
★ " Q&ADV 4 Career & Money "
時代の転換期を迎えるためのQ&ADV 4 キャリア & マネー
先週のアメリカではコロナウィルスの感染が突如拡大したのを受けて 記録破りの330万人の失業者が出たのは世界的に報じられた通りです。
今週には連銀から その数が4700万人に達し、失業率が30%を上回る予測が発表されましたが、
先週の段階でアメリカでは休業を含めて4万9000店舗がクローズしています。
私が住むニューヨークは全米に先駆けて感染が広がったとあって、市政府がレストランのテイクアウト、デリバリー以外の営業を禁じた途端に、
レストラン業界だけで7万人が解雇され、市の失業率が約30%に達したと報じられました。
でもその僅か5週間前には 株価が史上最高値を更新、失業率が過去50年で最低水準を維持し、
それ以外の実態には乏しかったとは言え メディアから連銀までもが ”アメリカ史上空前の好景気” を高らかに謳っていた訳ですから、
何時何がどうなるかが分からない世の中になったことを痛感せずにはいられません。
この状況を受けて米国議会ではアメリカ史上最高額である2兆ドルを超える救済金法案が可決され、
失業者や年収7万5000ドル以下の国民へのサポートが支払われることになりましたが、
それを受け取る人々とて 既に抱えている様々なローンやレントを支払えば手元に残るのは当座の生活費だけで、
それらは食費や携帯電話代を含む公共料金に消えていくだけです。
すなわちこの法案は社会の上層部に向かって流れていくお金が滞らないためにデザインされたものであって、
決して年収7万5000ドル以下の国民を救うためのものではありません。
私がこのコラムを書いている3月30日 月曜日にはブルーミングデールズを傘下に収める大手百貨店、メーシーズが全米の500店舗が休業中であることを受けて、
13万人のフルタイム&パートタイムの従業員に対して ”Furlough / ファーロフ (このケースでは無給の休職処分)” を言い渡していますが、
これは雇われる側にとっては極めて残酷な処分です。
というのは同じ給与が出ないという状況でも、雇用主が解雇した場合にはその従業員は失業保険を申請することが可能になります。
先週議会を可決した救済法案では失業保険が39週間支払われ、その金額も1ヵ月600ドルの上乗せが謳われていましたが、
ファーロフの場合、雇用主は給与を払わないまま 雇用を続けることを意味するので 従業員は失業保険を申請することは出来ません。
ちなみにアメリカでは失業保険が得られるのは解雇された場合のみで、
自ら退社した場合には一銭たりとも失業手当が支払われることはありません。
同様のファーロフは、ギャップ、コールズ、アン・テイラー等、多くの大手小売りチェーンが今週発表しており、
いずれも給与は払わないものの健康保険だけは従業員に提供し続けることを条件にしています。
従業員にとっての選択肢は 自ら会社を辞めて他の仕事を探すか、もしくは給与無しで店舗営業の再開を待つことです。
営業が再開されたとしても 多くの小売りチェーンが 稼働率の悪い店舗を閉店すると見込まれるので 必ずしも仕事に戻れる保証はありませんが、
企業側が望んでいるのは ある程度の従業員が自ら仕事を辞めてくれることです。
ファーロフは経営状態が苦しい企業にとって 人員削減コストを減らすための常套手段なのです。
世の中には失業保険というものが 会社と個人が就業期間中に積み立てきた保険金で、それを失業時に受け取っても
雇用主には全く負担が掛からないと思う人は少なくありませんが、
私がアメリカで自ら会社を経営して学んだ苦いレッスンの1つが最初に解雇したスタッフの失業保険でした。
私はスタッフが失業保険を受け取れるようにと、あえて雇用から6カ月が経過して受給資格を得た段階でスタッフを解雇しましたが、
それによってスタッフに支払われた失業手当の三倍以上の金額を 会社がその後約3年間に渡って払い続けることになりました。
そうなって初めて学んだのが 「中小企業は従業員に失業保険を申請されたら大きな出費を被る」という事でした。
大企業であっても大量のレイオフ、特に経営難に陥っている場合には失業保険の支払いが経営の負担になりますので、
それを省いて従業員を削減するには 自ら仕事を辞める状況に追い込むしかありません。
そのために「解雇はしないけれど 給与も支払わない」措置を意味するファーロフです。
通常、大企業はその評判や社会的モラルを考慮してファーロフは行わないものですが、
それが許されてしまうのが 今回のコロナウィルスのような緊急事態です。
ウェブサイトのBuzzFeedは先週からスタッフの給与が25%カットになったことが伝えられ
同様のペイカットはUSAトゥデイ等、様々なメディア企業にも及んでいます。今後益々増えることが見込まれるファーロフやペイカットは
失業率には現れなくても社会と経済に大きなインパクトを及ぼす要因となります。

それとは別に3月30日月曜にはこれまで薄給と劣悪な労働条件で働き続けてきたニューヨークのスタッテン・アイランドのアマゾン・ウェアハウスの従業員、
食料品の配達業者、インスタカートの従業員が、その待遇と給与の改善、及びコロナウィルス感染のプロテクションを求めてウォーク・オフ(業務放棄)を行い、
3月31日火曜日にはアマゾン傘下のホールフーズの全米店舗で、”Sick Out' Tuesday / シックアウト・チューズデー” というストライキがプランされました。
アマゾンはホールフーズのストライキを呼び掛けた従業員を解雇したことが報じられましたが、
アマゾン、ウォルマートといったビジネスは 不足するウェアハウス・ワーカーやデリバリーマンの雇用を大幅に増やしている真最中なので、
改善要求を求める労働者が新しい労力に入れ替えられるだけに終わる可能性は否定出来ません。
これからの世の中はコロナウィルス感染拡大がきっかけで、益々急速にオンラインショッピングに傾倒していくことが見込まれるので、
店舗やそこで働く人々の仕事の激減は必至と言われる一方で、
ウィルス感染の問題は 企業が労働組合の反発を買わずして AI の導入を大幅に増やす絶好の機会を提供したと指摘されます。
さらにコロナウィルス感染防止を謳いながら 政府や警察による国民やビジネスに対する権限や行動規制がどんどん高まっていることは 一部の有識者の間で既に
危惧されていることですし、多くの国々がコロナウィルス感染防止を理由に国境を閉鎖。何の反発も買うこと無く
難民の流入ブロックを実現し、トランプ政権はコロナウィルス問題を理由に 環境規制まで大幅に緩めたばかりです。
一部にはコロナウィルスの問題が開き過ぎた一般庶民と富裕層の格差を是正するイコライザーになり、人々がより衛生に気遣い、助け合う世の中になる
というポジティブな予測も聞かれます。でもその格差の是正されるのが見込まれるのは総資産50億円以下のいわゆる”ミドルクラス・ミリオネア” まで。
もっと大きなピクチャーでこの問題を捉えた場合、政治経済の中央集権化がどんどん加速しているという意見はYouTube上の経済専門家の間で
多く聞かれるもので、私も個人的にはコロナウィルスによって世の中が意図的にある一定の方向に向かっていることを強く感じています。
でも大きな世の中の流れは 個人にはどうにもできないことですし、そんな世の中では何時経済状態が一変しても、
突然仕事が無くなっても不思議ではありません。年齢や職種に関わらず仕事を探そうとしても仕事自体が存在しないケースも出てくると思います。
そうなった時には自分で仕事を作る、仕事を始めるしかありません。
既に自分で仕事をしている人はそれを見直して、方向転換をしなければなりません。
特にアメリカに暮らして深刻なコロナウィルスの感染を目の当たりにすると、そんな時代が迫っているのかもしれないという気持ちを抱かざるを得ないのが
現在です。
このQ&ADVのコーナーにしても、特に過去2年ほどの間に増えてきたのがキャリアとお金に関係するご相談です。
このコーナーは2012年にスタートしていますが、過去約7年間のご相談内容を振り返ってみると、
前半の3年間は家族、交友関係に関するものがマジョリティを占めていましたが、
それが近年キャリアや経済状態にフォーカスされてきたのは世相を反映してのことと思います。
そこで CUBE New Yorkが2020年2月に20周年を迎えたこともあり、
Q&ADVに寄せられた キャリア&マネーのご相談を 1冊の電子書籍に纏めることにいたしました。
私のような会社経営の素人が 殆ど元手無しで パートナーとビジネスをスタートし、その後自分の会社を立ち上げて
あっという間に20年が経過しましたが、その間には 楽しかった事、辛かったこと、天の助けから裏切りまで様々な事が起こりました。
私が経営の達人ではなくてもQ&ADVに寄せられたご相談にアドバイスをさせて頂くことが出来たのは、
災難から幸運まで とにかくありとあらゆる事を自ら経験してきたからだと思っています。
新しい電子書籍は『Q&ADV 4 キャリア & マネー』というタイトルにしましたが、それを纏めるにあたっては、
過去に頂いたご質問から私自身も学ばせて頂くことが多々あり、自分のビジネスも時代と共に転換期を迎えているという
意識を新たにした次第です。
ですので読者の方々にも Q&ADVのコーナーに寄せられた キャリアやお金の悩み事、難しい局面についての質問 と向き合うことにより、
将来を見据えた、これからの時代を生き抜くための人生設計や経済活動を考えて頂きたいと思っています。
『Q&ADV 4 キャリア & マネー』は4月中にアマゾン・ドット・コムで出版の見込みです。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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