Aug Week 3 2018
★ " Fear of Falling in Love "
過去のトラウマが原因の恋愛フォビア


秋山曜子さま
とある雑誌で秋山さんのことを知り、それ以来、(歴史は浅いですが)このコーナーを愛読させていただいています。 秋山さんの、悩みの核心をついた的確なアドバイスを読むと いつも心がすっきりし、何か上手くいかないことがあっても自分の考え方次第でどうにかなる、大丈夫、 という力強いメッセージをいただいているように感じます。
今回はご相談したいことがあり、メールさせていただきました。

私は昨年の5月に、挙式の2カ月前にして約2年半付き合った彼との婚約破棄を経験しました。 ある日突然、彼に「他に好きな人ができた、君とは価値観が合わない、式を延期してほしい」と言われました。 既に同棲もしており、式の準備や家事の分担、物を買うなど、生活する中での様々なことにおいて意見の衝突が多々あり、 私はそれらの作業をすべて自分が背負って自己犠牲を払っているような気持になっていましたし、彼はそんな私との意見の衝突が重なることで 価値観が合わないと判断したようでした。 婚約している状況にありながら、他の女性とそういう関係になってしまう彼の軽薄さ、責任感のなさに絶望し、結果的に婚約破棄を提案したのは私でした。
直後は自分でも訳が分からず落ち込んでいましたが、友人や親の支えもあり何とか立ち直ることができました。今は彼に対して何の未練も残っていません。 でも年齢(現在34歳です)でもう後がないと思い、心の底ではもしかしてこの人と合わないかもしれないと思いつつも 結婚を焦って進めようとしたことや、他人と生活していくためのコミュニケーションの取り方や 上手く折り合いをつけていく力が私に不足していたことが彼を追い詰め、このような結果になったのではないかとも思っています。 またこの経験で、彼の不誠実さ(私と付き合いそうになったときも、別に彼女がいました)に 交際中に気づけなかった自分の見る目に全く自信を失いました。 彼と付き合う前も何人かとお付き合いをしましたが、いつもルックスや肩書、外面の調子の良さに惹かれてしまう傾向があり、 あまり誠実な人はいませんでした。 好きな人は自分の鏡というように、「もしかすると自分もそんな人間なんだろうか?」、「これからずっとこんな恋愛を続けていくのか?」と自己嫌悪に陥る日も多々あります。

あれから1年が経ち、職場で気になる人ができたのですが、まったくトラウマから抜け出せていない自分に愕然としています。まだ何も始まっていないのに、 既に「自分が好きになった人はダメな人だから、ダメな部分を探そう」モードに入ってしまっています。 自分が傷つくのが怖いから、始まる前に芽を摘んでしまおうとしています。 このままでは、仮に上手くいったとしても過去に捉われて自爆してしまいそうで、自分から積極的になる気がまったく起こりません。 辛い過去のトラウマからどうやったら抜け出せるか、アドバイスをお願いいたします。

- A -



私がAさんのメールを読んで、最初に頭に浮かべた言葉が 私がよくこのコラムに用いる表現である「Glass Half Full / Half Empty」でした。 この言葉はグラスに水が半分入っている様子を 「半分満たされている」と受け取るか「半分しか入っていない」と見なすかという意味で、 要するに同じ出来事でも見方を変えれば180度意味合いが異なることを指すものです。

確かに挙式の2カ月前に約2年半付き合った彼との婚約を破棄したことは、 特に女性にとっては苦痛を伴う経験だったと思います。 結婚前に相手との問題点や、将来お互いに上手く行かなくなることを察知していても、 「もう式の準備が進んでいるから」、「とりあえずもう結婚したいから」というような短絡的な理由や、 ウェディングをキャンセルする勇気が持てないために 結婚してしまう女性は決して珍しくありません。
ですが 心で感じている不安をかき消して彼と結婚した場合の不満、後悔、フラストレーション、苦しみや、その後に待ち受けているであろう離婚、 そうなった段階からの人生の建て直し、傷ついたプライドや心の修復といった不幸の大きさを考えたら、 Aさんの状況は 死亡事故になるべきところを 腕の骨折で済ませたようなラッキーな状況と言えるのです。 不安を抱えて結婚した場合、自分は我慢しても相手から離婚を突き付けられたり、夫が家に寄り付かなくなるなど、 待ち受けているのは それなりの結末で、希望を繋いで不幸な状況を我慢すればするほど 女性側のダメージは大きくなっていきます。 アメリカの離婚弁護士によれば男性は離婚でエイジングに拍車を掛かることはあまりないそうですが、 女性は外観が5年〜10年老け込むとのことなので、余計なエイジングをしないで済んだというのもボーナスと考えるべきです。

またAさんがその経験から学んだ事も沢山あるはずです。 以前のAさんの交際相手は「ルックスや肩書、外面の調子の良さに惹かれてしまう傾向があり、 あまり誠実な人はいませんでした」とのことですが、それが婚約破棄という教訓によって 外観や肩書等よりも男性を本質で捉えようという姿勢に変わったのです。 「彼の不誠実さに 交際中に気づけなかった自分の見る目に全く自信を失いました」というのは 彼と結婚して失望した場合に言う台詞であって、結婚を未然に防いだAさんが言うべきものではありません。
また人間には誰にでも自分にプラスにならない人間が良く見えてしまう時期があるのです。 それは恋愛に限ったことではなく、社交面でも仕事面でも同様です。 こんな偉そうなことを書いている私とて、振り返ると 「どうしてあんな人と付き合っていたんだろう?」 「どうしてあんな酷い人が良い人に思えたんだろう?」というようなことは何度もありました。 そういう時は 往々にして人生の混迷期ですので、 そんな時に結婚という人生の一大イベントを迎えずに済んだことは 天のご加護だと感謝すべきというのが私の考えです。
私は婚約を破棄して 自分の不幸を食い止めたAさんから 人生に真剣であるだけでなく、 自分を幸せにする意欲やプライドを持ち合わせている様子を感じました。 自分の人生を自分でコントロールする勇気が持てない女性は非常に多いのです。 Aさんは周囲の状況に流されて 表面だけの幸せを追いかけている女性とは違うのですから、 早くそれに気づいて、もっと自信を持って生きるべきです。 Aさんは自分を責めてどんどん臆病になっている様子が窺えますが、それは大きな間違いです。 自分で自分を不安にしていたら、何時までも以前の彼の不幸がついて回ると言っても過言ではありません。

更に私からアドバイスをさせて頂くとしたら、好きな男性が出来た場合は 結婚や真剣な交際を考える以前に、 まずは相手を知ろうとするべきです。人間なのですから良いところもあれば、悪いところもあります。 結婚して長年上手く行っているカップルでも お互いに苦手な部分、嫌いなところは必ずあります。 それを好きな部分が大きく上回るからこそ長く結婚生活が続けられる訳ですので、 相手を見極めることは大切ですが、勝手に理想像を描いて 嫌なところを見つける度に減点していくような視点だけは持たないようにして頂きたいと思います。
いわゆる”婚活”をしている日本人女性の中には 時にこうした減点方式で 男性をジャッジする様子が見受けられますが、 そんな獲物を狙うような冷たい目で見ていたら 男性側が興覚めしても不思議ではありません。 実際、日本人の若い男性と話をすると 婚活中の女性を非常に恐れていて、「一緒にコーヒー1杯を飲むのさえも勘違いされそうで怖い」と言っていたりします。 そもそも結婚というのは男性主導で成立するものなので、女性だけが積極的に動くこと自体に無理があるというのが私の考えです。
結婚生活が長いカップルの多くは、夫側は一目見てピンと来た女性を妻に選ぶ傾向が強いのに対して、妻側の夫の第一印象は往々にして 「変な人」といったもので、結婚など全く考えなかったケースが殆どです。でも男性は好きになったら女性に熱心にアプローチしますし、女性側の愛情は育つものなので、 このバイオロジカル・システムのお陰で結婚というものが歴史的に成立してきたのです。 したがって女性が血眼になって相手を探ような”婚活”の場合、成功率は低いと言わなければなりません。

それよりも私は、もっと男性に優しい視線を向けて どういう人柄か、どういう風に育って、何に打ち込んでいて、どんな音楽を聴いて、どんな夢があるのかなど、 相手を様々な角度から知ろうとすることが恋愛においても友情関係においても大切だと考えています。 恋愛に臆病な女性は頭で相手のことを考え過ぎて、 独り相撲をしているケースが少なくありません。 でも恋愛というのは相手とのインターアクションであって、自分の頭の中で完結させるものではありません。 ですので職場で好きな男性が出来たのでしたら、交際や結婚相手として考えるよりも 先ずは相手を良く知るために しっかりコミュニケーションを取るべきです。 そうすることによって初めて相手との相性が分かる訳で、しっくり行く相手で 何となくいつも目が合う、大勢の中に居ても お互いの姿を直ぐに探し出せるような ケミストリーがあれば、そういう関係が恋愛に発展します。
Aさんのような女性の場合、「男性にリードしてもらって、一生ついて行こう」などと考えると失望の連続になるかもしれませんが、 お互いの不足分を補いながら支え合って 一緒に幸せを目指せるパートナーを探して、 かつてココ・シャネルが語ったように「男性は子供」と考えて 母親のような包容力が持てれば きっと上手く行くことと思います。
私の目から見るとAさんは真面目過ぎて 自分の悪い部分にフォーカスはするものの、 自分の良さや素晴らしさを謙遜するがあまり 軽視しがちです。 それが今の恋愛相手を見る目にも反映されているのかもしれません。 でも前述のように人間であれば 誰でも良いところ、悪いところがあって当たり前なのです。 だからこそ人間のポジティブで素晴らしい部分にフォーカスするべきで、それをベースに人間関係を築く方が、 社交でも恋愛でも遥かに上手く行くものなのです。

最後に私はAさんより長く生きていますが「好きな人は自分の鏡」という言葉はこれまで一度たりとも聞いたことはありませんし、 世の中には ”どう考えても高望みの片思い” をしている人が少なくないことや、人間は子孫のDNAの完成度を高めるために 自分に欠けたDNAを持つ相手、すなわち全く異なるタイプに 本能的に惹かれるケースが多いことを思うと、この理論にはかなり無理があると思います。 そんな自分が不幸になるような語録などは忘れて、これからは 「Happy Go Lucky」を心掛けるようにしてください。 幸せに振る舞うことで 運が味方してくれるのです。 でもいつも幸せに振る舞うには 自分自身を強く、ポジティブにする必要があります。
そのためにも 婚約破棄の経験を ”辛い過去のトラウマ”ではなく、”人生の貴重なレッスン” と考えて、Aさんのこれまでの人生全体をポジティブなライフストーリーに書き換えて頂きたいと思います。 「今までのいろいろな経験のお陰で今の自分がある」と考えるだけで、 どんな人間のどんな道のりも ”幸せな人生” になるのです。

Yoko Akiyama



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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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