
★ "How to Get Rid of Unwanted Roommate?"
アパートに住み着いた男友達を追い出すには
Yoko Akiyamaさま、
数カ月前からNY生活を始めた”NY新参者”で、いつもとても楽しくサイトを拝見しています。
アメリカ&NYの情報に詳しい秋山さんに是非ご相談にのって欲しい問題があります。
よろしくお願いします。
NYは思っていた以上にレントが高かったので、英語の勉強も兼ねてアイルランド人のルームメイトと一緒に生活することにしました。
ところが少し前からルームメートのゲイの男友達がアパートに転がり込んで、レントも払わず一緒に生活するようになってしまいました。
そうなったきっかけは彼が引っ越す予定のアパートが空くまでの5日ほどだけと頼まれて滞在させたことでしたが、
「アパートのペンキの塗り直しが遅れている」、「水道管の取り換えが必要になった」と言ってはどんどん滞在が伸びて行きました。
男友達はファッショナブルなイケメンタイプで話も面白く、友達も多い感じで、最初は彼が居る生活が楽しく思えました。
キレイ好きで、料理も上手いので 短期間であれば無料滞在も許せるという感じだったのですが、
やっと引っ越し先のアパートの準備が出来たといって 私たちのアパートでの最後のディナーをしたと思ったら、
翌日の午後には「手違いでそのアパートがエアB'n'Bに貸し出されていたので、あと5日滞在させて欲しい」と言って戻ってきて、
そうこうするうちに1ヵ月以上の滞在になってしまいました。
そうなってくると彼の荷物がいつもリヴィングにあって、彼が夜中に帰ってきて、私達が仕事に行く時にはリヴィングで寝ていること、
近所の安いレストランのディナーをおごってくれたことが2回あった以外は家賃を一銭も払わないことなどが嫌に思えてきました。
アイルランド人のルームメイトも同じように思っていたので、ある時彼にはっきりと出て行くように言いました。
すると彼は「引っ越し先のアパートの準備が出来たら直ぐに出て行くけれど、ニューヨークの法律で、1カ月以上滞在したらそのアパートのルームメイトと見なされる。だから直ぐに追い出すことは出来ない」と
サラリと言われて唖然としてしまいました。
私もルームメイトもニューヨークの法律など知りませんでしたが、男友達から送られてきたインターネットのリンクにある情報を読んだところ
本当にそうらしいことが分かりました。
そのウェブサイトによれば裁判所から立ち退き要求を貰って、やっとその30日後に男友達に出て行ってもらえるとのことでしたが、
私たちには弁護士に払うお金などありませんし、手続きに時間や手間も掛かるようで困っています。
ほんの数日の滞在と思って気を許してこんなことになってしまって驚いていますが、
NY生活が長い秋山さんでしたら似たようなケースをご存知かと思い、何かアドバイスをしていただけたらと思って失礼ながらメールをしました。
お時間があれば是非アドバイスをお願いします。
CUBE New Yorkは私にとってNY生活には無くてはならない最も大切な情報源なので、これからも是非サイトを長く続けて下さい。
応援しています。
- M -

Mさんの男友達は”ルームメイト”ではなく”ゲスト”です
Mさんのようなケースはニューヨークのようにレントが高額な街では決して珍しくありません。
特にミレニアル世代は友達の家に転々と居候をするホームレス状態を長く続ける人が少なくないことはもう何年も前から言われていることです。
また若くグッドルッキングな場合には女性でも男性でも、ストレートでもホモセクシャルでも、NYにやってきて間もない時期にリッチな交際相手を見つけて
その高額コンドミニアムに暮らして、トレンディなレストランでディナーをするなど、相手の財力の恩恵を受けてラグジュアリーな生活を味わって、
その関係がダメになった途端にホームレスになってしまうケースもあります。
その類のホームレスのステレオタイプは、”以前の交際相手に買い与えられたデザイナー・クローズ、高額スニーカー、ダイヤ無しのカルチェの時計、
グッチやシャネルのサングラス等を身につけた世渡り上手” というもので、
派手でチャーミングな人柄や高額な持ち物に気を許して、新しく知り合った関係でも簡単にアパートに滞在させてしまうケースは多いようです。
私が個人的に知るケースでは、若いホームレス男性は立派にウェブ・デザイナーの仕事をしていて、
夜遊び、社交、スマホの料金、高額ジムのメンバーシップは自分の給与で払えるものの、レントだけが払えないという状況でした。
今やニューヨークのレントはニューヨーカーの年収の30〜40%を占めるほどになっていますので、要するにその男性は
彼が望む生活をするためには収入が30〜40%足りないということだったようですが、
貯金や投資をしていた訳ではないので、実際にはそれ以上に収入が不足していた計算になるかと思います。
さてMさんの男友達が立ち退きを求められた際に武器にした ルームメイト法についてですが、
確かにニューヨークでは30日以上を暮らした場合には
そこが住居と見なされるので、強制立ち退きをさせるにはそれなりの法的なステップを踏まなければなりません。
ですがMさんの男友達はレントを支払っていた訳でもなく、リース契約に名前がリストされている訳でもありません。
彼がMさんのアパートに滞在出来たのはMさんとルームメイトがそれを許可していたからであって、その状態では
何日滞在しようと ”ゲスト”ではあっても”ルームメイト”ではありません。
したがってリース契約に名前がリストされている人間が追い出したいと思えば何時でも追い出すことが出来ますし、
映画やドラマのシーンに出てくるように鍵を取り上げて 窓から男友達の荷物を全て外に放り投げても構わない状況です。
どうしても立ち退かない場合には、弁護士など雇わなくても インターネットを通じて立ち退き命令をリクエストすることが出来ますし、
それさえあれば 男友達が無理に居座ろうとした場合に警察を呼んで逮捕してもらうことも出来ます。
その後、男友達から嫌がらせを受けることがあれば その記録を警察に提示して
リストレーニング・オーダー、すなわち男性がMさんやルームメイトに近寄れないようにする法的措置を取ることも可能です。
ですが相手がサイコパスでない限りは、好意で1ヵ月以上滞在させてあげた相手と
ここまでこじれることはまずありません。また事を荒立てるのは自分の住む場所にストレスを持ち込むだけの悪い結果をもたらすだけです。
対立を避けて、強さと優しさを持った対処を!
Mさんの男友達はルームメイト法を盾に立ち退きを拒んだ様子からして、ある程度の期間ホームレス状態であったと判断するのが妥当ですし、
恐らく以前にも同じように 友達のアパートに「出て行って欲しい」と言われるまで居候をして、
その滞在を延ばすためにルームメイト法を持ち出した過去があるものと思います。
「新しいアパートの準備が整ったら出て行く」という言い分も 「新しい転がり込み先が見つかったら出て行く」という意味のように受取れます。
彼が自分をホームレスと言わないのは プライドもあるかと思いますが、自分がホームレスであると言えば、
居座られることを恐れて たとえ短期間でも 誰も自分をアパートに滞在させてくれなくなるからだと思います。
したがってMさんが彼をアパートから追い出すということは 彼にとっては行き場を失う死活問題ですが、
Mさんとて 行き場がなくなるのを承知で男友達を追い出すことが出来るかと言えば、人道的な立場からそうは行かないように思いますし、
それはMさんのルームメイトとて同様だと思います。
ですので私がここでMさんとルームメイトにお薦めするのは、男友達としっかり話し合う機会を持って、
レントを支払わず、リース契約にも名前が載っていない彼がルームメイト法を盾に居座ることが出来ないこと、
1カ月以上も好意で滞在させてあげたMさんとルームメイトに対して 法律を持ち出して権利を主張するのは間違っていることを正した上で、
「彼が アパートを出て行き場がないのであれば、力になりたい」と協力をオファーすることです。
具体的には彼に30日間の猶予を与えて「自分達はここまでは協力する」という姿勢を見せるのが適切かと思います。
Mさんもルームメイトも、「弁護士を使って手続きをして、 30日後にやっと男友達を追い出せる」と思い込んでいたのですから、
弁護士の費用や手続きの手間が省けたと思えば、彼に30日の猶予を与えるのは さほど無理難題ではないはずです。
その際には「約束の30日後には必ず荷物を纏めて出て行く」という合意書を作って、お互いに署名することをお勧めします。
弁護士などが絡まなくても 書面で交わした合意内容は法的に多大な効力を持ちますので、万一問題がこじれた場合に役に立ちますが、
それ以上に”書類に署名をする”という行為は 口約束よりも遥かに精神的に強力なインパクトを与えますので、もし男友達が
「居られるだけここに居座ろう」という気持ちを持っていた場合には それを払拭してくれます。
もちろん滞在猶予期間中には
彼がボランティア・ベースで掃除や料理などを行うことが奨励されますが、金額に関わらず彼からはレントを受取るべきではありません。
そうすれば前述のルームメイト法が適用されるので、彼を強制的に追い出そうとする際に
たとえ合意書があっても手続きが複雑になる可能性があります。
そもそも男友達がアパートに滞在するきっかけになったのは、Mさんとルームメートの親切心や好意からですが、
彼が「自分1人くらいならアパートに寝泊まりしても 困らないだろう」 と考えているうちは そんな親切心や好意を感じることも、
それに感謝することもありませんし、「出て行け」と言われれば敵対心を抱きます。
人間というのは敵対関係に陥ると、相手を困らせたり イライラさせることを平気でするようになるのは言うまでもないことで、
男友達がMさんとルームメイトに対して敵対心を抱いた場合には、ネガティブな態度でアパートに堂々と居座るようになります。
ですがMさんとルームメイトが 親切心や好意を明確に示して、彼を追い込むのではなく サポートする姿勢を見せれば、
それに報いるためにも何とかしようという気持ちになるのがまともな人間の心理なのです。
Mさんの男友達のような人物は表面的に仲良くする人は居ても、自分を本当に思ってくれる人が居ない孤独を感じているケースが非常に多いので、
誰かが親身になってあげることが人生の様々な局面で とても大切なのです。
また期間が短くても一緒に暮らした時期がある友達というのは、
仲たがいさえしなければ 時間が経過してからでも深い友情で結ばれるケースも多いのです。
何度か私がこのコラムで書いてきたように、人間の運というのはバイオリズムですので誰の人生にも羽振りが良い時期や
苦しい局面が必ず訪れます。
私は 他人に甘えて利用しようと思っている人物の目的達成に加担する必要は無いと思いますが、困っている人が居たら
自分に出来る範囲で助けてあげるべきだと思いますし、人間からそんな善意や親切心が無くなってしまったら
その時こそが世の中の終わりだとも考えています。
ですから問題をこじらせないという目的だけでなく、Mさんとルームメートからの友情、善意、親切心を男友達が感じて、
前向きでポジティブな気持ちになってくれることが、このケースではとても大切だと思っています。
最後にニューヨークでは 他の街では経験しないような出来事や問題に直面しますが、
それを乗り越えて生きて行くのがニューヨーク生活の醍醐味でもあります。
ニューヨークは世界一豊かな都市である一方で、富裕層でさえサバイバル意識を持って生きているのも
そんな予期せぬ出来事や奇抜なまでに個性的な人々に遭遇するためですが、
私は個人的にはニューヨーカーほど 困っている人に対して親切な人々は居ないとさえ思っています。
ご自身を”NY新参者”と書いていらしたMさんですが、誰もがこうした問題を乗り越えながら 徐々にニューヨーカーになっていくものなので、
今後どんな事が起こっても それがニューヨークで生きて行くためのレッスンと思って、強さと優しさを持って対処して頂きたいと思います。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |



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