
★ Her Life Could Have Been Saved
妹をセラピーやカウンセリングで救おうとしなかった両親
Yoko Akiyamaさま、
1年半前までアメリカに暮らしていました。過去5年くらい愛読しております。
このところ日本では芸能人の自殺の報道が続いて、私はそれを見る度に自分の心の傷をえぐられるような思いをしています。
実は私の妹が30歳で他界しています。お付き合いしていた男性が同じ社内の友達に乗り換えて結婚したのが原因で退社をしてから、
塞ぎこみの状態になり、良くなったり、悪くなったりを2年近く繰り返した後の出来事でした。
私はその当時アメリカに住んでいて、時々スカイプをしたり、里帰りをする度に妹を励ましていて、両親には私と話すと妹が元気になると言われていました。
Yokoさんはアメリカにお住まいなのでご存知だと思いますが、アメリカはセラピーやカウンセリングがとても進んでいて それが実績を上げているので、
私は妹にもそれが必要だと思い、両親に何度もセラピーやカウンセリングを受けさせるように伝えていました。
妹は大人しい性格で、あまり自分の感情を出しません。そういうタイプほど親身になって話を聞いて、気持ちの整理に導いてくれるセラピーが大切なことを
両親に説明したのですが、妹が拒んだようで あっさり諦めてしまいました。
私が最後に一緒に過ごした時の妹はようやく元気になってきたところで、一緒に料理を作ったりして、これから良くなってくれるという希望を持ってアメリカに戻ったのですが、
その約2週間後に他界してしまい、以来私はセラピーを受けさせず、ただ手をこまねいていた両親のことが許せない思いが時々込み上げてきます。
誰か話し相手が居たら妹が救えたはずと思うからです。
Yokoさんにご相談したいのは、まずどうやったら両親に対する気持ちの整理が出来るかとういうこと。
そして妹のようにセラピーを受けたくないと言っていてもSOSを発信しているような人にどんなアプローチをするべきだったのかということです。
何かアドバイスをしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
- C -

セラピーはオールマイティな解決策ではありません
アメリカではCさんがご指摘のようにカウンセリングやセラピーが 精神医療を含むさまざまな分野で行き渡っています。
またそれを受けて問題や状況を自覚し、事態や自分自身を客観的に捉えることが解決や治療への一歩と見なされています。
しかし私は周囲で言われているほどセラピーやカウンセリングがオールマイティな解決・治療策であると思ったことはありません。
例えばアメリカでは結婚生活に行き詰ったカップルが まずマリッジ・カウンセラーとのセッションを受けますが、
実際にはセラピーやカウンセリングを受けた方が関係が悪化するケースが多いのです。
またセラピーやカウンセリングを受けたカップルほど往々にして離婚に終わる傾向にあり、離婚経験者が決して勧めないものの1つがカップル・セラピーです。
離婚さえ止められないセラピーやカウンセリングが 「命を絶とうと決めている人を思い止まらせることが出来るのか?」というのが私の正直な気持ちですが、
もちろんそれらが功を奏するケースはあると思います。
それは問題に直面して「いっそ死んでしまいたい」というような仮定的自殺願望を抱いているケースで、
そうした人々に対してはカウンセリングやセラピーで、生き続けるメリットやそれによる可能性、新しい方向性を示すことで
死というオプションに傾く気持ちを修正することが可能になります。
ですが人間というのは決してシンプルな生き物ではないのです。世の中では自殺という死因を一括りにして、
「精神が弱い人が追いつめられた結果」などと簡単に片づけますが、本能的に生命力を持つ人間が死を選ぶプロセスはそんな単純なものではありません。
人間は突き落とされそうになれば 反射的に傍にあるものを掴みます。その防衛本能は生命力なのです。
人間にとって死ぬというのは本来最も恐ろしいことなのです。
それをあえて選択する心理や理由は、その本人にしか意味を成さないケースが多いというのが私の考えです。
したがってそれがセラピーやカウンセリングによるテキストブック・ケースで解決できると思うのは生きている人間の思い込みや過信であるように思います。
人間の思考や心理というのは宇宙のようなもので 未知の部分が沢山あるのです。
人の命の尊厳を重んじるということは…
私自身は自分を「決して自殺はしないタイプ」だと思っています。それは私が強いからではなく、むしろ弱い人間だからです。
衝動的ではない自殺をする人は純粋かつ繊細ではあっても 決して弱い訳ではなく、むしろ内に秘めた計り知れない情熱とそれを貫く強さを持っています。
また頭脳明晰で自分のことも周囲のことも良く理解しています。
メールを拝読した印象では、妹さんは最後に一緒に過ごした時に Cさんを安心してアメリカに帰らせるために元気に振舞っていたように思えますし、
セラピーを受けてもどうにもならないことは妹さん自身が一番分かっていたものと思います。
ですからこのケースでご両親を責めるのは間違っていますし、Cさんが「セラピーで妹さんが救えたはず」というセラピー信仰的考えを持つことは危険だと思います。
アメリカには セラピストを”ハッピー・ドラッグ”の処方箋を書いてもらうために利用している人は少なくありません。セラピーに通っている人さえ
セラピストを信じていなかったりするのです。またセラピーやカウンセリングが比較的行き渡っているアメリカでも
自殺者は毎年増加傾向を辿っています。
ではどうしたら妹さんのようなケースが救えるかについては非常に難しい問題ですし、私は1つの解決策があるとは思えません。
だからこそ「セラピーで救えるはず」的な固定的な考えを持たずに、治療や改善を急ぐよりも
まずは死を選ぶに至るまでの思考の積み重ねを阻む何か、すなわち本人の気を散らす要素を生活にもたらすことが大切なように思います。
最後に人の命の尊厳を重んじるということは死因が何であれ、そして生きた年数に関わらず 1つ1つの命の存在に意義と価値を見出すことです。
Cさんは妹さんを救えなかった後悔よりも、妹さんと一緒に過ごした時間や掛けがえのない思い出にフォーカスして妹さんの人生を振り返るべきですし、
妹さんの分まで生きることを自分の使命と捉えて、それを自分を支える強さに変えて今後の人生を歩むべきだと思います。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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