Aug Week 2, 2020
★ " I Don't Have Enough Money to Invest? "
貯まったお金で投資を始めようと思ったら…


秋山曜子様
Cube New Yorkさんのウェブサイトには2年ほど前からアクセスをさせて頂いております。このコーナーのファンで、秋山さんが出版された本も、電子書籍も読ませていただきました。 いつも素晴らしいアドバイスをありがとうございます。 私の相談にもアドバイスをしていただけますでしょうか。

私は現在30代半ばで両親の家で暮らしています。数年前に精神的に大きなショックがあって、その時に仕事を辞めて心の治癒に時間をかけてきました。 そのせいで友達に比べて貯金の額もありませんし、株の投資もしていません。経済の知識に乏し過ぎて何からどう手を付けて良いかもわかりません。 両親も私の経済力の無さを心配しているように思えたので、まずは投資の元手になるお金を貯めようと決心しました。

私は仕事はしていませんが、10ヵ月ほど前からあるきっかけで以前から得意にしていたことを頼まれた時にやっては その代金を頂くようになりました。 コロナウィルスの問題が起こってからも、というか起こってからの方が依頼を受けることが多くなり、幸い私は両親と暮らしていて生活費が掛からないので、 頂いたお金の殆どを貯金して ようやく70万円が貯まりました。私は今までろくに貯金などなかったので、私にとっては達成感を味わえた金額でした。
そこで日ごろから私に投資をするように勧めていた友達に何から始めたら良いかを尋ねてみたのですが、 「素人が70万円で株やFXに手を出したら危ない」などと言われてしまい、 「投資をするお金さえない」と蔑まれているような気持ちになってしまいました。 70万円というお金は投資をするにはそんなに少ないのでしょうか?
「投資をしないとお金が増えない」と言われているから投資をしようと考えたのですが、もっと貯金をしてからでないと投資をするべきではないのでしょうか。 何か指針になるようなアドバイスをいただけたら嬉しいです。

コロナウィルスの問題でいろいろ大変かと思いますがよろしくお願いします。
お身体に気を付けて、これからも頑張ってください。

-A-




株式投資で確実に儲けられる人とは?

私は投資の専門家ではありませんので 投資について具体的なアドバイスは出来ませんが、 投資は元手があるからこそ出来るものですので、まずは資金を作るのが最優先課題です。 投資を何と捉えるかにもよるかと思いますが、私は70万円が投資に不十分な金額とは思いません。 低金利、マイナス金利の現在ではキャッシュを銀行に貯めていてもその価値が萎んでいくだけですので、 それを資産価値が増える、もしくは保てるアセット(資産)に替えることがAさんにとっての投資の第一歩だと私は考えます。

投資というと世の中では「安全な株への投資」を勧める傾向にありますが、 株というものは「素人が買った途端に下がり、売った途端に上がるもの」です。どんなに頭脳明晰な人でも 株式投資を始めればこれを経験します。それほど市場というのは人間心理と逆行するようにできていると考えるべきなのです。 また素人投資家にありがちなのは「とにかく株を買ってみる」というトライアル的な考えですが、 株でも不動産でも、それ以外のアセットでも投資目的である限りは、安く買って 高く売らなければ儲けは出ません。 「まずは買ってみる」的な考えで始めてしまうと、往々にして一番高いところで買って、その後の価格下落に耐えられずに売却して損をするのがシナリオです。 それが素人投資家が最初に経験する苦いレッスンですが、そうした苦い経験が最初だけで終わる個人投資家は殆どいません。

私のアメリカ人の友人は金融業界に勤めていて 10年以上投資をしていますが、 彼女が3月のロックダウンが始まった時に 耐えられずに手放したのが オーバーストック・ドットコムという企業の株でした。彼女が何株所有していたかは分かりませんが、 1月に株価チャートをチェックして「そろそろ上がる頃」と判断した友人が7ドル台で購入したのがこの株です。しかしコロナウィルス感染拡大が深刻になった3月の暴落時に2ドル台まで下落したことから、 6ドル台まで価格を戻した時に手放してしまいました。私はチャートを見て彼女の買ったタイミングの判断は正しかったと思いますが、暴落時にやってはいけない売りに出てしまったのは、 コロナウィルスという異常事態を考慮した判断の誤りだったようです。
オーバーストック・ドットコムの株価はその2ドル台が大底で、彼女が手放した直後の4月から上昇に次ぐ上昇を続けて、私がこのコラムを書いている8月3日の段階で82ドルをつけています。 僅か5ヵ月足らずで30倍以上になっている訳ですが、友人曰く「私が売った翌日から図ったように上がり始めた」とのこと。 株というものは 私も含め個人投資家の誰もが「自分を貧乏にするためにデザインされている」と被害妄想に陥るような値動きをするものなのです。

では株で儲けられるのはどんな人々かと言えば、価格が大きく下落した時にそれ以上の下落を恐れずに纏まった株数を購入し、それが大きく上がるまで価格の動きに一喜一憂することなく持ち続けるだけの 精神力、分析力、そして何より財力がある人です。特に大切なのは財力で、財力さえあれば下がったものが上がるまで持っていられるのです。 それほど市場というのは何時の時代も「上がったものは下がり、下がったものは上がる」ように出来ているのです。 したがって財力があればあるほど、投資で財産を増やせる確率が高まります。
デイトレーダーがコンピューターの前で、睡眠時間を削って株やFXの値動きをチェックして稼ぎ出す何十倍もの利益を、年間10回前後の資金規模が大きい取引で得ているトレーダーは 全く珍しくありません。こうしたトレーダーは大きな相場展開がある時にそれを見越して資金を投入して、欲をかかずにしっかり利益を取り込みます。
それが出来ない人が損をせずに資産を増やすには、株に限らずこれから値が上がるもの、価値を維持するものを出来る限り安く買って、それを値が上がるまで根気よく持ち続けるのが一番確実な手段なのです。

設備投資も投資のうちです

私が今の段階でAさんのような投資の経験がない方に特に積極的に株式投資を奨励しない理由の1つは、 コロナウィルスによる経済不振で、世界の中央銀行がお金を印刷して経済の買い支えをしている特異な状況であるためです。
経済や株式市場についてある程度の知識がある人ならば認識しているのが、株が上がればゴールドや債券が下がり、株が下がればその逆になるのが経済市場のメカニズムです。 特に債券市場で取引をしているのは素人ではなく英語で”スマート・マネー”と呼ばれる機関投資家です。それだけに経済の展開を最も如実に反映すると言われるのが債券市場です。 ところがコロナウィルス問題以降、債券と株価のチャートが同じ動きをするようになったことが指摘されています。すなわちどちらかの市場がおかしくなっていることを意味する訳で、 どちらがおかしいかと言えば、当然のことながら業績やGDPに無関係に史上最高値のレベルを維持している株式市場です。 ですから市場全体の値動きに乗せられて せっかくの貯金を叩いて投資をしてしまうと、特に素人は痛い目に合う可能性があると用心するべきなのです。

加えて現在は通貨の破綻、切り替え等が取り沙汰される時代ですので、お金がある人ほど英語で「ハード・マネー」、「ハード・アセット」と呼ばれる財産にシフトする傾向が顕著です、 それが何かと言えば不動産やゴールドで、ビットコイン等の暗号通貨もその中に含まれます。今年の春以降1億円以上のヨットの売り上げが大きく伸びているのも、 コロナウィルスの自主隔離の手段を兼ねたハード・アセットへのシフトです。 ですので10万円でも20万円でも自分が適切だと思う額をゴールドや暗号通貨に替えておくことは特に現在の状況では後悔しない決断だと思います。

その一方で、株が派手に上がっている時には軽視されがちな設備投資というものも立派な投資です。 ですから70万円の一部をAさんが現在収入を得ていることを本格的な仕事にするための設備投資に使うことも考えてみるべきです。 コロナウィルスの感染問題以降にニーズが高まっているというのは 「今後ビジネスとしての展開が望める」とも判断できますので、 もし設備投資をすることによって効率やクォリティがアップするのであれば、それが高リターンをもたらす可能性があると思います。 たとえ依頼が増えなかったとしても、Aさんの時間や手間を省くことさえ出来れば、少なくともそこからAさんが投資の勉強や別のことに使う時間やエネルギーが生まれるはずです。

そしてその残った金額で小規模に株式投資を始めてみるのは決して悪いアイデアではありません。 でも株式投資には前述のようにリスクや失敗が付き物ですので、まずは自分がビジネス内容や経営状態をきちんと把握している銘柄を選ぶことはマストです。 そして買うと決めたからといってすぐに買わないことです。 まずは簡単なレベルで構わないので 株価チャートの動きを勉強して、自分が買うタイミングだと判断した段階で株を購入しなければその経験が投資の勉強に役に立つことはありません。
その後も「ある程度上がったら売る」というような成り行き任せにするのではなく、株価チャートを読み取る習慣をつけて、上がっている時はその相場のサイクルが何処で終わるか、 どの段階で売るのが適切かを見極めるべきですし、上がっている時でも下がっている時でも、過去のチャートを遡って似たような動きがあればそれと比較してみると、 同じような動きをリピートするケースは意外に多いのです。 そうやってまずはチャートの動きをチェックする習慣をつけるだけで、投資というものは確実性を増すものなのです。 ちなみにチャートの読み方は株でも、ゴールドでも、暗号通貨でも全て共通です。 値動きを見て投資欲が沸くようになれば、その段階では投資対象が何であれ 投資額を増やしてみるべきなのです。

アメリカではYouTubeのチュートリアルを見て相場を勉強したティーンエイジャーが、親のアカウントを使って200ドルのお小遣いを100倍にしたエピソードがあります。 ティーンエイジャーでも勉強さえしっかりすれば それだけのリターンが得られるのです。 なので知識がないまま飛び出すのは危険ですが、焦らずにしっかり情報収集と勉強をして乗り出せば何歳からでも財産を増やすことが出来るのが投資というものです。

最後に私はある程度苦労をして貯めたお金で投資を始めるのは良いことだと思いますし、経験が無い人ほど限られた元手でスタートするべきだと思っています。 ですのでAさんは投資をスタートするのに適した状況にいらっしゃると考えます。 相場の動きに翻弄されることなく、気持ちを強く安定させて 是非頑張ってください。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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