Jan. Week 2, 2019
★ " Entrepreneur Losing Money "
起業をしてはみたものの・・・


秋山曜子さま
大学時代からCUBE New York のウェブサイトを愛読してきました。 結婚、出産で暫くサイトにお邪魔出来ない時代がありましたが、また復活して読ませて頂いていて、お買い物もさせて頂いています。 Yokoさんが書くコーナーはキャッチもこのコーナーも欠かさずに読んでいます。

私がご相談したいのは1年前に立ち上げた私のビジネスのことです。女性起業家セミナーを受けて触発されて 貯金を叩いてあるビジネスを立ち上げました。始める前にいろいろな人に相談して、 「同じようなことをしている人と差別化を図らなければだめ」とか、「1年以内には黒字にしないと見込みがない」等とアドバイスされましたが、 やはり起業する際の一番のお手本になったのはセミナーを主催していた女性でした。 そこで何度もその人の本を読み直して、自分なりにきちんと準備をして立ち上げたはずのビジネスでしたがなかなか上手く行きません。
セミナーをしていた女性の本にも苦労話が載っていたので、最初から上手く行くはずなどないと思っていろいろトライしましたが 人集めや売り上げにはなかなか繋がらず、友達や知り合いを集めたイベントなどもしてみましたが、 その時は人が来てくれても そこから先に繋がらず、どんどん出費が嵩んで焦りが出てきてしまいました。
私がセミナーの先生をお手本にしたかったのは その先生も子育てをしながら起業したからで、 私も小さな子供を1人抱えて上手くビジネスが出来るようなつもりでいました。 ちなみに私は職場では仕事が出来た方で、出産のために退職する際には上司に戻ってきても良いといわれました。

退職後の数年間、子育てに専念したことには全く悔いは無くて、大切な子供の成長期をしっかり見守れて、 可愛い盛りの時期をずっと一緒に過ごせたのは本当に良い経験だったと思います。 でも子育てが終わった時に自分の仕事と呼べるものが無ければ… と思ったのと、やはり友達以外のいろいろな人と知り合うには ビジネスをしていた方が… と思ったのが起業のきっかけでした。
起業した業種は自分がやりたいと思っていたことで、仕事として続けていくのには無理が無いと思ったのですが、 やはりビジネスとしてやっていくには自分が好きな事だけをやっていられる訳ではなくて、 それは実際に起業をしてから初めて知った誤算でした。 自分が苦手な部分を人にやって貰おうとするとお金がかかってしまい、起業のために用意した貯金が何の成果も上がらないまま半分消えてしまいました。 「これさえこなせばお金になる、ビジネスが軌道に乗るに違いない」という事にお金を使ってきたつもりでしたが、 終わってみるとそれを払った人に上手く利用されたような気がしなくもありません。

お金の残りが少なくなってしまったのと、セミナーの先生の生徒さんの多くが1年でビジネスを軌道に乗せている成功例を読んで「このままではだめだ」と思ったある日、 思い切ってセミナーの先生にメールを出してみたところ、先生がメンター兼コンサルタントになってビジネスを成功に導いてくれるというお話を下さいました。 最初は嬉しくて飛びつきたくなったのですが、料金があまりに高額でビックリしてしまいました。 ビジネスのために用意したお金の残金を上回る金額ですが、既に成功している人に導いてもらえば 現在のような一体どうしたら良いのか分からない状況から確実に抜け出すことが可能です。 そこで周囲に相談してみたのですが、周囲はその先生のセミナーを受けたこともありませんし、本も読んだことが無いので そんな大金を支払ってまでメンターになってもらうのは危険だと言います。 それと「今という時代が私が選んだビジネスの起業に適していないのではないか」という人も居ました。 その人の知り合いも私と同じように起業をして上手く行っていないそうで、私もそう考えると危険だと思えてきますし 正直なところ「起業を早まった」という気持ちはずっと抱いてきたものです。 でも ここまで1年お金と時間を使って頑張ったので今止めたくない気持ちも強く決断が出来ません。
先生にその不安を説明したところ 「やりかけたことを途中でやめてしまう気持ちを直さない限りはビジネスで成功することはない」と言われて その時はそうかと思いましたが、やはり考えているうちに どうしたら良いのか益々分からなくなってしまいました。 ボッと考えている時間ばかりが過ぎていくので、尊敬する秋山さんのお考えを聞きたいと思いました。 具体性がなくてアドバイスがし難かったらごめんなさい。
ニューヨークでビジネスを長年続けている秋山さんでしたら、私のような状況をどう判断されますか。 アドバイスをしていただけたら本当にうれしいです。 よろしくお願い致します。
それと本の出版おめでとうございます。早速予約しました。読ませて頂くのが楽しみです。

- H -



教わりながらビジネスに成功した前例はありません


私もCUBE New York Inc.のコンサルテーションのビジネスで起業家からご相談を頂くことがありますが、 ブレーンストーミングの段階の方も居れば、既にスタートしているビジネスの展開についてアドバイスさせて頂くケースもあります。
私が起業の際にお話しすることの基本事項の1つは、成功者よりも まずは同じビジネスや同様の状況で失敗している人から学ぶべきという事です。 成功者のストーリーというのは夢や希望を煽って起業を決心させるのには役立ちますが、実際には起業は趣味やレジャーではないのですから そんな甘い考えではやっていけません。世の中には成功者よりも失敗者の方が多い訳ですから、 自分の業種の起業に際してどんなリスクや落とし穴があるのか、一般の人々はどんな形で起業をして止めざるを得なかったのかを学ぶ方が、 遥かに手堅いビジネスがスタート出来ます。
事実、成功者と言われる人は「最初にそれを始めたから」、「お金と人脈があったから」、「運とタイミングが良かったから」というケースが多く、 そんな成功者に触発される人の多くは ビジネスさえスタートしたら「自分もそうなれる」と思い込んでしまう傾向にある反面、 失敗談を聞けば「自分は決してそうはならない」と考えがちですが、そういう楽観的な気持ちで臨むと往々にして失敗するのがビジネスです。

また私自身は 起業家セミナーを受けて大成功を収めた人の前例というのは聞いたことがありません。 人に教わりながらビジネスを成功させたという例は、そうしたセミナーに登場する作り話かもしれない成功例でしか世の中に存在していないように思います。 もちろん優秀なアイデアで、十分な資金があって、景気さえ良かったら、誰でも2〜3年はある程度羽振りが良いビジネスが出来るというのもまた事実です。 でもそれにはセミナーやコンサルテーションの必要はありません。
さらにアメリカでは作った会社を潰しては大きな財産を築いている人がいる反面、 羽振りがよさそうに見える経営者が実は借金だらけだったりするので、 その意味では ”成功” というコンセプトは 実態を伴わない表向きのものであったりもします。 もし”成功”が金銭面で潤うことを意味するのであれば、ビジネスという名の下に お金をどんどん減らす行為を続けるのは間違っています。
Hさんのような個人の起業のケースでは、そのビジネスでお金が稼げると分かった段階で設備や人材、経営システムに投資をすべきで、 起業自体もその段階ですべきことなのです。アメリカで 子育てをするホームメーカー(主婦)が起業をして利益を上げるケースは 趣味や親切でやっていたことのニーズが増えてきたためにビジネスにしたというものが殆どです。 起業をしてから顧客やニーズを探すというのは言ってみれば本末転倒の行為で、 それをやってしまうのはセミナーなどで触発されたり、周囲が起業しているのを真似て走り出してしまったケースなのです。

さらに どの世界でも本当の成功者は他人にその秘訣などは教えません。ビジネスを教えている人が売っているのは ビジネス経験の無い人にお金を払わせるための商品です。希望を煽ったり、叱咤激励をするのもそのマーケティング手段なのです。 セミナーの先生の メンター兼コンサルタント料がとても高額だったとのことですが、恐らくその先生はそんなコンサルタント料で生計を立てているのだと思います。 それほど本の印税やセミナーの収入というのは実際には大した金額ではないのです。
加えてセミナーでレクチャーをする人が 自分自身ではコンサルタントしかしたことが無く、自営業の経験が無い場合も少なくありません。 私が知る限り、大企業やマーケティング会社に勤めていた人が それらを辞めて立ち上げる自営業が コンサルタント・オフィスですが、 以前勤めていた企業のコネクションで得たクライアントが離れた途端に肩書だけのビジネスになってしまう例は意外に多いのです。 したがって自営業のノウハウが分からない人がコンサルタントを名乗ったり、レクチャーをしているケースは全く珍しくありません。

人生には続ける強さが大切な時と、止める強さが大切な時があります


セミナーの先生は「やりかけたことを途中でやめてしまう気持ちを直さない限りはビジネスで成功することはない」とおっしゃったとのことですが、 私でしたらHさんのお友達の「今という時代が選んだビジネスの起業に適していないのではないか?」というアドバイスの方を 真剣に捉えます。 というのもビジネスにはタイミングというものが何よりも大切だからです。 同じビジネスをしても 時代や世の中の追い風を受けられる時と、逆風で吹き飛ばされてしまう時があるのです。
またHさん自身の本能の囁きというのもとても大切です。 私がメールを拝読した限りでは Hさんはこのままビジネスを続けること、先生をメンター兼コンサルタントにして多額のフィーを支払うことに明らかにリスクを感じているという 印象を受けました。 このコーナーに何度も書いていますが、人間には誰にでも自分を幸せに導くための嗅覚が備わっています。 それは「虫の知らせ」、「予感」などとも表現されますが、 自分の触覚でリスクを感じている時にはそれに従うべきなのです。 Hさんが従うべきは自分を幸せにするための本能であって、自分を収入源にしようとしている人の 説得ではありません。
さらに言えば、ビジネスには一度立ち止まって仕切り直しをするべき時というのがあるのです。それは挫折ではなく、建て直しのためのステップです。 そしてそれは経済的な余力がある段階で踏み切るべきことなのです。

私はセントラル・パークをランニングするのをエクササイズ兼メディテーションにしていますが、ある夏の炎天下の日にウォーターボトルを持たずに走ってしまい コースの後半で脱水症状に陥ってしまったことがありました。だんだん視野が狭くなってきて、走っているのも苦しいのですが その段階になると 驚くほど難しいのが止まるという行為です。止まろうとすれば 膝や足首にプレッシャーが掛かって 更なる負担が身体に掛かることを 脳が潜在的に熟知しているので、苦しい時ほど 走り続けるという楽な道を知らず知らずのうちに選んでしまうのが人間です。
その時の私は本当に一大決心をして止まりましたが、途端にフラフラして自分が思っていた以上に脱水症状のダメージが大きいことに驚きました。 それでも日陰のベンチまで歩く体力は残っていたので、まずはそこで休んでから水を飲みに行って大事を逃れました。 私はこの経験をして 初めて倒れるまで走る人が 何故その前に止めないのかを理解することになりました。 今でもその時の ”止まると決めてから それを実行する難しさ” は忘れられない記憶の1つになっています。

同じことはビジネスや人生にも言えると思います。 「止める」、「撤退する」という行為に付き纏うネガティブなイメージや体裁を気にしたり、 「もしかしたら」という希望を繋いで無理を続ける人は 様々な状況において非常に多いのが実情です。 しかしながらそれは結果的に楽な道を選んでいるに過ぎません。正しい決断が苦渋の選択であるケースは多いのです。
でも余力を残した状態で一度手を引いたり、止めたりすれば そこからの立ち直りのチャンスは幾らでもあるのです。 どうしたら良いのか分からないままビジネスを続けたり、その解決策を持つとも限らない人に大金を投じるよりも、一度全てをストップして何が間違っていたのか、 自分のビジネスに何が欠けているのか、どうして見込んだ通りにならなかったのかを 冷静に、客観的に見直してみるべきなのです。 「そんな事ならビジネスを続けながらでも出来る」と思っていたらそれは大間違いです。 株を全て売却した人の方が相場の読みが当たるのと同様、一度自分を渦中から外に出さなければ分からない、逆に出た途端に分かることは沢山あるのです。

私自身のビジネスは 2000年に自分の会社として立ち上げる前に1996年からパートナーと一緒に同じようなウェブサイト&Eコマースをしていて、それが儲かり始めたのは スタートから3年後の1999年のことでした。現在のCUBE New York のお客様の中にはその当時からのお客様も何人かいらっしゃいます。 当時のパートナーは本当に何もしてくれないアメリカ人だったので、「これなら1人で起業した方が遣り甲斐と利益が高まる」と思って始めたのが今のCUBE New York Inc.です。 私だけでなく 起業をしてある程度長くビジネスを続けている人と話すと、大体ビジネスが軌道に乗るまでは3年が掛かったと言いますし、 大企業にしても新たに立ち上げたプロジェクトが黒字になるまでには大体3年を見込みます。
逆に立ち上げたビジネスを閉める人が多いのも3年ですので、私は3年というのがビジネスが続くか否かのターニング・ポイントだと思っています。 したがって自分の立ち上げたビジネスを信じて頑張るという状況になった場合は、1年でその成果をジャッジするのは早すぎると思います。 自分の本能がGoサインを出している時には、続けて頑張る強さを発揮させるべきなのです。

私は人間は何歳になっても何等かの形で働き続けて、生活にメリハリをつけて、 自分のプロダクティビティを実感して、社会と人のための貢献を生きがいにするべきだと考えています。 ですのでそのために起業をすることは奨励する立場ですが、 だからこそ「自分のための自分のビジネスは自分の手で築くべき」という考えです。 人に教わったり、人に頼ったりするビジネスは必ず潰れます。
長く幸せな人生の中で、長く続けられるビジネスを見つけるには焦りは禁物です。 短期的なゴールを設ければ それが自分を追い詰めて間違った判断を下すきっかけにもなります。
それより自分の世界が広がる勉強をして、この先の時代と世の中で人にとって何が大切になるのかを 常に考えて、一歩先を見据えたビジネスを目指すことを私はお勧めします。 本来お仕事が出来るHさんなのですから、今の焦りから自分を解き放つだけでも違うアイデアや、 新しい方向性が見い出せるかもしれません。 1つの考えに凝り固まったり、しがみ付いたりせず、様々な可能性やアイデアに柔軟に取り組んでみてください。

最後に読者の皆様、お客様から年末年始のご挨拶、および書籍ご購入のメッセージを頂戴したことをこの場を借りてお礼申し上げます。 2019年が皆さんにとって 様々な経験に恵まれる 実りある1年になりますように。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。




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