May. Week 5, 2020
★ " My Business in COVID-19 Era "
COVID-19以降の私のビジネスの行方


秋山曜子さま、
このコーナーとキューブさんのウェブサイトが大好きで愛読しております。 先日出版された「Q&ADV フロム NY キャリア&マネー」も早速読ませて頂き、キャリアとお金だけでなく人生や人付き合いについても学ばせて頂きました。 ありがとうございます。

私は自宅で あるお教室を長く続けて、これまでは家計を支える収入を得て来ました。 ですがCOVID-19で緊急事態宣言が発令されたために、予定していたお教室をキャンセルする羽目になり、 既に取り寄せていた材料代を自己負担して、生徒さんにお教室代を返金することになりました。 実は昨年末くらいから新しい生徒さんが増えないまま、長い生徒さんが何人か来なくなってしまったので 経営状態はあまり芳しくありませんでした。
そこへ来てのCOVID-19は本当に大打撃です。子供が2人居ることもあり、夫には「もう自宅を教室に使わないで欲しい」と言われています。 会場を借りるとその分出費が増えますし、こんな状況では何人生徒さんがいらして下さるかも分かりません。 「少し待てばだんだん人も動き出して、やがてはワクチンも開発されるのでは?」と楽観的に考える日もありますが、 そうなるにはまだまだ時間が掛かるし、そうなってからではもう生徒さんも集まらないと思うので、お教室が続けられなくなる心配で 眠れない夜が増えて、気づくといつもため息をついています。
秋山さんも新しい電子書籍の中で、ご自身のビジネスも考え直す時代と書いていらしたのですが 今の時代をどう考えて過ごしていらっしゃいますか。 私とは全く違うお仕事をしていらっしゃるのは承知ですが、何かお考えを聞かせて頂けたらと思ってメールを差し上げました。 お忙しいかと思いますが、よろしくお願いします。
NYはコロナウィルスの感染者数が多い様子をニュースで見ております。 お身体にはくれぐれもご留意されて、これからもずっと頑張って下さい。

- F -




時代が変わって行く過程では…

先週、キッチン・シンクの水の流れが悪くなってしまったので、ハンディマンに直してもらおうと自宅ビルのメンテナンス・オフィスに電話をすると、 まず「熱は無い?、風邪の症状は?」と健康状態の質問を受けてから、「ハンディマンがアパート内で作業をしている最中はマスクを着用するように」という指示を受けました。 そのことを数日前にエレベーターの中で会った隣人に話したところ「うちもベッドルームのドアノブに不具合があるけれど、今は家の中に誰も入って欲しくないので不便を我慢している。 何時になったら直しに来てもらえるのやら」と話していました。
私はこの2つのやり取りから 今後も引き続き自宅勤務が増えると見込まれる今、ショッピングはもちろんのこと、様々なアクティビティが自宅からのリモートで行われるようになる一方で、 「自宅を安全な場所に保つために人に来て欲しくない心理」、「たとえ仕事でも安全を確認してからでないと他人の家に足を踏み入れない状況」を垣間見て、 COVID-19 によって高まった衛生や安全の意識が これからのビジネスに大きく影響することを痛感した次第でした。

アメリカの大手百貨店 メーシーズは、ビジネス再開に際して 来店客が試着したアパレルはウィルスの効力が衰えるまで売り場に戻さず、 メークアップ売り場では来店客が自由にトライ出来るサンプル・カウンターが撤去され、ビューティー・スペシャリストによる来店客へのメークやスキンケアのサービスも禁止。 メークのデモンストレーションはカウンターに用意されたペーパーシートで行うことになりました。 もちろん飲食店も先週末のキャッチ・オブ・ザ・ウィークに書いたように、リオープンのためにありとあらゆる知恵を絞った 感染防止のプロトコールを確立している状況で、多くのビジネスがCOVID-19を一時的な感染問題として捉えるのではなく、今後のニューノーマルとする 経営に切り替わりました。
私は個人的にはここ3〜5年のうちに 飲食業でもエンターテイメント施設でも、パンデミックの影響を受けない 完全隔離の新業態フォーマットが登場しても不思議ではないと思っていますし、 今後ウィルス感染による営業停止のダメージを受けないためには そうなるべきだとも思っています。 これから見込まれる感染問題がCOVID-19だけではないことが多くの科学者によって指摘されているだけに、 COVID-19のワクチンが開発されたところで それが感染問題の終焉を意味する訳ではないからです。

また私は 衛生と安全に対する意識が一気に高まり、人々がこれからもウィルス感染リスクと付き合っていく状況を認識した時代においては、 従来のビジネス・フォーマットで衛生管理を強化するだけでは、やがては生き残りが難しいように思っています。 というのは衛生のプロトコールは完璧にしようとすればするほど ビジネス側が余分な時間と経費を費やすことになると同時に、 利用する側も常に何らかの不便や面倒を強いられるためです。
個人経営のビジネスの場合、今の状況で衛生管理対策をした従来の経営を続けるか否かの決断は、 その業種とキャッシュフロー、すなわち資金力で変わってくると思います。 世の中が変わる時は人々のニーズもどんどんと変わって行きますので、今の状況だけを見据えて先を心配するよりも まずは情報収集、そして思考を柔軟にして「元手を掛けずに何が出来るか」というところからスタートしてみるべきだと私は考えます。

デジタル、ヴァーチャル、AI、ジョブ・ ヘッジ

Fさんがなさっているレクチャー系のビジネスでは、セリーナ・ウィリアムスがテニスを、ミシュラン3つ星シェフのトーマス・ケラーが料理や食材選び等を教えることで知られる マスター・クラスが2018年に4億ドルだった企業価値を今年5月初旬の時点で8億ドルにしたことが伝えられています。 また高額の収益を得ているYouTuber も レクチャー系が非常に多いことが立証する通り、これからの時代は益々フェイス・トゥ・フェイスよりも ヴァーチャル・レクチャーの時代になることが見込まれます。
ですが少なくともこれまでは お教室を受ける目的が学ぶことだけでなく、社交を兼ねるケースが少なくなかった訳ですから、 レクチャーだけをデジタル化、ヴァーチャル化したところで社交を求めていた生徒さんは離れてしまうと思います。 見方を変えれば、既に飽和状態のデジタル・レクチャーの分野で差別化が図れるとしたらそんな部分なのかもしれません。

COVID-19によって人々の衛生、安全の意識が変われば、そのライフスタイルや行動半径も変わってきます。 そうなれば当然の事ながらお金の使い方も変わってきます。
アメリカではシャットダウン中に 昨年低迷していたビデオゲーム業界の売り上げが復活しましたが、 5月に入ってからは年収千万円単位のプロ・ゲーマーのハイヤリング(採用)が急増したことが報じられていました。 ゲーマーは年齢・学歴は問われませんので、私の友人は「こんなことなら子供にもっとビデオゲームをやらせておけばよかった」とボヤいていましたが、 失業者が毎週何百万人も出るアメリカで、高額年収のゲーマーの採用が急がれているというのは世の中の変化が経済や収入に影響を与える好例と言えます。 ゲーマーもスーパースター・クラスになるとティーンエイジャーが年収十億円以上を稼ぐようになって久しいですし、 業界がヴァーチャル・スポーツのプロリーグ誕生に向けて動き出しているという報道も聞かれます。 ですので全てがヴァーチャル、デジタル化して、それを中心に人々がお金を遣うようになっても不思議ではありません。

その一方でCOVID-19のシャットダウン以降、グーグル傘下のドローン・デリバリー会社、ウィングが5月初旬までに1000件以上のデリバリーをこなし、 アリゾナ州ではピザのデリバリー・ロボットも一般道の交通量や歩行者数が少ない状況を利用して実用化に踏み切った様子が報じられていました。 今後は大手ホテル・チェーンが、ビジネス・ホテル同様に無人のデジタル・チェックイン&チェックアウトのシステムを導入することになっていますし、 アメリカでは一部のホテルのルームサービスのデリバリーに「スターウォーズ」のR2-D2に似たロボットが導入されて久しい状況です。
ウィルスに感染せず、給与や労働時間に文句を言わないAIの導入は、 COVID-19以降 更に広範囲でスピードアップすることが見込まれていますが、それは人間の失業を意味します。 ですから1つの仕事に収入源を頼るのではなく、「投資同様に仕事もヘッジする時代になった」という声もアメリカでは聞かれます。
いずれにしてもこれからの世の中ではビジネス規模が小さければ小さいほど、正攻法よりアイデアが決め手になります。 ですので現在の悩みの思考を、建設的なプラニングに切り替えて 新しいニーズへのアプローチを模索してみてください。 Fさんのように長年1つのことをやって来られた方にとって、COVID-19 のような出来事は 全く異なる分野に踏み出すきっかけになったりもします。悩むという堂々巡りを止めて、情報収集とアイデアの構築を始めると 自然に自分の運命が開けてきますので、来年の今頃にはFさんが全く異なるビジネスや活動をしているかもしれません。 気持ちをオープンにして、健康にくれぐれも気を付けながら 是非 頑張って下さい。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。

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