July Week 4, 2019
★ "My Weight Gain Turns My Husband Off"
私の体重が増えてから夫の態度が徐々に…


秋山 さま、
CUBE New Yorkさんのウェブサイトは昨年あるきっかけで読み始めて、以来ずっとお邪魔しています。
私は2人の子供が居るアラフォーで、今は子育てに専念する身です。 2人目の子供の妊娠の時に授乳で痩せると思って気を許して食べてしまったせいで体重がかなり増えてしまい、 以来何度かダイエットを試みたのですが全て挫折してしまいます。というか、 ダイエットをして食欲を我慢すると 挫折した時に大食してしまうため、ダイエットをする方が逆に太ってしまう感じです。

私は子供の頃から痩せ型の体型で 痩せている自分を自慢に思ってきたので、まさか自分がこんな風に太るとは思ってもみませんでした。 久しぶりに友達に会うと太ったと思われているのが分かりますし、「妊娠後に体重が増えるのは仕方ない」と同情されます。 そんな風に同情されるのも嫌なのですが、体重が増えてからの私に一番辛辣なことを言うのが夫です。 先日私が遅めの昼ご飯を食べていた時には「もう食べるの止めて、いい加減にダイエットしたら?」と夫に言われて、 ついカッとしてしまって「私だって子供さえ生まなければ痩せたままだった」と言ったら、 「子供を産んでも痩せている人は幾らでもいる。自分を管理せずに、緊張感がない生活をしてるからだ」と言い返されてしまい、 この時の言葉が本当に心に刺さりました。
少し前にも私たち夫婦の共通の友人達と食事をしていた時に 「うちの奥さん、昔は痩せててモデルみたいだったんだよね」と 結婚直後の私の写真を見せて、友人達が驚く様子を夫が楽しんでいるのを見て腹が立ってたまりませんでした。

私だって太りたくて太った訳ではありません。太った自分が嫌でたまりませんが、出産後に思ったように体重が落とせないまま、子育てのストレスや単調な毎日のせいで 食べる事くらいしか楽しみが無かったのが私が太った原因です。 なので夫の言ったことを考えると本当に頭に来ますし、悲しくなって、人間として蔑まれているという気持ちになります。 どうしたら夫にそんな私の気持ちを理解してもらえるでしょうか。 最近は夫婦仲も悪くなって、必要なことしか話しません。このままでは離婚するような気がします。
姉に相談したら「あなたが痩せたら夫婦仲が また良くなるわよ」と言われましたが、 痩せるというのは大変なことですし、それで夫の態度が改まったところで 私が夫に同じ気持ちになれるかも分かりません。
こんな状況について是非秋山さんにアドバイスをお願いしたいと思ってメールをしました。 恐れ入りますが、よろしくお願いします。

- S -



痩せることより、自分自身を取り戻す努力を!


私がSさんのメールを読んで、まずに頭に浮かんだのが以下の2つことでした。
1つ目は もう何年も前に読んだアマゾン・ドットコムの記事で、それによれば顧客の購買データから妊娠、離婚、子供の年齢といった人生の局面が分かるとのこと。 女性が自己啓発本、コスメティックやファッション、そしてダイエット・プロダクト&エクササイズ・マシンを購入した場合、 その女性はほぼ確実に離婚直後であることが指摘されていました。 これはもちろん 離婚した女性が新しい男性を見つけるために ルックスを磨いて、精神的にも自信とゆとりを取り戻して 自分を高めようとする姿の表れですが、 見方を変えれば女性達が離婚した夫たちのためには それらを行ってこなかった、もしくは熱心でなかったということであり、 そういう女性が離婚をしているという解釈もできるエピソードでした。

もう1つ私の頭に浮かんだのは、今年のロックンロール・ホール・オブ・フェイム(ロックンロールの殿堂)のセレモニーをTVで観ていた時のこと。 90年代の人気バンド、デフ・レパードの殿堂入りのプレゼンターとして登場したのがクイーンのギタリスト、ブライアン・メイ。 彼が そのスピーチの中で語っていたのが デフ・レパードのリーダー、ジョー・エリオットが ある時 「どうやったら良いバンドで居られるのか?」と彼に尋ねてきたエピソードでした。 それに対するブライアン・メイのアドバイスは「解散しないこと。そして太らないこと」 だったそうで、もちろんそのエピソードは会場の笑いを誘っていましたが、 私は同じことが 「良い夫婦(カップル)であり続けること」にも当てはまると思って聞いていました。 すなわち「離婚(=解散)しないこと」は夫婦と呼ぶ限りは当たり前であるとして、「太らないこと」がロックバンドにとって 音楽のイメージを保つために大切なように、「健康管理をしてお互いにある程度の外観レベルを保つこと」が良き夫婦であるためにも 大切なのだと私は考えます。

人間は年齢を重ねれば代謝能力が衰えてきますし、若い頃に比べて筋肉も落ちてきますので、 以前と同じ食生活をしていても燃やせるカロリーは少なくなってきます。ですので理性的な食生活をしていたとしても、若い頃と同じボディを保つのは至難の業であることは 誰もが熟知しています。
ですが過度に体重が増えるという状況は、健康へのリスクが高まる一方で、自分を管理していないと周囲に受け取られる傾向にあるのはご主人が指摘していた通りです。 ニューヨーカーが健康管理に熱心な理由も、健康でなければ競争に勝てないと思う一方で、「自分の健康さえ管理出来ない人間に 仕事の管理が出来るはずが無い」といった偏見を避けるためでもあります。 もちろん多少太り気味でも、妥協や 強がり抜きでその体型に満足している人は世の中には沢山いますし、 それはそれでビジネスの世界でも、私生活でも立派にキャラクターとしてまかり通るので、マイナス・イメージになることはありません。
ですがSさんのように体重が増えたことによって「自分の身体が自分自身にとって相容れない存在になってしまったケース」というのは、 様々な精神的なネガティブ効果をもたらします。 「自分が自分の姿をしていない」というジレンマは 「ダイエットをしなければ」という執拗な強迫観念を招く一方で、 「心を満たすために食べてしまう」、「体型について指摘されると腹が立つ」、「生活が後ろ向きになって社交が億劫になる」、 「世界が狭まって退屈になるので食べ物に楽しみを求める」、「定期的に自己嫌悪を抱いたり、被害者意識を覚える」という 負のスパイラルをもたらします。 そんな”自分ではない自分”を生み出してしまうと、小さなことでも自分を叩きのめしては 問題を悪化させる解決策に走ります。 ”自分ではない自分”に対しては 闘い方を身につけない限りは往々にして誰もが負けてしまうのです。

申し上げにくいのですが、それが今のSさんの状況です。 現在のSさんの精神状態は 「相容れない身体になってしまった自分」に乗っ取られた状態です。 体重が増えてしまってからのSさんを好まないのはご主人だけではありません。 Sさんとてそんなご自分に違和感、時に嫌悪感を覚えているのです。 今の状態がSさんの本来の姿ではないと考えているのであれば、 それに馴染んだり、受け入れたりすべきではないのです。

 ダイエットに最も大切なのは精神面です


私が知る限り、結婚後に体重が増えた妻に辛辣な文句を言う男性というのは そもそもルックスコンシャスで、 自分が美しいと思うだけでなく、周囲も美しいと思う女性でない限りは恋愛感情を抱きません。 ですのでSさんが 美しい方でいらっしゃること、ご主人がお友達に見せびらかしていた写真で 本当にモデルのようなルックスでいらした様子は容易に想像できますし、 Sさんもそんな美しいご自分の姿に自信と誇りを持って生きていらしたものと思います。
またSさんの美しさに自信と誇りを持っていたのはご主人も同様のはずです。 ルックスコンシャスな男性にとって 誰もが羨むような美しい女性と交際出来る、結婚出来るということは、 重要なプライドやアイデンティティーの一部なのです。 ですからSさんの体重が増えてしまったことは、ご主人のプライドやアイデンティティーの問題でもあるのです。
もしSさんが「体重が増えた今の自分は自分ではない、自分が満足出来る自分の姿ではない」と考えていらっしゃるのでしたら、 ご主人の態度を責めるべきではありません。 それよりも”自分らしい自分の姿”、”ご主人が結婚したSさん” を取り戻すために、ご主人のサポートを仰ぐべきなのです。 Sさんもご主人も 共に以前の美しさと自信に溢れるSさんに戻ることを望んでいるのですから、同じものを求める者同士が協力し合う理由はあっても 反目し合う必要は何処にもないのです。

かく言う私はSさんとは正反対で、太り易い体質を自覚しているので 学生時代から頻繁にダイエットをして今に至っていますが、そのお陰で自分がどういう時に どんなメンタリティで どんな食べ方をして太ってきたか、逆にどんなダイエットが どんなメンタリティと相乗効果を生み出したかの経験が 私の中でデータベースのようになっています。 その私が確実に言えるのは、 蓄積された体脂肪を落として体質を改善するような 本格的なダイエットは 精神面のモチベーションやサポート、もしくは”悟り” 無くしては成果があり得ないということです。 今までダイエットの必要が無かったSさんが、そうしたダイエットにおける精神面の重要さを理解せずに いきなり取り組んだところで 続かない、失敗するのは当然のように思います。
Sさんのご指摘通り、ダイエットは失敗すると 食欲の反動や「次回真剣に取り組めば大丈夫」というエンプティ・ホープが重なって、 逆に食べる量や体重を増やす結果になりますし、そうなれば ダイエット期間中に落ちた筋肉に代わって 脂肪がつくだけですので、益々痩せ難く、食欲が抑えられない肥満体質になっていきます。

そんな体重増加のシナリオをストップするには、まず自分がどういう人間で、何を望んで、何を目指しているのかということをご自身の中で明確にする必要があります。 「10キロ痩せたい」などと漠然と数字だけを掲げてスタートしたところでダメなのです。
Sさんが望んで目標とすべきは ご主人が惚れ直すような容姿に戻って 夫婦円満になること、健康的で若さを保てる食生活とライフスタイルを身につけることであり、 これを機会に 自分が努力せずして現状が保てる人間ではないことを自覚し、二度と自分を甘やかす間違いを繰り返さないように ご自身に言い聞かせるべきなのです。 これは体重やダイエットだけの話ではありません。お金でも人間関係でも、人生の全てに当てはまることです。
人間は自分に恵まれた資質や財産があると それを過信して油断したり、横柄になる結果、資質に恵まれなかった人より苦労や困難を強いられるケースは珍しくありません。 自分に恵まれた資質がある場合には、それを謙虚に受け止めて 更に磨きをかける努力をするからこそ、 それが人生の武器になるのです。

ですから私は是非Sさんに体重を落として、持って生まれた美しさを武器に生きて頂きたいと思っています。 そのためにはダイエットのプランよりも、まずご主人を含む家族からのサポートを得ることが大切ですが、 ご主人は日ごろからSさんに痩せて欲しいとおっしゃって来たのですから、きっと協力を惜しまないはずです。
Sさんは体重が増えてからご主人に言われた言葉を自分の中で反復することによって、かなりご自身を追い詰めたり、落ち込ませていらした様子ですが、 それがサポートに代わるだけで ダイエットの強力なモチベーションになるはずです。 それによって精神面が安定し、満たされれば、食べることに固執していた自分から解き放たれますので 特にダイエットを心掛けなくても、お腹が空いた時だけに理性的な食事をすることが出来るようになります。 それを続けて身体が軽くなれば、運動を始めるのが苦にならないどころか、「更に自分を身軽にするために動きたい」 と思うようになります。 そして痩せていた時代の服が再び着られるようになれば、気分が高揚して若返った気分さえ味わうことになります。
要するに体質を変えるようなダイエットのためには、まず心と自分を取り巻く環境を変えることが何より大切なのです。

Sさんは 今はご主人のことを「冷たい」と考えていらっしゃるようですが、一度以前のご自分を取り戻してみれば、 きっと「美のハードルが高い夫で良かった」と考えるようになるはずです。 そして年齢を重ねても 美しさや若さを保つことが出来れば、その気持ちは益々強くなると私は確信する次第です。
最後に体質を変えるようなダイエットにおいては、まず最初の4〜5週間に糖分や脂分、大食を控えて、食欲や代謝に多大な影響を与える 腸内バクテリアのバランスを変える必要があります。この時期の0.5〜1キロで一喜一憂するのはダイエットの失敗に繋がりますので、 暫く体重計とは距離を置いて、痩せる体質の取り戻しにフォーカスすることをお勧めします。 人間の身体は30%がDNA、残りの70%が食生活を含むライフスタイルに影響されます。 本来痩せ型のSさんはDNAの見地からは30%有利なはずなので、無理をせず、焦らずに取り組めばきっと成果が得られるはずです。 頑張って下さい。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。




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