Sep Week 1, 2020
★ " Why Bitcoin Has Value? "
何故ビットコインに価値があるのか?何度説明されても分かりません


秋山曜子様
長年の愛読者です。NYがコロナウィルスで大変でいらっしゃるにもかかわらず、 ずっとサイトの更新や新しい商品のご紹介をされている様子を心強く思っております。
今日このコーナーにメールを差し上げたのは 悩みではなく、分からないことのご説明をお願いしたいと思ったためです。 それはビットコインや仮想通貨についてです。

最近はコロナウィルスのせいで、周囲が投資に熱心になってビットコインを話題にする人が増えました。 でも私は何度説明されても、どうして以前は1円の価値も無かったものが100万円近くになって、それがバブルと思わないのかが不思議でたまりません。 仮想通貨に詳しい友人にはビットコインが銀行を通さずに早く、手数料も安く送金が出来ることや、国境を越えても通貨の上下動の影響を受けないことなど、 いろいろ説明されましたが、私の意見ではそれはツールであって財産では無いように思います。 それだけでなく説明している人も良く分かっていないような気がするのが仮想通貨やビットコインで、そんなものを本当に信頼して投資をして良いのかと疑問に思っています。

秋山さんは「キャッチ・オブ・ザ・ウィーク」のコラムで何度もビットコインについてポジティブに書いていらしたのを覚えていますが、 秋山さんならビットコインの価値をどのようにご説明されるでしょう。もし以前のコラムで説明済でしたら申し訳ないのですが、 今一度教えてください。
このコーナーを始め、サイトの更新をいつもとても楽しみにしています。 コロナウィルスに気を付けて、これからも頑張ってください。

-Y-




私も以前はビットコインに偏見を持っていましたした

前回、2017年のビットコインのブルマーケットの際には、私もビットコインに対しては そのふざけたようなネーミングに偏見を抱いて、単にアーティフィシャルな価値をでっち上げただけのバブル・プロダクトだと思い込んでいました。 ですがその後 きちんとリサーチをして学ぶうちに、ビットコインに価値を見出しただけでなく、世の中の金融システムを変える可能性を秘めたインヴェンションだと考えるようになりました。

Yさんがお尋ねの価値に絞ってお答えすれば、物の価値を決めるのは市場であり、市場の法則は常にサプライ(供給)&デマンド(需要)です。 例えばスニーカーの世界では、1985年にナイキのエア・ジョーダン1が64.99ドルで販売されましたが、現在その復刻版ではないオリジナルの新品が再販サイト、ストックXで約2万5000ドル、 中古がEベイで2000~5000ドルで取引されています。 スニーカーに興味が無い人にとっては馬鹿げた価格でも スニーカーヘッドはそれを支払って手に入れる訳で、それによって決まるのが市場価値です。 同様のことはアートのオークションにも言えます。特にコンテンポラリー・アーティストの作品の相場価格が決まるのはオークションで幾らで落札されたかです。
これらはスニーカー、アートという”物”が存在しているので価値の仕組みが分かり易い例ですが、 実体が存在しないビットコインの価値が何に裏付けられているかと言えば、数式、マイニング、ブロックチェーン(=誰にでも閲覧出来て、誰にも改ざんできない記録)、 そして誰にもコントロールされず 規制の介入を受けない構造とテクノロジーです。 日本ではよく「信頼はお金では買えない」と言われますが、ビットコインやブロックチェーンはそんなお金では買えない信頼がテクノロジーによって裏付けられているのです。

逆に誰もがこれまでその価値を疑わなかった通貨は、中央銀行がコントロールして価値を裏付けています。 ですがここまで貧富の差が開いた世の中になって、未だに政府や銀行が国民の利益や財産を守るために稼働していると思う人は居ないかと思います。 そもそもビットコインが生まれたのは前回のファイナンシャル・クライシスの際に、 世の中の1%と自分達の利益しか考えない政治家や銀行家にコントロールされる金融システムから離脱するためです。 社会上層部の一握りの人々の私利私欲や過ちの影響を受けない、誰にもコントロール不可能な公平なテクノロジーが、ブロックチェーンというオープンソースのレジャー(台帳)によって裏付けられているのがビットコインというお金です。
ビットコインやその関連テクノロジーについて語る際に必ず登場するのが「Decentralised / ディセンタライズ」という言葉で、 これは日本語では「分散型」と訳されていますが、「ディセンタライズ」が意味するのは中央集権制度や中央銀行制度に相反するコンセプトなのです。 言い方を替えればビットコインは人類の歴史上初めて誕生した民主的なお金でもあります。
FRB(フェデラル・リザーブ・バンク)を始めとする世界各国の中央銀行が、経済的弱者の立場を顧みない金融緩和を進める現在は ビットコインの存在意義が分かり易い時代だと思います。 たとえその存在意義を理解しなくても、自分の資産価値を保つためには通貨以外のフォームで財産を管理する時代になってきたことは多くの人々が悟り始めているはずです。
(注:仮想通貨全体の中にはディセンタライズでは無いものも一部存在します。)

これからの時代はテクノロジーが益々幅を利かせます


Yさんのメールに「説明している人も良く分かっていないような気がするのが仮想通貨やビットコインで…」とありましたが、 私はビットコインや仮想通貨はインターネットと同じで、使うためのものであって理解する必要はないと思っています。 インターネットも利用が普及し始めた当初は、誰が聞いても退屈なウンチクを語る人やそれを解く本が出版されていましたが、そんなことなど全くお構いなしに毎日の生活の中で 欠かせない存在になって久しいのがインターネットです。 仮想通貨やビットコインもそれと同じで、テクノロジーを理解するより使い方、活用法を知るべきなのです。
ビットコインや仮想通貨を否定する人の中には、「インターネットが無かったら使えないお金」という意見もありますが、今の世の中はインターネットが無かったら 殆どのお金の動きがストップします。ゴールドを取引することさえ出来ません。

それとは別にビットコインの価値を裏付けるブロックチェーン・テクノロジーは 世の中にどんどん広がっています。 品物の流通経路の管理、昨今では高級食材や高額ブランド品の偽物混入を防ぐ手段に用いられている他、韓国では10万人がブロックチェーンの運転免許を所持するようになりました。 アメリカでは今回の選挙には間に合いませんが USPS(郵便局)がブロックチェーンの投票システムの特許を取得したばかりで、 これが実現すれば自分の投票がきちんとカウントされているかを誰もが確認出来るので 不正選挙が不可能になります。 また裁判の判決にブロックチェーンを導入した国もあります。
その一方でDeFi(ディファイ:Decentralised Finance)という言葉が盛んに聞かれるようになって久しい現在ですが、仮想通貨の世界では イーサリアムをベースにした新しい金融システムが猛然と拡大している真っ最中です。

経済専門家の中には「次に株式市場がクラッシュした際にはテクノロジー関連株以外は全て消え失せる」と予言する声も聞かれますが、 実際にこれからはテクノロジーが世の中をどんどん変えていくのです。そしてそのスピードはテクノロジーによってさらに加速しますので、 「そんなにすぐに世の中が変わるはずがない」というような これまでと同じ時代変化の尺度で予測をしていたら時代に取り残されてしまいます。
私の個人的な意見では、これからの時代で従来の教育よりも大切になっていくのが「テクノロジーが使いこなせるか、テクノロジー環境が整っているか」です。 アメリカでは 小さな子供が「5+5はいくつ?」と訊かれて 「アレクサ、5+5はいくつ?」と言ってアマゾンのスマートスピーカーに代わりに回答させたエピソードがありますが、 これが象徴するようにテクノロジーを使いこなす力が学力と見なされる時代がやって来ても不思議ではないというのが私の考えです。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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