
★ " Baby Yoda Saves Devided America?"
ベイビー・ヨーダが分断されたアメリカを救う?
今回はご質問に答えるのをお休みして、大統領選挙で分断されたアメリカで微笑ましい美談として報じられていることについて書かかせていただきます。
カリフォルニア、オレゴン、ワシントン州で、過去数週間に渡って大規模な山火事が起こっていたのは周知の事実ですが、
その山火事にまで持ち込まれていたのが政治論争。
毎年山火事の規模が拡大する原因が 気象変動であると主張し、アメリカがもっと環境問題に真剣に取り組むべきと主張するのが民主党、及びリベラル派。
逆に気象変動やクリーン・エナジーへの移行を否定するトランプ政権は、山火事が起こっている州の知事が全員民主党であることから
「森林管理がなっていない」という主張を毎年のように繰り広げ、先月には山火事被害の視察に訪れたトランプ氏が「気象変動を立証する科学を認めた対策に取り組むべきでは?」 と尋ねられて、
「もうすぐ寒くなる」と回答した様子が大ニュースになっていたような有り様。
山火事だけでなくコロナウィルス、マスクの着用、今後最高裁で審議が始まるオバマケア、人工中絶、銃規制に加えて、移民問題、人種差別問題、
警察のマイノリティに対する過剰暴力等、ありとあらゆる問題で国が真二つに割れており、
それにまつわる陰謀説がインターネット上に溢れて久しい状況。
選挙が近づいてからは、その結果に応じた武力行使のための武装まで呼び掛けられ、
ニュースを見ると右寄りメディアでも、左寄りメディアでも行われているのがそんな極端に分断された一部のアメリカがまるでメインストリームようなアングルの報道。
でも実際には そんな分断が2016年の選挙活動中から約5年も続いた上に、今年に入ってからのパンデミックも手伝って、
「とにかくノーマルな生活に戻りたい」というのが疲れ果てた国民のマジョリティの意見。
そんな人々が渇望しているのが、いかにもアメリカ的な 人々の気持ちを1つにするような
アップリフティングなニュースや出来事。
メディアもそれを熟知しているので、全米ネットのニュースの最後に必ず盛り込むのが
美談のセグメント。でもそれが単なる空虚なプロパガンダであるケースも多く、
「白々しい」、「偽善的」と捉えるほど視聴者がシニカルでドライになってきているのが昨今なのだった。

そんな中、報じられたのがオレゴン州に住む5歳のカーヴァー少年が山火事と闘うファイヤーファイターにベイビー・ヨーダの人形を贈ったエピソード。
ベイビー・ヨーダは、「スターウォーズ」に登場する人気キャラクター、”ヨーダ” の幼い頃のキャラクターで、ディズニーのストリーミング・サーヴィス ”ディズニー・プラス”で公開された
「ザ・マンダロリアン」に登場して大ブレークしたキャラクター。
カーヴァー少年が送付したベイビー・ヨーダの人形は、一時は大人気で手に入らなかったもの。
少年は祖母がファイヤー・ファイターに送った差し入れパッケージの中にベイビー・ヨーダを入れて、
それに添えたのが「Thank you Fire Fighters, Here is a friend for you in case you got lonely / 消防士の皆さんありがとう。寂しくなった時の
友達にしてください」というメッセージ。
そのベイビー・ヨーダは毎日の消火活動に疲れ果てた消防士達の間で大ヒットとなり、消火の場所が変わる度に
別の消防士チームに受け継がれ、そのたびに誰もが競って写真撮影をしたがる人気者になっただけでなく、ファイヤー・ファイターたちのラッキー・チャームとして実際の消火活動にも同行。
フェイスブック上には「Baby yoda fights fires」というページまで登場するセンセーションになってしまったのだった。
ファイヤー・ファイター達には他にも人形の差し入れがあったものの、ここまでのセンセーションになったのはベイビー・ヨーダだからこそ。
私がアメリカに来て驚いたのは アメリカ人の誰もがその成長過程で 親と一緒に「スターウォーズ」を楽しんだ ほのぼのとしたエピソードを持っていること。
実際にファイヤー・ファイターの中にも「スターウォーズ」ファンは非常に多かったようだけれど、今やそのファン層は親子3代に渡っており
ヨーダは「スターウォーズ」の中でR2D2に次ぐ第二位の人気を誇るキャラクター。
そのヨーダのベイビー・ヴァージョンには たとえ「ザ・マンダロリアン」を観ていなくても誰もが好感を持ってしまうのだった。
ファイヤー・ファイター達はベイビー・ヨーダが消火現場にやって来る度に、カーバー少年の思いやりに感謝すると共に、
「Stop Fightig & Arguing, Start Loving & Caring Again (闘いや口論を止めて、再び愛し合い、慈しみ合うべき)」という
社会のあるべき姿を5歳の少年に教えられる思いをしていたとのことで、
このエピソードはソーシャル・メディアやローカル紙で広まり、やがてメジャー・ネットワークでも報道されるヴァイラルぶりになっているのだった。
「スターウォーズ」を特に評価しない人は、単なる娯楽SF映画と捉えて、何故世の中が「スターウォーズ」にこだわり、夢中になるかが理解できない傾向にあるけれど、
確かに4~6作目に当たるエピソード1~3はそう思われても仕方がない内容。
でも本当の「スターウォーズ」ファンが好む それ以外のエピソードに描かれているのは、友情、親子愛、師弟愛、兄妹愛に加えて、試練や苦境を乗り越え、自分の弱さに打ち勝って正義を貫くという
人生の教科書のようなメッセージ。それがエンターテイメント・フォームを通じて人間心理に与える影響は決して軽視できないもの。
そう考えるにつけ 「アメリカはどんなに脱線しかけても、最終的には正しい方向に進んでくれる」という私の心の支えになっているのが
この国が「スターウォーズ」を生み出し、その人気が世代を超えて持続しているということ。
今回のベイビー・ヨーダの美談は私にとってそれが決して間違っていないことの証とも捉えられるものなのだった。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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