Feb. Week 4, 2020
★ "Sexual Assaults on Airplane?"
アメリカ国内線機内での痴漢、私にはどうすることも出来ず…


秋山さま、
ウェブサイトを長く愛読して、いつもストレス発散や気分転換をさせて頂いています。ありがとうございます。
私は仕事でアメリカの出張が年に何回かあります。ニューヨークが一番エキサイティングで好きなのですが、 最近は殆ど行くチャンスが無くて残念に思っていたところ、先月の出張の時はその日程に合わせて休みを取り、 出張先のシカゴからニューヨークまで足を伸ばすことが出来ました。 ところがニューヨーク行きの国内線フライトの中で痴漢行為に見舞われました。
その時の私は一人で、しかも仕事の疲れのせいで窓側の座席に座った途端に居眠りをしてしまいました。 その後フライトの最中、何か太腿の内側で動くものを感じて、ハッと目を覚ましたところ隣の座席で新聞を読んでいた男性の手が新聞の下で動く様子を感じました。 その時は疲れていたのと、何かの勘違いだと思って再び眠ってしまいました。ですがその手の動きが大胆になったので本当に目を覚ましましたが、 男性も手を引っ込めたので何も言うことが出来ません。 でも太腿の内側を触られた不愉快な感触が鮮明に残っていて、最初はそれが恐ろしく感じられたので 残りのフライトの間は身体を硬直させて二度と眠らないようにしていました。 その男性は40歳から50歳くらいだと思います。白人で新聞を広げて読んで私の座席スペースにまで新聞が割り込んできていましたが、 それは痴漢行為を隠すための手段だったと思います。

飛行機を降りた時にはドップリ疲れてしまい、その後マンハッタンに向かうタクシーに乗ってからも、ホテルにチェックインしてからも ずっとその不愉快さを引きずることになりました。 ニューヨークには友達がいるので、その友達に話したところ「飛行機の中の痴漢なんて…」と驚かれましたが、 「アジア人で言葉が通じないと思って狙われたんじゃない?」などと言われました。 確かにフライトアテンダントに文句を言ったところで、私の英語力ではどうにもならなかったように思うので、 そう考えると本当に悔しくなってきて涙が出てきました。
こんなことはそうそう起こらないかと思いますが、嫌な思いの払拭法や外国旅行で痴漢を含めたトラブル対策にどうするのが効果的かなど、 何かお知恵があったら授けていただけると助かります。 あの痴漢はトラウマになってしまって、今後も飛行機に乗る度に思い出してしまいそうです。 どうかよろしくお願いします。
これからもウェブサイトや新しい商品のご紹介を楽しみにしています。お身体に気を付けて頑張って下さい。

- S -



アメリカで急速に増えているのが機内での痴漢行為です


Sさんと類似した経験は私のアメリカ人の友人も一年ほど前に経験しています。 彼女はもちろん英語がきちんと話せますが、機体の後ろにあるフライトアテンダント待機場所に 痴漢行為を告げに行ったところ「Are you sure? This is serious allegation.」 すなわち「貴方が申し立てているのは深刻な事態ですから、本当に確かですか?」と訊き返してきたそうで、 友人が「絶対に確か」と言ったところ、今度は隣に座っていた男性をフライトアテンダントがその場に連れてきたとのこと。 そして周囲に気遣って囁くような声で 彼女が申し立てた痴漢行為について男性に尋ねたそうですが、その男性は「エアポッドを彼女の座席側に落として、 それを拾おうとしただけの誤解」、「座席が狭いので、隣の女性に触れてしまったかもしれないけれど、まったく痴漢の意図などないし、 機内のような逃げられないような場所で痴漢をするなんてありえない」とあっさり言い放って無罪放免。フライトアテンダントは痴漢男性をまるでVIPのように 丁寧かつ慎重に扱って 疑いを謝罪し、友人の方がオーバーリアクトした悪者扱いになってしまったそうです。
またニュースの報道では、痴漢行為を報告したものの 何の対応もしてもらえなかった女性乗客が自分の座席に戻ることを拒んで フライトアテンダントの座席に居座ったことから、着陸後に警察に突き出されたというエピソードもありました。 実際のところFBIが2020年に入ってから警告したのが2014年から2017年の3年間に旅客機内での痴漢行為が66%も増加しているという事態です。
アメリカではつい最近にも、ティーンエイジャーの時に自宅から誘拐され、犯人に性的虐待を受け続けた アメリカ人なら誰もが知る事件の 被害者、エリザベス・スマートが 同様の被害にあったことをメディアに告白してやはり大きな報道になっていました。 今や性的虐待被害者をサポートするアクティビストになった彼女でさえ、痴漢行為を受けた時は過去のトラウマも手伝って何も出来なかったそうですが、 「泣き寝入りは出来ない」として被害にあったデルタ航空に対してクレームを申請。 さすがに著名人からのクレームとあって、デルタ側もその対策に取り組むステートメントを発表しています。

Sさんのお友達がおっしゃるように、逃げ隠れができない機内で痴漢行為を働くというのは 信じがたいことですが、それが起こる原因の1つは近年エアラインが利益追求のために、 乗客のサイズが大きくなっているにも関わらず座席スペースを狭くしていることです。 乗客同士がくっついて座れば「少々身体が触れても仕方がない」という意識があることから、 故意に触れられたのが分かっても 女性がなかなか文句が言えない状況にあります。
また昨年には後ろの座席から複数回 手を伸ばしては前の座席の女性の胸に触れていた男性客の様子がビデオに捉えられ、 それはさすがに訴追されていましたが、そんな証拠ビデオが撮影できるケースは極めて稀なので、 たとえ女性がクレームをしても、私の友人のように女性側の勘違いと判断されたり、証拠不十分でエアライン側が何の対応もしないのが 通常です。エアライン側にしてみればレポートされるトラブルの数は少ないほど好ましい訳ですし、 フライトアテンダントは面倒に巻き込まれたくない事なかれ主義が多いだけに、痴漢行為が野放しになってしまいます。 したがって3年間に66%も被害が増えているのは、たとえ被害者が訴えてもお咎め無しであることを痴漢側が熟知しているためと言えます。
この状況は昨今 "MeToo in the Air" として、アメリカでようやく取り沙汰されるようになってきたところで、 Sさんがおっしゃるような「そうそう起こらない」災難という訳では決してないのです。

旅客機の比ではないクルーズ船の犯罪率


こうした状況でアメリカで奨励されるのは、後からでも良いのでエアライン側に痴漢行為をレポートすることで、 ようやく機内での痴漢行為が問題になってきた今では 特にそれが大切なことだと思います。 誰もが泣き寝入りをしてしまったら こうした行為への取り締まりや対応を望むことさえ出来ません。 前述のようにFBIは今年に入って初めてエアラインや利用客に機内の痴漢行為を「極めて増加が著しい犯罪」として警告しましたが、 それはこれまで被害に遭った女性達がきちんとレポートしてきたからです。 ですのでエアラインの日本オフィスでもフェイスブック・ページにでも 何らかの形でレポートをするべきだと思いますし、 被害に対して何らかのアクションを起こすことは Sさんのトラウマ緩和にも役立ちます。
その一方で、少なくとも現時点ではSさんのお友達のように「まさか飛行機の中で痴漢なんて…」と考える人は女性にも男性にも多いので、 そうした人たちに自らの経験から注意を促すことも大切だと思います。 女性の場合、搭乗の際に着用する服を慎重に選ぶだけでも痴漢の被害を防げる可能性が高まるはずです。

昨今の米国国内線旅客機内では痴漢行為だけでなく、乗客による暴力や人種差別的暴言を含むバイオレンスが 「Air Rage / エア・レイジ」として社会問題の1つになっていますが、 あまりニュースにならないだけで その比ではないほどの犯罪&トラブル率と言われるのがクルーズ船です。 クルーズ・ヴァケーションはコストが割安なこともあり、アメリカでは最も急速に伸びている旅行関連ビジネスで その市場規模は今や年間約500億ドル。 2019年には2500万人以上が利用したと言われます。
そのクルーズ船で最も頻繁に起こる犯罪がレイプや痴漢を含む性的虐待、および性的不適切行為で、その被害者の3分の1が未成年者と言われます。 ですがクルーズ船の犯罪は海の上、それも公海上で起こり、そこでの犯罪はその船舶の国籍国の警察の管轄下と見なされるので、 世界最大手のカーニバル・クルーズならパナマ、ロイヤル・カリビアンならバハマの警察以外は捜査に当たることさえ出来ないのが実情です。 そのため両親が安心して子供を預けた子供用ジムのインストラクターによる少女性的虐待行為が逮捕も訴追もされなかったことが 被害者家族の訴えでニュースになっていましたが、加害者が乗客の場合はニュースにならないだけでなく、犯罪がレポートされることさえありません。 米国下院では何度もその状況に対する法令化が試みられていますが、クルーズ船側のロビー活動によって一向に取り締まりが進まないままになっています。

現在、日本の横浜に停泊中の大型クルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス内で コロナウィルスの450人以上の感染者が出ているニュースが世界的に報じられていますが、 コロナウィルスやノロウィルス等の感染は クルーズ船が世界どの国に対してもレポートを義務付けられる数少ないトラブルです。 アメリカで近年ウィルス感染以外にクルーズ船内のトラブルとして報じられたのは、 祖父が幼い孫を誤ってクルーズ船の窓から落として死亡させてしまった事故や停電トラブル程度で、 それらを除けばクルーズ船は安全と思い込む利用者は非常に多いのが実情です。 ですがその実態は海の上の隔離された環境下で 逮捕や訴追がされないことを熟知した犯罪者が野放しになっているとも言える状況です。

もちろんリスクばかりを心配していたら何も出来ない、何処へも行けないのは事実ですが、リスクをあらかじめ把握しておくだけで 少なくとも無防備な状態は防ぐことが出来ますし、通常犯罪やトラブルに見舞われるのはそんな無防備な人々です。 ですから特に海外旅行に際しては「行けば何とかなる」的な冒険心は持たずに 行き先や宿泊先をしっかりリサーチして、 見込まれるリスクや万一に備えることが 旅行を安全に楽しむためにとても大切だと思う次第です。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。

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