Feb. Week 1, 2019
★ " 50 is Too Late to Make a Career Change? "
「50歳の自分に今更何が出来る」という夫


秋山様、
キューブ・ニューヨークとこのコーナーを熟読&愛読する者です。 先日には秋山さんの本もオーダーして、届くのを楽しみにしています。 私がアドバイスをお願いしたいのは夫のことです。

夫は自営業を営んでおり、30〜40代前半にかけてはビジネスが上手く行っていて、 大企業にお勤めの主人の友達よりも羽振りが良い生活が出来ていました。 しかし徐々に状況が変わったというか、世の中が変わってきて、夫の仕事の市場がどんどんなくなってきたため、 会社の規模も売り上げも年々小さくなっていきました。 それに応じて夫の人間性もどんどん弱気で、守りに入るという言葉が相応しい感じになっていき、 そういう経営姿勢が頼りないと思えたのか、2年ほど前には夫が育てて、長年右腕のようにしてきた部下が辞めてしまいました。 それに追い打ちをかけるように体調があまり優れないこともあり、本人が老化を感じて益々弱気になっているのが分かります。 なのにストレスのせいか止めたはずのタバコを時々吸ったり、お酒の量も増えていて、以前やっていたジョギングや筋トレも最近ではさっぱりです。 本人が言うほどは食事にも気を付けていないので、 私の目からも ここ1〜2年で夫が老け込んだのがはっきりと分かりますし、だんだんと頼りなくなっていく夫を見ているのが 寂しい時と、「どうして何もしようとしないの?」と腹立たしく思える時があります。

先日、夫の妹が心配して「早い段階で別の仕事に切り替えるべき、その気があるのなら 知り合いで一緒にビジネスが出来そうな人を紹介する」と言われました。 妹は既に夫にも話していたようで、私には良さそうな話に思えましたが、肝心の夫が全く乗り気ではありません。 「もう50なんだ。40歳だったら やってみようと思ったかもしれないけれど、 この年齢になって今更何が出来る。現状維持だってやっとなのに、今から新しい事を始めるなんて無理だ」 と取り合おうとしません。
私には夫の言う現状維持が、どんどん縮小と老化を進めることのように思えて、それは夫の妹も同じ意見です。 何とか夫を説得したいのですが夫にはそれが疎ましいようで、最近は夫婦喧嘩が多くなってきました。

この状況をどうするべきでしょうか。どうしたら夫を前向きにして、現状維持に凝り固まった考えを変えることが出来るでしょうか。 何かアドバイスが頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

- M -



前向きになるために必要なのは助言や説得ではなく、心身の健康です


Mさんのご主人の状況は、同世代の人々が 老後の生活や経済状態に思いをめぐらせて 突き当たる問題のように思います。 特に男性には 仕事、収入という金銭面がプライドを含む精神状態全般に強く影響を与えますので、 儲かっている時に気前良く振舞っている男性ほど、経済力が衰えると「学生時代の友達に会いたくない」と考えたり、 変なところで見栄を張るなど、人間性や行動半径まで変わってしまうケースは少なくないようです。
Mさんのメールに「大企業にお勤めの主人の友達よりも羽振りが良い生活が出来ていました」という記載がありましたので、 恐らくご主人は羽振りが良かった時期に大企業に勤めるお友達の飲み代を払う等の気前の良さを見せたり、 お友達より高額なヴァケーションを楽しむ等していたものと思いますし、 それを企業の一員としてではなく、自力で稼ぎ出していたことがご主人の誇りだったことと思います。
ですがそんな状況から業績が悪化して、それをどうしたら改善できるか分からない場合には Mさんや妹さんに言われるまでもなく、最も焦りや危機感を抱いているのがご主人だと思います。 止めたはずのタバコを時々吸ったり、飲酒の量が増えているのはそのストレス・レベルを象徴していると同時に、 それがご主人の現実逃避の手段とも判断できます。
ご主人が常にビジネスで頭を痛めているからこそ、 Mさんや妹さんの助言や説得に対して「考えた挙句、今の状態を続けるしか無いのだから、詳しい事情も知らずに勝手な事を言うな」といった 気持ちを抱いているかと思いますし、 自分の健康状態に不安を抱いて、本人が老化を実感している場合には尚更ネガティブになっているかもしれません。 なので頑固で消極的になったり、ビジネスについて痛いところを突かれると過剰反応をするなど、 職場でもかつてのご主人とは異なる側面を見せていたかもしれません。

いずれにしても、今の状況ではMさんが何を言っても夫婦喧嘩になったり、ご主人が沈黙を決め込むようになるのは当然のように思います。 というのもMさんがご主人のことを思って言っている言葉は、実際にはご主人を追い詰めているだけなのです。 妹さんが持ちかけて下さった新しいビジネスについても、 同様の状況で無理に新しい方向を模索して失敗する例を 誰もが50歳になるまでに一度は見てきているはずですので、 自分がそうなるリスクも感じているかと思います。 正直なところ私もメールを拝見した限りでは、今のご主人に新しい可能性を模索するのは難しいように思います。

それよりも私がここでまず取り組むべきだと思うのはご主人に自信を取り戻させること、 健康とエネルギーを取り戻して頂くことです。 そのためにはまずMさんが ご主人の打ち出す現状維持の方向性をサポートして、 「現状を維持するには、健康が何よりも大切」という意識を高めて、 ご主人に タバコやお酒を控えて、健康的な食事に切り替えることを約束して頂くと同時に、 Mさんが率先してそのライフスタイル改善をリードするべきだと思います。 この時に避けるべきは無理に味気ないダイエットを強要したり、それと一緒にエクササイズを薦めることです。
これまでご主人が感じていたMさんからのビジネスに関するプレッシャーを取り除いて、 気持ちに少し余裕が生まれた状況を利用して ご主人が少しずつ健康を取り戻せるように、ヘルシーな食生活を最優先課題にしてください。具体的には朝食抜き、もしくは朝食を極力軽くして、 ランチにも健康的な愛妻弁当を持たせてみてください。 ビジネスや人生に疲れている男性には叱咤激励のヘルシー路線よりも、健康的な食事によって愛情が注がれていると感じさせる方が遥かに有効です。
以前好んでエクササイズをしていたご主人なのですから、身体が軽くなってきたら運動は言われなくても自分で始めるようになります。 Mさんはあくまで「 ご主人に健康で長生きをしてもらうための愛情とサポートを示す」という姿勢で、 食事に止まらず、ストレス発散や快眠のための配慮をして頂きたいと思います。

人間が後ろ向きな思考になるのは、誰もが脳が発しているシグナル、脳で考えた結果と思い込みがちですが実際には、「何を食べてどう生きているか」という 腸から脳に送られるシグナルが大きな影響を与えているのです。腸が第二のブレインと呼ばれるのはそのためです。 体内の細胞が活性化している人は快活で、身体と頭のキレが良い反面、思考が凝り固まって柔軟性に欠く人、消極的で疲れ易い人は 食べ物が 体内や脳でエネルギーとして使われる前に脂肪として蓄積されるので、エネルギー不足で思考力、集中力が乏しくなるだけでなく、 身体も硬く、それに伴って血行も滞っているケースが殆どです。 そうした人に限って、ストレスやエネルギー不足を お酒や糖分(=炭水化物)、カフェインの過剰摂取で紛らす傾向にありますが、 実際にはそれが身体の様々な部分での炎症を招き、腸内では善玉バクテリアを殺す悪玉バクテリアを餌付けして増加させる結果となって、 病気でもないのに体調が悪かったり、老化の進行が速まるだけでなく、健康状態に不安を感じるメンタリティを生み出します。
健康に自信がない人は、自分のパフォーマンス、引いては自分自身にも自信が持てませんので、 消極的になって 自己嫌悪に陥ったり、 夜も不安で眠れないという負の連鎖を招くだけでなく、それが悪化した場合は現状に向き合うより刹那的な快楽や解決案を求めるようになりますし、 ストレスの蓄積がパニック・アタックという形で襲ってくるケースもあります。
もちろん体調が改善したところで ご主人のビジネスを取り巻く環境が変わることはありませんが エネルギーや集中力が高まれば 物事に取り組む効率は遥かにアップします。 精神面においても健康への不安というネガティブ要素が無くなるだけで 「状況を好転させよう」という意欲が生まれるのです。何事も先ずはそこからなのです。

50歳からの野心で成功する人はアメリカには少なくありません


Mさんのご主人が何歳までどうやって生きようと思っていらっしゃるかは私には知る由もありませんが、 ご主人が健康に自信を取り戻した段階で考えて頂きたいのが、 80歳まで健康に生きられる人には50歳からでも30年の猶予が与えられるということ、 それは70歳までしか健康に生きられない人に40歳の段階で残された時間と同じという事です。 Mさんのご主人の現在のライフスタイルでしたら、「70歳、もしくは65歳までがせいぜい」と考えて、 「50歳になった今、何が出来る」とおっしゃっているのかと思いますが、 健康を取り戻して、それを維持すれば キャリアの終焉と思っていた年齢を先に延ばすことが出来るのです。
健康な50歳にとって新しいことに取り組むのが遅過ぎることは決してありません。 見方を変えれば だからこそ健康が何よりも大切なのです。 健康さえ維持していれば、人生でもビジネスでも立て直しや仕切り直しが出来ますし、 それをどの段階で始めても成果を生み出すだけの時間が残されているのです。 ニューヨーカーの多くは朝、仕事の前にエクササイズをしてからオフィスに出掛けますし、 キャリアにシリアスな人々ほど食事や 食事をする時間にも気を付けて体調管理を最優先にしますが、 それは仕事や充実した人生のために健康が如何に大切であるか、 健康であれば、若さを保って”時間が稼げる” ことを熟知しているためです。 「Time is Money」という言葉通り、時間を稼ぐことは 引いてはお金を稼ぐことなのです。

私は時々ボクシングのクラスを取っていますが、そのクラスで何度か顔を合わせたのが63歳の極めて健康的な女性です。 私が20回でウンザリする腕立て伏せを その女性が快活なペースで30回やってのける姿を見せつけられて実感したのが 「年齢は生きてきた年数であっても、老化の度合いではない」という事です。 実際のところ、「Aging」と「Getting Old」というのは別物です。 若くても年齢より年老いて、身体も頭も錆びて来ている人はたとえ20代でも「Getting Old」だと思いますが、 何歳になっても健康とシャープな脳を維持している人は「Aging」はしていても「Staying Young」であって、 「Getting Old」ではないのです。
私は自分のコラムに何度も書いてきたように125歳以上まで五体五感満足で生きることが人生の目標で、 それを実現させるためには出来る限り長く働いて社会と関わり続けることが必須条件だと考えています。 したがってリタイア願望はゼロですが、実際に自営業の人に決して少なくないのがリタイア願望ゼロという人々です。 またアメリカには企業をリタイアしてから自分で好きな事をビジネスとして始めるケースは非常に多いですし、 自分の好きなビジネスを始めるために、若いうちからハードに働いて早めにリタイアするケースも珍しくありません。 その結果、アメリカでは若い層がスタートするビジネスよりも 50代以降がスタートするビジネスの方がサクセスを収め、生き残るケースが多いことはデータにも表れています。 エイジングのプロセスで身に付いた経験や人脈、忍耐強さはビジネスに大きなプラスになるのです。

Mさんのご主人は、羽振りが良かった時代に大企業にお勤めの友人とご自身を比較していた様子が伺えますが、 そんな羽振りが良い時代もあれば、ビジネスが思い通りにならない時期が訪れて 企業勤めの人が 味わうことが無い苦労が自分1人の身に降りかかってくるのも自営業の宿命です。 でも企業勤めと自営業は苦労の種類が違うだけで、誰もが人生の中で同じように浮き沈みを経験しているのです。 1年の中にも春夏秋冬があるように 種撒きの時、試練と我慢の時、成長や収穫の時、 やり直しや方向転換を強いられたり、新しいチャレンジに取り組む時などが 常に巡って来るのが人間の運勢でありバイオリズムなのです。
したがって人間も企業もそんな巡りや時代、社会に応じて変わっていかなければならないのです。 「Nothing Lasts Forever」と言われる通り、世の中には永遠のフォーミュラなどないのです。 ですから一度築き上げたと思ったものが ある日崩れ出してもそれは不思議ではありませんし、 そうかと思えば もう終わりだと諦めていた段階で、思わぬ転機が訪れたりもするのです。 なので私は人生がどんな局面であっても安心して努力を止めたり、傲り高ぶることは危険だと思う反面、 どん底で先が真っ暗だと思えても 決して自暴自棄になったり、諦める必要はないと思っています。 そのためには心身の健康と自信が不可欠なのです。
自信というのは一般に自分を信じる力と解されると同時に「折れない強さ、逆境や敵に勝てるという信念」と 考える人が多いようです。 でも私が考える自信は「折れても立ち上がれる強さ、自分自身に負けない信念」です。 人生には自分ではコントロールできない様々な問題や逆境が訪れるので 折れたり、打ちのめされることがあっても当然なのです。 大切なのはそこで諦めずに立ち上がる勇気や強さです。
またこのコーナーに何度も書いている通り、人間は自分で自分を追い詰める生き物です。 世の中には酷い事を言ったり、したりする人は沢山いますが、その辛い思いを何回も反復して自分を傷つけるのは自分自身ですし、 プレッシャーやストレスを何十倍にも増幅させて自分に押し付けるのも自分、 そうかと思えば肝心な時に自分を甘やかしたり、油断させるのも自分自身です。 ですのでMさんのご主人にはまず健康を取り戻して頂いて、その次のステップで経済力や地位等の裏付けとは無関係の ”本当の自信”を身に着けることを目標として頂きたいと思います。 目指すものは意識して取り組むことによって必ず手に入ります。

アメリカでは「50's is new 30 's」と言われて久しい状況ですが、 世界一長寿の日本なら尚のこと 50代からでも野心や目的を持って生きるべきなのです。 新しい事のスタートや、方向転換に遅すぎることはありません。 諦めた人生には何も起こりませんし、予定通り年をとっていくだけですが、 自分が人生と向き合って取り組む限りは まだまだ展開が残されているのです。
人間の運は厳しい時期を乗り越えた時が好転の始まりなのですから、 今が苦しいという人ほど その段階で頑張ってみるべきだと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。




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