June Week 5, 2019
★ "Should I Support My Gay Son in Law?"
夫が反対する義理の息子のゲイ・ウェディング


Yoko さま、
CUBE NYのサイトが大好きで、長年愛読しています。私もアメリカ生活が長い秋山さんのお知恵とアドバイスを頂きたくてメールをしています。 よろしくお願いします。
私は昨年アメリカ人の夫と再婚しました。夫には成人した娘と息子が1人ずついて、息子がホモセクシュアルなのです。 夫は敬虔なクリスチャンで(私もミッション系の学校に通ったクリスチャンです)、息子がゲイだということがどうしても許せず、 私たちの結婚式の時に「フィアンセを連れて出席する」と言い張る息子と対立して、結局 息子は私たちの式だけに1人で姿を見せましたが、レセプションには出席せずに帰ってしまいました。

今年の夏にその息子がついにフィアンセと結婚することになったのですが、夫は反対で結婚を認めない、ウェディングにも出席しないと言っています。 私は息子のことは良く知らないのですが、礼儀正しいハンサムな好青年だと思いますし、 私たちの結婚式にはフィアンセを連れて来られない不満を抱きながらも姿を見せてくれたので、 同じようにせめて式にだけでも出席してあげたいという気持ちだったのですが、最初は夫には許してもらえませんでした。 ですが夫の娘に 私だけでも式に出て欲しいと言われ、義理の息子の産みの母である夫の前妻が乳がんで死去しているので、 私が出席することは息子にとって意義深いことだと説明されました。
そんな娘の説得もあって、夫は「行きたければ勝手に行ってくれ。でも自分が結婚をサポートしているような印象は与えないで欲しい」というところまで 態度が軟化しました。 それでも私たち夫婦の間では、私が息子のウェディングに出席することが何等かのしこりのようになっていて、 息子について夫に尋ねると不機嫌で、冷たくなります。

友人に相談してみたのですが「夫と私の関係の方が 私と息子との関係よりも大切なので、 ウェディングへの出席は見合わせて、替わりにお祝いのギフトを贈る方が良いのでは?」と言われました。 確かに私は息子のことは殆ど知りませんし、付き合いがある訳でもありません。 本当に私が出席することに意義があるかも定かではありません。 ですので夫との関係が気まずくなるリスクを冒してまで、ウェディングに出席するべきなのか?という疑問は残ります。
でも私も最初の結婚の際に、一人娘が外国人と結婚してアメリカに行くのを嫌った父が結婚式に出てくれなくて、とても寂しい思いをしたので、 その時のことを思うと、夫の代わりにはなれなくても少しでも義理の息子をサポートしてあげたいという気持ちが強いのです。

秋山さんだったら、この状況でどうなさるでしょうか? 私はどうするべきでしょうか? お考えを聞かせて頂けたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

- E -



オクラホマの”スタンドイン・マザー” のエピソード


6月はLGBTQ月間なので、今月はアメリカでLGBTQ関連の様々な報道が行われています。
そんな中で、私が感動したのがオクラホマ州のある母親(写真下)のエピソードでした。 敬虔なクリスチャンであった彼女は、自分の息子がゲイであることを知り、自分の宗教観から息子との関係が保てないと思った時期もあったそうですが、 やはり信仰心に勝るのが親子の絆。 母親はゲイの息子をサポートする決心をし、親子関係が修復されてから悟ったのが、 宗教観に捉われていた自分が いかにゲイ・ピープルに対して偏見を持っていたか。 そして自分の凝り固まった宗教観が いかに息子に辛い思いをさせてきたかということでした。
その母親は、自分に正直に生きようとして家族から絶縁されたり、距離を置かれるLGBTQコミュニティ全体を サポートしたいと考えるようになり、地元のイベントやマラソン大会で LGBTQ コミュニティのシンボルであるレインボーと 「Free Mom Hug / フリー・マム・ハグ」というメッセージをフィーチャーしたプラカードを持って立ち、 もう何年も母親とハグをしていないLGBTQの人々に母親のぬくもりと励ましを提供する活動をスタート。

そうするうちに彼女が知ったのが、 ようやく同性婚が法律で認められても LGBTQカップルの多くが 家族のサポートが得られず、親が出席しないウェディングが非常に多いという事実でした。 そこで彼女がフェイスブックにポストしたのが「LGBTQで母親が結婚式に出席してくれない場合には、私が代わりに出席します」 というメッセージ。 すると地元のオクラホマやアメリカ国内だけでなく、世界中から寄せられたのが「自分の結婚式に是非出て欲しい」というリクエスト。
彼女は本当にそれらの結婚式に出席しては、実の母親のように「I am proud of you(貴方を誇りに思うわ)」とハグをして、 新郎、新婦をセレモニーに送り出し、フラワー・アレンジを手伝い、時に式のオフィシエーション(執行)までを務めるという献身ぶり。 これまで数多くのLGBTQカップルのウェディングに立ち会い、それらのカップルと本当の家族のように結婚を祝い、その後も コミュニケーションを取り続けて、巨大なファミリーを築いている彼女は「LGBTQ’s Stand In Mother / LGBTQのスタンドイン・マザー(立ち合い母)」として 数々のメディアで取り上げられては、人々から共感を呼ぶ存在になっているのでした。
私が観たNBCニュースのビデオでは、そこに登場していた新郎が結婚式当日、初めて対面したスタンドイン・マザーと ハグをした途端に泣き出し、彼女に励まされて笑顔を取り戻す様子がフィーチャーされていました。 そんなLGBTQコミュニティの心の痛みを理解して、一生の思い出になるウェディングというオケージョンで、 彼らが得られずに生きてきた母親の愛情を注いで 幸せをもたらしてあげよう というこの女性の姿には、 私も感動しただけでなく、敬意さえ抱いてしまいました。


 これは宗教観ではなく、家族愛の問題です


私は義理の息子さんとの付き合いが無くても、Eさんがウェディングに出席して彼へのサポートを示すべきだと思います。 出席すること自体はご主人も構わないとおっしゃっているのですから、ご主人との仲を気遣って止める必要などありません。 義理の息子さんにとっては 「父親が 自分をサポートしてくれる女性と結婚した」ということが希望に繋がると思います。 Eさんは法律上では立派に彼の母親なのですから、堂々と式に出席して前述のスタンドイン・マザーのように母親として彼を祝福してあげるべきです。

その一方でご主人に対しては、「Eさんが息子さんの結婚式に出席するということは、ご主人の血を分けた息子さんをサポートするためであって、 ご主人との見解の相違を荒立てるものではないこと」、「宗教観とも無関係であること」を明確にするべきです。 そしてご主人に対しても 宗教観やLGBTQへの考えを抜きにして、家族としてのサポートを息子さんに対して示すように働きかけるべきです。 息子さんもEさんとご主人の結婚式には LGBTQとしての意地を張らずに、家族として出席してくれたのですから、 尚のことそうすべきなのです。

アメリカには自分の子供がLGBTQであることを知って、その事実を受け入れるのをきっかけにLGBTQコミュニティに理解を示すようになる クリスチャンの親達がどんどん増えています。 一度子供を通じてLGBTQが何たるかを理解すると、 前述のオクラホマのスタンドイン・マザーのように熱心なサポーターになるケースも珍しくありません。 ニューヨークにはLGBTQを受け入れている教会が幾つも存在しますので、 ご主人と息子さんの関係は宗教観の問題ではなく、親子として歩み寄れるかの問題だと思います。

恐らくEさんも、娘さんも ご主人は絶対に出席しないだろうと思って さほど熱心に出席を説得していないように思います。 ですが、もしご主人が自分のウェディングに息子さんがフィアンセを連れずに姿を見せたことで、「意見の相違は別として、 息子としての義理を果たしてくれた」という気持ちを抱いていた場合には、 「自分もせめて同じことをするべきでは?」と考えていても不思議ではないのです。 特に男性は一見頑固に見えても、実は誰かの後押しを待っているケースは少なくありません。

ご主人が必ずしもそれに該当するとは限りませんが、Eさんが 最初の結婚式でお父様の不在を寂しく思った経験などをふまえて説得を試みれば 気持ちを変えるかもしれません。 人間というのはとても不思議な生き物で、確執や平行線状態が長ければ長いほど、小さなコミュニケーションが信じられない展開をもたらすことは多いのです。
ですので、Eさんには是非頑張ってご主人を説得して頂きたいと思いますし、それをきっかけに ご主人と「本当の意味での家族の幸せ、絆」を 考える機会を持つことは、たとえ結果がどうあれ 夫婦関係のマイナスになることはないものと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。




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