
★ " Why Americans Hate Wearing Masks? "
アメリカ人は何故マスク着用を嫌うのでしょう?
Yokoさま、
初めまして、CUBE New Yorkを愛読して6年くらいになります。
毎日サイトをチェックさせて頂いております。
私は3年前にアメリカ人の夫と結婚してウエスト・コーストで暮らしています。
NYほどではないですがコロナウィルスの感染が広がって、私はこういうことに神経質な方なので
消毒などをやり過ぎてしまい、逆に疲れて 肝心の自分の免疫力を損ねてしまっているのを 先日のYokoさんのコラムを読んで反省したところです。
夫は典型的なアメリカ人なので気楽で、よく言えばおおらかですが、
マスクの着用をとても嫌がって 「マスクを着けない入店はお断り」のようなサインがあるストアは
マスクを持っていても入りたがりません。
「マスクをしたって感染は防げないと CDC(疾病予防センター)が言っていた。
高齢者の見舞いに行くならマスクを着けるのは仕方ないが、どうして公園を歩いたり、店で買い物をするのにマスクが必要なのか?」
という意見で、これは夫に限ったことではなくて、友人のアメリカ人や隣人なども同じように言います。
先日にはマスクの着用をめぐって夫婦喧嘩をしてしまいましたが、
「日本人はコロナウィルスの感染が広まる前からマスクをつけていたくらいなんだから マスクが好きな国民なんだ。
アメリカ人はマスクが嫌いだし、強制的につけさせられるのは尚のこと嫌がる。だからこんなことは話し合うだけ無駄だ」
というのがその時の夫の捨て台詞でした。私は感染が広がる中での社会的なモラルを
人種の違いで片付けられたような気がして不愉快に思いましたが、
Yokoさんはどうしてアメリカ人がマスクを嫌うと思われますか?
主人はトランプ大統領を毛嫌いしていますが、マスク着用を奨励しても「自分は着けないし、強制もしない」と言っているところは
評価していて、あんなに嫌っているトランプ大統領に対する見方まで変わってしまうほどマスクが嫌いというのが私には不思議でたまりません。
Yokoさんのお考えやニューヨーカーの意見などを聞かせて頂けたら嬉しいです。
NYのコロナウィルス状況が1日も早く改善に向かうことをお祈りしています。
お身体にくれぐれも気を付けて、ご活躍下さい。
- S -

同じ顔の半分を覆うにもマスクとサングラスでは大きな違いがあります
私がSさんのメールを拝読して 直ぐに頭に浮かんだのが
3月半ばのアメリカでマスク不足が伝えられ始めた頃、日本のマーケティング会社から、
「アメリカ人も これからは日本人のように日常でマスクを着けるようになるか?」という可能性について尋ねられた時の事でした。
この時の私の返答は「アメリカ人は基本的にマスクが嫌いです。マスクを着けるのも嫌がりますし、マスクをしている人も嫌う傾向にあります。」
というものでしたが、4月2週目からはニューヨークで公共の場でのマスク着用が 奨励から義務に変わったので、
今ではマスクを嫌うニューヨーカーでも仕方なくつけているのがマスクです。
ニューヨークでマスク着用が義務付けられて以来、日常の生活で何が変わったかと言えば まずビル内の隣人や、セントラル・パークでランニングをしている際に
行き交う人々とのコミュニケーションが大きく減ったことです。
それまではエレベーターで乗り合わせたり、ビルのロビーですれ違う人と挨拶だけでなく、短い会話をしていましたが マスクをするようになってからは
それが驚くほど減りました。ランニングの最中も お互いの距離を開けるために道を譲ったりする際に、以前は声を掛け合っていましたが
今は親指を立てるジェスチャーなどに変わってきました。
ソーシャル・ディスタンシングを守りながらのマスクをつけての会話は、声が通らない人だと 何を言っているかが分からないことも多いので、
それも会話が減る要因だと思います。
コロナウィルスの感染が始まった当初、「マスクでは感染は防げないので、一般市民のマスク着用は不必要」と声明を出したCDCが、
それを翻してマスク着用を奨励したのは「健康な保菌者によるウィルス拡散の防止」のためでしたが、
私はそれよりもマスク着用による感染防止効果は 不必要なコミュニケーションが激減したことだと思っているほどです。
コミュニケーションが減る最大の理由は、マスクで口を覆うと顔の表情が分からないためで
同じ顔の半分を覆う場合でも、髪の毛やサングラスで顔の上半分が覆われている状態は
全くコミュニケーションの妨げになりません。
ですがマスクによって顔の下半分が覆われていると、驚くほど顔の表情が分からないだけでなく、
特に下を向いて 視線を合わせないようにしている場合は、 少なくともアメリカ社会では コミュニケーションを拒むシグナルを出している、
もしくは非社交的な人間性と思われても仕方がない状況です。
「目は口ほどに物を言う」という諺があるものの、顔の表情の印象を掌っているのは圧倒的に口元で
それが覆い隠されている相手とは コミュニケートしようという気持ちにならないのが
一般的なアメリカ社会の心理なのです。
そもそも人間の顔と表情は、単なるルックスの良し悪し以外に 心理状態や体調など様々な情報を瞬時に周囲に与えるもので、
その最も強いインパクトを担っている口元が覆われている状態は 情報不足を意味します。
相手に声を掛けて良い状態かが分からなければ、必要に迫られたコミュニケーション以外が発生することはありません。
またスマイルを好むアメリカ社会では、笑顔がビジネス・カード以上の役割を果たすことは周知の事実ですが、
それだけに 美しい歯並びや ふっくらしたボリュームのある唇など、スマイルを華やかに見せるパーツへのこだわりも
他国を遥かに上回るものです。男性にとっても、女性にとっても セクシーな唇は恋愛対象を惹きつける重要なアトラクションですので、
口元へのこだわりはアメリカのカルチャーの一部と言っても過言ではありません。
私自身、日本でマスクを着用している日本人を見かけた場合は「花粉症なのかな?」と思う程度ですが、ニューヨークで
日本人旅行者がマスクをしていると 「どうして自分の印象をマイナスに見せるものをあえてつけるのだろう?」と思ってしまうので、
「国によってマスクというもののの捉え方が違う」という ご主人の考えは私は間違っていないように思います。
ですがコロナウィルス感染問題で、その着用の必要性や義務付けが呼び掛けられた場合には、
たとえマスク着用を好まなくても市民としてそれには従うべきだと思う次第です。
昨今のアメリカでのマスク=ポリティカル
アメリカ人がマスクを嫌う他の理由としては、自分の吐いた息を吸うのが不愉快ということがあります。
これについては「Gross! it's disgusting!」と嫌悪状態の人も多く、お値段が高めでもエアバルブのあるマスクを購入する
アメリカ人が多いのは、自分が吐いた息がバルブから出てくれる機能を好むためと言われます。
またご主人がおっしゃる通り、自由の国アメリカでは 人に強制されたり、押し付けられることに反発する傾向が顕著ですので、
マスク着用を拒む人々が必ず持ち出してくるのが、合衆国憲法第一条で保証される国民の自由です。
先週にはコストコが来店客にマスク着用を義務付けたことから、ソーシャル・メディア上で
#BoycottCostco(ボイコット・コストコ) がトレンディングになった一方で、
店内で働く従業員や来店客のウィルス感染を防ぐ手立てとしてそれを支持する人々が#SupportCostco(サポート・コストコ) の
カウンターアクションを起こして話題になっていましたが、
現在のアメリカでは マスクの着用一つをとっても政治的な意味を持つようになってきているのが実情です。
トランプ大統領がマスク着用を奨励しながらも本人、及びマイク・ペンス副大統領は、
医療施設の訪問でも一切マスクを着用せず、先週になってホワイトハウス内に2人の感染者が出て 初めて
ホワイトハウスのスタッフがマスクを着用するようになりました。
そのことが象徴する通り、全米各地でシャットダウン解除を求める抗議デモを繰り広げていた人々の大半が
トランプ支持者で、マスク着用義務付けに反発する人々です。
逆にシャットダウン解除に慎重なのは 圧倒的にアンチ・トランプ派で、マスクを好まなくても着用の義務を守っている人が殆どで、
特に過去2週間ほどの間に 急速にアメリカ国内でポリティカルな意味を持ち始めたのがマスク着用です。
ですが マスク着用強制に反発する人でも、 結婚式の招待状に「Black tie optional」とあればそれに従ってタキシードやスーツを着用し、
ジャケット・リクワイヤードのレストランにはジャケット着用で出掛ける訳ですから、
マスクの着用への反発は合衆国憲法で保証された自由などとは無関係のものと私は判断しています。
ミシガン州のストアでは先週、入店に際してマスク着用義務を無視した女性客を断ったセキュリティ・ガードが
その家族に射殺される事件が起こっていますが、そうかと思えば逆にマスクを着用しない来店客がセキュリティ・ガードに殴られたり、
他の来店客によって警察に通報されるトラブルも起こっています。先週末のNYクイーンズでは、マスクをして歩いていたカップルが
走ってきた2人組によってマスクを剥ぎ取られる事件が起こり、「マスクをめぐるヘイトクライム」と報道されていた有り様で、
現在のアメリカにおける マスクというアイテムは 着用を押し付ける側にとっても、拒む側にとっても過剰反応のトリガーになっているのが実情です。
ですからそんなトラブルに巻き込まれないためにも、義務付けられたところでは着用し、
他人には強制しない、マスクの着用についての自己主張や批判を含む口論は避ける方が賢明です。
所詮はたかだかマスクなのですから、それを着用する、しないに深い意味を持たせる必要などないのです。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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