Real Real-Estate Story in Brooklyn, NY
by Keiko Matsumura


ブルックリンを舞台にした不動産の実話コラム by 松村 京子

Vo.6 Mar. 2015




1. Buyers Profile / バイヤー・プロフィール



金 融業に携わる、シンガポール在住の日本人女性、Yさん。年齢は推定で30代前半から 半ば程度。
既婚で、3歳くらいの子供が1人。後でわかったのが、購入のプロセスをしている最中に妊娠していたということ。 なので、超人的なバイタリティがあるジャパニーズ・マム。


2.Why & What She Bought / 購入物件と、購入のきっかけ、動機



シンガポールに住みながら、中国(上海、北京、香港、シンガポール)の不動産投資をしてきた彼女だが、 2012年、中国圏の不動産価格がピークと達したと感じ、 流動性が良さそうなアメリカ、 特に決して不動産価格が下がらないニューヨークの物件に投資を検討し始めた。 同じ時期に、それまで中国の不動産投資をしてきた数人のシンガポール在住の知人達も ニューヨークに不動産ポートフォリオを広げ始めたこともあり、 ニューヨークどころか アメリカにさえ来た事が無いYさんだが、右に習えとばかりに ニューヨークでの投資物件購入を決心。

彼女が考えていたのは、以下のような状況。




3.Our Encounter / 私とバイヤーのの出会い



初めて私にコンタクトしてきたのはEメール。受け取ったときに、何だか友達からのメールのようだけど、彼女の名 前に 覚えがないので。共通の知り合いが私達を繋いでくれたのかな?  いや、そうでもないみたい。単に、インターネットでニューヨーク不動 産と検索して、私の名前をみつけてコンタクトしてくれたのだった。
最初から「買うなら当然、京子さんを通し買います」という感じで、 私も私で 何の売り込みもせずに 「じゃ~、何を買いますか?」的にメールのやり取りがスタートして購入が決定。 後から思えば「ニューヨーク不動産業」、「日本語」等と検索したら、多分500人くらい名前が出てくるはず。その中から、私を選んでくれた訳なので、 奇跡や運命のような巡り合い。にも関わらず、まるで「以前から知って いたので、当たり前!」のように購入プロセスが始まったのだった。



4.Game Plan / 購入に至るまでのアプローチ&プロセス



マンハッタン内で今(当時は2012年) 投資を考えるのあれば…、と私がお薦めしたのが アッパーイースト。
というのも その時点で、既に始まっていたのが、アッパー・イーストサイドにおけるセカンド・アベニュー・サブウェイの工事。 進行が遅く、全く終わる気配が無いこの地下鉄の工事は 現在も行われていて、これが数年前からアッパーイーストを離れる住人が多くなった原因。
「何年間もの間、毎日のように地下鉄工事の騒音を聞いて、埃をあびながら生活するのには絶えられない」と考える人が増えたのに加えて、 近隣は工事のための歩道の閉鎖で、アパートの前までタクシーで乗り付けられなかったり、遠回りを強いられる状況。 工事エリアのレストランやショップも売上げが激減する有り様で、かつての”憧れのアッパーイースト”は、 「買っても、借りても 今はブルックリンよりも安いのでは?」という不動産価格に下がっていたのだった。 なので、生活をしないのであれば、断然私はアッパー・イーストのコンドミニアムがお薦めだと提案したのだった。

Yさんのバジェットは、前述のように費用を含めて60万ドル。 そこでクロージング費用(コンドミニアムを購入の際の諸経費)を購入価格の5%と大目に見積もって57万ドルくらいの物件を探し始めたものの、あまり投資に向かない物件ばかり。目ぼしい物件をいくつか提案しながら1週間ほどが経過した段階で、 Yさんの方から 「515 East 72 Street のビルはどうか?」と尋ねてきた。
このビルについては、良い物件がマーケットに出ていることを知りつつ、私があえて提案しなかったのは、 Yさんにとってオーバー・バジェットの物件ばかりであったため。 611スクエア・フィート(約56.8平方メートル)のワン・ベッドルームのアパートが、 当時の価格で75万ドルという超強気のお値段。 このため、Yさんが515 East 72 Streetに興味を示した時に まず私が思ったのは、 「費用込みで$600,000の購入を考えていたバジェット・プランはどこへ?」ということなのだった。


5.Making Action / 購入のためのアクティビティ



80万ドル以下のワン・ベッドルームのアパートと目標を定め直すのであれば、アッパー・イーストサイドで かなりチョイスが増えるけれど、 その中でも 515 East 72 Streetは見る価値のある物件。
というのも ビルの売買と賃貸のアクティビティーをチェックすると、かなり流動性があって、特に$1ミリオン以下の物件は マーケットに売りに出ると、比較的早く契約が成立してることがわかる。 なので検索すれば、検索するほど、アメニティや価格など、様々な見地から、この価格帯で 515 East 72 Streetに勝る良い物件が他に無いように思えてきたのだった。

そうこうしている間に、タイミング良く 私が所属する会社が 515 East 72 Streetの最上階のユニットを 独占で販売することが決定。 そのお披露目イベントが行われることになり、その時にエージェントにワンベッド・ルームとスタジオの物件を実際に見せてもらうことにしたのだった。
とは言っても、このイベントでお披露目になっていたのは最低250万ドルの物件。 したがって集まったゲストは見るからにお金がありそうな人々。そもそも 515 East 72 Streetというビルは、 地下鉄の駅からは遠いけれど、イーストサイドを走るハイウェイ、FDRには直ぐに入れる立地。 したがってサブウェイを使わず、 タクシーや車で動く人にアピールするロケーションなので、 住人も、そしてこの物件に興味を示す人々も、当然のことながら裕福な人々が多いのだった。

さて実際に見せてもらったスタジオとワン・ベッドルームについては、ワンベッドルームの方がスタジオに比べて面積は狭いが、 1スクエアフィート当たりの価格が高い。 100%投資目的で購入するのであれば、株式投資に似ていて ”いかに1スクエアフィートを安く購入して、 それを高く売るか” というのが成功の鍵。しかし株式と違うところは、不動産に関しては いかに使い勝手の良い1スクエアフィートを所有するかが 売却時の価格が高くなるポイント。
よって、515 East 72 Streetの物件に関しては、スタジオより狭く、1スクエアフィート当たりの価格が高くても、使い勝手の良いワンベッドの方が 断然付加価値があると私は判断したのだった。



6.Close or Break the Deal / 売買成立 or 不成立?



早速Yさんに イベントの盛況ぶりと、スタジオとワンベッドの比較を報告したところ、Yさんが軍配を上げたのも、やはりワンベッド。
投資であれば、どのユニットを買おうが、「安く買って、高く売る」のが一番なので、もし ひたすら価格の低い物件で狙うのであれば、 その時点で、階が低い、ビュー無し(向いのビルが見えるだけ)のスタジオが700Kで売りに出ていたのだった。
しかしながら、もし将来Yさんや息子が住む可能性を考えると、やはりビューや騒音は考慮するべき点。 このためYさんが狙いを定めたのは、空と緑が見えて、火災時にも梯子車がリーチできる7階のワンベッドルーム・アパート。 お値段は750万ドルが提示されていたのだった。

この物件は既にマーケットに1週間ほど出て いたので、少しだけ価格を交渉することも可能だったが、ここで5000~10,000ドル程度の値引き価格交渉をするのは 逆に リスキーだと思ったので、最初から売り手に好印象を与えるために、潔く75万ドルという提示価格のフルプライスでオファーをした。 というのもシンガポールに在住のバイヤーとの価格交渉は時差があるため、 交渉している2~3日の間に別のバイヤーが 「フルプライスで購入したい」と申し出てきたら場合、このユニットを逃すことになるのは確実。 またオファーをする際に、Yさんが海外在住というのはやはりマイナス要因。というのは 同じ価格の買い手がでてきた場合、 売り手側は 海外在住のバイヤーよりも 国内のバイヤーの方が、何かトラブルがあった場合に対処が簡単と考えるの傾向にあるのだった。 そこで下手な交渉はあえて避けて、気前良くフルプライスでオファーしたところ、案の定、すんなりとオファーが受け入れられたのだった。


7.Keiko's Summery / この取引についての私が思うところ



結局、Yさんは希望の物件を2012年6月に75万ドルで無事購入。 その1ヵ月後には日本人テナントが入居した。
日本人に入居してもらえたのは日本人オーナーとして非常にありがたいが、 日本人限定でテナントを探していた訳ではなく、全くの偶然。

2015年3月現在、515 East 72 Streetの同じサイズのユニットは、30階で89万ドル、 24階が何と94.9万ドルでマーケットに出ている。 既に売れた物件の実績をチェックすると、2015年2月に同ビル内の4階の物件が 実際に82.5万ドルで売却されている。
したがって 約19ヶ月の間に10%の利益があったことは確実。現在売りに出されている24階の94.9万ドルの物件は、契約済みになっているので、 もし正式に売買が成立すれば、Yさんは19ヶ月で20%資産を増やした計算になるのだった。

アメリカ人や、昨今の中国人、ロシア人であれば、ニューヨークで値上がりしそうな投資物件を探して、それを見ることもなく買ってしまうのは当たり前。 そうしないと、ニューヨークの不動産は動きが早いので好物件を逃してしまうためであるけれど、 実際のところ、投資対象と割り切って、思い入れを抱かずに購入した方が、一番高く売れる時にあっさり手放すことが出来たりする。 逆に自分が暮らした思い入れのある物件になると、変に感情が絡んで 絶交の売り時を逃してしまうエピソードが後を絶たないのが不動産の世界。
とは言え、NYに来たことさえない日本人女性が、そんな海外への不動産投資をやってのける実例は 極めて珍しいと言えるもの。 また既に中国で投資物件を購入していた経験があるとは言え、すぐにニューヨークのマーケットを把握して、 より投資向きの物件を買うために、当初のバジェットを素早くアップさせたYさんの決断力も脱帽に値するのだった。

この取引の後、Yさんのご主人がニューヨークに来る機会があって、その時にテナントに頼んで物件を見せてもらうためにお会いしたけれど、 その時に判明したのが、Yさんが不動産購入プロセス中に、妊娠していたという事実。 毎日会社で仕事をこなし、帰宅後に子供をあやしながら、ニューヨークの投資物件購入を果たしたYさん。 自称タフの私だが、こんな決断力とバイタリティを持つ女性が、同じ日本人であることを誇りに思ってしまったのだった。
いつか、シンガポールに行く機会があったら真っ先に、その前向きなパワーの持ち主にお目にかかりたいと思っている。


Open House Tour By Keiko のお知らせ

ニューヨークも徐々に暖かくなてきたので、昨年からスタートしているオープン・ハウス・ツアーをそろそろ再開させる予定です。
見て回るエリアなどが決まりましたら、改めてお知らせします。 開催日に、ご旅行や出張などでNYにいらしている方のご参加も歓迎です。 「オープン・ハウスに行ったことが無い」、「直ぐに不動産を買う予定は無いけれど、どんな物件がいくらで売られているか見ておきたい」という方でも お気軽にご参加ください。

ここをクリックしてお申し込みいただけば 詳細が決まった段階で、メールでお知らせを差し上げます。


★執筆者 プロフィール ★
松村京子 不動産ブローカー。
千葉県出身、1988年渡米。コネチカット州立大学のビジネス専攻、卒業後、ニューヨークにある日系証券会社に9年間勤務。 ニューヨークの不動産賃貸マーケットの値上がりを察知し、1993年に居住目的の不動産を購入。 その自身の不動産購入がきっかけで、ニューヨークの不動産マーケットに興味を持つようになる。
9・11のテロをきっかけに、オフィスと自宅の行き来だけでニューヨークに住むのではなく、もっとニューヨークらしさが満喫できる仕事がしたいと考え、 大手不動産会社、Corcoran Group / コーコラン・グループに入社。以来、日本人だけでなく、 諸外国のクライアントを抱え、不動産ブローカーとして活躍。
現在ブルックリンでセラピー犬と暮らし、動物保護のボランティアにも熱心な毎日を送っている。

松村京子さんへのお問い合わせ先: kei@corcoran.com


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