Nov. Week 3, 2019
★ "Why She Wants Breast Implant?"
義妹の豊胸手術を思い止まらせるには


Yoko Akiyamaさま、
いつもこのコーナーだけでなく、CUBE New York.comのウェブサイト全体をとっても楽しんでいる大ファンです。 私にも是非アドバイスをお願いしたいことが出来てしまったので、よろしくお願いします。

私はアメリカ人の夫と結婚して、アメリカに暮らしています。夫には30代の離婚した妹がいて、 なかなかの美人ですし 長身でスタイルも良いのですが、その義理の妹が豊胸手術をしたいからお金を貸して欲しいと夫に頼んできました。
妹は胸のサイズがティーンエイジャーの頃からコンプレックスになっていたそうで、 夫はそんなことのために妹にお金を貸すなんて論外だと言っています。 夫の実家はがん家系なので、豊胸手術をしてシリコンを入れることで発がん性が高まることも私達夫婦は心配しています。 しかも義理の妹は未だ学費ローンを支払っていたり、クレジット・カード・ローンも抱えているので、お金を貸したところで戻って来る保障はないのでは? という不安もあります。

夫に借金を頼んできたのは 多分義理の両親が豊胸手術のためにはお金を貸さないことが分かっているからだと思うのですが、 夫はお金を貸したくないだけでなく、何とか妹に豊胸手術を思い止まらせたいと思っています。 夫からは既に説得を試みましたが、妹は「私は豊胸手術をすれば劣等感が無くなって幸せになれるのだから、どうしてそれを兄としてサポートしてくれないのか」と 怒られたそうです。
私からも BII (Breast Implant Illness)を含む健康上のリスクや乳ガンのリスクについて説明しましたし、 Yokoさんもご存知だと思いますが、つい最近FDAが豊胸手術のシリコン・インプラント全てが危険だと警告したので、 その記事のリンクを送ったりしたのですが、 妹曰く「今のままコンプレックスを感じながら長生きするよりも、人生が多少短くなっても自分に自信が持てるボディを手に入れて生きる方を選ぶ」と 言っています。
私達夫婦には 何故手術のお金さえ無い妹がそんなに豊胸手術に固執するのかが分からなかったので、 夫が居ない時に妹に聞いてみたところ、つい最近 上手く行きそうだった交際相手にフラれてしまったのがショックだったようなのと、 離婚した夫がいつも彼女の胸が小さいと文句を言っていたのが心の傷になっていると言って私の同情を求めてきました。 夫にそれを話したところ、妹の前夫は家族が全員反対したような酷い人だったそうですが、 彼と結婚していた4年間に胸のサイズを愚痴られ続けたせいで「胸が小さいと女性として完結しない」ような意識を義妹が植え付けられてしまったかのように私には思えました。

そこで秋山さんにお伺いしたいのは妹を思い止まらせる良い説得法があるかということです。 義理の妹は美人でスタイルも良いので、そんなコンプレックスを持たずに男性とお付き合いすれば、 再婚は別としても交際相手くらいは簡単に見つかると思います。 でも妹は「今の小さな胸ではデート・アプリに水着の写真を載せることも出来ない」と言うほどなので、完全に頭の中が豊胸手術一色という感じです。
何かお知恵があったら是非よろしくお願いします。 CUBE New Yorkさんは 本当に大好きで、長年アクセスしているウェブサイトなので、これからもずっと頑張って下さい。

- R -



豊胸手術を望むのは性的コンプレックスが原因です


私の友人の1人は2000年代の初頭に豊胸手術を受けていますが、その手術前に私からのサポートや後押しを得たかったようで、 インプラントが極めて安全な手術で、「テクノロジーが進化したので 何年が経過してもシリコンが漏れることはない」と熱心に説明されたのを覚えています。 その友人は手術から14年が経過した段階で BII(ブレスト・インプラント・イルネス)が原因でインプラントの摘出手術を余儀なくされ、 その段階になって豊胸手術を「自分の人生最大の過ち」と後悔していました。

彼女が手術をしたのは2人目の子供の出産と授乳が終わった段階でしたが、アメリカ人女性の間では授乳が終わった段階で 失われたバストの張りを取り戻す目的で豊胸手術を行うケースは珍しくありません。 それと共に多いのが乳がんで乳房摘出手術をした後にインプラントをする女性ですが、 Rさんがメールに書いてくださったように、つい最近になって 連邦食品医薬品局(以下FDA)が それまで指摘されてきた表面がザラザラのシリコンだけでなく、すべてのシリコン・インプラントに発がん性があることを認めたことから、 ようやく乳がんを克服した女性達が 「医師に安全と言われて、新たな発がん性を身体にインプラントしてしまった」と激怒する様子がメディアで大きく報じられていました。
それと同時に今回FDAは「インプラントが10年前後を目途に入れ直しが必要である」とも警告していましたが、 アメリカには 「ブレスト・インプラントは一生もの」と思い込んでいる女性が非常に多いのが実情です。 そうなってしまうのは 手術を行うドクターがしっかりと豊胸手術のリスクを把握していない、もしくは指摘されたリスクを信じていないためですが、 どんな美容整形医にとってもブレスト・インプラントはビジネスを支えているドル箱手術です。 それはシリコン・インプラントを生産するメーカーにとっても同様で、そんな美容整形業界のロビー活動が政府機関に行き渡っているおかげで、 FDAがシリコン・インプラントの危険性を認めてメーカーに義務付けたのは「シリコンのパッケージにリスク警告を明記する」ことだけでした。

ですので多くの女性達が 豊胸手術のリスクをしっかり把握せずに手術に臨んでしまう状況は今後も変わることはなさそうですが、 リスクを十分に理解したからといって女性達が豊胸手術を思い留まるかといえば、決してそのようなことが無いのもまた事実です。
Rさんは義理の妹さんが美人なのに 胸のサイズがコンプレックスになっている様子をメールに書いていらしたのですが、 豊胸手術を望む女性のドライヴィング・フォースになっているのはルックス・コンプレックスではなく、むしろ性的コンプレックスであるケースが多いようです。 自分自身のアイデンティティよりも 異性の目に映るセックス・オブジェとしての自分の姿を重んじるのがその心理で、 それだけに豊胸手術を行う女性は往々にして人格的にインセキュアな部分を多分に持ち合わせています。 そんなインセキュアな人間は 自己がしっかり確立されている人に比べて 思考や価値観にフレキシビリティがありませんので、 豊胸手術に限らず その考えを変えさせたり、思い込みを取り去るのは極めて難しいと言わなければなりません。

アメリカの美容整形界では「豊胸手術をする女性は、次はヒップのインプラントをして大きくなった胸とのバランスを取ろうとしたり、脂肪吸引、 ボトックス、レスティレーンを始めとする注入トリートメント等、次から次へと施術が増えていく恰好のクライアント」と言われますが、 逆に胸のサイズが小さくても豊胸手術に興味を示さない女性はボトックスやレーザー・トリートメントといった比較的安価で特定の施術にしか興味を示さないので、 美容整形医にとってはお金が稼げないクライアントとも言われています。
結局のところ美容整形は立派なビジネスなので、医師による手術の安全性の説明はセールス・トークとして捉えるのが適切なのだと思います。

リスクを真剣に捉えるのは、豊胸手術など考えない女性です


私は人間にとって健康が最も大切だと思っているので、家族等の命を救うための臓器提供のようなケースは別として、 美容整形やボディ・ハッキングのために好んで健康体にメスを入れることは自分の健康や運を過信した傲慢な姿にさえ映ってしまうのが正直なところです。
豊胸手術については最近になってようやくBII(ブレスト・インプラント・イルネス)についてオープンに語られるようになってきましたが、 それでも未だ一般に知られていないのが”カプセル”の存在です。 豊胸手術によってシリコンが身体に埋め込まれると、身体はその周りに侵襲性の異物から細胞を保護するためのバリアを作ります。 これが医療現場でカプセルと呼ばれるものです。 カプセルは死んだ細胞で構築されていて、体内のカビや菌類を含む微生物がこれを恰好の餌にしながら 自分達を保護するためのバイオフィルムの組成を始めます。 このバイオフィルムで守られた微生物は体内で様々な感染症を引き起こし、 肝臓や他の解毒器官を詰まらせ、ホルモン・バランスを崩し、身体に有害な生体毒素を生成し続けることになります。 これが健康を害するレベルに達したのがBIIで、致死率が極めて高い免疫系のがん ALCLもカプセルが原因でもたらされます。
BIIの初期症状は疲れ、ヘアロス、頭痛、寒気、長期的な身体の痛み、蕁麻疹、精神不安定、睡眠障害、”ブレイン・フォッグ”と呼ばれる 考えが纏まらない状態、体臭が強くなる、体臭が変化するのに加えて、肌や眼球が軽い炎症を起こしたような赤味を帯びることがあります。 これらをメノポーズ(更年期)と勘違いして放置してしまう女性は少なくありませんが、一度BIIと診断されて シリコンとカプセルを取り除くと、これらの症状に大きな改善が見られることがレポートされています。
下は除去したシリコンの写真ですが、シリコンを覆っている膜がカプセルです。


しかしながらカプセルは身体の組織の一部なのでシリコンを取り出しても完全に除去されることはありません。 それだけでなくシリコンに含まれていた40以上の化学物質が体内に残り続けることから、 その化学物質に対する新たなカプセルが徐々に構築されるので、再び健康障害をもたらすのは時間の問題とも言われます。
ですから私は健康が大切だと思うのならば豊胸手術をするべきではないという考えで、 「問題が起こったらシリコンを除去すれば良いだけ」と考えているとしたら それは大間違いだと思います。

ですがこうしたリスクを説明されて「恐ろしい」と考えるのは、最初から豊胸手術などしようとは思わない女性であって、 豊胸手術を受ける女性は どんなにリスクを説明されても「ちゃんとドクターを選べば大丈夫」、「危険にばかり着眼していたら、飛行機にさえ乗れない」などと考える人です。 したがって豊胸手術を望む女性にリスクを説明することによって思い止まらせるのは最初から不可能と考える方が妥当です。
そもそも人間は自分が信じたいことを信じる生き物です。「シリコンの袋が身体に入った状態で、何十年も健康が保てる」 というセオリーは常識ある大人ならば誰もが信じない、もしくは疑ってかかるものですが、 それを信じたいという気持ちを持つ女性にとっては、科学的根拠などゼロでも盲目的に信じるに値することなのです。

そんな盲目的な信者を相手には何を言っても平行線を辿りますし、時にそれが口論や争いに発展するのは 現在のアメリカ社会で トランプ支持派 VS. アンチトランプ派 が毎日のように繰り広げるドラマです。また 気象変動について どれだけ科学的根拠を提示しても、それを信じない人々の耳に入らないのも同様の状況と言えます。
義理の妹さんの「今のままコンプレックスを感じながら長生きするよりも、人生が多少短くなっても自分に自信が持てるボディを手に入れて生きる方を選ぶ」という言い分は、 「多少人生が短くなっても自分が好きなものを好きなだけ食べる人生を選ぶ」という肥満のアメリカ人の言い分にも通じると思って拝読していましたが、 ここまで頑な意志を決め込んでいる場合、本当に人生が短くなるような経験をするまでは その気持ちは変わることはないのです。

ですから妹さんに手術をさせたくなければ、説得など試みずにお金を貸さないことです。 万一妹さんが自分でお金を工面して豊胸手術をした場合にも、その後の健康上のリスクについては自分で責任を持つようにはっきり釘を刺しておくべきです。 それでも妹さんが手術をした場合には、冷たい言い方で申し訳ないのですが 「誰にも止められなかったこと」として諦めるしかありません。 結局のところ豊胸手術は義理の妹さんに決断権があることで、どんなに妹さんを思っていてもRさんご夫妻は当事者ではないのです。
妹さんは30代の立派な大人なのですから、本人が自分の判断で行動することは止められません。 でもRさんご夫妻がその判断を支持する必要はありませんので、妹さんに対しては豊胸手術を思い止まらせる説得はもう控えて、 「手術をしたければ、自分でお金を工面するように」という感情を交えない事務的な通達にとどめるのが一番だと思う次第です。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。




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