Vo.6 Dec. 2014
Yoshi Kojima

ヨシ 小島さん
TAO ダウンタウン エグゼクティブ・シェフ





★ プロフィール ★
高校時代から、逗子のラ・マーレ・ド・茶屋で働き始め、80年代に渡米。以降、一時帰国中に青山のキハチで働いた時期を挟んで、 LAのチャヤ・ブラッセリーに約5年勤めるものの、日本人スタッフのみのキッチンの疑問を抱き、サンタモニカのアメリカ人経営のレストランのシェフに就任。 その後LAシェラトンのエグゼクティブ・シェフ、サンフランシスコのパン・パシフィック・ホテルのエグゼクティブ等を歴任したのち、 サンフランシスコのレストラン、MC2(スクエア)のキッチンを任され、同店はエスクワイア誌によって全米のベスト・ニュー・レストランに選ばれる。
それ以降もソノマやパーム・スプリングのレストラン・シェフ、実業家のパーソナル・シェフなどを務め、ウルフギャング・パック傘下ではレストラン、Jai/ジェイ と ケータリング・ビジネスの双方で腕を振い、アカデミー賞、グラミー賞のディナーも担当。 やがてハワイのモリモトでシェフを勤めている最中に、TAOダウンタウンのエグゼクティブとしてヘッド・ハントされ現在に至る。
TAO Downtown : http://taodowntown.com





TAOダウンタウンのレストランとそのオペレーションについて教えてください。



TAOダウンタウンは、2013年10月にメリタイム・ホテル内にオープンましたが、ここは以前レストランのマツリ、ナイトクラブのヒロ・ボールルームだったスペースを 両方使った22,000スクエア・フィート(2,046平方メートル)の巨大なレストランで、ダイニング・ルームだけで350席、それにラウンジやバー・エリアが加わるので、 文字通り モンスター級のメガ・レストランです。
常に150人のスタッフが働いていて、キッチン・スタッフだけでも35人。 最も混み合う土曜日の来店客数は約1600人、金曜日で1300人。でも客層が良いのは断然木曜日です。
午後9時を過ぎるとDJが入って、クラブ感覚で グループ・ダイニングを楽しむレストランなので、料理のポーションは大きめ。 ミシュランの3つ星レストランのような繊細な料理を味わうような環境じゃないので、 味付けも1口食べて、シンプルに美味しいと感じてもらえるインパクトを重視しています。
オープンは午後5時で平日は夜中の1時、木曜〜土曜は午前2時までが営業時間なので、夜中の一時を過ぎてもキッチンにオーダーが入ることもあります。 インテリアやプレゼンテーションがアップスケールなので、高額なリカー類はかなり出ているようで、 食事とドリンクの売上げ比率は大体 6:4になっています。


典型的な仕事の日スケジュールは?



朝hは8時に起床。朝はコーヒーだけで、10時にはオフィスに入ってEメールのチェックや、予約状況の確認をします。 キッチンに入るのは正午からで、食材をチェックして、その日のスペシャル・メニューに取り組みます。 仕込みの最終チェックをするのは午後5時からで、その後はずっと夜中の12時〜1時まで働き詰めになります。


メニューのインスピレーション何処から得ていますか? また人気のディッシュは?



新しいメニューを考える時は、既に料理のイメージが頭の中に浮かんでいるので、その味を具現化するために 自分の中で食材やスパイスを組み立てて行く場合が殆どです。 もちろん食材からインスピレーションを得る場合もありますが、逆にその日使わなければならない食材に インスピレーションが沸かない場合もあります。そういう時は、5分で料理を仕上なければならないような タイムテーブルがある場合を除いては、直ぐに料理するよりも少し時間を置いてから取り組むようにします。
料理は味だけでなく、プレゼンにも気を配りますが、白い皿は使わないようにして、日本から取り寄せた 和食器で出すことが多いです。
人気があるディッシュは、ツナのタルタルと、シーバスの串刺しが継続 してよく出ているようです。 TAOでは、どのメニューがよく出ているかは売上げデータとして提示されるので、嫌でも把握することになります。


大勢のスタッフを抱えるキッチンを、滞りなく稼働させるために気をつけていることは?



キッチンはオーダーを受けてから5分で料理を仕上ます。一部のメニューは 仕込みで80%まで仕上がっていますが、 30%程度しか仕込みが出来ないものもあります。オーダーを受けるまで、どの料理が出るかは分からないですが、 例えばもし焼き物にオーダーが集中する傾向にあれば、焼き物を仕上げる 1行程を省く工夫をして、調理時間が短縮できるようにします。
新しいメニューを考える段階で、スタッフの力量や調理時間、食材のコストを考慮することも大切になってきます。


健康管理のため、ストレス解消のためになさっていることは?



仕事が終わると、必ずジムに行って 2時間程度ワークアウトをします。 ウェイト・トレーニングをして、必ず1日に5キロは走るようにしています。
それが終わってから 飲みに行くことも少なくないです。そんな時は明け方まで飲んでいたりしますが、 好んで飲むのは もっぱらジャック・ダニエルズのストレート。 オンとオフの落差が激しいタイプなので、休みの日は ほぼ一日中寝ています。





今までで最も美味しいと感じた食べ物、逆に最も不味いと感じた食べ物は?



最も美味しかったものとして脳裏に刻み込まれているのは、子供の頃、海から取ってきたサザエやアワビなどを、 そのまま海水で洗ったただけで、食べた時の味です。 この時の味覚が、自分の料理のスタイルに大きな影響を与えていると思っています。特に採れ立てのウニの甘さは忘れられないです。
最も不味いと思うのは、ウェルダンのフィレミニヨン。 肉の味は生かすも殺すも 火の通し加減ですが、フィレミニオンのウェルダンは肉の味が死んでしまっていると思ってます。
それと冷凍食品も 全般的に食べられたものじゃないと思っています。TAOダウンタウンでは、一部のシーフードが凍って入荷することはありますが、 冷凍食品は一切使用していません。


自分で好きなようにレストランをオープンするとしたら、どんなお店になるでしょう?



カウンターで15席ほどの フレンチ割烹をやってみたいです。フレンチ割烹とは言っても、その日の気分や食材によって、中華になったり、日本食になったり、 ラーメン屋になったりするような店。お品書きがなくて、徹底的に自分が作りたいもの、お客さんが食べたい物にこだわった店をやってみたいです。


Yoshiさんの ”生涯最後の晩餐 ” のメニューは?



シンプルで申し訳ないのですが、竹の子どんぶりです。 柔かい春の竹の子を鰹節の出汁だしで完璧に煮て、それを刻んで白いご飯の上に掛けただけのものですが、 全ての工程にこだわりまくって作るので、物凄く旨いです。
自分のために作る料理は、質素でシンプルですが、料理人は粗食にしていた方が、 メニューのインスピレーションが沸くと思っています。


Yoshiさんの料理人としての信条、フィロソフィーは?



まず食材を無駄にしないこと。TAOでは、毎日数百万円分の食材を仕入れますが、1日の終わりにはほぼ全てを使い切っています。 自宅での食事でも食材を無駄にするのはとにかく嫌いです。 食材を食べるということは、その食材から命をもらっているということなので、それを粗末にする訳には行かないと思ってます。
それと 誰が食べても「美味しい」と思うものを作るということ。 人に料理を食べてもらうというのは、言ってみれば食べ物を通じて料理人のエゴを押し付けているようなものですが、 それが良い料理か否かは、食べる人が一口味わって「美味しい!」って言ってくれるかに掛かってます。
あと、基本的に料理は心だと思っていますが、チャレンジがあるからこそ 自分が向上して、先に進めると考えています。 その意味で、TAOの仕事は オーナーが「Nothing is impossible/不可能な事は無い」というフィロソフィーの持ち主で、 どんどん新しいチャレンジを強いられるので、自分には合っていると思ってます。


料理以外のライフワークは何でしょう?



日本とアメリカで暮らして、食文化を通じてどちらの国のこともそこそこ理解していると思うので、 出来ればそんな異なるカルチャーの橋渡し的なことが何かできればと思ってます。
その食文化について言えば、日本は味や素材にうるさい分、料理の質は高いですが、型にはまってしまって 面白みが無いと感じてしまうことが多い。 逆にアメリカは 食についてずっとオープンマインドで、面白かったり、ユニークだったり、自分達が楽しかったりすれば、 何でも受け入れるので、いろんなアイデアに自由にチャレンジが出来ます。日本のような均一的な質の高さは望めない替わりに、 エンターテイメント性や勢いがある。 そんな異なるカルチャーを融合させることが出来たらと思ってます。

”美味しければ何でも有り”





編集後記
Yoshiさんにお会いしたのは、共通のお友達からの紹介で、Will New Yorkの留学生がNY入りしている時に、 留学生達を連れてTAOダウンタウンに出掛けた際に初めてお会いしました。 そしてその時の TAOのオペレーションの巨大ぶりについてのお話がとても面白かったので、 その後 直ぐにこのコーナーへの登場をお願いしてしまいました。
というのもニューヨークには優秀な日本人シェフが何人もいらっしゃるものの、 これだけの大型レストランのオペレーションを手がけているシェフは他に居ないと思ったためでしたが、 それと同時に、毎日のように約1000人もの来店客のために料理を手がけるシェフのメンタリティーが どんなものなのかも、個人的にとっても興味がありました。 お話を聞くと、どんなにレストランとそのオペレーションの規模が大きくても、さすがにシェフはシェフ。 お料理を食べるお客様の側に立った、真摯な料理人の姿勢を貫いていらっしゃる様子には脱帽でした。
また、TAOのようなレストランの エグゼクティブ・シェフになると、いきなり食材を出されて それを5分や10分で料理しなければならないような状況も日常茶飯事とのこと。
その一方で、ご自分の食事には全く気を使わないとのことでしたが、お醤油からリコッタ・チーズまで 自家製で作ってしまうというのは面白い部分でした。

Yoko Akiyama, Cube New York, Inc.

Will New York 宿泊施設滞在



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