
YouTuber, Brain Washed by Right?
日本のYouTuber、危険なほど右寄りに思えます
Yoko Akiyamaさま、
今年4月までアメリカに住んでいました。コロナウィルスが原因で止む無く帰国した日本人の1人です。
日本に戻った途端に14日の隔離になり、時間が余っていたので日本のYouTubeでどんなビデオが発信されているかをチェックしていましたが、
あまりに右寄りのトランプ支持者が多いので驚いてしまいました。
特に選挙が近付いてきてからはかなり誤った情報でバイデン・バッシングが行われていて、
そのビューワーの反応を読んでいて正直なところ怖くなってしまいました。
YouTuber達はNYタイムズやワシントン・ポスト等が「左寄りなので間違っている」と言って、
FOXニュースの情報を使っています。あのプロパガンダ・メディアのFOXニュースが信頼できる情報ソースになっているんです。信じられますか?
それだけでなくYouTuber達は 英語が自分で思っているほど分かっていないのか、意図的に情報を操作しているのか分かりませんが、
かなり事実が捻じ曲げられて伝えられています。
YouTuberは何を言っても責任が無いし、フォロワーを増やすために適当なことを言うのはアメリカも同じですが、
それを事実として受け止めている人達のリアクションを見て危険を感じずにはいられません。
もちろん右寄りの意見がYouTubeにあっても当然だと思いますが、そればっかりというのはやはり何かがおかしいと思います。
YouTubeが国の全てではないとは言え、少なくとも日本の一部が文字通り 「右向け右」の社会になっている様子を見て、
どんどん極端になって行きそうで心配しています。
炎上リアクションの過激な言語にも、「日本にこんな強暴な人達が居たのか」と ビックリしてしまうことがあります。
秋山さんはこのような日本のYouTuberの右寄りの状況をどう思われますか。
何故YouTuberは右寄りメディアから情報を拾うのでしょうか。
日本に帰ってからも Cubeさんはアメリカのことが良く分かるので心の安らぎが得られるサイトです。
更新がいろいろ大変だと思いますが、これからもずっと続けてください。
- T -

YouTubeは世界的に右寄りで、陰謀説が最も多いソーシャル・メディアです
私はアメリカに住んで、都市部のアメリカ人と同じようにメディアやソーシャル・メディアから情報を入手して、それをCUBE New Yorkで発信するのを長年のポジションにしてきたので、
日本の報道機関のニュースや日本のYouTubeビデオは日本の視点を入れないために なるべく見ないように努めてきました。
ちなみに「都市部のアメリカ人」 とあえて書いたのは、地方に暮らすアメリカ人は宗教観が強過ぎる等、世界のスタンダードとかけ離れているためで、
それは未だに「人間を創造したのは神」と信じて 教科書からダーウィンの進化論を削除しようとする動きがあることからも分かるかと思います。
日本人だけでなく世界中が一般に ”アメリカ” と一括りにしているのはもっぱら都市&その近郊エリアで、地方ではありません。
Tさんからのご質問を頂いて私も日本のYouTuberのビデオを大統領選挙前にかなりチェックしましたが、確かに右寄り、特にFOXニュースから情報を拾っているケースが多いのに加えて、
その内容が違っているもの、大方は間違っていないものの肝腎なところが歪んで伝えられているものが多く、
アメリカに住んでいたというYouTuberでも トランプ政権下のアメリカに住んだことが無い人は、過去4年間にどれだけアメリカが変わってしまったかを把握していないとあって
現状とは食い違う部分を感じて観ていました。
Tさんがご指摘の通り、YouTubeは個人が発信する意見であり、ニュースではありませんので基本的に何を発信してもビデオ製作側には責任はありません。
加えてアメリカでは個々のユーザーが発信する 事実に反するポスト、陰謀説等について ソーシャル・メディア側の責任が問われることは無い セクション230 プロテクションというものが存在しています。
そのためどんな情報がポストされても野放し状態でしたので、世界的に保守派右寄り、及び陰謀説の洗脳メディアとして使われ、
その最も有効な手段を担ってきたのがYouTubeです。
全世界からのISISのメンバー・リクルートに最も貢献したのがYouTubeですし、
白人男性至上主義グループ、プラウド・ボーイズがメンバーを増やしたメディアもYouTubeならば、世界各国のネオナチ・ムーブメント、
Qアノンの「民主党上層部とセレブリティが乳児の生き血を悪魔儀式で飲んでいる」という陰謀説もYouTubeを通じて大きく広まりました。
もちろんこれにはフェイスブックも一役買っていますが、全てのソーシャル・メディアが採用しているのが
ユーザーの感情を煽り、リアクションを誘発し、引いては中毒状態にするようにデザインされたアルゴリズムです。
これについてはネットフリックスのドキュメンタリー「ソーシャル・ジレンマ」で詳細が描かれ、
アルゴリズムをクリエイトする側であったエンジニア達が 自分達がいかに危険なものをクリエイトしてしまったかを訴えていました。
その内容を簡単に説明すると、ソーシャル・メディアではユーザーの1人1人がビデオ閲覧、「いいね」ボタンのクリック、シェア、リツイートをする度に、
それが個々のユーザーのマインドコントロール情報として分析され、
ソーシャル・メディアに居座る時間が長くなり、広告収入が得られるようなビデオやポストがどんどん送り込まれるようになっています。
ですからソーシャル・メディアに費やす時間が長い人は確実にそんなトラップに陥っている訳ですが、今になってクリエーター達が危惧し始めたのが
ユーザー達がソーシャル・メディアの中毒を通り越して、発信される情報、すなわち陰謀説や極端な思想に洗脳される傾向が顕著になってきたことです。
例えば2016年にはQアノンの陰謀説に洗脳された男性が、ワシントンのピザ店の地下室で、ヒラリー・クリントンが幼児性的虐待と人身売買をしていると信じて武装して押し入り、
逮捕されていますが、現在この男性は禁固刑を受けて服役中です。そこまでいかなくてもソーシャル・メディアを通じて極端な思想に洗脳され、
家族や友達に見放されて 更に過激になっていく例は前述のプラウド・ボーイズ等、白人至上主義グループのメンバーに顕著で、それまでの日常生活や人間関係が崩壊してしまうのです。
炎上のリアクションに過激な言語を用いるのは、そんな洗脳が進んでいる典型的な症状です。
そこまで来た人は事実をチェックしたり、反対意見を持つ人との冷静な議論は不可能です。
前述のようにアルゴリズムはユーザーを中毒症状にするために YouTubeならばオートプレイ、フェイスブックならばニューズ・フィードの内容を
どんどん一定方向に偏らせるようにデザインされています。したがってYouTuber側にしてみれば 特定の思想が極端でセンセーショナルであればあるほど
フォロワーも収入も急速に増えることになります。
ですが最初はお金儲けの手段としてそんなビデオを発信していたYouTuberでも、
やがては自分自身も過激な思想に染まって行くのがありがちな傾向です。
左寄りメディアの捜査力を軽視するべきではありません
日本のYouTuberが FOXニュースから情報を拾っている理由については、FOXニュースの英語が簡単で、
情報量が少なく、簡潔に書かれているので英語力にさほど長けてなくても、簡単に理解出来るということがあると思います。
FOXニュース、NYポストといった右寄りメディアの代表格はルパート・マードックが経営するニューズ・コーポレーション傘下ですが、
FOXニュースは最初から保守派のビューワーだけを狙って誕生したケーブル・メディアであることは、創設者の故ロジャー・エール本人が語っていた通りです。
そのためアメリカでは保守派のプロパガンダ・メディアと見なされていますし、NYポストはメディア界では新聞ではなくタブロイドのカテゴリーに入ります。
まともな新聞は 表紙のヘッドラインにダジャレがフィーチャーされることはありません。
ちなみに私がアメリカでサブスクライブしたことがある新聞はニューヨーク・タイムズ、ニューヨーク・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの3紙ですが、
ニューヨーク・ポストの記事のクォリティの低さは、「誰かから聞きかじった話をそのまま記事にしたよう」と言われるほどです。
でも記事が短く簡潔なので、NYに来たばかりで英語が苦手な移民にとっては有難いメディアですし、ゴシップ性が高く、政治・経済よりもセレブ関連のニュースに大きく紙面が割かれています。
ハンター・バイデン・スキャンダルはFOXニュースでさえ報道を見合わせたほど出所が怪しかった情報ですが、
それをNYポストが最初に報じたのはタブロイドなので情報に信頼性が無くてもお咎め無しだからです。
メインストリート・メディアがそれを報じなかったのは日本で言われるような言論統制や報道規制ではありません。
左寄りと見なされるニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストは意見記事ではその政治的ポジションを明確にしますが、
報道記事は公正さを守るために事実関係を詳しく説明し、複数のデータや専門家のコメントを盛り込む関係で記事が長く、内容も複雑になりますし、
何より英語のレベルが遥かに高くなります。
ですからアメリカ人にとってもNYタイムズの記事を読むスピードとNYポストの記事を読むスピードは全く異なりますし、そこから得られる情報量も遥かに異なります。
過去4年間、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストといったメディアはトランプ政権とその支持者にデーモナイズ(悪魔扱い)される傾向にありましたが、政治的ポジションは別として
ジャーナリストが社会問題を捜査し、それを正す役割を担ってきた功績は決して否定するべきではありませんし、それが無ければ世の中は政治家と大手企業の思いのままに動くだけです。
例えば多くのアメリカ人が中毒死する原因となった処方箋痛み止め薬、オキシコードンのメーカー、パーデューの疑惑にメスを入れて、その経営者であるサックラー・ファミリーが
利益をむさぼってきた様子を的確に報じたのがニューヨーク・タイムズ紙です。
それまでパーデューが雇ったロビーストに操られていたFDA(食品医薬品局)がようやく処分に動いたのは報道によって世論の批判が高まったためです。
2019年に刑務所で自殺を遂げたことになっているジェフリー・エプスティーンの再逮捕のきっかけになったのも、マイアミ・ヘラルド紙の記者が捜査を続けたからですが、
それは最初にエプスティーンが逮捕された際に、当時のフロリダ州検察官 アレクサンダー・アコスタがエプスティーンを大幅に減刑するための不当な司法取引を結んだ疑惑が原点になっています。
そのアレクサンダー・アコスタはエプスティーンが再逮捕されるまではトランプ政権の労働長官を務めており、トランプ政権と右寄りメディアが徹底的にプロテクトしていた人物です。
また長年に渡るカソリック協会牧師による青少年性的児虐待を暴いたのがボストン・グローブ紙のスポットライト・レポートですが、
同紙も政治ポジションは左寄りで その厳しい道のりは2016年にオスカーを受賞した映画「スポットライト」に描かれている通りです。
こうした大きな事件だけでなく、例えば今ニューヨークでは歯科治療を受けた市民の一部が高額な治療費に驚く事態が起こっていますが、それは今までチャージされたことが無かった
歯科医の手袋、マスクといったプロテクション・ギア代が追加される不正行為が横行しているためです。それをNY市にレポートしたところで何もしてもらえませんが、
NYタイムズに訴えて記事なると 市政府は動かざるを得ないのです。
それだけでなくホイッスルブローワーが内部告発をし、その情報を元に捜査をして報道するのも もっぱら左寄りメディアです。
もし日本人YouTuberが政治的に左寄りだからといってこれらのメディアを全く信頼せず、軽視しているとすれば、既にその段階でアメリカを理解していないと私は判断します。
私は日本のYouTuberを客観的に分析できるほどは沢山のビデオを観た訳ではありませんが、
英語が分かると思しきYouTuberでも分析のポイントやアングルが実際にアメリカで報じられているものと少々異なるように思いますし、それは私自身も日本に2週間程度一時帰国しただけで、
地軸が日本になってしまうことを思えば仕方がないことだと思います。
私が観た大統領選挙直前の予測ビデオでは「失業率が上がる中、移民に仕事を取られるのをアメリカ人が恐れているので
移民に厳しいトランプが有利」、「関税政策で中国に強さを示したトランプが有利」という見解が見られましたが、どちらも選挙直前にアメリカでは誰も話題にしなかったことです。
トランプ大統領でさえ選挙直前のキャンペーン・スピーチでは移民問題について語っていなかったほどです。
逆に黒人層や若い世代の有権者が最も重視したのがブラック・ライブス・マターに代表されるソーシャル・ジャスティスでしたが、それを争点に含めるビデオは私が観た中には1つもありませんでした。
ですから外国生活の経験があるというだけでそのYouTuberが発信する海外情報を信頼するのは非常に危険ですし、たとえ英語が流暢に話せる人でも読解力やバックグラウンド、人間性によって
情報の解釈が異なったり、偏ったりするのはありがちな傾向です。
そもそも人間は自分が知らなかったことを説明されると、それを疑うことなく 言葉送りのようにそのまま、もしくは自分なりの解釈を加えて吹聴する生き物です。
もし自分の考えとして語っていることが 特定のYouTuberの意見の請け売りで、
異なる情報や見解を感情的に否定するようであれば、それは情報を得ているのではなく、洗脳されていると考えるべきです。
人間はどう頑張っても心理学を分析してデザインされたマインドコントロールのアルゴリズムには勝てません。
冷静な判断力があるうちに日頃と違う情報ソースに目を向けたり、疑ってかかる視点を持たなければ、特に人の考えに合わせがちな日本の国民性を考えると、
知らず知らずのうちに思考が乗っ取られてしまうリスクがあると思う次第です。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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