Jan. Week 4, 2020
★ "Divorcing With Toxic In-Laws"
夫は良い人なのに…、義理の家族が原因の離婚


秋山曜子さま、
キューブ・ニューヨークのウェブサイトのチェックを長年日課にしている大ファンです。 アメリカやニューヨークで起こっていることをクリアで、シャープな視点から知ることが出来て、 世界の広さや、様々な価値観が存在することを実感するのは 私にとって非常に貴重な時間です。 いつもありがとうございます。

今日メールを差し上げることにしたのは、義理の家族が原因の離婚についてです。
私は夫と5年近く交際した後に結婚しました。 結婚の障壁になったのは夫の家族です。義弟が精神的に病んでおり、交際時代は義理の両親と暮らしていましたが、 結婚すれば義弟の面倒をみるのは時間の問題ですので、その精神的、金銭的負担を私の両親が非常に心配していました。 私自身も夫より2歳若い義弟の面倒を一生見るのは無理だと思っていました。
そのため結婚に踏み切れずにいましたが、「弟の問題では決して迷惑を掛けない」と夫が私に約束し、熱心に両親を説得して、 ようやく結婚したのが3年半ほど前のことでした。

義母は結婚直後までは良い人に思えたのですが、間もなく義父が亡くなり、葬儀の際にいろいろと世話をしたのがきっかけで 私を使用人扱いする習慣がつきました。最初は夫に「今、母は寂しい思いをしている時だから」と言われて我慢しましたが、 ある時、あまりに身勝手な義母に嫌気が差して口論になって以来、義母は私を嫌っています。また夫のことも私と結婚して以来「酷い人間になった」と言います。 そんな私たちには「一銭も遺産を残したくない」といって、義父が残した遺産のお金遣いが荒くなってしまい、 母からの遺産を全て弟に譲って 弟と縁を切ろうとしていた夫は、その金額の減りの著しさに驚いています。
義理の弟は医療施設に入るほどではなく、穏やかな時が多いのですが、時折驚くような非常識な暴言を吐くので普通の人とのお付き合いは無理です。 加えて2日くらい居なくなって、何処かの警察から電話が掛かってきて 夫が迎えに行くようなことが年に数回起こっています。

1年前に離婚をしたいと夫に切り出した時には「お互いに自分の家族の面倒は自分で見る」という取り決めをして思い止まりましたが、 状況は悪くなる一方です。 夫は良い人ですし、出来る限りのことをしてくれているのですが、 義母と義弟の問題をどうすることも出来ません。 義母は健康で長生きしそうなタイプですし、義弟の問題も一生なので、夫と結婚している限りはこの問題が続くと思うと、私はもう我慢の限界に来ています。
そのため離婚は心に決めているのですが、友達に「ご主人には愛情があるのに、その家族が嫌で離婚をして後悔しない?」 と言われたのがきっかけで、「私が居なくなると夫が困るのを承知で離婚すると、夫に対する良心の呵責で苦しむのではないか」とも考えるようになりました。

秋山さんならこの状況をどうお考えになりますか。また離婚が多いアメリカでもこのようなことがあるのでしょうか。 夫のことがはっきり嫌いと言えたら離婚がもっと簡単だと思うのですが、夫は義母や義弟と同じ血筋とは思えないほど、 まともでしっかりした人で信頼も出来る人です。 正直なところ義理の家族さえ居なかったら離婚する必要はありません。
既に過去に離婚を話し合っていたので、今私が「離婚したい」と言えば今回は夫が別れてくれるのが分かっているだけに、 不思議に夫に切り出せないまま 毎日が過ぎています。ですが これ以上義理の家族と関わり続けるのは不可能ですし、私の両親も夫には同情しているものの離婚を望んでいます。
何か離婚に踏み切る気持ちの割り切り方などがあったらアドバイスをしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
アドバイスが頂けても、頂けなくてもCUBE New York さんは大好きなウェブサイトなので、これからもお買い物を通じてサポートし続けます。 義理の家族とのイザコザの後に、CUBE New York さんのウェブサイトを読んで何度も救われたので、 これからもずっとサイトを続けてください。

- R -



結婚はカップルの関係に家族が割り込む社会システムです


義理の家族との関係は、アメリカにおいてお金の問題に次ぐ 離婚原因の第二位です。 ですのでRさんのような状況での離婚はアメリカでは全く珍しくはありませんし、 そのタイプの離婚の場合は、別れてからもカップルが親しい交友関係続けていたり、 再婚はしないものの復縁して一緒に暮らしているケースもあります。
私自身、「相性は良いけれど、結婚したのが間違い」というカップルを何組か知っていますが、 その中には結婚後に義理の家族が原因でこじれるケースもあれば、子供が出来て親になった途端に 問題が出てくるケースもあります。後者は子供が大学に進学するなどして家を出て、いわゆるエンプティ・ネストになった途端に 関係が上手く行くのが通常です。

長く一緒に暮らしたカップルが、結婚して夫婦になった途端に2〜3年で破局を迎えるケースは全く珍しくありませんが、 それは社会的なシステムやルール、常識などで”夫婦” という枠にはめられてしまうと、 カップルがお互いへの愛情だけでは乗り越えられない問題が沢山出てくるためです。 ガールフレンドであれば、相手の家族のイベントに毎回出席しなくても理解されますが、妻となればそうは行きません。 妻として出席すれば他の女性家族と同じように振舞うことを暗黙のうちに要求されます。
それが年に一度程度ならば1日我慢するだけの話ですが、通常は よほど距離的に離れているケースを除いては、 義理の家族と関わる頻度が 苛立ちの原因になるまで増えるのは宿命です。 ガールフレンド時代に既に 「家族同様」と思っていた相手の家族でも、結婚して法律上の家族になった途端に 遠慮がなくなって、要求が増えて、愚痴を聞かされたかと思えば、悪口を陰で言われたり、面と向かって皮肉を言われたりするものなのです。
義理の家族に嫌気が差して離婚した私の友人は、「結婚とは義理の家族の醜悪さに巻き込まれるためのシステム」とはっきり言いますが、 「私の義理の家族は幸い良い人たちなので大丈夫」と言っていた人でも、一度遺産相続などでこじれると 私の友人の言い分に同意するようになります。

どんな人間関係でも お互いにある程度の遠慮があって、何もトラブルが起こらない限りは上手く続く訳ですが、 義理の家族というのはそれを望むのが極めて難しい関係と言えます。
私の知り合いの日本人女性はヒスパニック系のアメリカ人と結婚しましたが、義理の家族の集まりでは 誰もが自分が話せないスペイン語で話していることから、 最初は「言葉の障壁のお陰で義理の家族に頼られたり、面倒を見させられることが無い」と喜んでいました。 ですがやがて夫がヒスパニック系の女性と再婚するために離婚を突き付けられ、その時に夫の家族がこぞって彼女との離婚と ヒスパニック系の女性との再婚を 強く望んでいることを知らされたそうです。 ヒスパニック系は特に「結婚=家族を増やす」という概念が強いと言われますが、要するに結婚をするということは カップルにとっては家族のルールで仕切られて、自分たちのルールが通用しなくなるということなのだと思います。

逃避や身勝手ではない、幸せになるための離婚


女性にキャリアや生活力が無かった時代には「夫婦=運命共同体」的なセオリーがまかり通っていましたが、 現代の先進国社会では 結婚が一生のコミットメントを意味する訳ではありませんし、結婚や義理の家族のために自分を犠牲にして、 夢や幸せを諦める女性は殆ど居ません。
女性は結婚でもキャリアでも自分が望まない選択をする必要はありませんし、それが間違いであった場合には早い時点で方向転換をして 自分に合ったオプションを模索するのが当たり前の時代です。
映画やドラマのセリフであれば「相手の良い部分、悪い部分を全て受け入れて愛すること」が本当の愛情のように描かれますが、 実際には お互いにプラスになる要素だけで関わる方が 愛情関係も 仕事関係も遥かに有益なだけでなく、ストレスフリーに長続きします。 百歩譲って「相手の良い部分、悪い部分を全て受け入れて愛すること」が本当の愛情だと考えたとしても、 その良い部分、悪い部分の中に義理の家族が含まれるとは考えられません。
ですのでRさんがご主人に対しては未だ愛情がありながらも義理の家族が原因で離婚を決心するのは、 ご自身の将来や幸せのために必要な選択であって、忍耐の欠落や身勝手さによるものではありません。 幸福を追求するのは日本国憲法でも合衆国憲法でも認められた権利ですので、その行使が責められる必要はありません。

ですがRさんは「義理の家族のことは耐えられなくても、ご主人のことは何らかの形で助けてあげたい」という気持ちをお持ちでいらっしゃるとお察しします。 それを実践するには、離婚をしてRさんが義理の家族の面倒を見なくて当然の関係になるべきなのです。 結婚して家族になると 責任の所在から、誰が何をすべきという役割分担、時に金銭負担など 全てが曖昧でうやむやになるので、 親切でしたことが その後はやって当たり前の義務になったり、相手に甘えて自分がやるべきことを知らず知らずのうちに押し付けたり、 押し付けられたりの連続です。 ですが離婚によって家族の関係を解消すれば、義理の家族がRさんを頼れなくなるのはもちろんですが、ご主人にとってもRさんへの甘えや期待が無くなる分、 自分がするべきことがクリアになるはずです。その状態でRさんがご主人に元妻兼友人として出来る範囲でご主人をサポートするのは精神的な負担になりませんし、 ご主人も家族でなくなってからのRさんのサポートに対しての方が 感謝の気持ちが大きくなるはずです。

前述のように世の中には離婚してからの方が、友人として良好な関係が保てるカップルは少なくない訳で、 私の目にはRさんのケースはその典型のように映ります。ですから良心の呵責など心配せずに 決心された通りに離婚をして、ご自身の生活とご主人との関係の仕切り直しをするべきです。 精神的なしがらみを断ち切って離婚をしてみると、「もっと早く離婚を決断するべきだった」と思えるのがRさんのケースです。

かく言う私は結婚というシステムの否定派ではなく、信頼できるパートナーを持つことは人生の大きなプラスになるという考えの持ち主です。 ですが結婚が人生のマイナスになるケースも非常に多いと思いますし、 間違った結婚、無理がある結婚を続けた場合にダメージが大きいのは常に女性の側だと思っています。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。




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