Nov. Week 4, 2020
Take Unnecessary Risks?
感染リスクを冒してまでパーティーをする米国人心理


こんにちは。Cubeさんとは長いお付き合いで、夫と結婚して2002年にアメリカに住み始めて以来 ずっと愛読していて、お買い物もさせて頂きました。 パンデミック中もサイトの更新をありがとうございます。

私には大学生の息子が2人居ます。先月、上の息子の友達がかなり大きなパーティーをして、その中からコロナ感染者が複数出てしまいました。 幸い息子は参加していませんでしたが、何人もの友達が自主隔離になりました。 それが収まったと思ったらまた別のパーティーがあったようで、そこからも感染者が出ましたが、 息子達によると友達はコロナウィルスに感染することは全く心配していないそうです。
パーティーに出掛ける友達と、出掛けない友達に別れるのは 親が高齢であるかと、祖父母の世代とどれだけ近しいかによるらしく、 この時ばかりは子供に年寄り扱いされるのを有難く思いました。(笑) でも私の学生時代には毎日のように友達と楽しく遊んでいたことを思うと、息子たちが気の毒にさえ思います。
もっと自粛を徹底して、皆で我慢をすればコロナウィルスの感染がここまで酷くならなかったはずですが、 今のアメリカは無謀で好き勝手に振舞っている人のせいで、真面目にマスクをしたり、外出を控えている人が損をしているように思います。 私たち家族は今年は日本への一時帰国をすることも出来ませんでしたので、感染を恐れずにパーティーをしたり、「コロナウィルスはデマ」「自分は大丈夫」などと都合が良いようにしか物事を考えない人達のことが 腹立たしく思えます。「時々人に会わないと寂しい」という気持ちなら理解できますが、アメリカでコロナ感染を無視する人達はそれとは全く別物です。
秋山さんはこういう一部のアメリカ人の愚行ぶりをどう思いますか。 ニュースを見てコロナウィルス感染が酷くなるたびに情けなさで一杯ですし、こんなことがきっかけで息子達が「ルールに従う方が馬鹿を見る」というような考えを持ってしまうのではないかと心配しています。
支離滅裂で申し訳ないのですが、こういうアメリカ人の心理がどんなもので、どうしたら息子達がそれに洗脳されずに防げるかをアドバイスしていただけないでしょうか。 よろしくお願いします。

それと秋山さんが「マイナス感情こそ手放すな」の本にも載せていらした このコーナー初期の子育てのアドバイスで、 「悪いことをしない子供よりも、良いことを沢山する子供に育てるべきなのです」というフレーズは、当時未だ息子たちが やんちゃで カリカリ、ガミガミ怒ってばかりいた時の心に刺さり、以来私の子育ての信条にしてきました。 ありがとうございます。
このアドバイスが頂けても、頂けなくても、これからもお身体に気を付けて頑張ってください。

- S -



Discipline Equals Freedom

Sさんのご指摘通り、現在のアメリカはきちんとマスクをして、ソーシャル・ディスタンシングを守り、外出を控えて感染防止を最優先に考える人々と、 コロナウィルスをデマだと思う、思わないにかかわらず、地方政府の自粛規制やマスク着用の呼び掛けを ”国民の自由の侵害”と捉えて反発したり、「コロナウィルスに自分の人生を左右されたくない」、「コロナウィルスのせいで今という時間を無駄にしたくない」と主張して、 大きなパーティーやウェディングを行ったり、サンクスギヴィングにも例年通りに集まる人々に分かれています。
そしてSさんがご指摘の通り、アメリカには自分に都合が良いようにしか物事を考えない人達は少なくありません。 先進国の中で未だに気象変動を否定する人が唯一多いのがアメリカですし、聖書の教えを信じてダーウィンの進化論を否定したり、 地球が平たいと信じて疑わない人も沢山います。ありとあらゆる科学やデータ、事実が立証していてもそれを頑なに信じない頑固さは コロナウィルスに始まったことではないと私は思っています。

上の見出しの「Discipline Equals Freedom (規律は自由に等しい)」は、元海兵隊の作家ジャッコ・ウィリンクの語録ですが、 自由というものは人々が規律を守る秩序の中でこそ保たれるもので、誰もが規律に従わなければ社会において自由や権利が守られることもありません。 すなわち自由と規律は相反するものではなく相関関係にある訳ですが、 私が過去4年のトランプ政権下のアメリカで最も後退したと思うのがその自由と規律の意識です。
例えば人種差別を悪とするのはアメリカ社会の規律でしたが、白人至上主義グループが言論や思想の自由を掲げて組織力を増した一方で、 マイノリティ人種の行動を逐一監視しては人種の優位性に基づく規律を押し付け、 マイノリティ人種が自由や人権を主張すると警察に通報する白人女性がソーシャル・メディアでヴァイラルになり、”カレン”の総称で呼ばれてきたのは日本でも知られる通りです。 その一方で運転の際にシートベルトは着用するのに、パンデミックが収まるまでのマスク着用は「自由の侵害」を盾に拒むというのは 明らかに規律と自由を履き違えていると見受けられます。
そんな規律と自由の履き違えの原点にあるのは人間の弱さです。 規律に従わなければならない時に自由を主張してそれを逃れる一方で、 自由や権利が尊重されるべき時に規律を押し付けるのは 弱い人間の典型的な行動パターンであり、そういう人間には忍耐力や謙虚さ、 自分を鍛えようという意識が欠落しているのです。 また弱い人間ほど事実や自分の責任と向き合うことを先送りにする結果、実際に向き合えば対処できる問題であっても、 それを頭の中で恐れているうちに自分を叩きのめしてしまう傾向にあります。

アメリカ人の人格を分けるクッキー・テスト

パンデミックに入ってから、マスク着用やソーシャル・ディスタンシングを守って社会全体がパンデミックを乗り切ることを望むアメリカ人と、 長く続いた外出自粛にウンザリして感染を軽視してパーティーに出掛け、規制を押し付けられると猛反発するアメリカ人を見ていて、 ふと思い出したのがもう何年も前の報道番組で観たクッキー・テストでした。
このテストは子供の目の前に美味しそうなクッキーを置いて「20分間そのまま食べずにいたらもう1つクッキーが貰える」と説明して、 果たして子供が20分間我慢出来るかをチェックするもので、確か4歳程度の子供を対象に行うものでした。 その結果20分間我慢出来た子供は大人になると ほぼ全員が人並み以上の生活をしているのに対して、我慢出来かった子供は大人になってアルコール、ドラッグ、ギャンブルの中毒になったり、 肥満や喫煙で健康を害したり、投資で失敗し、離婚を繰り返すなど、問題の多い生涯を送っていることがデータで現れているとのこと。 でもテストの目的は4歳児の段階で将来の見通しが暗いと悟らせるのではなく、幼い頃から努めて自制心を育むことにより サクセスフルな人生に導けることを親達に認識させることでした。
ところがアメリカ人の親達は我が子がクッキーを食べてしまったと知ると 子供の自制心について考えるよりも、その多くがテストの正当性やデータを否定して怒り出す傾向にあり、 「そもそも自制心が無い上に、こんな親に育てられたら とんでもない大人になる」と思って観ていたのを覚えています。

私はパンデミック中に感染を恐れずにパーティーに出掛けたり、マスク着用を指摘されると逆切れするような人達は、 「子供の頃にクッキー・テストを受けていたら、皆20分我慢できずにクッキーを食べていたに違いない」と思っていて、 「三つ子の魂百まで」という諺が示す通り、ある程度成長しても人間は幼い頃に見せた片鱗をそのまま持ち続けて生きるものです。 ですから友達とハングアウトしたくてたまらない年齢でも きちんと自制しているSさんの息子さん達は、 パーティーに出掛ける友達の悪影響を受けたり、ルールを守って損をしているとは考えないと思いますし、 息子さん達は自分達の楽しみよりもSさんとご主人の健康リスクを優先させる親孝行です。 そんな息子さん2人を育て上げたSさんは素晴らしい母親だと尊敬いたします。

世の中ではパンデミックを”プランデミック”などと呼んで、コロナウィルスの感染が世の中を一定の方向に変えるために仕組まれたものだという説も聞かれますが、 どんな時代になっても、立派に生きて行けるのは理性的で自己管理がきちんとできる人間です。 そんな人間性は精神を含む健康面にも、経済面にも大きく影響を与えます。 言い方を替えれば時代が変わっていく時だからこそ、人間的資質がとても大切になってくると思う次第です。
私もSさん同様、今年は日本の家族や友人たちに会えない寂しい年になってしまいましたが、 家族や友人の有難みや、健康管理、時間の使い方等について今までにない形で考え直したのが2020年でした。 その意味で私は イソップ物語の「アリとキリギリス」のストーリーのように2020年をどう過ごしたかが 年齢や性別、バックグラウンドを問わず、今後の人生に少なからず影響を与えるものと考えています。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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