げるとすれば、私の地元、ブルックリンのウィリアムスバーグ。ウィリアムスバーグに足を運ぶたびに思うのが、 「ここって、前は古着屋じゃなかったっけ?」というような場所に モダンなコンドミニアムが建築されていること。 加えて、少し前まではストリートに店がパラパラある程度だったので、川沿いまで歩こうとすると「ずいぶん遠いなぁ…」と感じていたけれど、 今ではその川沿いまでの道に、様々なショップがオープンしたので、歩いても遠いとは感じない状況。 まさか距離が短くなることは無いので、これはまさに開発によるエリアの変化。
このように、同じ値段を出して物件を買う場合、何年経っても同じ環境の場所を選ぶよりも、周囲の開発が進むロケーションを選べば 、 自分の住む環境が向上して、住人の質もアップするだけでなく、周辺の不動産価格に吊られて自分の物件価値もどんどん上がっていく、すなわち「自分の資産が増えていく」という不動産投資の楽しさを味わうことができるのだった。

よって、マーク・ジットマンから学ぶべきことは、彼ほどのファイナンス・キングでさえ、条件が揃った物件ではなく、 将来を見越した不動産購入をしているのだから、ましてや庶民の身分であれば、 尚のこと 細かい条件にこだわって意固地にならず、オープンマインドなチャレンジをする気持があっても良いと思のだった。


ユニークな物件を選ぶこと  




ニューヨークで短期間に価格が上がった物件に共通していることは、「他にマーケットに似たような物件が存在しないこと」。
例えば、クイーンズとブルックリンで 全体の不動産マーケットを比べた場合、断然物件が多いのがクイーンズ。 ブルックリンは開発が進む今も クイーンズに比べるとアパートメント・ビルディングが断然少ないのだった。 このため、ブルックリンでアパートを購入をしようという人が、気に入った物件を見つけて買い取りのオファーをしたのに、 他にも買い手が現れて、競り落とし合戦に負けた挙句、手に入らなかったという話はしょっちゅう耳にすること。
何故そのような状況になるかと言えば、ブルックリンの物件は "オンリーワン" と言える他に無い、ユニークな物件が多いため。 すなわち、もし買いたいと思う物件を見つけて、そこが購入できなかった場合、同じような条件の物件を見つけるのは至難の業。
それに比べてクイーンズは、もし あるビルディングの1ベッドルーム・アパートメントを購入しようとした場合、 たとえ運悪く購入できなかったとしても、同じビルの別の階や、近隣エリアの似たような物件を、同じ価格帯で簡単に探すことができるのだった。 これは買う時には有利に働くけれど、売ろうとした場合はコンペティターが必ず居るということ、要するに”買い手市場”。 そうなると、買う側は 似た物件のうち、値段を安くしてくれる方を購入することになるので、 売る側は自分が望む価格で売れない可能性があるだけでなく、売るのに時間がかかることが多いのが実情。
したがって、「購入した物件でやがては資産を増やしたい」と考えたら、周囲に似た物件がいくつも状況は避けるのが懸命です。



売り易い物件を選ぶこと  


ニューヨークの不動産売買の落とし穴と言えるのが、購入する際の審査。
特にコー プは、住民ボードとの面接や審査が非常に厳しいケースが多く、売り手、買い手の意志や都合を全く省みることが無いのが常。 それが理由で売買が成立しない、もしくは必要以上に時間が掛かって、売る側も買う側もストレスを抱えてしまう事は珍しくないこと。  したがって、ニューヨークの不動産購入に際しては、それに伴う審査の苦痛(楽なことは無いので、最初からはっきりと苦痛と伝えておきます)は、 極力軽いところが良いのは当たり前。

でも不動産を初めて購入する人には、審査の厳しさまでは 実際に体験するまで分からないのが普通。 だからこそ私のような不動産ブローカーの商売が成り立っているのだと思うけれど、コープや コンドミニアムというのは それぞれの個性(キャラクター)があると考えたら理解し易いと思う。
いろいろな個性がある物件を仕事柄いつも見ているから、「このバイヤーなら、このビルに合っている」とか、「このバイヤーは多分審査で引っかかる」というのは、 不動産ブローカーだから分かることだと思うのだった。  要するに不動産売買というのは、買い手と物件のマッチ・メイキング。お見合いで自分が気に入っても、 相手やその母親に拒まれる場合があるように、 「お金は十分にあるから 購入したいんですけど」と言っても、断られたらそれまで。 したがって、ニューヨークの不動産に関しては、価格に手が届く人なら 誰でも買える訳ではないのが難しいところ。
それは、売却の際にもそのまま適用されることで、自分が望んだ価格で買ってくれるバイヤーが現れても、そのバイヤーが厳しい審査に通らなければ売れることは無いのだった。

その点、マーク・ジットマンが購入した物件は何が素晴らしいかと言えば、一軒家であるということ。 要するに、お金さえ払ってくれる人であれば、厳しい審査など無しに、誰の許可も得ずに その人に売却することが出来るという、至ってシンプルな取引が出来るのだった。 当然彼も、それを考慮した上で購入に及んでいるはずで、2010年に$24ミリオンだった物件が、4年後に2倍の価値になっていたところで、 不思議ではない条件が整っているのがこのケース。
もちろん ここまでの高額物件の購入、ハイリターンは無理だとしても、自分で不動産を購入するからには、 様々な見地から物件を検証して、”値が上がる物件=お金を生み出す物件”を選ぶべきだと思うし、 そんな物件がまだまだ沢山出てくるのがニューヨークの不動産市場なのだった。


2015年も、気候が暖かくなった春を目処に 引き続き オープンハウス・ツアーを行う予定です。
また不動産投資やローンの組み方についてに関するレクチャーも今年は企画する予定。 スケジュールは、追ってお知らせします。不動産に興味がある方、ニューヨークの不動産の相場に興味がある方、 後学のために不動産マーケットを知っておきたいという方など、 購入目的以外の方のご参加も大歓迎です。



★執筆者 プロフィール ★
松村京子 不動産ブローカー。
千葉県出身、1988年渡米。コネチカット州立大学のビジネス専攻、卒業後、ニューヨークにある日系証券会社に9年間勤務。 ニューヨークの不動産賃貸マーケットの値上がりを察知し、1993年に居住目的の不動産を購入。 その自身の不動産購入がきっかけで、ニューヨークの不動産マーケットに興味を持つようになる。
9・11のテロをきっかけに、オフィスと自宅の行き来だけでニューヨークに住むのではなく、もっとニューヨークらしさが満喫できる仕事がしたいと考え、 大手不動産会社、Corcoran Group / コーコラン・グループに入社。以来、日本人だけでなく、 諸外国のクライアントを抱え、不動産ブローカーとして活躍。
現在ブルックリンでセラピー犬と暮らし、動物保護のボランティアにも熱心な毎日を送っている。

松村京子さんへのお問い合わせ先: kei@corcoran.com

Will New York 宿泊施設滞在



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